【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第10分科会 公共交通は誰のもの? みんなのもの!!

 佐伯市は、九州一の広さを誇っているが、この広大な地域に住む住民、とりわけ自家用車等の移動手段を持たない高齢者等にとって、通院や買い物、コミュニティづくりなどで大変な困難を抱えている。既存の路線バスやコミュニティバス路線など一切考慮しない、まさに「佐伯市にとって理想的な公共交通体系はどうあるべきか」ということに焦点をおき、「佐伯市における公共交通体系(案)」をまとめ提言した。



佐伯市における公共交通施策に関する提言


大分県本部/佐伯市議会議員 矢野 幸正

1. はじめに(議員政策研究会の取り組み)

 佐伯市議会議員政策研究会は、議会の政策立案能力を高め、議会自ら条例制定や政策提言を行うことをめざして、2010年、議会基本条例の制定と同時に設置された。議員政策研究会で調査研究するテーマは、議員の一般質問や議会報告会などで出された市民の声を基に、議員全員が一致するテーマに絞った上で、議会運営委員会の承認を得て決定している。佐伯市議会では、行政の組織に合わせ、総務、建設、教育民生、経済産業の4つの常任委員会に分かれ日常的に議会活動を行っており、議案提案権などの権限を持っている。したがって、議員政策研究会のテーマは複数の常任委員会にまたがる分野に限ることにしている。このため、議員政策研究会のメンバーは総務、建設、教育民生、経済産業の各常任委員会から2人、計8人で構成されており、どの分野にも対応できるようになっている。
 議員政策研究会のこれまでの実績としては、2012年12月定例会において、提案、制定された「佐伯市空き家等の適正な管理に関する条例」が挙げられる。この条例は、2013年7月より施行されており、長期間放置された空き家、廃屋の危険性に悩まされていた市民から「いい条例をつくってくれた」との声があがっている。また、佐伯市議会の議会改革の取り組みに対し、毎年全国から多くの行政視察団が本市議会を訪れているが、その中でも議員政策研究会の活動は注目されており、その活動が評価されるまでになっている。
 2013年4月市議会議員選挙が行われ、26人の議員が誕生した。同年5月29日議員政策研究会は新たなメンバーで再開し、新たな研究テーマを検討した。前研究会からの申し送りもあり、テーマを「高齢者等が生活を維持するためのサービス及び仕組みづくり」に決定した。しかし、その後数回の会議、市民団体等との意見交換会等を経て、テーマが広すぎ、現研究会員の任期(2015年4月まで)を考えると提言等なんらかの結論を出すことは不可能との判断から、2013年12月16日の議員政策研究会において、研究テーマを「高齢者等の移動手段の確保」つまり、公共交通の在り方に絞り、執行部へ提言を行うことに決定した。

2. 提言作成に至った背景

 本市に限らず全国の地方都市において、公共交通とりわけ路線バスに関しては、各地域間を結ぶ要として、その役割を担っているところである。しかしながら、路線バスを取り巻く状況は、自動車利用中心のライフスタイルの定着や過疎化による人口減少及び少子・高齢化に伴い、バス利用者の大幅な減少を招き、不採算路線が増加してきた。この結果、バス事業者の経営が悪化し、バス路線の休廃止や運賃の値上げを招き、さらなる利用者減につながるといった悪循環に陥っている。
 このような中で、市町村合併の結果、過疎化が著しい周辺地域においては、通院や買い物等において高齢者など移動に制約のある市民の移動手段としての路線バスの維持・確保の重要性が増している。また、最近では中心市街地の衰退などの都市問題の解消にも有効であると考えられることから、いかにして生活バス交通の維持・確保を図るかが、地方都市における共通した大きな課題となっている。
 現佐伯市は、2005年3月3日に旧佐伯市及び周辺の8町村との広域合併により誕生した。面積は、903.4km2と九州一の広さを誇っているが、人口は合併時の約8万4,000人から現在では7万6,013人(2015年1月末現在住民基本台帳)と激減している。この広大な地域に住む住民、とりわけ自家用車等の移動手段を持たない高齢者にとって、通院や買い物、コミュニティづくりなどで利用するには大変な困難を抱えていると言わざるを得ない。佐伯市では、この移動手段問題の解決と利便性の向上をめざして、合併前から旧市町村ごとにコミュニティバスや福祉バスなど様々な交通体系の整備に努めてきた。合併後においても旧市町村時代の交通体系を基本的に維持しながら、実情に合わせ再編、整理統合等を進めてきた。
 しかし、現在でも住民からは「集落内にもコミュニティバスを走らせてほしい」「今のコミュニティバスは便利が悪い。利用したくても利用できない」など多くの要望が行政や市議会に寄せられているのが現状である。
 議員政策研究会では、以上の点を踏まえ、佐伯市民の移動手段の確保、充実をどのように進めたらいいのか、佐伯市民の切実な声をどう生かしていったらいいのかを検討する中で、既存の路線バスやコミュニティバスの路線などを一切考慮しない、まさに「佐伯市にとって理想的な公共交通体系はどうあるべきか」、ということに焦点をおき、その提案を盛り込んだ「佐伯市における公共交通体系案」にまとめ、執行部に提言することを決定した。当然、提案内容は現状から考えると、型破りなものになる可能性がある。しかし、理想的な目標に向けて、現状の交通体系を一歩一歩改善に結び付けることができればと考えている。

