【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第3分科会 石巻に虹を架けよう~被災地の今を見る、知る、触れる、考える~

東日本大震災時の現業協の取り組み


福島県本部/福島市役所職員労働組合・現業協議会

 福島市職労・現業協議会は、市職労の補助機関としての中核を担い、清掃・用務・給食・運転一般の職種で287人の現業組合員が結集しています。
 そして、職種毎に抱える課題を解決するため、職種別での部会制をとりながら各職場における諸課題を吸い上げ、課題解決に向けた取り組みを進めながら、基本組織にも各部会からそれぞれ1人の執行委員を選出し、市職労と現業協が一体となった運動を展開していく中で組織の強化も図ってきました。
 春闘期には、同じ補助機関である、青年部・女性部と三部合同学習会を開催し、職種や性別、世代を超えて普段あまり会う機会のない方々と課題を共有しながら、課題解決に向けて精一杯取り組むことを確認し、通年闘争のスタートをきります。
 秋の確定期には、確定闘争の前段である現業統一闘争を最大の取り組みとして位置づけ、統一闘争勝利に向けた対策として、現業協学習会を開催し、統一闘争に臨むうえでの意志統一を図ってきました。また、教宣活動の強化として機関紙を作成し、全職場オルグの中でたたかう決意を訴えるとともに、市職労・現業協への結集をお願いしてきました。さらに、現業統一要求書と職場改善要求書を当局に対し提出し、現業職場の職場改善と課題解決に向け、当局からの誠意ある回答の引き出しを図るべく、執行部とともに団体交渉に臨み、全国統一行動・早朝時間内集会を背景に交渉の追い上げを図ってきました。また、年間を通じ、幹事会を定期的に開催しながら、課題の共有と解決に向けて協議するとともに、学習会も職種別集会をはじめ定期的に開催し組織の総力をあげてたたかうことを確認してきました。
 しかし、現在、全国的に現業職場を取り巻く状況は依然厳しく、退職者不補充や職場の民間委託化など厳しい状況に追い込まれています。
 総務省はこの間、地方自治体の行政改革に関する取り組み状況について公表し、現業職場の民間委託を推進してきました。さらには、「地方財政の運営について」で自治体に対し「技能労務職員の採用にあたっては、真に正規職員でなければ対応できないものであるか等について十分検討されたい」と通知し、事実上の現業職員の新規採用抑制を自治体当局に強いてきました。
 さらに、昨年6月に閣議決定した「骨太方針2015」の中では、さらなる外部委託の推進が掲げられ、自治体でPPP・PFIの優先検討と適用拡大を打ち出すなどさらに厳しさが増すことが想定され、公共サービスを産業化しようとする政府の方針決定によって、コストを最優先する公共サービスの外部委託圧力が一層強まることは明らかです。
 福島市においても、15年前の2000年には504人を数えた現業組合員も、現在は287人まで激減しています。
 長年にわたる現業職員の退職者不補充と採用抑制によって、常に最前線で市民サービスを担っている現業職場の人員不足は、極めて深刻な状況となっています。清掃・用務・給食・運転一般の全ての職種・職場で人員不足により負担が増大し、より良い公共サービスを安定的に提供していく上でも、現場・職員の努力だけでは限界を迎えています。
 市当局は、この間、現業職の採用について、2011年の団体交渉において「数年採用しないと年齢構成が偏り、労務管理上に問題が生じる。将来的な人員確保は必要だと認識している」との考えを示しています。そして2013年の団体交渉では「市民サービスを直接支えているのは現業職員であるとの認識のもと、3年サイクルを目安に採用試験の実施に繋げたい」との回答を引き出しています。
 このため、昨年の現業統一闘争の団体交渉において、これまでの交渉経過も踏まえ、現業職の採用試験の実施を強く迫りました。休議を挟みながら粘り強く交渉した結果、市当局からは「来年度の採用試験の実施も視野に入れながら、労使による検討会議を立ち上げ、現業職場全体のあり方について検討したい」との現業職採用への足掛かりとなる前進回答を引き出すことができました。
 しかし、団体交渉において、採用に向けて前向きな回答は引き出しましたが、職場の人員不足は深刻な状況にあることには変わりません。現業協は、人員確保の要求項目に、
① 退職者不補充による定員削減は行わず、業務量に応じた人員を正規職員で確保すること
② 定年等による退職者については、新規採用職員で補充し、職場に欠員が生じている現状を踏まえ速やかに採用試験を実施すること
③ 災害時に対応できる人員の確保を行うこと
