【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第5分科会 まちムラの見方「見えているもの」と「見えていないもの」

 人口減少や少子高齢化、核家族化が進み、地域の繋がりの希薄化や集落機能の低下などが懸念されている。限られた財源を有効活用し、多様化する住民ニーズに応えていくためには、地域住民が主体となって諸問題を解決していくことのできる『地域づくり』が求められている。
 これまで由布市がサポートしてきた地域づくり、地域住民の合意形成づくりの実例を紹介しながら、行政、自治体職員の支援のあり方と役割について考えてみる。



地域コミュニティの検証と
地域コミュニティ再生に向けた自治体の支援

大分県本部/由布市職員労働組合・自治研部 古長 寛幸・安東 智徳・福隅  満・三重野鎌太郎

1. はじめに

 由布市は、大分県のほぼ中央地域に位置し、県都である大分市、別府市などに隣接しています。面積はおよそ319.32km2で、北部から南西部にかけて由布岳や黒岳など1,000m級の山々が連なり、由布岳の麓には、標高約450mの由布院盆地が形成されています。
 「平成の大合併」の中、由布市においても、商工業の発展が著しい挾間町、豊かな自然と農業の庄内町、観光と温泉の湯布院町の3つの町が合併し、2005年10月1日から「由布市」として新市政をスタートさせました。合併から昨年で10年という一つの節目を迎えましたが、市町村合併のメリットとされた行財政基盤の強化は実現されておらず、地方自治体の財政状況が逼迫した状況に変わりはありません。
 さらに、合併以後、人口は年々減少傾向にあり、少子高齢化・核家族化が進むなかで、地域の繋がりの希薄化や中山間地域における小規模集落化による集落機能の低下など、諸問題が懸念されています。また、交通の利便性が向上し、就業や日常の買い物までも都市部に集中し、隣近所での付き合いも少なくなっている傾向にあります。
 こうした状況の中、多様化していく住民ニーズに応えるべく、住民福祉の向上や住民のための公共サービスの維持は必要不可欠です。限られた財源を有効活用し、自立した自治体運営を行っていくためには、住民の方々の活力、地域力が重要であり、住民の方々が主体となって諸問題の解決に向けて力を合わせていく『地域づくり』が求められています。
 そこで、これまで由布市がサポートしてきた地域づくり、地域住民の共通認識づくり、合意形成づくりについて、検証と今後の課題について考えてみました。

2. 由布コミュニティ(地域の底力再生)事業の概要

(1) 由布コミュニティ事業の目的
 本事業は、地域住民が、地域の課題や魅力について共通認識のもと、地域特性を活かした個性ある地域づくりができるよう、行政が住民の方々の共通認識づくり、合意形成づくりを支援し、住民の方々が主体となって地域の諸問題を解決しながら地域の魅力を活かし、地域の絆を深め、地域の活性化を行うことを目的としています。

(2) 事業の内容
① 内  容 … 由布コミュニティ(地域の底力再生)事業を実施する地域振興コミュニティ組織(地区等)に対し、助成金を交付
② 対象事業 … 地区計画づくりに関する事業、地区計画に掲載された事業
③ 対 象 者 … 地区計画づくりを進める組織、地区計画に基づく事業を実施する組織
④ 助 成 額 … 一つの地区等に対して、1年目は10万円、2年目及び3年目は30万円を上限
 3年目の事業終了後は、地区計画に基づいて継続・発展的に実施する事業で、市長が必要と認める場合は年間10万円を上限

(3) 事業の流れ
 由布コミュニティ(地域の底力再生)事業は、1年目の前半で計画づくりを行い、1年目の後半から、2年目、3年目に計画の実現に向けて、事業を実施していきます。
 なお、ワークショップについては、市が運営を支援し、計画づくりのお手伝いをします。

(4) 1年目の進め方
 1年目の前半は、地域の課題を見つめながら、何をしていけばよいかの計画づくりを行います。
① 地域の点検を行います(魅力の確認、課題の抽出、解決策の提案等)

 第1回目のワークショップは、日ごろ気にしていない地域の良さの掘り起こしや、気になる問題点等を洗い出し、整理しながら、「こうしたいな」という一人ひとりの気持ちを紙に書き出し、「みんなの気持ち」を表した地域の点検表を作ります。
② 実際に地域を歩きます(地域を目で見て、地域の課題や良さ、生かす提案を考えます。)

 第2回のワークショップは、実際に地区を歩き、気になった場所の写真を撮ったり、メモを取ったりします。印刷した写真は、切って付箋の右側に貼り、メモと一緒に地図に貼って整理をします。最後に、地区の将来を考えながら、地区全体のキャッチフレーズを決めます。
③ 実施方法を提案します(誰が、何をどうやって進めるかをみんなで考えます。)