3. 佐伯市における公共交通施策の現状

 改めて佐伯市の公共交通の現状を見てみる。現在、佐伯市の公共交通機関は、陸上交通ではJR日豊本線と民間路線バスのほか、行政が運営しているものとして、コミュニティバス、デマンド交通(注)、小中学生等を対象としたスクールバスなどがある。海上交通では、本土と4つの離島を結ぶ定期船が、市または民間事業者によって運航されている。
 地域で見てみると、海岸部については、幹線から入り込む支線の部分が比較的短いということがあり、幹線を走る大分バスに頼っている。一方山間部については、幹線から谷筋に多くの道路があり、その奥に集落が点在するため、コミュニティバスやデマンド交通を走らせている。

4. 理想的な公共交通の在り方

 提言作成の背景でも触れたが、今回の提言の目的は「佐伯市における理想的な公共交通の在り方」を指し示し、提案することにある。佐伯市民としてどこに住んでいても自由に往来でき、目的地に短時間で行ける。当然これが理想的な交通体系ということになろうが、現実問題として考えれば、「自家用車を利用できない高齢者を中心とした市民が、現在あるバスや電車、タクシーなどの公共交通機関を利用する際に、最も利用しやすい利便性の最大限の行使」ということになろう。議員政策研究会の目的はまさにそのことにある。
 つまり、自宅から学校や病院、スーパーや公共施設、金融機関あるいは職場、観光地など移動目的とした場所に「公共交通機関を利用して、便利に、安く、安全にしかも早く到達できる」方法を探るということにほかならない。議員政策研究会では、この「理想的な」という部分の解釈に侃侃諤諤の議論をしてきた。というのも、どうしても既存のバス路線、既存の事業者が頭に入っているため、既存の事業者をどう利用するか、既存のコミュニティバスをどう利用するか、ということになり、現状から抜け出せないものになってしまう。かといって、「理想的」を強調すれば、「タクシーを好きな時に乗れるようにすればいい」という極論に至ってしまう。そこで、「理想的」とするのは、あくまで「バス交通」を基本とすること、事業者については、市営も含め既存事業者を前提にしないこととして検討することにした。

5. 提言作成に向けた取り組み

(1) 市民団体との意見交換
 2013年7月25日の議員政策研究会において、高齢者の生活実態の把握するために関係する諸団体との意見交換会を実施することを決定し、同年9月27日には佐伯市民生委員児童委員協議会との意見交換会、10月29日には、地域支援員(本匠、宇目及び直川地域)及び地域おこし協力隊(鶴見大島)との意見交換会を実施した。
 佐伯市民生委員児童委員協議会(民児協)との意見交換会では、民児協側から、高齢者部会での話として、「大分バスの路線縮小のため交通手段を無くした高齢者が存在すること、バスの運行時刻が合わず利便性が悪い、そのため利用者が少ないのではないか」という意見が出たこと。改善策としてコミュニティバスについては、「アンケート調査等をして、利便性を高める努力をしてほしい、また、タクシーのような乗合バス方式はできないのか、重度障がい者が利用しているタクシー券を高齢者にも発行できないか等」の意見が出たと報告された。また、意見交換の中では、大分バスの野口線が4月1日から廃止になり、通院や買い物などで坂の浦地区の方が困っている、小型バスを1日3往復ぐらい通してほしい。大入島や堅田方面のコミュニティバスは定時運行なので融通が効かない、蒲江の方とかよくタクシーを乗り合わせて佐伯市内に来ているが、コミュニティタクシーみたいなものがあると使いやすいのでは等の意見が出された。
 地域支援員及び地域おこし協力隊との意見交換会では、宇目地域の課題として、「高齢者が多く、免許証返納を考えている人もいるが、高齢者が不便になってしまう」「コミュニティバスは週1回にしてほしい」「通院後の待ち時間が長い」「バス停まで遠い」など住民から声が上がっている。せめて週に2回コミュニティバスを走らせてほしいとの要望が出された。宇目にはスクールバスが2台あるので、日中コミュニティバスとして活用できないか、本匠地域では、段差がありコミュニティバスの乗り降りができないとの声等が出された。

