【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第10分科会 公共交通は誰のもの? みんなのもの!!

 駅前広場は交通機関の結節点として、多くの方々が集まる公共のスペースです。車社会の進展によって、近年はお年寄りや障がい者など社会的弱者が利用する比率が高まりつつあり、こうした方々への配慮が一層求められています。施設整備における現状の基準とその課題について検討し、実際の整備事例を報告します。



社会的弱者に配慮した駅前広場の整備
―― 歩道やバス停の構造面からの検討 ――

千葉県本部/香取市職員組合 坂本 興久

バリアフリーのつくばのバスターミナル

1. はじめに

 近年地方においては車社会が進行し、公共交通機関に乗って移動する人が減少している。地方で公共交通機関を利用するのは、学校に通う高校生、高齢者、体の不自由な人が目立ち、働き盛りの人たちが積極的にバスに乗る姿を見かけることがない。こうした流れにより公共交通機関利用者に占める社会的弱者の占める割合が高まっている。そのため公共交通機関へのアクセスにバリアフリーが一層求められている。これまでの公共施設のバリアフリーの考え方を振り返りながら問題点を考え、実際の公共施設の整備への適用事例を紹介していきたい。


車いす用スロープ。歩道の高さに関わらず設置でき
る。運転手の介添えは必要。
勾配がないためできた水たまり(駅ホーム)

2. バリアフリーの歴史と課題

(1) バリアフリーに関連する法の整備
 高齢者、障がい者などが社会、経済活動に参加する機会を確保するために、2000年11月に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が施行された。これにより、高齢者などの移動における身体の負担軽減、移動の利便性・安全性の向上を図るために、一体的、重点的な移動円滑化の実施が位置づけされた。
 2006年12月には「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」が施行された。これは、高齢者、障がい者(身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者を含む全ての障がい者)の移動や施設利用の利便性・安全性の向上を促進するために、利用者や整備の対象を拡大したものである。これを受け国土交通省ではバリアフリー新法による特定道路の整備基準として「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令(道路移動等円滑化基準)」を定め、特定道路以外でもこの基準の努力義務が課せられ各地でこの基準に沿った整備が行われている。

