【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第2分科会 ~生きる~「いのち」を守る

 島根県職連合労働組合で運動方針の一つに掲げている「平和」の取り組みとして、2002年から取り組んでいるアフガニスタン学校復興支援の取り組みを振り返り、「平和な社会の実現」に労働組合としてどうあるべきなのか、あらためて考えてみました。



アフガニスタン学校建設支援の取り組み
―― 市民団体と歩んだ13年間を振り返って ――

島根県本部/島根県職員連合労働組合

1. 取り組みの背景

 2001年9月11日同時多発テロ後のアフガニスタン空爆を機に、シャンティ国際ボランティア会(以下、SVA)はアフガニスタンでの活動を開始している。2001~02年にかけては、アフガニスタン東部における食糧配布等の緊急救援事業を実施し、2003年より学校建設と図書館活動からなる教育支援事業をスタートした。
 こうした中、以前の「淡水化に反対する会」のメンバーが中心となり、日本のその中でも島根から「何らかの支援ができないか」と考え、2002年4月15日、市民団体「アフガン寺子屋プロジェクトinしまね」を立ち上げ、SVAを通じた現地の学校建設支援に取り組むこととなった。
 島根県職員連合労働組合は、その前身である島根県職員労働組合の結成以来、運動の方針の一つに「平和」を掲げ取り組んできた。労働組合がめざすものは「安心して働き、暮らすことができる社会の実現」であり、賃金や休暇等の労働条件だけではなく、安心できる生活環境を守ること、とりわけ「平和な社会の実現」が不可欠である。このアフガン寺子屋プロジェクトinしまねの活動には、「教育により次世代を担う子どもたちに平和の大切さを伝え、暴力の連鎖を断ち切る」という活動理念に賛同し、平和運動の一環として結成当時から関わり、2015年で13年目を迎えた。

(1) アフガニスタンの概要
 「文明の十字路」と呼ばれるアフガニスタンは、古代から交易の中継点として栄えてきた。18世紀には初めてアフガニスタン人の王朝が成立し、現在のアフガニスタン国家の基礎となっている。19世紀以降は、英露がアフガニスタンの利権をめぐり「グレート・ゲーム」を展開。英国との2度にわたる戦争の末、英国の保護下に置かれたが、1919年の第3次英ア戦争を経て独立した。
 その後、アフガンでは王政が続くが、73年のクーデターで共和制が導入された。70年代末には共産主義政党によるクーデターが発生し、同年12月、革命を救うとの理由でソ連がアフガニスタンに侵攻している。ソ連が反ソ派のムジャヒディン(イスラム聖戦士)を攻撃する一方、米国がこれを支援するなど、米ソ連代理戦争へと発展していく。ソ連は兵の犠牲者数が1万人を超えるなど苦戦し、89年までに撤退した。
 しかし、ソ連撤退後、アフガンはムジャヒディン間の激しい内戦に突入。多くの人々が難民となり、パキスタンなど近隣国へ逃れた。こうした中、タリバンが急速に勢力を拡大し、96年にはタリバン政権が発足した。
 その後、2001年9月11日、米国で同時多発テロが発生。これを実行したとされる国際テロ組織アル・カーイダをタリバン政権が援護しているとして、米国主導による軍事作戦が展開され、同年12月にタリバン政権は崩壊した。
 軍事作戦と同時に、タリバン政権崩壊後の暫定政権樹立に向けた調整も進められ、12月には「ボン合意」が成立し、カルザイ議長を中心とする暫定行政機構が発足した。04年1月には憲法制定ロヤ・ジルガ(国民大会議)により新憲法を採択、10月にはアフガニスタン史上初の大統領選挙が行われ、カルザイ大統領が選出された(09年の大統領選挙で再選)。05年9月、新憲法に基づき国会議会選挙が行われ、議会が発足している。
 しかし、アフガニスタンの治安は、その後再び悪化。タリバンなど反政府武装勢力とアフガニスタン国軍、外国軍の戦闘は激しさを増し、2013年は10月の時点で民間人の死者数が既に2,700人にのぼり、過去最高となった。2014年末で国際治安支援部隊(ISAF)が撤退したが、アフガニスタン国軍には全国の治安を維持する能力は備わっていない。
 2012年7月には、治安部隊撤退後の国際社会によるアフガニスタン支援について話し合う国際会議が東京で開催され、2015年から2024年までの「変革の10年」においても、国際社会が引き続きアフガニスタン支援に関わっていくことが合意された。また、2012~2015年の期間、国際社会が160億ドルを超える規模の支援を行うこと、アフガニスタン及び国際社会の相互責任を明確化し、それを定期的に確認・検証するメカニズム「東京フレームワーク」を創設することが合意された。しかし、東京会合の成果文書である東京宣言では、教育や保健などの基礎的社会サービスへの明確な資金的コミットメントがなく、これらセクターに対するアフガニスタンの国家予算配分のコミットメントも言及されていないなどの課題も残っている。
 2014年4月に大統領選挙が実施され、2期務めたカルザイ大統領は退任。2014年9月21日にガニ元財務大臣が大統領、対立候補だったアブドラ元外務大臣が行政長官として挙国一致政権を樹立することが発表された。