 第3回のワークショップは、第1回目、第2回目のワークショップで出た意見やアイデアを整理し、テーマに分け、出された意見を振り返ります。また、新しい意見やアイデアがないか考えます。それから具体的な方法を考えていきます。
④ 地域の計画を作ります(重点事業、実施体制、事業の進め方、全体目標をつくります。)

 第4回のワークショップは、第1回~第3回のワークショップで出た提案等を振り返り、チームの名称を考えたり、リーダーや副リーダーを決めたり、実施体制をつくります。最後に全体目標を決めます。

(5) 1年目の後半~3年目の事業について
 1年目の後半からは、1年目の前半で作成した地区計画に沿って事業に取りかかります。また、2年目の終わりに計画を評価し、計画の見直しを行います。3年目は見直した計画に沿って事業を行います。事業は3年で終了ですが、計画を見直し、継続して行うこともできます。

3. 由布コミュニティ(地域の底力再生)事業の実施実例1

(1) 事業実施組織と地区計画
① 実施組織名 … 喜多里地区(挾間町)
② 世 帯 数 … 約90世帯(班数 4)
③ 実施計画策定年 … 2011年度(事業は継続実施中)
④ ワークショップで作成した地域づくりのキャッチフレーズ
  「目配り 気配り 思いやり 未来へつなげる 喜多里団地」

⑤ 地区計画(最重点プロジェクト)の概要(下表参照)

外も中もきれいな団地へ
(きれいな喜多里)
目  的
(めざすこと)
・きれいな自然を維持しよう
・美化の周知活動
・団地みんなで美化に取り組む
・ごみ、たばこの吸い殻について
短期的に取り組む計画団地のみんなで美化に取り組む
重点計画草刈り、側溝の清掃
長期的に取り組む計画公民館前の広場を広くする浄化槽整備
 
みんなでつくろう 喜びの多い安全な里を
(安心・安全な喜多里づくり)
目  的
(めざすこと)
・自主防災会の結成
・施設の点検補修
・ユーバス(コミュニティバス)の誘致
・交通安全のよびかけ、標識の設置
・排水溝の消毒
・側溝のフタについて市に要望
短期的に取り組む計画南側・公園横の側溝のフタの取り付けをする
北側手すりを付ける(登り坂の危険防止)
防犯灯の取り替えをする(坂の防犯灯の取り付け)
重点計画公園横の側溝のフタの取り付けをする
自治防災会の結成
長期的に取り組む計画市への要望事項として、ユーバスの誘致
(団地内を周遊してもらいたい)
 
みんなでふれあう 憩いの場づくり
(ふれあう拠点をつくろう)
目  的
(めざすこと)
・公民館カフェの設置
・家にある古本を持ち寄り、図書館コーナーをつくる
・男性も利用しやすい場にするため囲碁など設置する
・公民館下の斜面を利用し、公民館広場を拡張する
・公民館の床の補強をする
・公園のタイヤを撤去する
短期的に取り組む計画公民館カフェの設置
公園のタイヤ整備
重点計画床の補強(色々できる)
公民館下の斜面利用(公民館広場の拡張)
長期的に取り組む計画
 
ビタミンクラブ(仮称)結成
(あたたかい喜多里づくり)
目  的
(めざすこと)
・広場が狭いので広くしてもらう
・老人会(仮)の再結成
・会員を募る
・テレビ、カラオケセットを買う
・公民館を開放して、子どもを預かる遊び場の提供
・移動図書館を呼ぶ
短期的に取り組む計画老人会(仮)再結成
(※自治区のみんなとの親睦をはかる、自治区のみんなと助け合う、自治区のみんなとレクリエーションをする)
テレビ・カラオケを備える
重点計画公民館の床貼りをする(卓球等ができるように)
長期的に取り組む計画公民館前の広場を広くする
防災に備えて避難場所として使用する
子どもの遊び場にしたい
団地祭りの場所の確保