(2) 先進地視察
 2014年6月3日の議員政策研究会では、提言作成に向け、全国の先進事例を学ぶことに決定、長野市及び茨城県龍ヶ崎市に視察することを決定した。両市を選定した理由は、長野市は行政、事業者、企業、市民が一体となって公共交通の充実に努めており、様々な種類の公共交通が存在していること、龍ヶ崎市は面積は小さい町ながら、鉄道、路線バス、コミュニティバス、デマンド(乗合)タクシーとを組み合わせ、利用者増に取り組んでいることなどから佐伯市の参考になるものと判断したからである。
 またその後、大分県でも豊後大野市のコミュニティバスが、「交通弱者の多い地域の実情に合った運行で利用者も増えている」と国が評価、国土交通省より「平成26年地域公共交通優良団体」として表彰された(九州で3例目)ことを受け、同市にも行政視察を行うことを決定した。

(3) 公共交通施策に係るアンケート
 2014年8月28日の議員政策研究会では、提言に向けた作業をどう進めるかを議論する中で、市民全体及び高齢者(65歳以上)等の移動状況(どこからどこに何を利用して移動する)を把握する必要があると判断、特に通勤・通学の流れ、通院・買い物の流れ、公共施設及び金融機関の利用、その他日常生活の流れを項目として設け、10月を目途にアンケート調査を実施することを決定した。

6. 佐伯市における理想的な公共交通体系・提言1

(1) 公共交通の基本的な考え方 ―― バス交通を中心とした新しい公共交通体系
 これまで議員政策研究会では、執行部の説明や先進地視察などから公共交通には様々な種類があることを学んできた。また、公共交通に関するアンケートや市民団体との意見交換会などから、佐伯市における公共交通を主に担うのは、バス交通であり、路線バスを中心とした公共交通体系をつくることが最も理想的な公共交通の在り方であると考える。
 その第一の理由は、佐伯市は広大な面積を有しており、各地域を幹線道路が結んでいることである。広さでいえば鉄道路線が本来適当であるが、本市において鉄道路線はJR日豊本線のみであり、幅広く市民が利用するには現実的ではない。
 第二の理由は、乗降客が減少したとはいえ、路線バスが佐伯市の長い歴史の中で市民に定着しており、「安くて便利な乗り物」として、自家用車を持たない高齢者等にとって必要不可欠の存在であることである。便利さや機動性でいえば、タクシーが考えられるが、料金の問題、台数の問題などの制約があり、幅広い利用には適していないと考える。
 第三の理由は、バス交通は佐伯市はもちろん国や県といった行政が財政的に支援している存在であることである。利用者の減少による路線バスの廃止に際し、補助金で支えてきたこと、路線バス網から外れる交通空白地域をコミュニティバスなど行政の運営で支えてきたことなどから鑑み、今後も行政の支えが必要不可欠だと考える。
 以上のことから「佐伯市における理想的な公共交通の在り方」はバス交通を中心とした体系を構築することが適当と判断した。

(2) 提言に盛り込む主な内容
 次に具体的な提案に進む。提言としてまとめるために、どのような視点、観点を取り入れていくかということであるが、この点では、特にアンケート結果に示された市民からの意見を中心に盛り込むこととした。以下その観点をまとめたものである。

