【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第1分科会 ~生きる~「いのち」を育む・いかす、支えあう

自治労京都府本部カンボジア・スタディツアー


京都府本部/自治労京都市職員労働組合 梶村 佐知
京田辺市職員組合 濱本 武志

 自治労京都府本部の組合活動の一環として、ボーンポォン活動の推進のため、2016年2月27日から3月1日にかけて、カンボジアを訪問しました。
 カンボジアは、近年まで内戦があり、社会インフラが十分ではなく、さまざまな分野で支援を必要としています。今回、教育分野における支援として、国立幼稚園教員養成学校と民間組織が手がける寺子屋を訪問させていただき、物資の支援を行いました。
 拙い訪問記ですが、最後まで読んでいただき、カンボジア支援の必要性を感じていただけたらと思います。

1. 1日目(2月27日)

(1) 関空からハノイへ
 2月末の寒い朝、参加者は一人も遅れることなく、8時30分に関西国際空港へ集合しました。初めて顔を合わせる方もおり、軽く挨拶をして、すぐに飛行機へ乗り込み、まずは南国ベトナムのハノイに向けて出発です。まだ、日本からカンボジアへの直行便がないため(今年の夏にできるようです)、ベトナムかタイの都市を必ず経由する必要があります。6時間のフライトで、ようやくハノイに到着しました。飛行機内は大変乾燥しており、空港の喫茶店でベトナムコーヒーを買い、のどを潤しました。練乳を入れたエスプレッソコーヒーのようなもので、とても甘く、美味しいと感じました。ゆっくりする時間がないため、すぐに飲みほし、またカンボジアへ出発しました。

① シェムリアップに到着
 2時間のフライトで、ようやくカンボジアの大地が見えてきました。空の上からだとよくわかりますが、見渡すところ、すべてが「密林」です。ひたすら、森が続いています。空の観光を楽しんでいるうちに、シェムリアップ国際空港が見えてきました。現地時間と日本とはおよそ2時間の時差があり、日はまだ明るく、到着したのは17時30分頃でした。
 飛行機が到着しました カンボジアの大地へと降りようとしたところ……なんとタラップで降りるのではありませんか。滑走路を徒歩で移動しながら、空港の入国カウンターへ向かいます。日本ではなかなかできない衝撃的な体験に、興奮しました。さらに衝撃は続きます。それは、暑さです。毎日の気温が30度以上のカンボジアは、やはり暑い。とくに、冬真っ只中の日本から来た私たちにとっては、よりいっそう暑く感じられました。
 空港では、現地ガイドのモニーさんが出迎えてくれました。非常に優しい方で、親切です。長時間の移動で疲れきっていた私たちを、笑顔で迎え、貸切バスへと荷物を運んでくれました。落ち着いたのもつかの間、バスの車内では、なんと蚊がいました。大丈夫なのでしょうか。たしか、事前の説明会で「気をつけましょう」と言われていたと思うのですが。皆、疲労が勝り、ウトウトしていました。
 それにしても、すごい国です。道路に信号がまったくついていません。道路幅は広く、なかなかの台数が走っているのですが、自由に横断しています。
 30分ほどして、ホテルに到着しました。1日目は、移動で終わったようなものですが、フロントに、たくさんのハスの花が浮かべられているのをみると、南国の美しさを感じることができました。


2. 2日目(2月28日)