(2) 地区計画(最重点プロジェクト)の事業実績
① きれいな喜多里団地
 ア 草刈り奉仕団の結成 … これまでも自治区内の清掃活動(草刈り・排水路の清掃)を実施してきたが、新たに清掃用具の整備を行い、新たに自治区内の大規模な草刈り作業や高齢者のみの世帯の庭の雑草・植木の剪定などを、要望に応じて実施
② 安心・安全な喜多里づくり
 ア 自主防災会の設置(災害直後に生命とくらしを守るのはご近所の底力(小地域福祉・ボランティア活動)の重要性を認識し、設置された自主防災組織) … 消火訓練や簡易担架づくり、災害時要支援者等のご近所登録、市の補助を受けながら道具の整備などを実施
③ ふれあう拠点をつくろう
 ア ワイワイ喫茶(公民館カフェ)の設置 … ビタミンクラブが中心となり、子どもからお年寄りまでの世代間交流として、新年会や軽食会を実施(餅つき、餅まき、カルタや福笑いなどの昔遊び、カラオケなどを通して、世代間のふれ合い・喜び合い・絆を深める)
 イ 図書コーナーの設置(公民館に図書コーナーを設置) … 読み聞かせの実施
④ あたたかい喜多里づくり
 ア ビタミンクラブ(老壮会の女性有志が中心)の結成・老壮会(老人会)の再結成(自治区民との親睦・助け合い・レクリエーションの実施) … 老壮会による健康維持・増進のための年間を通じてラジオ体操、社会奉仕活動(ごみ・空き缶拾いを月1回実施)、老壮会と子ども会が合同で夏休みラジオ体操を実施
 イ 子どもの居場所づくり(公民館を開放して、子どもを預かり遊び場の提供) … ビタミンクラブが中心となり、夏休み・冬休み期間中に公民館を開放して、ビーズ工作・編み物・卓球・プール遊び等を実施するとともに、世代間交流としてふれ合い昼食会なども実施

(3) まとめ
 今回、事例として挙げた喜多里自治区は、県都大分市に隣接し大学附属病院付近に位置する自治区で、宅地造成が行われて約40年が経過した団地です。幅広い年齢層が居住する自治区ですが、高齢化が進みつつあり、高齢者のみの世帯も増加傾向にあります。自治区の人口・世帯数は中規模ですが、自治区役員の体制は確立されており、以前から夏祭りや清掃活動などの自治会活動が計画的に実施されてきています。しかし、高齢者のみの世帯の増加や核家族世帯の自治会加盟などから、隣近所の繋がりが薄れていくことへの懸念が持たれてきました。
 こうしたなかで、由布コミュニティ事業への取り組みを行い、自治区民での自主的な地域づくり計画を作成することで、希薄化する地域間交流や世代間交流、見守りを必要とする高齢者世帯、地域の危険個所などの問題点を掘り起こし、地域住民が諸問題を共有することが可能になりました。
 また、地域住民が思い描く地域ビジョンに向けて、諸問題解決のための地区計画(重点プロジェクト)に取り組むチームを発足させ、実践してきたことにより、自治区全体を巻き込んだプロジェクトに発展していったように感じられました。
 当自治区は、現在も市の助成を受けながら諸問題解決に向けて、地区計画を継続・発展的に実施しています。しかし、地域間交流や世代間交流のようなソフト事業の継続は、今事業で結成・設置された組織の継続と自治区長などの強いリーダーシップが不可欠となります。また、各活動の維持・継続や安心・安全な地域づくり、地域の景観保全には、ある程度の自主財源確保も重要になってきます。(※同自治区では、計画策定段階で地域支援型自動販売機の設置を検討していたが、ごみの散乱や低年齢層のたまり場(風紀の乱れ)となることへの懸念などから廃案となった)
 今後、継続して地域づくりを進めていくためには、組織の継承と自主財源の確保策などが重点課題になると思われます。

4. 由布コミュニティ(地域の底力再生)事業の実施実例2

(1) 事業実施組織と地区計画
① 実施組織名 … 平石地区(庄内町)
② 世 帯 数 … 約50世帯(班数 5)
③ 実施計画策定年 … 2010年度~2012年度(3年間)
④ ワークショップで作成した地域づくりのキャッチフレーズ
  「ホタル舞う棚田と水と美味しい米・ひらいし」

⑤ ワークショップの成果例

⑥ まちづくり体系図
【食を核とした地域づくり】
・山の駅、わらぶき屋根の設置(加工所、加工グループの設置)
・四季折々の料理を作る(山菜、ソーメン流し、収穫祭、どぶろく、しし鍋、あぶらめ料理)
・高齢者に伝承料理を習う!! 四季折々の料理づくり(山菜、コンニャク、豆腐作り、ほうちょう汁など)
・夢 みんなで海外旅行  ・お年寄りの知恵教室  ・声かけ、訪問  ・どぶろく
【環境・景観・交流を核とした地域づくり】
・陰陽石周辺整備、遊歩道の整備  ・展望所の設置(特産品販売所の併設)  ・河川の草切
・水の駅「平石」を設置  ・特産品を販売  ・観光を予防  ・ホームページ作成 ・清掃
・平石の歴史のわかる冊子の作成  ・マップ、案内板等、地域内外への啓発  ・害獣牧場
・水、自然を守る。植林(広葉樹)  ・イノシシ特区の申請  ・ホタルの観賞⇒ホタル祭り
・星の観賞会  ・空家⇒交流施設  ・水車で発電⇒精米