を掲げています。とりわけ、「災害時に対応できる人員の確保を行うこと」について、当局は「再任用制度の活用などにより、必要な人員の確保に努めて参りたい」との回答に止めており、認識の甘さを疑わざるを得ません。
 東日本大震災・原発事故から5年が経過しましたが、私たちはこの間、福島の復興・再生に向け日々の業務に全力であたってきました。未曾有の大震災でもあり、当時は、職員自らも被災する中でも地域の最前線で公共サービスを提供する自治体現業職員としてそれぞれの職種・部会で懸命に取り組みました。
 清掃部会の取り組みとしては、東日本大震災後、3月14日には市内3か所に災害ごみ仮置き場を開設し、休日対応も行いながら4月末には、17,148台の搬入となりました。しかし、この3か所のごみは、仕分けをする必要があることや放射線量の高いものもあり、処理を始めるまでに時間がかかりました。また、通常のステーション収集や個人持ち込みの増加もあり、あらかわクリーンセンターの敷地内に不燃物の仮置きをし、これらの不燃物は休日対応や残業対応により処理が終了するまで3カ月を要しました。
 清掃指導係では、災害ごみの仮置き場の空間線量測定を行うとともに、現場からの提案により、食品放射性物質モニタリング後の検体回収業務も行いました。また、損壊した家屋等について、二次災害の防止及び生活環境の保全を目的に所有者からの申請に基づき、解体処理を行う事業の早期終了のため、不備書類確認や算定書の作成、申請者への現状確認事業など職域を超えた支援を行いました。さらに、浪江町や双葉町、飯舘村から避難されている応急仮設住宅では、「福島市のごみの出し方」の説明会の要請があり、52か所の集会所等で総参加人数1,029人を対象に実施しました。
 クリーンセンターでは、仮置き場の可燃・不燃物や損壊家屋解体処理の搬入が始まり、前年半年との比較で総搬入台数は3,000台を超え、特に5月の連休時には市民持ち込みを含め、1日に865台の搬入車輛があり、計量所の混雑や道路の渋滞など担当職員の負担が増大していました。
 2013年9月の災害廃棄物仮置き場の処理状況については、クリーンセンター等へ搬出処分し、敷地の除染と表土の入れ替えも終了し進捗率が91%となり、年度内に終了する目途がたちました。また、損壊家屋等解体処理事業にかかるクリーンセンターでの処理状況は、震災以降3年間で可燃物はあぶくま・あらかわ両センターにおいて1,294トンの受入れと焼却処理を行い、不燃物については、あらかわクリーンセンターで2,648トンの再処理を行いました。この事業についても、同年9月で進捗率が97%となり年度内に終了することができました。さらに、住宅等の被害状況の最終結果は、全壊744、大規模半壊638、半壊4,919、一部損壊7,688、計13,989棟となりました。
許容量を大きく上回る震災廃棄物(ストックヤード) 一時的仮置き場もすでに満杯(調整池)
 また、用務部会については、大震災直後は、新幹線の運休などにより多くの乗客が足止めされたことなどもあり、7,040人の市民や旅行者が避難所に殺到しました。福島市内の避難所は最大で74か所、避難者数は最大8,495人(内広域避難者数4,354人)となり、7月12日のパルセ飯坂が閉所するまで、市民の安全確保、原発事故等による広域避難者の生活の場として機能しました。
 ここで、今回の想定を超える大規模災害に対応する避難所運営に多くの問題点があったことから、今後必要とされる改善点について報告します。
 避難所においては、支援物資の管理や灯油の確保など現場での責任者が明確になっておらず、指揮・命令系統が一本化されていないなどの問題が生じました。用務職員が自ら現場で判断・行動できる「災害時の作業基準」の検討が求められます。また、新たに学校給食で使用する食材のモニタリングの実施が行われることとなり、単独給食実施校では給食センターへの運搬業務に伴い業務の増加となりました。今後は、地域防災組織と指定避難所間の連携体制の構築が求められます。
 そして、給食部会の取り組みとして、食材の放射能汚染問題とあわせ、風評被害がもたらされるなか、各給食センターに食品放射能測定器が導入されました。市内26校の単独給食実施校では月2回、給食センターでは週1回実施となり、1回の測定で5~6品目を検体とし測定を行っています。給食食材の測定は、安全な給食の提供と同時に内部被ばくに対する不安を軽減し、信頼を得ることにつながりました。
炊き出しの準備

 東部学校給食センターは、炊飯設備の備わった唯一の施設であることから、被災者に対し3月12日から3月31日までおにぎりの炊き出しを行いました。調理員を中心に最大で1日あたり47人、1日平均28人体制で最大8,800食を提供し、3月26日から3月31日にかけては、避難所2か所に調理員が出向き1日あたり100食の豚汁を提供しました。
