【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第6分科会 復興・再興・新興!! ~消滅でも創生でもない地域づくり~

町民目線に立ったわかりやすい予算書の作成


福島県本部/川俣町職員労働組合

1. 川俣町の沿革

 川俣町は、川俣盆地を中心に、絹織物の町として発展してきた町です。
 町の歴史は、縄文時代の遺跡が数多く残されていることから、原始時代の1万年も前より祖先の足跡が刻まれているほど古いものです。古代末から中世にかけて、小手保といわれた川俣地方は、奈良興福寺の荘園として繁栄しました。
 室町時代の初めは、川俣氏が支配していました。16世紀ごろからは伊達氏の支配に属し、16世紀後半には伊達氏の将、桜田氏が河股城に居城していました。
 1703(元禄16)年には川俣代官所が創設されて、明治維新に至りました。慶長年間から生糸や絹織物取引の市が立ち、江戸城御用の川俣絹を生産するなど、国内で有数の絹織物産地に発展し、明治・大正・昭和の時代には輸出花形商品の羽二重を織りだしました。
 1955(昭和30)年3月1日、町村合併促進法により、川俣町・富田村・福田村・小島村・飯坂村・小綱木村・大綱木村・安達郡山木屋村の1町7カ村が合併して現在の川俣町となりました。


2. 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故による影響

 2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災及び、東京電力福島第一原子力発電所事故では、川俣町に大きな被害を及ぼし、町民生活は一変しました。夜を徹して、地震による町内避難者の対応に追われた翌日の3月12日早朝、原発立地自治体から避難者受け入れ要請を受け、学校体育館等を避難所として、1日最大約7,000人、8月5日までにのべ48,967人の避難者を受け入れ、支援を行っていました。そんな中、4月22日には、本町山木屋地区が計画的避難区域に指定され、同地区の全世帯1,252人が、現在も住み慣れた古里からの避難を余議なくされています。2013(平成25)年8月8日、区域の見直しが行われ、避難指示解除準備区域と居住制限区域に再編されたものの、未だ古里への帰還は叶っておりません。


3. わかりやすい予算書を作成することになった経緯

 川俣町では、町内16地区で町政懇談会を開催しております。町政懇談会とは、各地区から町への質問や意見について懇談する場で、町民の皆さんの要望・意見を町政に反映させ、町民参加のまちづくりを進めるために、1993(平成5)年度より開催しております。「地域のテーマ」を事前に自治会長より挙げていただき、そのことについてフリートークを行っております。
 2014(平成26)年度の町政懇談会において、町民より、町の予算についてよりわかりやすい冊子を作ってほしいとの要望がありました。この要望により、2015(平成27)年度予算についてわかりやすい冊子を作成することとなりました。


4. 作成時に気をつけたこと

 これまで当初予算については、グラフなどを用いて広報誌に掲載しておりましたが、用語の意味や事業の財源内訳などは掲載しておりませんでした。そのため、わかりやすい予算書では、基礎知識として予算の意味や作成の流れ等にもふれています。また、その年度の予算額はもちろん、歳入や歳出の種類についても説明をしております。加えて、その年度の主な事業について、担当課・事業費・財源や事業内容の説明を記載しており、文字の羅列だけでは、町民からみても見づらく、わかりにくくなってしまうので、表や写真を使い、見やすく、わかりやすいものとしました。


5. 配付時期

 川俣町では、町からの配付物は、行政連絡員に宅急便でお送りし、行政連絡員が各班員に配付するようになっております。そのため、行政連絡員の方が配付する負担にならないように、月初めに配付する広報紙と同じ時期としました。


6. 町民の反応

 町民からは、予算がよくわかるようになったと好評でした。
 予算がわからないと、気づくことができなかったこともあったという声もいただきました。具体的には、介護保険特別会計繰出金について、この繰出金は介護が必要になった方への介護費用や介護予防等の事業のため、町負担分を特別会計へ支出するとの事業内容を記載したところ、介護費用等を抑えれば、繰出金が減るという理解を町民からいただきました。その方は、町への負担を減らすため、健康を維持し介護保険のサービスを使わなくてもいいように努力をするとのことでした。
 町の予算は、町民の要望が財源の不足などにより実現できないこともあります。その一方で、町民が努力をすることにより、町の支出を抑えられることもあるのだなと実感しました。町が支出を抑える努力をすることはもちろんですが、町で支出を抑えることが難しい部分については町民もできる範囲で支出を抑えてもらえると助かります。そのためには、予算のしくみを、多くの町民にわかりやすくし、理解をしてもらうことが必要だと思います。
 2015(平成27)年度の当初予算分からわかりやすい予算書を作成し始めましたが、これからますます町民の皆様に、町の予算に興味を持ち知っていただけるようなものになることを期待します。

わかりやすい予算書