(2) 具体的実践状況
【地域外との交流 PR活動を】
① 地元食材の活用 … 平松学園の講師と共同で創作メニュー開発、地域外の方や地元幼稚園児と共同で農作業
② ホタル観賞会の実施 … 空き缶を使った灯篭づくり、新聞などメディアを使った地域外へのPR
③ 地区ゲートボール大会 … 地区内にある班別(1班~5班)に、老人(達人)から初心者までの合同対抗戦

(3) まとめ
 2011年から始めた「ホタル観賞会」は、地域外の方との交流が増加し、景観対策や自然環境保護という面で地域住民に新たな視点が芽生えました。また、農事組合法人「庄内・ひらいし米倶楽部(ひらいしマイラブ)」が地域の核として機能することで、県内の先進的事例として、新聞やメディアでも取り上げて貰えることが多くなりました。
 一方で、事業を実施する主力メンバーは、60代~70代のいわゆる「第2の人生」「団塊の世代」が中心となっているため、事業の長期実施が課題のままとなっており、依然として20代~50代は少なく、残っている住民も市役所職員ばかりで継続実施するためには新たな枠組み(実行部隊)が必要な状況となっています。また資金面も、事業対象期間は市役所から助成があったため実施できましたが、3年目終了後は、助成がなく苦慮しています。
 先に挙げた「ホタル観賞会」も【交流のため】というよりは【地域住民のため】という色合いが強いと感じています。

5. 検証と今後の課題

 2006年度から実施している由布コミュニティ(地域の底力再生)事業は、2014年度までに24組織(45自治区)が実施しています。事例で挙げた喜多里地区は、2011年度から事業を実施し、現在も市の助成を受けて事業の継続を行っています。地区役員のリーダーシップや市の助成等により継続が可能になっているところがあり、今後は、事業の持続可能な組織づくりと市の助成に頼らない自主財源の確保を課題としています。
 このような課題はどの地区にも共通と考えられますが、2010年度に事業実施した平石地区では、地区の集落営農組織が法人として組織した「農事組合法人 庄内・ひらいし米倶楽部(ひらいしマイラブ)」が地区の核となり、地域資源を活用したホタル観賞会や農作業体験を実施するなどして、地域外の人との交流を推進し、持続可能な組織づくりや事業の継続に積極的に取り組んでいるところもあります。
 今回の由布コミュニティ(地域の底力再生)事業を実施した24組織は、地区の諸問題を解決するために、地区民が集って地域について話し合いをしたり、地区内を散策しながら地域の魅力の掘り起しを試みたりと、活動を通して地区の絆を深め、地区の活性化に向けた基礎づくりができたのではないかと考えられます。
 今後の課題は、地域組織が市の助成に頼らず運営可能な取り組みを実施し、継続して事業が行えるような体制づくりをすることだと思います。そのためには、各地区がそれぞれの地域資源を活用して、その地域に合った取り組み方を考え、実施していくことです。
 また、昨今メディアでは、高齢者の認知症の問題が非常に多く取り上げられています。厚生労働省の調査によると、2014年時点で65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計で15%、認知症になる可能性がある軽度認知障害の高齢者を加えると、65歳以上の4人に1人が認知症とその予備軍になると言われています。
 現在の由布市の高齢化率は30.95%(2015年4月現在)で、高齢者の増加に合わせて認知症が深刻な問題となってきています。認知症は地域で支え合うことが大切で、由布市では「認知症の人に優しい街づくり」をスローガンに、徘徊模擬訓練や由布市あんしんネットによる行方不明者の捜索体制づくりを実施し、地域と協同した街づくりに取り組んでいます。
 このように地域の力が必要とされている今、この由布コミュニティ(地域の底力再生)事業は、行政と地域を繋ぎ、由布市の地域を活性化させる事業となっています。事業実施に当たっては、地区出身の市職員もこの事業に協力して、地域住民と共に事業に取り組んでいます。この取り組みが、一部の担当職員だけでなく課を越えた職員の取り組みとなり、行政と地域住民が一緒になって地域を考える良い機会になっていると考えられます。
 今後は、まだ事業を実施していない地区に事業の参画を呼びかけ、地域コミュニティの形成・活性化に向けて、行政と地域が連携した取り組みを推進していくことが重要だと思われます。