【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第11分科会 じちけん入門!! ~じちけんから始まる組合活性化~

 人口減少問題や地域の担い手が不足するなどの課題を抱えている各自治体の状況において、ここ最近、新規採用となった若い職員が辞めていく割合が多いと感じていることが議論になり、実際に各自治体の状況を把握し、課題を明らかにしていくことで、職場・地域の活性化につなげていくことを目的とした。



北海道における自治体職員の退職動向
―― 最近5年間の調査から ――

北海道本部/北海道本部自治研推進委員会

1. はじめに

 道本部自治研推進委員会は、全道自治研集会等の議論を進めていく中で、各自治体職場において地方行革攻撃の一環として人員削減がどの職場でも推し進められ、職員の新規採用抑制が続き、近年は、幾分、職員採用がされてきている状況にあるが、中堅層と呼ばれる、30~40代の職員が極端に少なく、人材育成などに支障を来していることが明らかになった。
 この様な中で、各自治体では、採用間もない職員が数年で辞めていっている状況が報告されており、この様な状況は、自治体組織としても地域としても大きな損失になると思われる。実際にどれだけの職員が中途退職しているのか調査をし、考察を行いながら、今後の職場・地域の活性化にむけた取り組みにつなげていくための第一歩として考えていく。


2. 調査の方法

 各単組に対して、過去5年間の退職者について、①退職時の年齢、②性別、③入職から退職までの勤続年数、④職種、⑤出身地、⑥退職後の職種、⑦退職後の勤務地について記載をしてもらった。
 回答は、全道171単組中、100単組から報告がされたが、1~4までの質問は多くの単組において記載されていたが、5~6の質問については既に退職された職員と連絡が取れないこともあり、退職後の状況については、各単組とも把握ができないとの回答がほとんどであった。
 また、年度当初の職員数についても未記載の単組がほとんどであった。
 なお、全道庁労連(県職労)は、独自に調査を実施していることから、今回の調査には含めていない。
 さらに、使用する数値等については、不明等もあることから合計と内訳の数値が一致しない場合もあることを了承願いたい。

図-1 中途退職者についての調査票

3. 退職者の動向および退職時の年齢

 
  表-1 退職時の年齢
カテゴリ 件 数(全体)%(除不)%
10代140.60.6
20代56223.325.0
30代43718.219.4
40代29912.413.3
50代86335.938.4
60代733.03.2
不 明1596.6 
合 計2,407100.02,248

 退職者数については、各年度とも400人台後半の人数で年度による大きな差異はなく、近年は同程度の退職者数となっている。
 退職時の年齢については、20歳代の職員の退職者が多いことが顕著に表れている。その後30歳代の職員が多く、最も退職者数が少ないのが40歳代の職員となっており、50歳代の退職者数が多いのは、57歳~59歳における勧奨退職者の影響ではないかと考えられる。


4. 退職時の勤続年数

 
  表-2 退職時の勤続年数
カテゴリ 件 数 (全体)%(除不)%
1~5年69729.029.0
6~10年26010.810.8
11~15年1325.55.5
16~20年1305.45.4
21~25年1325.55.5
26~30年1365.75.7
31~35年26010.810.8
36~40年32313.413.4
41~612.52.5
不 明 27611.511.5
合 計 2,407100.02,407

 退職時の勤続年数は、就職後5年未満の職員が最も多く、1年未満が153人(6.4%)、1~2年未満が157人(6.5%)、2~3年未満が157人(6.5%)、3~4年未満が115人(4.8%)、4~5年未満が115人(4.8%)となっている。
 理由は明らかではないが、希望を持って自治体職員(地方公務員)となったが、本人が当初思っていた公務員の仕事のイメージと実際の仕事内容のギャップ、これまでの生活スタイルと新たな街の生活スタイルの違いから、新たな職への転職による退職につながっているのではないかと推察される。就職後、5年を過ぎると一気に退職者数が減少している傾向を見ても、一定期間を過ぎると、職場にも慣れ、地域にもなじんで、「わが町」としての意識が少しずつ強くなり、その地域に定着しているのではないかと考えられる。就職後30年以降に退職者数が増加するのは、前表同様に、就職後30年は50歳代となり、勧奨退職の年齢に属しているからと考えられる。

 
図-2 退職時の勤続年数-職種別

5. 性別ごとの退職状況

 
  表-3 性別ごとの退職者数
カテゴリ 件 数(全体)%(除不)%
男 性 905 37.6 39.5
女 性 1,386 57.6 60.5
不 明 116 4.8  
合 計2,407100.0 2,291

2016年6月24日北海道新聞(朝刊)

 男女別の退職者数では、表-3にあるとおり女性の退職者数が6割となっており、表-4の職種別退職者数で女性職員が多い職場である医療系看護職が24.1%、保健系技術職(保健師)が8.8%と合わせて32.9%を占めており、このことが女性の退職者数の割合を増やしているものと考えられる。
 ただ、本当に女性が多い職種での退職が多いからと単純に決めつけるには、早計であり、以前の職場で見られた、結婚・出産時における退職がこの中に含まれていないかどうかの調査も必要であろうと思われる。
 実際に、2016年6月24日付け北海道新聞に道内の自治体において職員同士が結婚した場合、女性職員だけが退職している実態が報道されている。記事にあるとおり退職を強要していたとは思いたくないが、長年の慣習が存在していることも否定はできず、また、この自治体だけの問題とは思えないのではないだろうか。