(2) 施設のバリアフリー化の課題
 バリアフリー新法が施行され10年が経過し、各地にこれに即した施設が整備されてきた。かつての段差だらけの歩道や駅前広場が徐々になくなりつつあり、その法律の効果が表れてきている。その中で細かな点で改善する必要があるのではないかと感じる部分も目に付くことから、それらの課題の整理を試みた。
① 歩 道
歩道が車道より高いマウンドアップの歩道。
横断歩道のすりつけ部にスロープができ、車いす
は車道にはみ出す危険がある。
表面が荒れた透水性アスファルトの表面
 ア 勾 配
 横断勾配が1%以下とされている。歩道の舗装が透水性舗装を原則としていること、車いす利用者にも配慮した勾配設定であるが、1%以下という基準は施工も難しいこと、水がうまく浸透しない場所においては排水不良を起こすことから、水たまりが発生しやすい。水たまり発生による通行困難さを勘案し、良好な排水を確保した勾配とした方が、歩行者、車いす利用者の利便性に資することになるので、適切な勾配設定を考える必要がある。
 イ 高 さ
 歩道の高さは、車道より5cm高くが標準となっている。かつての歩道はマウンドアップで車道より15cm高くという基準がバリアを作り出していたことから考えられた基準である。
 しかし、横断歩道に接続する部分は車道より2cm高く、後述するバス停は15cm高くと様々な高さ設定が発生し、それぞれを擦り付けることが求められるようになった。車いす利用者や高齢者にはスロープが小さなバリアになっている。
 ウ 舗 装
 舗装は透水性を持つことが求められている。これは、表面への水たまりをなくし歩きやすい歩行空間確保を目的としている。
 課題としては透水性のアスファルト舗装は空隙のあるアスファルト材であるため、小さな車輪のついたベビーカーでは振動が大きめになりがちなこと、舗装の経年劣化により更に表面が荒くなりがちである。
車が乗る場所は弱く壊れやすい
 エ インターロッキング舗装、平板舗装
 歩道部では透水性インターロッキングブロックや平板ブロックによる舗装が行われる場合がある。ブロックによる舗装は、施工によって微妙な段差が発生することがあるが、完成後において車両出入口部での舗装の破損(ブロックが外れたり、ガタガタになる)が発生し歩道の歩きやすさが大きく損なわれる場合がある。現在、ブロックの下の構造は、砂・砕石路盤が標準であり、がたつきを抑えることができる構造とは言えない。
 大正時代に行われていた煉瓦(レンガ)舗装や石塊舗装では、車両の通行でがたつきが発生するため、煉瓦の隙間に瀝青を使用したり石塊舗装の下にコンクリートを打つことが示されている(1923年発行「近世道路工法」など)。現在、この舗装の下にコンクリートやアスファルトなどを敷くとしている標準構造は見られないが、歩道の平坦性を確保するためには、構造上の工夫が必要である。
ロータリーなどではバスがバス停に正着できない。
後扉は車道から入るしかない。最近はバス停が止
めやすい櫛形の形状をした場所も見られる。
② バス停
 ア 高 さ
 バス停部分の高さは、車道より15cm高くすることが標準となっている。これは、高齢者や障がい者がバスに乗る際の段差を少なくするという観点で定められたもので、これによりバスの設計も行われている。
 乗車時の段差がないようにという点は理解できるが、バスが必ずバス停近くに近寄って止まるという前提であり、運転する人の技量、バス停屋根により物理的に接近できない、バスの回転半径によりバス自体がバス停に平行に止めることが難しい場合もある。バスがバス停に近寄れなかった場合、乗客が歩道からバスのステップに大きくまたいで乗り込むか、一度車道に降りてバスのステップに上がらざるを得ない状況になることが多々見受けられる。また、バスが歩道から離れてしまったため、バスがバックしてバス停に止め直すという場面も見られバスの定時性の確保という点で問題がある。
バスがバス停そばに着くことができず、バックし
て姿勢を直している。定時性の確保に課題。
ロータリーのためバス停に近づいて止められない
例。乗客は一度車道に降りてから乗る。
 イ 歩道通常部の高さとのすりつけ
 バス停を15cm高くすることで、歩道部の標準高さ5cmや横断歩道隣接部2cmとの段差をどう解消するかが課題になる。結局歩道の進行方向にその差を解消するための勾配をつけなければならず、その勾配が5%以下とされているものの歩道通行の快適性や車いす利用者の観点から言えば勾配はない方がよい。
バス停と、通常の歩道の高さの違いを擦り付ける
スロープ。車いすからすればない方が良い。
一般車乗降場をバス停に転用したもの(バス乗り
場が低い)。手前にバス停がありスロ-プが付い
ている。
 駅前広場のような交通結節点では、バス乗り場やタクシー乗り場、一般利用者・身障者の乗降場、横断歩道が隣接しており、バス停で15cm高くして、すぐ隣のタクシー乗り場では低くしなければならず、歩道部分に勾配を付けざるを得ない状況となっている。整備にあたっては各整備主体で工夫しながら行っているが、どうすればうまくいくか試行錯誤の結果がみられる。
バス停に連続した身障者等乗降場。15cmの高さか
ら車道に擦り付けるためにスロープを設置。その
分歩道幅が削られている。
従来のマウンドアップの歩道と横断歩道を擦り付
けるためにスロープを設置して、車いす利用者の
ために横断歩道際の平らな部分を確保。同じく歩
道幅が削られている。


