【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第7分科会 若者力は無限大∞ ~若者と創り出すまちづくり~

恐竜化石を活かしたまちづくり研究会の活動


北海道本部/自治労むかわ町職員組合 横山 貴仁

1. はじめに

 むかわ町は、2006年3月に旧鵡川町と旧穂別町の2町の合併により誕生した人口9千人余りの小さなまちである。
 穂別地区では、1975年に当時全国で2例目となるクビナガリュウの化石発掘が契機となり、「化石の里づくり」を掲げて町立博物館を整備し、地元産出の海生生物化石を中心に研究・展示活動を展開してきているが、開館から30年余りを経過している。
 2013年に発見された化石がハドロサウルス科恐竜の尾椎骨化石であることが確認され、その後の発掘調査から全身骨格が埋没している可能性が高く、学術的資料として大きな注目と期待を集めることとなった。
 これにより、地域住民を含めたむかわ町全体での活用協議の前段として、若手職員を中心に自由闊達で柔軟な議論ができる場として、「恐竜化石を活かしたまちづくり研究会」が設立された。構成員は17人、そのうち組合員が13人で、公募により賛同者の参加を求め組織したものである。


2. 調査研究の概要

 恐竜化石を活かしたまちづくりは、全国のいくつかの自治体で様々な取り組みが展開されていることから、その先進事例からわがまちの実状に合わせた取り組みを検討し、町の政策・予算へ反映させることを前提とした政策提言に取り組んだ。
 先進事例調査の実施にあたっては、①国内最大級規模の恐竜博物館と自治体の取り組み、②むかわ町と同規模の恐竜博物館と自治体の取り組み、③化石発掘現場を活かした自治体の取り組みの3つの調査研究テーマから調査先を選定し、博物館・資料館などのハード整備部分のみならず、自治体や地域住民との関わりといったソフト事業についてのヒアリング調査を行った。

(1) 大規模博物館(県立規模)と自治体の取り組み事例調査
〔調査先:福井県立恐竜博物館、恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク、きしわだ自然資料館 調査期間:2014年6月17日~20日 調査人員:4人〕
事例調査:福井県立恐竜博物館
 恐竜化石を展示する博物館としては、国内はもとより世界三大恐竜博物館とも呼ばれ、名実共に日本最大級とされる福井県立恐竜博物館は、多額の投資により、設備・スタッフ共に充実した内容となっており、入館者数も年間70万人規模となっている。わが町の財政規模から、同等規模での施設整備は困難であるが、学校向けの誘致活動や各種メディアとのタイアップによる恐竜化石のブランド化などは参考となる取り組み事例であった。また、当該博物館が存在する勝山市では、恐竜化石のみならず多様な地域資源を活用する目的で、ジオパークの取り組みが展開されている。市からの指定管理者制度によってNPO法人が運営を行っているが、子ども向けの各種イベントが充実しているほか、教科書副教材作成や市民講座の開催などによって、地域住民への理解と認知度の向上を図る取り組みが展開されており、参考となる取り組み事例であった。
 恐竜化石の展示・活用事例ではないものの、大阪府きしわだ自然資料館はチリメンモンスターなどの特徴的な取り組みにより認知度が上昇しており、教員研修などの団体利用が増加している。また、スタッフ規模と比較して化石資料の収蔵点数が多く、そのほとんどはボランティアの協力によって収集されたものであり、こうした運営体制の構築は参考となる事例であった。


(2) 小規模博物館(市、町立規模)と自治体の取り組み事例調査
〔調査先:天草市立御所浦白亜紀資料館、天草御所浦ジオパーク、御船町立恐竜博物館 調査期間:2014年6月24日~27日 調査人員:3人〕
 

事例調査:天草市立御所浦白亜紀資料館

 

事例調査:天草御所浦ジオパーク(化石採集)


 天草市立御所浦白亜紀資料館は、離島という立地条件にありながらも地元産出化石を中心とした展示と、化石採集体験プログラムにより年間1万人規模の入館者を受け入れている。資料館のスタッフ規模や、地域住民の人口規模などもわが穂別地区とほぼ同じ状況であるが、御所浦全島博物館構想推進計画などを基調として、その中心施設としての役割を担っている。また、技術的に困難な恐竜化石のクリーニングなどは、福井県立恐竜博物館との協定締結によって作業を進めているほか、最も人気の高いプログラムである化石採集体験の運営方法などは参考となる取り組み事例であった。また、当該資料館スタッフが主体となり、島内各地の野外見学地等を活用したジオパークの取り組みが展開されており、地元住民ガイドの育成や民泊事業の取り組みによって修学旅行生の受け入れ事業を行うなど、参考となる取り組み事例であった。

(3) 化石発掘現場を活かした自治体の取り組み事例調査
〔調査先:兵庫県立人と自然の博物館、丹波市元気村かみくげ、丹波市化石工房ちーたんの館、篠山市教育委員会 調査期間:2014年6月25日~27日 調査人員:4人〕
 

事例調査:兵庫県立人と自然の博物館

 

