【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第6分科会 復興・再興・新興!! ~消滅でも創生でもない地域づくり~

釧路における農業の現状と農業改良普及
センターサービスと役割について


北海道本部/全道庁労働組合連合会・釧路総支部 沖田 和樹

1. はじめに

① 釧路管内は北海道の東部に位置し、1市6町1村で構成されている。管内は、東西132km、南北100kmの扇状形で、面積約6千平方kmと北海道全体の約7%を占め、ほぼ茨城県に匹敵します。釧路川をはじめ、阿寒川・庶路川など多くの河川によって細分化された波状丘陵地が多く、中心部の釧路川流域には釧路湿原があります。道内で5か所の国立公園がある中、阿寒国立公園、釧路湿原国立公園の2か所に囲まれた自然豊かな地域です。
② 産業の現状は、遠洋漁業の衰退、太平洋炭鉱閉山などにより地域の経済基盤が縮小されてきました。その中、釧路市内を取り囲む周辺町村は酪農専業地帯を含めた、農林水産業を基盤としながら産業を維持しています。
③ TPP参加が決定された現在、一次産業が基盤である釧路管内においても不安の声があがり、さらに地域の将来を担う後継者の将来への展望を示すことが必要となっています。
 今回のレポートは地域の現状と、普段の業務で接する現場において農業関係者の将来への考えや、公共サービスとしての市町村との増々の連携と農業改良普及センターの現状と今後について報告します。


2. 釧路の農業構造の現状について

① 農家戸数の推移
 管内の農家戸数はこの10年で1990年の53%まで減少。市町村間のばらつきはありますが、減少傾向で主業農家戸数は、10年間に約25%も減少してきています。(農業センサスより)
 

② 戸別耕作面積(ha)の推移
 1戸当たりは離農等で土地の集積が進み耕作面積が年々増加傾向にあります。
                                    (農業センサスより)


③ 世代別農村人口の推移
 30歳未満の減少と中心の年齢が50歳代になっているのが分かり、確実に高齢化が進んでいるのが分かります。
                              (2005→2010)農業センサスより

④ 管内の新規就農者の推移
 年度間に差はありますが全体に減少傾向にあり農業就業人口の減少で、労働力不足になってきている現状です。近年の新規参入者増加は、市町村、JA等が研修牧場や研修生の受け入れ施設を設置するなど先進的な取り組みを粘り強く推進してきた結果ではないでしょうか。        (人)釧路総合振興局調べ

⑤ 管内の家畜頭数の推移
 ア 農家戸数が減少する中1戸当たりの家畜頭数は増加傾向にあります。(農業センサスより)
 

 イ 1戸当たりの乳牛頭数は増加傾向です。
 

⑥ 現状からのまとめ
 戸数が減少する中、家畜飼養頭数や農地面積は増加し、労働力不足や担い手問題が顕在化し労働時間の増加などが雇用したいが、「ハローワークに募集をかけてもなかなか見つからない」などの声が聞かれています。
 農業者をサポートするためには、市町村、JA等と連携した公的サービス機関としての農業改良普及センターの役割は益々大きくなってくるのではないでしょうか。


3. 農業改良普及センターの現状と今後について

① 職員数の現状
 高橋道政のこの13年間に組織の効率化が求められ、農業普及組織は3度の機構改革により多くの普及職員(182人)が削減されました。
 2006年には、独立していた事務所(55カ所)を、支庁(現総合振興局・振興局)単位に集約し(14カ所)本所・支所体制に分割し、広域的な活動にシフトし74人の職員数が削減されました。
 白糠町にあった釧路西部地区農業改良普及センターは廃止となりました。
 また2010年には、前回の機構から更に108人の職員数が削減、支所次長も廃止になり、職員への事務処理等の負担も増加している現状です。
 今年度からは、更に地域係の再編により本所(標茶町)、中西部支所(釧路市)が係の統合で2係が削減され東部支所(浜中町)と3係体制に縮小されています。
② 機動力の現状
 支所の統合や職員数が削減される中、物理的な農家との距離は徐々に遠くなり移動に時間が大幅に増え現場対応する時間の減少が懸念されています。職員2人に1台の配置がされています。定数が削減されそれに伴い、減車の一途をたどっています。
 また、近年は予算の削減により機動力である公用車に軽自動車の導入が進み、特に冬場の移動に関する長距離移動する際、「積雪時の轍幅不一致による走りづらさが不便である。」との声も多く聞かれます。
③ 普及事業の基本姿勢
 普及センターには、毎日次々と農家や関係機関から指導要請や相談の電話が入ってくる現状であり、地域への密接度を増すに従って、その要請の数も多くなってきます。活動の効率化から集約化を進め、そうすることで普及指導員の職員数を削減していますが、普及事業のように対象者を説得し納得してもらいながら指導に当たる現場活動では、農家や現場から離れてしまうことが、即、普及事業の信頼度や必要性の低下に結び付きます。


4. これから普及事業

① 地域ニーズに答えるために
 北海道では、これまで数度にわたり普及指導員の大幅な職員削減を行ってきています。その度に、繰り返されるのは、農業情勢の変化にともなう効率的組織への移行という大義名分です。そして、農業現場から徐々に引き離され、地域から見えにくい希薄な組織へと誘導されているように感じられます。
 普及組織が地域農業に貢献するには、普及センターを現場に近い場所に配置し、地域農業者のニーズを吸い上げ、人づくりができる職員の配置や体制の整備が必要です。
② 地域発展のために
 普及事業がやらなければならないこと、普及事業でなければできないことを整理し、北海道農業が向かうべき道筋を明確にした中で、普及事業の役割を位置付け、それに集中することができれば、大きな効果が期待できるものと確信します。これからも普及事業が地域農業を担っていくことには変わりはありません。
 中央主体の組織体制を推し進め、現場で働く職員を削減すれば地域は発展しなくなり、地域農業を維持できるか将来大きな不安を抱かざるを得ません。
③ 最後に
 地域に密着した振興局出先機関としての機能強化を図り市町村と連携した農業振興を推進するうえでも農業改良普及センター業務の推進のため今後ますます釧路管内の一次産業が発展すべく支援を続けていきたい。