(1) アンコールワットとアンコールトム
 朝食は、カンボジア料理などのバイキングでしたが、お隣のタイなどと比べて、辛い料理は少なく、あっさりしており、どれも美味しい。一日に消費するエネルギー以上に、食べ過ぎてしまうほどでした。
 さて、カンボジアといえば、だれもが知る有名な世界遺産があります。そう、カンボジア最大の目玉「アンコールワット」です。
 本日の午前中はアンコールワットを見学することになりました。車に揺られて30分ほど行くと、入口の前の通門証を作るところに着きました。産業がまだ発達していないカンボジアにとって、アンコールワットは外貨獲得の強力な手段です。入場料をアメリカドルで支払い、指定の通門証を作りました。写真を撮られ、パスポートを見せ、手早く製作されます。ここは、本当に多くの方々が来ているようで、欧米人らしき人びとや、中国や韓国の人も多くいました。キョロキョロしていると、子どもたちや物売り人が寄ってきます。強引ではありませんが、力強く、粘り強く、クラマー(ストールのようなもの)や絵葉書を売りにきます。勢いに負けそうになるほどで、立ち止まると大変です。
 そこからまた車に乗り、少しすると入口が見えてきました。水上の寺院とでも言うべきもので、大変きれいです。アンコールワットは、12世紀前半に当時の王様が造ったもので、濠に囲まれています。濠の幅は200メートルほどあり、まるで川のようです。重機がない昔に、大変な工事であったことがうかがわれます。
 バスを降りると、土道です。空気が乾いているため、砂埃が舞い上がり、すごいことになります。そして、またもや土産物を売る商売人の方々が声を掛けてきました。相手にせず、ドンドン進みますが、向こうもドンドンついてきます。立ち止まると、全方向から売りにやってくるので、注意が必要です。そうこうするうちに、ついに着きました。アンコールワットです
 まずは橋を渡ります。石の橋です。本堂までは結構遠く、途中に建造物がいくつかありますが、ボロボロでした。建造物を説明するプレートには、なんと見慣れた日本の国旗が書いてあるではありませんか。なんでも、日本の大学が国の支援を受けて修復に来ているそうです。がれきから復元するのは時間がかかりますが、ひとつひとつ丁寧に直しているそうです。しかし、広いところです。遮蔽物がないため、直射日光もすごい。地元の人が、クラマーをかぶっている理由がわかります。
 15分ほど歩くと、よく絵葉書に使われている正面に到着しました。今は「乾期」のため水が少ないそうですが、迫力は十二分にあります。
 中へ入ると、びっくりしました。石の彫刻がいたるところにあります。しかも精巧にできています。仏像も安置されており、観光だけでなく、現在も信仰の場所であることがわかります。
 ガイドのモニーさんの解説によると、彫刻は、ヒンドゥー教のお話や、昔の王様の話が描かれているそうです。壁面すべてにびっしりと描かれ、「勉強になりますよ」とのことでした。ほかにも、50人ぐらいは入れそうな王様のお風呂や、日本人の落書き(15世紀に徳川家康がつかわした侍が、祇園精舎に来たと間違えて証拠に書いた落書き)などもあり、楽しめました。
 また、アンコールワットの中でも特に貴重な場所が「第三回廊」です。「天国へ続くところ」とのことですが、見て納得しました。なんと、その回廊にいくには、傾斜角度30~40度はありそうな階段を上らないといけません。石の階段のため、すでにすり減っており、滑り台のようで、よく落ちるとのことです。「エエー」と思っていたら、施設を傷めないように、手すり付きの、木製のしっかりした階段が組んでありました。それでも、まだまだ急角度でしたが。第三回廊はまさに天国で、きれいな景色が広がっています。空は蒼く、地平線まで密林が広がっていました。
 さて、次はアンコールワットの近くにあるアンコールトムです。「王の都」という意味だそうです。ここは面白いところでした。顔の石像がたくさん置いてあって、「一つとして同じものはないから、好きなのを捜すといい」とのことでした。

(2) プノンペン
 世界遺産を見て楽しんだ後は、首都プノンペンへ。大阪から東京ぐらいまでの距離ですが、カンボジアには鉄道がほとんどないので、長距離移動には飛行機を使います。
 空港へ行く途中、日本人女性がオーナーのアンコールクッキー屋さんへ寄りました。日本人がカンボジアを訪れたときは、必ず立ち寄るところらしく、にぎわっていました。働いているのはカンボジアの人ですが、きびきびしています。最近は観光客が多く、このあたりは地価が年々上がっているそうで、5万円/m2 ほどするそうです。
 さて、シェムリアップ国際空港から小型プロペラ機で出発です。1時間ほどで到着しました。プノンペンは、さすが首都です。車がバンバン走っており、空港の売店にはなんでもあります。街灯も多く、電気が大量に消費されているのがわかります。一大観光地とはいえ、地方都市のシェムリアップと比べると、その差は大きなものがありました。モニーさんによると、国内には発電設備がそれほどなく、今は電気をラオスから買っていて、貴重なものだとか。首都以外は使用を控えているそうです。カンボジアは、内戦の影響で、国内の生産設備の能力が低く、また、そのために他国からいろいろなものを高く買っているため、国は、よりいっそうお金が無くなるのだそうです。最近になって、縫製工場などができてきたので、徐々に賃金も上昇し、良くはなっているようですが、まだまだこれからとのことでした。ちなみに、女性従業員の月収は120ドル/月。3年前は80ドル/月ぐらいだったそうです。
 道路事情は、立体交差道路などもあるのですが、信号を2つほどしか見かけませんでした。片側4車線の大道路を、所狭しと多くの車、バイクが行き交っています。何度も接触寸前のところを見ました。


3. 3日目(2月29日)

(1) 国立幼稚園教員養成学校
 このツアーで一番大切な日が来ました。教育施設を訪問し、役立ててもらうための支援物資をお渡しする日です。失礼のない服に着替え、まずは国立幼稚園教員養成学校をめざして出発です。ホテルから車で20分、すぐに着きました。きれいなところです。わざわざ、校長先生が出迎えてくださり、この学校の概要について説明していただきました。
 国で唯一の養成学校で、今は先生になりたい人が国内各地から500人ほど来ており、パンク状態とのことです。カンボジアは若い人の比率が多く、子どもたちもたくさんいます。教えるべき子どもがたくさんいるものの、先生はまだ少ないのだそうです。
 先進国等の支援メニューには、小学校建設などが多くあるものの、幼児教育の分野では支援が少なく、大変とのことです。しかし、この段階からしっかりと子どもたちに教えていかないと、小学校での教育へはつながっていかないとのことでした。学校には幼稚園を併設しているとのことで、理論と実践が一体の形で、学べる場となっています。
 学生たちは、卒業後、地元に赴任しますが、日本のように教材が与えられるわけではないので、ほとんど手作りの教材を使用しているそうです。赴任先では、材料を手に入れるのが大変なので、この学校に就学しているときに制作したもので対応しているというのです。この話を聞いた時、すごいところだと思い、支援を継続的に行っていく必要があると感じました。
 物を大切に扱う人びとばかりで、昔、自治労が支援して建設した校舎や物資は、今も使われていました。自治労京都府本部が15年前に贈った車も、現役で活躍していました。
 高橋委員長より、パソコンやプリンター、教科書などの物資が手渡された時には、本当に喜んでくれているようでした。カンボジアでは、国からの支援もまだ少ないのだそうです。