事例調査:兵庫県丹波市元気村かみくげ

事例調査:丹波竜化石工房ちーたんの館

事例調査:兵庫県篠山市重点保護地域

 兵庫県立人と自然の博物館は、2006年に兵庫県丹波市内で発見された恐竜化石について、専門員が不在の丹波市に変わって、発掘及び研究の主導を行うなど主に学術的な指導を行っている。第6次発掘となる丹波竜発掘調査は、一定程度の成果を得て現在は終了となっている。博物館の特徴的な取り組みとしては、恐竜化石のみならず、様々な標本資料を車両にセットし、要望に応じて各地へ展示と体験を出前する移動博物館車ゆめはくの取り組みは参考となる事例であった。また、丹波市の恐竜発掘現場に位置する体験交流施設元気村かみくげは、地域住民によって設立された企業組合で運営されており、周辺の環境整備をはじめ、化石発掘体験、地元物産品や恐竜グッズの販売などを行っている。発掘現場を有効活用し、地域住民との協働により運営している取り組みは参考となる事例であった。
 恐竜化石が発見された丹波市では、県立博物館の学術的支援のもと、丹波竜化石工房ちーたんの館において資料展示及びクリーニング作業の公開等を行っている。財政的な事情や専門職員が不在である状況においても、年間2万5千人以上の入館者を受け入れ、マスコットキャラクターの設定や丹波竜フェスタなど各種イベントの開催を行っており、丹波竜を様々な面で積極的に活用し地域内外への周知を図り、地域住民の活力創出に繋げている取り組みは参考となる事例であった。
 兵庫県篠山市教育委員会では、資料館や博物館といった専門的施設を有していないものの、恐竜化石の産出地層が多くあることから、これらを市民の共有財産として保護・継承する目的で条例を制定しており、重点保護地域を設定している。また、化石を教育資源と捉え、市内全小学校(16校)を対象とした地質・化石の教育プログラムを開発し、実施している取り組みは参考となる事例であった。


3. 調査研究報告

 本研究会では、3つの研究テーマに基づく先進事例調査から、むかわ町が恐竜化石を活かしたまちづくりによりめざす目標を「自立したまちの実現」とし、政策提言の立案に取り組んだ。先の事例調査において一定の成果を挙げている自治体の共通要因としては、地域住民が主体性をもって各種事業に取り組んでおり、その背景には地域活力低下に対する危機感や、郷土愛に裏付けされた住民の熱意が原動力となっていることが大きいものと考えられる。
 穂別地区では、かつて1975年に発見されたクビナガリュウ化石によって「化石の里づくり」が展開され、愛称の設定や施設整備などによって町民に深く浸透した一方で、このことはまちの自立に寄与したのか、本当に郷土愛を育む役割を担ったのかという疑問が残った。しかし、町内には恐竜化石に限らず、地域資源と成り得る素晴らしい素材や歴史があり、これらを中心として「ひとつの家族としての町民」が郷土愛を育むことで、自立したまちの実現に繋げていけるのではないかと考えた。
 また、先進事例調査において多くの自治体では、恐竜化石を単なる観光資源として活用するだけではなく、教育活動にも幅広く活用し、町内外の認知度を高めいわゆるリピーターの増加を図り、そのうえで生まれる経済効果を地域内に循環させる仕組みづくりが行われていた。
 このたびの恐竜化石の発見によって、むかわ町民というひとつの家族の生活を豊かにするため、恐竜化石の価値について普及宣伝活動に努め、地域住民の誇りの醸成と経済的な豊かさを図る取り組みが必要であると考えた。

4. 政策提言

恐竜化石を活かしたまちづくりのイメージ図

 以上の調査研究から、このたび発見された恐竜化石は自立したまちを実現するための資源として、大きな可能性を秘めた貴重な財産であると捉え、「化石にふれあい、化石に学ぶ~恐竜化石の発見を郷土愛を育む活動につなげる~」、「化石と生きる~恐竜化石の発見を持続的な地域経済活動につなげる~」の2点を柱とする政策提言をまとめ、具体的な事業提案として、以下の5つの項目を掲げた。〔2014年11月26日 町幹部職員、穂別地域協議会に対して政策提言プレゼンテーションを実施〕


(1) 恐竜化石発掘現場の有効活用
 恐竜の全身骨格化石の発掘現場は、国内でもわがまちにしか存在しないという非常に価値の高いものであり、また新たな体験型資源としての可能性を秘めており、保存を含めた活用検討が必要であると考える。

(2) 既存地域資源との連携活用
 すでにある地域資源との連携、融合によって新たな事業展開が必要不可欠であると考える。こうした課題の解決に、地域資源のジオパーク化は有効な方策のひとつであるが、継続的な事業展開を図るためには様々な課題があり、実施に向けては充分な検討が必要であると考える。

(3) 協働展開のための仕組みづくり
 持続的に事業を展開するためには、地域住民の理解と協力が不可欠であり、住民すべてが恐竜化石に関わり、そこで生まれた利益を地域内で循環させ、生活を豊かにするためには、行政と住民の協働活動が必須であると考える。

(4) 資料展示・普及体制の強化
 このたびの恐竜化石をはじめとした地元産出化石を、まちの財産として適切に管理・保存すると共に、学術研究資料として展示・公開していくことは町立博物館の使命であると考える。地元産出の新種化石など貴重な資料について、地域住民への普及活動の充実強化を図り、住民の誇りの醸成をめざすことが重要であると考える。

(5) 北海道大学等との連携活動
町幹部職員、穂別地域協議会への政策提言プレゼンテーション
(2014年11月26日)
 このたびの恐竜化石発掘調査をはじめ、これまでの化石研究においても北海道大学等多数の研究機関と連携した調査研究活動に取り組んでいるが、更に実践的な展開を通じて学生・研究者の交流や育成につながる場を提供していくことが必要であると考える。


5. 政策提言から現在(2016年7月)

 2014年11月の政策提言プレゼンテーションから、2015年度に、むかわ町まちづくり委員会で町民の参加を経て「恐竜ワールド構想」が策定され、2016年4月には、むかわ町穂別総合支所地域振興課に恐竜ワールド推進グループが新設され、「恐竜化石を活かしたまちづくり」が推進されているところである。