【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第5分科会 まちムラの見方「見えているもの」と「見えていないもの」

 大分県佐伯市は市町村合併後新市となり、10年が経過した。全国的にも進んでいる少子高齢化や人口減少及び市町村合併による行政組織の変更の影響で、地域において様々な課題が見えてきた。当市の中でも特に過疎・高齢化が顕著な宇目地域における取り組みについて紹介し、住民と自治体職員の役割について考えることとした。



佐伯市宇目地域の活力維持とこれからの地域づくり


大分県本部/佐伯市職員労働組合

 2005年3月3日の市町村合併により、佐伯市が誕生して10年が経過した。当市においても、全国的に問題視されている、少子高齢化・過疎化は非常に憂慮すべき現実である。将来の佐伯市を守るため、その現実を受け止めたうえで、今後をどのように対応していくのかということが非常に重要な課題である。
 筆者の暮らす宇目地域(旧宇目町)には、古くから伝わる素晴らしい文化や地域資源が残されており、住民はそれらを大切に守り、現在まで伝えてきた。しかし、佐伯市の中でも当地域は特に過疎高齢化が激しい地域で、合併前には3,728人いた人口も合併から10年経過した2015年5月末現在では、2,935人と減少し、高齢化率は38.4%から48%と、2人に1人が65歳以上という状況になってきた。また、市町村合併以後に、「今までまちづくりを担ってきた市役所職員とのつながりが薄くなった。」、「若者が少なく高齢者の多い、さみしい地域。」といった地域が衰退したというイメージを抱く住民が増え、そういった声が聞こえるようになってきた。
 そういう状況を少しでも改善するため、関係者で協議を重ねてきた。その結果として、宇目地域のまちづくりを担う組織として、住民が安心して心豊かに暮らしていける地域をめざし、「NPO法人宇目まちづくり協議会」が設立された。この協議会に筆者も参画しているが、商工会の会員や観光協会宇目支部の会員、消防団員、市役所職員といった既存の団体の枠や立場を超え、地域の各種団体やまちづくりを担う地域の若者から高齢者まで幅広い年齢層で構成している組織である。

NPO法人宇目まちづくり協議会設立に向けた概念図

 協議会の取り組みは、地域の課題を自分たちが主体となって解決するため、行政や宇目地域を想う地域外の方々と連携を図り、宇目地域の地区単位で行う道路、河川の除草作業に対する補助やボランティア道路清掃活動といった、地域の住環境整備・啓発事業など、地域の課題の解決を目的として実施している。

 
ボランティア道路清掃活動道路防護柵再塗装ボランティア作業
 
 
庭先野菜集出荷事業

 その中でも当協議会の代表的な取り組みとして、庭先野菜集出荷事業や配食サービス事業といった地域の高齢者に対する事業があげられる。庭先野菜集出荷事業とは、農林産物直売所に野菜の出荷をしたくても、運搬手段がなく出荷に困っている高齢者等生産者の農林産物を、代わりに直売所まで運搬する事業である。この事業を実施することで、生産者は畑仕事にやりがいをもち、そのことが住民の健康で元気な生活を送ることに結びついている。
 さらに、運搬コストを個人でなく、集団で負担するため、少量でも出荷でき、新たな所得を得ることで、地域経済の活性化や生活の一助ともなっている。

 

 次に配食サービスについては、地域の飲食店と提携し、昼食や夕食を宅配することで、高齢者の食事の援助と見守りを兼ね、一人暮らしや高齢者世帯の生活援助や安否確認ができる仕組みとなっている。さらに、当協議会は地域に根付いている伝統的な行事の開催に人的な支援を行い、行事の継続・企画調整・運営の中心的な役割を担っている。

 
配食サービス事業

 このような活動を通じて、市町村合併前まで行政にまかせていたまちづくりの一部を住民が担い、行政と協働することで宇目地域の活性化に寄与しているのである。
 これからも、年齢に関係なく、自分たちの暮らす地域を自分たちで支えることを軸として、地域で暮らす人々の助け合いや今まで培ってきた文化等を大事にしながら後世に伝え、住民が活き活きと暮らせるようなまちづくりをめざし、進めていきたい。私たち自治体職員は、このような住民主体の取り組みを共に進めながら、支援していきたいと考えている。

 

 最後に、これから、ますます進んでいく少子高齢化社会に対応していくためにも、このような取り組みを推進し、地域の活力維持に努め、宇目地域から佐伯市の活性化に貢献したいと考える。