 
教科書などを贈呈   各地から集まった、将来の幼稚園教諭
         
 
自治労が支援して建設した学校   現在も活躍する、15年前に贈呈したワゴン車

 贈呈後、施設見学をさせていただきました。
 水道等の設備が十分ではなく、トイレから出ると、水甕から桶で水をすくって手を洗います。また、学生の寄宿舎がありますが、10畳くらいの狭い部屋に何人もで生活していました。畑を耕して自給自足の生活をし、余った作物は売っているそうです。話をきくと、だんだん泣けてきました。
 教室は、将来の、幼稚園教員の姿でいっぱいで、先生の話を熱心に聞いていました。男性も何人かおり、頑張っているそうです。
 帰り間際、出先から帰ってきた生徒を見かけましたが、狭いバイクタクシーに7~8人も乗っていました。車を大切に使っていることの意味を、感じさせられました。
 さて、いったんホテルに戻り、昼食をすませて、午後からはNGOが運営する寺子屋の見学と支援物資の提供です。
 途中、茶色い液体を詰めたペットボトルを、道端で売っているのを見ました。聞いてみると、ガソリンだそうです。ガソリンスタンドが十分になく、道端で売るのが普通だそうです。年中気温が30度の国で大丈夫かなと思いつつ、別のところに目を移すと、道路舗装をしている工事現場の横2メートルほどのところで、ハンモックに乗ってバカンスしている人がいました。しかも、そのまたすぐ横ではフルーツドリンクを売っています。日本では考えられないおおらかさに、カルチャーショックをうけました。

(2) SCADPが運営する児童保護施設
 さて、SCADP(ストリートチルドレンの支援と発育プログラム)の寺子屋に着きました。
 向こうは準備万端、待ってくれていました。まずは、お互いに挨拶し、そのあと歓迎の踊りを披露してくれます。じつに優雅ですね。手の指がなんと、逆に30度ぐらい曲がっています。すごいです。
 また、伝統的な曲だけでなく、英語の歌に合わせながらも踊っています。意味もわかっているのでしょう。鼻や手、ひじなど英単語に合わせて、その個所を触っていました。
 さて、この施設は、親がいない子どもや、さまざまな事情で親が育てられない子どもに対し、生活の場を提供し、勉強を教える場です。20年ほど前から活動しているそうです。子どもたちは30人ぐらい。にぎやかで、何人かは生活もしているそうです。しかし、運営はかなり苦しいとのことでした。


交流タイムは子どもたちと
 

 それでも、子どもたちは、私たちを笑顔で迎えてくれ、本当にうれしい気持ちになりました。交流タイムでは、持ってきたオモチャや紙風船で遊んだり、折り紙やお絵かきしたりしました。
 私は、紙風船で子どもたちに遊んでもらうことになりましたが、約30分もフル回転で動いていると、倒れそうになりました。子どもたちは元気でまったく疲れていない様子です。周りを見ると、近くに住む子どもや大人もやってきて、さらににぎやかになっていました。ほんの少しの交流でしたが、とても楽しくて、あっという間に時間は過ぎ、別れを惜しみつつ、施設を後にしました。

(3) プノンペン空港へ
 プノンペン空港に到着し、ガイドのモニーさんともお別れです。彼は、このあと、なんと約8時間かけて帰られるそうです。50歳ぐらいだったと思いますが、大変です。
 全行程を終え、ホーチミンを経由して日本へ帰ります。移動が大半を占めたツアーでしたが、考えさせられることはたくさんありました。


4. 4日目(3月1日)

 参加者全員、無事に関西国際空港へ帰ってきました。なんと雪が降っています。数時間前までは常夏の国にいたのに、と絶叫しそうになりました。あっという間に、意識が日本に戻されてしまいました。

5. スタディツアーに参加して

 カンボジアは、年々街が整備され、きれいになり、治安も向上し、所得も上がって、勢いのある国のように感じました。また、若者が多く、これから発展していくための潜在能力はすごいと思います。
 しかし、教育面では、まだすいぶん遅れていて、国の施策も十分に行き届いていない状況です。これからも、こういった支援活動が続いていくことが大事だと思いました。