① 電車等との乗継改善
・JR浅海井駅において、佐伯及び大分方面どちらとも乗り継げるよう、津井、大浜方面との接続を考えた運行時刻を設定する。
・JR重岡駅、直川駅においても路線バス及びコミュニティバスとの接続を考える。
② 大型バスの小型化
・大型バスによる大量輸送より、小型バスによる便数増をめざした。これにより、人件費は増えることになるが、利用者増による収入増、燃料費の節約になると考える。
③ 乗車口の段差解消(ノンステップ化)
・高齢者が多く利用することを考え、今後導入するバスは全てノンステップ化し、車椅子対応を義務付ける。
④ バス停の設備改修
・ターミナルとして位置づけられるバス停には、休憩室を設け、その他のバス停に屋根付きの待合所を設けることとする。
⑤ 運行時刻の改善
・バス停毎に毎時できるだけ通過する時刻を合わせ、時刻表がなくても利用できるよう工夫する。
・平日は、夕方、市街地を出発する便の時刻を延長する。
・土日祝日は、日中の運行時刻を工夫し、買い物、観光、レジャー等で利用しやすいものにする。
・商業施設の開閉店時間に合わせた運行。
・夜間を含めた佐伯駅に到着する特急との接続。
⑥ 運行本数の増便
・周辺部については、30分に1本の運行をめざし、市街地循環ルートでは、数分おきの運行をめざす。
⑦ 運行ルートの改善
・周辺部については、幹線は路線バスによる運行を基本とし、どの方向から入っても佐伯市街地では循環ルートに乗ることとする。
・幹線以外の運行については、コミュニティバス及びデマンド交通(乗合タクシー)を組み合わせ、交通空白地域を無くすこととする。
⑧ 運 賃
・周辺部は、距離に応じた運賃であるが、上限を設ける。
・市街地は均一運賃とする。
・乗継や交通弱者に対する割引運賃の導入を進める。
⑨ バス停場所の改善(自宅等からの距離)
・目的地である病院、スーパー、公共施設など、できるだけ近い場所にバス停を移動または設置することとする。
・周辺部のバス停は、集落及び家が密集している場所に移動または設置することとする。ただし、地域によっては、フリー乗降区間を設け、利便性の向上を図ることとする。
⑩ バス停の名称変更
・現在のバス停の名称は地名が中心のため、目的地が施設の場合分かりにくい。できるだけ、病院や公共施設の名称に変え、利用者に分かりやすくする。
⑪ JR上岡駅の改善と鶴岡新駅の建設
・西田病院やコスモタウンに近い上岡駅は電車利用促進にとって利便性があると思われる。北口の新設あるいは佐伯駅寄りへの移設等考える。また、佐伯発着の普通電車の一部を上岡まで延長させる。
・長門記念病院や新豊南高校への利便性を考え、鶴岡地区の新駅建設を進める。

(3) バス交通を中心とした新しい公共交通体系
① 循環ルート型バス路線の導入
・周辺部から直接市街地循環線に乗るバス路線の導入
 現在の路線バスの運行形態は、各地から佐伯駅(葛港)ないしは大手前を起点、終点としているため、市内に点在する病院、スーパーなどに行くには乗換えが必要であった。提案する路線は周辺部から入ってくる路線バスは全て市街地循環ルートに乗るというものであり、所要時間は違っても必ず目的地に行けるものである。
 しかも、市街地循環ルートの運行本数はラッシュ時には数分おきに発着するものになり、市街地の病院間や商業施設間、公共施設間等の移動、通勤・通学の便、地域コミュニティの利用として利便性が大幅に向上する。