6. 職種ごとの退職者数

 
  表-4 職種ごとの退職者数
カテゴリ 件 数 (全体)%(除不)%
事務系一般職79833.236.7
技術系一般職1245.25.7
技能・労務職994.14.5
保健系技術職2128.89.7
福祉系技術職1044.34.8
医療系看護職58124.126.7
医療技術職1225.15.6
研究職0.20.2
海 事0.00.0
その他1315.46.0
不 明2319.6 
合 計2,407100.02,176

 職種別で見てみると、一般事務系の職員の退職が最も多いが、各自治体職場においては、直営の病院を持っている自治体が少なく、保育士・保健師以外の技術系職員は数名程度で、ほとんどが一般事務系職員で占められていることから、おのずと事務系職員の退職者数が多いのではないかと思われる。
 また、各自治体において採用困難職種である技術系職員も中途退職者が一定程度存在することに注目をすべきである。技術系職員は各自治体とも募集してもなかなか応募者もなく、欠員を抱えて業務を遂行しているのが実態であり、ようやく採用となってもすぐに辞めてしまっている実態が明らかになった。


7. 課題分析のためのクロス集計

(1) 退職者の職種と年齢構成
 事務一般職、技能・労務職、福祉技術職は50歳代、ほぼ定年まで働き続けていることが確認できる一方、医療系看護職、医療系技術職、保健系技術職、技術一般職が早い年齢で退職している割合が高い傾向が見られた。このことは、専門的知識を有しているため、次の再就職もある程度有利なためと思われるが、退職後の状況を確認していないことから今後、早期退職等の理由、退職後状況を明らかにすることが必要である。同じ専門職であっても福祉系技術職については退職者の半数以上が50歳代であることの分析が必要であるが、福祉系職場は公務職場よりも民間職場の方が賃金・処遇などが低く抑えられていることが要因と思われる。いずれにしても、どの自治体においても、技術系専門職の採用に苦慮している実態は同じであり、退職理由等が明らかになることにより、欠員解消につながる取り組みとしていかなければならない。

図-3 退職時の年齢-職種別

(2) 退職者の男女別職種・構成
 男性の職種別の割合については、事務一般職、技術一般職、医療系技術職と続き、女性では、医療看護職、事務一般職、保健技術職と続いている。
 また、性別構成比では女性職員が多い医療系看護職、福祉系技術職、保健系技術職が女性の退職者の割合が多くなっている。注視しなければならないと思われるのは、事務一般職の男女比が6対4とほぼ拮抗しており、女性の中でも約4分の1が事務一般職となっており、この事務一般職の女性の退職理由の分析を深めていく必要がある。

図-4 退職者の職種-女性   図-5 退職者の職種-男性

8. 退職後の職種

 この調査回答については、回答があったのは25%弱程度で、職員が退職後どうしているかについてはあまり把握できていない状況であった。

図-6 世代別の職種   図-7 退職職種の性別構成
 
  表-5 退職後の職種
カテゴリ 件 数 (全体)%(除不)%
民間・自営2209.137.5
地 公943.916.0
国 公0.20.9
無 職25310.543.2
議 員0.10.3
病 気0.20.9
死 亡0.20.7
学 生0.10.5
不 明1,82175.7 
合 計2,407100.0 586

 退職後、民間職場に転職した職員が9.1%、他の自治体職場に転職した職員が3.9%となっている。無職の10.5%については、定年若しくは勧奨退職後、全く仕事に就いていないのか、前述した結婚・出産により退職した女性職員なのかははっきりしていない。
 このことからも、改めて退職者に対して退職理由や退職後の状況などの調査方法の検討が必要である。


9. おわりに

 今回の「各自治体の中途退職者の状況調査」では、どの職場、自治体においてもうすうす感じられていた、採用間もない職員がすぐに辞めてしまっている事実が明らかになった。
 何故、若い職員がすぐに辞めてしまうのか、その理由は、職場の仕事内容にあるのか、人間関係なのか、それともこれまで生まれ育った環境との違いで住みづらい地域だったのか、今後、明らかにしていくことが求められる。
 この問題を明らかにすることによって、職場改善や人材育成につながっていくものと考えられる。また、職員の資質向上により、まちづくりや地域でくらし続けることへの大きな力に発展することが期待できる。
 いずれにしても、自治体職員は地域住民のサービス提供者として、地域を愛しより良い地域にしていくための財産、宝であることを自覚していかなければならない。
 今後は、今回調査できなかった、退職者に対する直接のアンケートなどを実施して退職理由を明らかにしていくなかで、さらに職場・地域のあり方を考えることにつなげていくことが必要であると考えている。また現在職場で働いている職員の中にも、一度は退職を考えたことのある職員もいるのではないかと思うことから、それぞれの職場内において調査を行っていくことを検討し、引き続きの取り組みとしていきたい。