3. バリアフリーの事例

 バリアフリーに関した事例を紹介する。

① ドイツ
 歩道上のバス停の例。歩道の高さ、バス停部の高さは同じで、勾配はついていない。また、路面電車の乗り場も低く、電車側を低床型にすることで対応しているようである。
② 高速道路
 最近開通した新東名自動車道の休憩エリアは、路面のフラット化が徹底しており、車いす利用者や高齢者には移動しやすい構造となっている。バス停もフラットとなっており、運転手から見て停車位置が多少ずれても問題なく、乗る側も段差がないためバス停の段差に気をとられることなく乗ることができる。


4. バリアフリーの提案

 バリアフリーのガイドライン作成にあたって様々な方々の意見を反映して基準が作成されているが、課題点を踏まえた改善案を提示したい。
① 歩道の高さ
 バス乗り場は高さを15cmとしているが、実際に車いすの方々が乗車する場合は、運転手の方がスロープを出し介添えしなければ乗車することはできない。また、バス停の周辺に15cm上がるための傾斜をつけると、車いすの方は自力で上がる必要がある。バスがバス停に接近して止められない場合もあり、バス停から車道に一度降りて再びバスに乗る場合も多々ある。これらのことから、歩道をバス停も含めて高さをそろえ、歩道の円滑な移動を確保し、バス乗車の際は運転手の介添えが必要になるのでそれでの対応を行うとしてはいかがであろうか。歩道の高さは、目の不自由な方が歩道と認識できるよう、車道+2cmとし、表面を全てフラットとする。
② 歩道の構造
 歩道舗装は、表面の平滑な細粒アスファルトと透水性の開粒アスファルトを選べるものとし、勾配も排水に配慮した勾配とする。インターロッキングブロックや平板ブロック舗装の場合は、段差ができないようにし、車両乗り入れ部はブロックの下部にアスファルト舗装などを施し、ずれや段差が発生しないようにする。


5. 広場整備の実際

① JR佐原駅
 JR佐原駅の駅前広場は、2015年完成した。特にバス停の高さをどうするかという課題があったものの、歩道の排水性を確保する必要から、バス停の高さは他の歩道と同じ高さとせざるを得ず、歩道とバス停の高さの差をすりつける不自然な勾配がなくなった。また、歩道の高さ5cmについても、周辺家屋とのとりあいの関係から2cmとして整備を行わざるを得ず、目の不自由な方が歩道を認識することができる2cmの段差のみを残して広場全面のフラット化を図ることができた。
遠くからも見えるよう大きい字で行先を表わした
バス停表記。
一般車も止まる広場内で、バスが定位置に必ず着け
るわけではない。排水の関係からバス停が歩道を同
じ高さとなったが、社会的弱者の体への負担になる
乗車時の上下方向への体の移動を1回に抑えた。
周辺案内を充実させおもてなし体制の充実を図る。 駅前広場内の歩道はフラットにして移動の円滑化
を確保。併せて広場内にベンチ(机付き)を設置
し休憩スペースを確保した。
ダルムシュタッドの中心広場内はフラットになっ
ており、どこでも移動が円滑に。路面電車乗降場
もその中にあり、路面電車が遠慮がちに進入する。
② ドイツ・ダルムシュタッド
 ドイツのダルムシュタッドでは町の中心の広場に路面電車が乗り入れている。この広場には歩行者が多く集うが、路面電車の乗り場を含めて段差はなく、歩行者はどこでも歩くことができる。歩道と車道を明確に分けてそれぞれの安全を図るという考え方が主流であるが、歩行者が優先されるところではこのように車両が周囲に注意を払うためにスピードを出せなくするような場所が日本にもあっても良いのではないか。


6. おわりに

 今回、駅前広場を整備するにあたり様々な角度から駅前広場を考察してきた。今後の高齢化社会を踏まえ、より社会の施設がバリアフリーとなるよう願ってやまない。
 また、現場の実情をもっとも良く把握している公共交通運営側からも、より良い道のあり方について意見を言っていく必要があるのではと考えている。