② コミュニティバスの再編成
 ア 大入島線
 大入島線を延長し、島内循環の路線とする。石間、荒網代、堀切などでフェリー、旅客船と接続する時刻表を作成する。土日も運行し、釣り客など観光客も利用できるようにする。
 イ 直川線及び宇目地域の路線
 現在の直川線から横川、上爪を経由し、塩見線、上仲江線、蔵小野線、河内線とを結び本匠上津川までの路線を一本化する。土日も含め毎日運行する。
 赤木~直川駅及び直川振興局(長門診療所)~横川~上爪~塩見園~上仲江~菅~田野~蔵小野~市園~宇目公民館~Aコープ~酒利~河内~上津川
 ※ 直川駅でJRと直川振興局、花木、宇目公民館(Aコープ)、上津川で路線バスと接続する。河尻線と上津小野線を一本化し、うめタウン及び宇目振興局で路線バスと接続する。土日を含め毎日運行する。
 ウ 本匠地域
 本匠は、コミュニティバスを廃止、上津川発着の路線バスを充実させ、空白地域にはデマンド交通を導入する。
 エ 弥生地域
 弥生は、基本は路線バスとし、コミュニティバス4路線を再編。道の駅やよいをミニターミナルと位置づけ、発着点とするとともに、路線バスと接続する。土日を含め毎日運行する。
 オ 黒沢方面
 黒沢・岸河内線は、ルートは現状のまま(中山団地入口まで延長)だが、土日を含め毎日運行する。中山団地入口及びトキハインダストリーで路線バスと接続する。
 カ 蒲江地域
 蒲江・竹野浦河内~元猿を経由し蒲江浦まで路線新設。
③ デマンド交通(乗合タクシー)の充実
 ア バス路線から外れる交通空白地域はデマンド交通(乗合タクシー)を導入する。
 導入地域 ―― 弥生(宇藤木・川中)本匠(宇津々・小川・三股・堂ノ間・山部)宇目(木浦・西山・田原・柳瀬・水ヶ谷・重岡等)佐伯(大越、稲垣、長良、狩生、戸穴、海崎等)鶴見(沖松浦等)蒲江(波当津・野々河内・尾浦等)
 イ 登録を行い、予約受付システムを導入し一本化する。市内タクシー会社に委託する。
④ JRの活用
 ア 電車等との乗継改善
 ・JR浅海井駅において、佐伯及び大分方面どちらとも乗り継げるよう、津井、大浜方面との接続を考えた運行時刻を設定する。
 ・JR重岡駅、直川駅においても路線バス及びコミュニティバスとの接続を考える。
 イ JR上岡駅のコスモタウン玄関口としての活用
 ・400メートル佐伯寄りに移設(大和冷機工場の土地)
 ・佐伯方面からの普通電車の延長(上岡行きの新設)
 ウ 鶴岡地区に新駅 
 ・新佐伯豊南高校及び長門記念病院などへのアクセス
⑤ バス交通の環境改善
 ア バスの小型化及びノンステップバスの導入
 大型バスによる大量輸送より、小型バスによる便数増をめざす。また、乗車口の段差解消(ノンステップ化)を図り、車椅子対応を義務付ける。
 イ バス停の名称変更及び設備改修
 ターミナルとして位置づけられるバス停には、休憩室を設け、その他のバス停に屋根付きの待合所を設ける。また、現在のバス停の名称は地名が中心のため、目的地が施設の場合分かりにくい。できるだけ病院や公共施設等の名称に変え、利用者に分かりやすくする。

7. 現状を踏まえた当面の施策・提言2

(1) 現交通体系を踏まえた当面の改善方向
① 市街地循環バス路線の新設
 周辺部から循環ルートに入る路線を提案した。しかし、周辺部から直接となると、バス及び運転手の確保、バス停の整備、財政的な裏付けなど様々な課題がある。一方、2014年度実施された「佐伯市中心市街地循環バス実験運行」のように、路線の複雑さや運賃など問題を解決しないで走らせても市民の理解が得られない。
 そこで、遠い将来でなくても実現可能な改善策として、佐伯駅を起点とした「市街地循環バスを走らせる」ことを提案する。運賃は一乗車100円、30分に1本程度の本数を走らせる。大分バスの協力を得ながら、赤字分は佐伯市が財政的に支えることを前提とする。運行路線及びバス停は、議員政策研究会が提案しているものを基本に検討し、現在利用している市民はもちろん幅広く市民の意見を求める。
② 浅海井駅での乗継改善
 上浦地域の市民から要望のあったJRとの乗継状況を検討し、運行時刻の改善を行う。このほか同様の要望が寄せられている地域があれば検討し、運行時刻の改善に反映させる。
③ 佐伯市バス路線再編整備計画(仮称)の策定
 議員政策研究会の提案を実現させるには、市民・企業・事業者・行政が一体となった取り組みが必要である。そのためには「佐伯市バス路線再編整備計画」(仮称)など行政として支援できる計画等を策定する必要がある。そこで、これまでの佐伯市地域公共交通会議のメンバーに利用者の代表、市民団体の代表、企業の代表など幅広い市民を加え、市民との協働により、公共交通体系ができるよう取り組む。

8. おわりに

 今回の提言内容は、市民から寄せられた意見を参考に議員政策研究会で議論し、成案として作り上げたものである。当然、行政をはじめ、地域や市民の中から様々な意見が寄せられるであろう。この提言は、市議会として3月議長より市長に提出された。議会として、今後の行政施策を見守りつつ、必要に応じ再提言を行うなどして取り組んでいく。いずれにしても、この提言を機会に行政と市民、企業、事業者が一体となって理想的な公共交通体系を作り上げる第一歩になれば幸いである。




(注) デマンド交通とは デマンドとは、要求、要請の意味で、電話予約など利用者のニーズに応じて柔軟な運行を行う公共交通の一形態。基本的に電話等で予約し、運行するが、運行ダイヤや運行路線、料金など自由度の組み合わせにより多様な運行形態が存在する。