(2) アフガニスタンの教育の現状
 近代のアフガニスタンでは、1919年の独立後、政府が教育による社会発展を推進してきた。しかし、教育を含む急進的な近代化政策への反発から乱が起こり、一時近代的な学校がすべて閉鎖された。1929年のナディル・シャー国王即位後、学校は再開され、1931年に発布された憲法では、政府の責任においてすべての子どもに初等教育を与えることが明記された。しかし、アフガニスタンの教育開発はなかなか進まず、初等教育は十分に普及しなかった。1975年の成人非識字率(15歳以上で読み書きのできない人の割合)は88%と推定され、60~70年代にかけての小学校就学者の平均年間増加率は13%にとどまっている。
 その後アフガニスタンは、79年末からのソ連の侵攻、続く内戦により、多数の学校が破壊されてきた。米ソの対立は教育の場にも持ち込まれ、たとえば算数の教科書には「もし共産主義者の死体が2体あり、さらに3人殺したとしたら、全部で何人の共産主義者の死体がありますか」といった、戦争に関するメッセージが含まれた。タリバン時代には、女性教員の就労が禁じられたほか、女子の就学が原則禁止された。
 2001年末のタリバン政権崩壊、暫定政権の樹立後は、国際社会の支援で教育の復興が推し進められた。2002年よりアフガニスタン教育省がユニセフの支援で実施した「バック・トゥ・スクール・キャンペーン」で就学者数は激増し、2000年時点の約90万人から2013年には約1,050万人と11倍以上になった。普通教育の学校数は、2002年の6,039校から、2012年には15,154校に増加している。
 しかし、2012年時点の純就学率は56%(男子68%、女子44%)と依然として低いなど、依然として課題は山積している。また、全学校の半数には校舎がない。多数の子どもたちが、テントや野外での学習を強いられている。高等教育を受けた教員、特に女性教員が不足しており、教育の質の確保や女子教育が課題となっている。15歳以上の成人識字率は、36%(男性50%、女性20%)と依然低いままである。
 こうした中、アフガニスタン教育相が09年12月にまとめた教育開発5カ年計画(2010-14)では、20年までに基礎教育の純就学率を男女共に98%とすることを目標に掲げ、重点項目として、普通教育・イスラム教育、カリキュラムの見直し・教員の教育、識字教育、学校施設の整備等設備の向上 ―― 等を挙げている。特にカリキュラムの見直しでは、質の高い教科書や学習教材の普及を掲げており、14年までに、60%の学校に図書室を整備する(08年時点では10%)ことを目標としている。また。14年までに、最低でも75%の教室に使用可能な校舎を整備するとしている。

 児童と紛争に関する国連報告書によると、2013年にアフガニスタンでは9人の子どもが、反政府武装勢力によって自爆テロ攻撃に利用された。紛争によって少なくとも545人の子どもが死亡し、1,149人の子どもが負傷している。反政府武装勢力が73校を攻撃した結果、学校で11人の児童が死亡し、46人の児童が負傷している。また、多くの学校、特に女子校に対して、「学校を閉鎖しないと、女子に酸をかけるぞ」といった脅迫状が送られた。またアフガン国軍も学校を前線基地として使い、校舎の屋上に大砲を備えている場合もある。この結果、539校が一時的あるいは長期にわたり閉鎖されており、115,000人の児童が影響を受けている。