 さらに、運転・一般部会については、放射性物質の飛散が市内にもおよび、土壌表面、アスファルト、樹木、草花などいたるところに付着しました。放射線量の高い側溝土砂浚渫、路面清掃、除草や樹木剪定などの除染作業を維持補修センターで行いました。
 維持補修センター職員の被ばく量を少なくするため、ローテーションを組み作業にあたりましたが、職員数に対し業務量が多く対応しきれない状況にありました。また、放射性物質による健康被害が心配される中、市民からは早急に除染の要望が出されました。しかし、土砂の処分方法が決まらないことから残土をセンターに仮置きしていましたが、高い放射線量が計測され早急な処分方法が求められました。
 このため市職労は震災復興業務にあたる職員が原発事故により放射能汚染が問題となっていたにもかかわらず、安全性も示されない状況で業務遂行にあたっている実態を踏まえ、当局に検討会議の開催を求めました。ICRPや文部科学省が目安としている年間20mSVという数値を基準に、「外部被ばく・内部被ばくのリスクを低減するための作業基準を作成したい」との回答を引き出したことから、市職労案と比較検討し維持補修センター職員で協議を行いながら、「道路維持補修業務放射線障害防止マニュアル(改訂版)」を策定することができました。
 斎場においては、大震災の翌日から通常業務を行い、燃料の供給が停止した際も他の公共施設からポリタンクを使用しての燃料運搬、石油業者や関連団体の協力と職員の努力で灯油を確保し火葬を続けました。午後3時までに18遺体を火葬できる体制になっていますが、3月19日から6月までは、県からの要請により通常業務のほか、午後4時に2体と午後5時に3体の枠を拡大し、この時間帯で浜通り地区の応急火葬にも対応しました。
 このように、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、市内にも甚大な被害をもたらし、市民・住民にとって重要なライフラインを破壊するなど、市民生活に混乱をもたらしました。              
 このような状況の中、身体的・精神的に疲労困憊する職員は、被災者対応に使命感と責任感を持ち、昼夜を問わず業務にあたってきました。さらに、原発事故の発生により放射性物質の拡散が起こり、放射能汚染被害が発生しました。事故の収束が見えない中での業務遂行は、放射能に対する不安がある中で、市民・住民に対するサービスの提供のみならず、職員の安全・安心にも大きな影を落としました。           
 当時の各部会から出された要望の共通点は、各職場での人員不足と災害時の対応についてでした。福島市においても、法改正を伴う合理化が進められ民間委託が行われてきました。さらには、退職者不補充や欠員不補充などにより、職員の減少にますます拍車がかかっています。 
 このような中、東日本大震災・原発事故が発生し、必要十分な情報やサービスを提供できないなど、セーフティネットとしての自治体の機能が問われる事態となりました。避難所運営や炊き出し、道路の維持・補修、ごみ処理をはじめとする廃棄物対策などさまざまな災害対策対応を行ってきた経験を基に、業務量に見合った人員の配置、職場改善など直営の必要性を訴えていく必要があります。また、これまでの、技術や技能、知識や経験を生かすためにも新規採用を勝ち取り、継承していくことが重要であると思います。
 一方で、市当局は、簡素で効率的な行政運営、健全で効率的な財政運営などを定め行政改革に努めるとし、「福島市行政改革推進プラン」を策定しました。この中では、災害時、懸命に対応した直営で担う斎場の管理を、老朽化に伴い今後建設を進める新斎場の管理方法について、指定管理者制度導入等も含めた様々な民間委託の手法を検討する、としています。さらには、学校給食センターの整備と調理業務の民間委託の推進を図るなどとする計画を打ち出すなど、とりわけ、現業職場が矢面に立っている状況となっています。
 これらに対抗していくためにも、震災を経験し、住民と直接触れ合ってきた、私たち現業職員としての特性を生かし、普段の業務の中から、地域において災害時にどのように対応し住民の命と暮らしを守っていくかを常に考えていく必要があります。そして、安易なコスト論のみの民間委託を許さず、直営だからこそできる付加価値を取り入れた業務を見出し、安心・安全な公共サービスを行政が責任をもって提供していくためにも、直営堅持を最大限追求しながら、今後も福島市職労・現業協は、組織の総力をあげて精一杯取り組んでいきます。