2. アフガン寺子屋プロジェクトinしまねの取り組み

 SVAを通じた現地の学校建設支援を目的に以下の取り組みが行われ、県職連合も趣旨賛同の上、ともに取り組んでいる。
① 9・11街頭募金
② 松江水郷祭ウィーク募金・かき氷販売(島根大学留学生参加)
③ バザー・リユース常設店
④ アフガニスタン現地報告会(現地スタッフ来県/ワヒド・アフマド・ザマニ氏(SVAアフガン事務所副所長))
⑤ 小・中・高校での総合学習(現地スタッフ同行)
⑥ アフガニスタン写真展


3. 県職連合での取り組み

 アフガン寺子屋プロジェクトinしまねでの最大の取り組みとなる県下一斉街頭募金の中心的役割を担い、県職連合各支部が、地域の大型店舗前などで支援を呼びかけている。
●各年度の街頭募金実績
年 度募金金額
2002. 9.14723,367円
2003. 9.13436,990円
2004. 9.11421,632円
2005327,000円
2006. 9.25406,970円
2007. 9.10326,009円
2008(不明)
2009. 9.17336,995円
2010. 9.13315,000円
2011. 9.13241,763円
2012. 9.10321,306円
2013. 9.10274,975円
2014.11.29228,425円


4. 最後に

 グローカルという言葉がある。
 「地球規模で考えながら、自分の地域で活動する(Think globally,act locally)」という発想を表す造語であるが、アフガン寺子屋プロジェクトの取り組みは、まさにグローカルな活動の実践である。
 世界とつながり、地域とつながる運動。安心して暮らすことのできる地域社会の実現をめざす社会的な存在である労働組合の姿勢として大切なことを、この活動に参加して実感できたことに感謝する。
 完成した現地の学校には、島根の善意の人々に感謝を込め、「AFGHAN TERAKOYA PROJECT」のプレートが埋め込まれている。いつの日にか日本の子どもたちがアフガニスタンを訪問、交流して、ともに平和を作り上げていくことを願っている。



(参考)アフガニスタンでの学校建設状況(アフガン寺子屋支援分)
※SVAを通じてアフガン寺子屋プロジェクトinしまねから送金した額。
年度 学校名 英語表記 学校
種別
教室数 教員数 男 子 女 子 合 計
生徒数
支援額※
2004 チャルディヒ高等学校小学部 Chardhi 共学校 10教室
3室(図書室、職員室、倉庫)
14人 692人 400人 1,092人 ナンガハル州 4,000,000円
2006 ドダラク小学校 Do Darak 共学校 9教室
2室(図書室、職員室)
9人 127人 73人 200人 ナンガハル州 2,000,000円
2006 チャオキノール小学校女子部 Cheknawar 女子校 4教室 12人 467人 467人 ナンガハル州 1,000,000円
2008 ザルバチャ小学校 Zarbacha 女子校 4教室 5人 280人 280人 ナンガハル州 1,000,000円
2009 カイラアバッド小学校 Khair Abad 共学校 6教室
3室(図書室、職員室、倉庫)
13人 364人 329人 693人 ナンガハル州 1,000,000円
2010 ランディバサウル小学校 Landi Bsowl 男子校 6教室
3室(図書室、職員室、倉庫)
10人 810人 810人 ナンガハル州 1,000,000円
2011 マリゼ高等学校小学部 Marez 共学校 6教室
3室(図書室、職員室、倉庫)
29人 795人 522人 1,317人 カブール州 1,000,000円
2012 カジ・ミルザマン・カーン高等学校小学部 Ghazi Mirzaman Khan 共学校 16教室
8室(図書室、実験室、職員室、教材室など)、トイレ5室
37人 478人 1,076人 1,554人 カブール州 1,000,000円
2013 ジャラルディン・バルキ高等学校小学部 Jalaluddin Balkhi 女子校 16教室
8室(図書室、実験室、職員室、教材室など)、トイレ5室
98人 4,313人 4,313人 カブール州 1,000,000円
2014 デクホディダッド女子高小学部   女子校 20教室
8室(事務室、備品室)、トイレ
110人 3,138人 3,138人 カブール州 1,000,000円
2015 アブドゥラウフ・ベネワ中学校小学部 (事業申請中) 41人 1,714人 1,714人 カブール州 1,000,000円
合 計(11校分) 15,000,000円