【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第11分科会 じちけん入門!! ~じちけんから始まる組合活性化~

 高知市職労清掃分会では、ごみ減量やリサイクルの推進に向け、現場発案で環境学習の取り組みを進めてきました。その一環として、就学前後児童向けの環境学習絵本を、大学などの協力を得ながら作成し、市内の保育園等に寄贈しました。その取り組みを報告します。



環境学習絵本の取り組み


高知県本部/高知市職員労働組合・清掃分会

1. はじめに

 90年代以降の廃棄物行政は環境省が主導する3R・4Rを柱に廃棄物の発生抑制に主眼を置いた方針が示されるなか、自治体にとっても最終処分場の新たな予定地確保の困難さなどから多少のばらつきがあるものの、各自治体で独自の取り組みが進められています。
 高知市においては30年ほど前から、町内会単位で月に1回のステーション方式でのごみ・資源物の分別収集を、民間・直営・市民の3者が協力して行う「高知方式」を廃棄物行政の柱とし今日まで来ています。


2. 絵本づくりのきっかけ

 10年ほど前から、親子で学ぶ「環境学習」(環境選隊クリーンレンジャー)をボランティアで始め、所属の理解を得て「業務としてやるべき行政事業」としての位置付けとなりました。当初年間5本程度の依頼が現在年間20数本に至っています。
 この親子環境学習は、子どもと、親が家庭で身近な環境のことや分別について話し合うきっかけとなり、市が進める廃棄物行政への理解を深めてもらうことを目的として取り組みを進めてきました。しかし、この環境学習に参加した親子が、こうした目的にそった思いや気づきを感じたとしても、それは時間を経て薄れていってしまうことがあります。こうしたことに対して何か良い方法がないか? という観点から発案し、「では、普段から分別意識を持てるよう幼児・児童教育の中で気軽に触れることの出来る、環境学習絵本を作ってはどうか?」という結論に至り、分会の取り組みとしてスタートしました。


3. 大学生など様々な方の協力で完成

 全くの素人が絵を書くだけでは、絵本にはならない。やはり、プロの方にも協力を得なければ無理であるという壁に突き当たりました。手をつくし探すものの高知市のような地方都市では、そもそもそういった人がいるのかどうか、なかなか見つからない日々が過ぎる中、ダメもとで職場に来る営業の女性に声をかけたところ「大学の後輩で、絵本製作会社に勤めている子がいる。」ということで、紹介していただきました。早々に話をすることができたものの、興味は持ってもらいましたが、ご本人の仕事の多忙と転勤であえなく頓挫。しかしながらその方が高知大学の美術の講師の方を紹介してくれました。早速、その講師の方と話すことができ、非常に興味を持ってもらい「授業の中で学生たちにやらせたい。」ということで、前期日程の中で絵本作りを受けてもらいました。
 大学では40人ほどの学生が3つのグループに分かれ、3本の話を作ってもらうことになりました。こちらからのテーマは高知市の廃棄物行政(自治会または町内会・行政・資源リサイクル業者の三者の協働による取り組み)に沿ったもの。年長さんや小学校低学年向けで、登場させる品目などは一つか二つに絞ること。の二点でお願いしました。そして前期日程の中で三つの話を作ってもらいました。
 ストーリーが子どもたちにどう受け止められるかを試すために、まずは保育園の保育士さんに三作品のコピーを渡し、読み聞かせをしていただきました。やはり、複数の資源物キャラクターが出てくる話は難しいようでした。どこの保育園でも反応が良かったのが、ペットボトルの女の子がリサイクルされて可愛らしい洋服に生まれ変わる。という話だったので、この話を第一候補として進めていく事になりました。しかしながら製本にするための細部の手直しや構成などは、やはりプロもしくは出版関係の経験者でなければ、ということでここからNPOでの絵本作りの経験がある方と出会うまで3年がかかり、手直しを手伝っていただきながら、組合員の意見を集約し、たまたま執行部の配偶者が漫画家の卵であったということで、その方に仕上げていただきました。


4. 保育園等に絵本を寄贈

 出来上がった絵本は高知市内150余りの保育園・幼稚園に寄贈させていただきました。絵本の寄贈にあたっては、絵本の感想などを書いてもらうアンケート用紙も同封しました。寄贈先からは次のような感想が寄せられました。今後の取り組みの参考にしていきたいと考えています。

・子どもたちは、洋服になる過程が気になったようで、「どうやったらそうなるか」と興味津々。ごみ分別に目を向ける良い機会となりました。次はクリーンレンジャーが登場する絵本も是非つくってください。
・ペットボトルが洋服やランドセルになることは知らなかったようで絵本を真剣に見入っていました。ペットボトルや燃えるごみの分別をしているか聞いてみると年中以上のクラスの2/3ほどでした。
・(絵本を読み聞かせて)子ども達は何だか楽しくなったようで、お家に帰ってから「ペットボトル洗ってつぶす」と口々に言っていました。なんとなくしていたことが具体的にわかりとても良かったです。
・家庭ではお父さんがごみ捨てをしているお家が多いようですが、生活の中で子どもと一緒にやることが大切だなと改めて感じました。ただ、子どもがやりやすくやるとなるとまだ課題もあると感じました。
・絵本を読んだあと、家庭でのごみ分別について話し合いました。資源の大切さに気付かせてくれる良い機会となりました。
・「りぼんちゃんかわいそう」「このマークはペットボトルなんだね」など絵本の隅々まで見て声が上がっていました。お兄さんが反省するところでは神妙な顔で見ていました。
・(保育者が)「ペットボトルの回収ボックスはどこにあるか知ってる?」と聞くと、知らない子どもも多くいました。「今度スーパーへいくとき、聞いて持っていく」という子どももいました。これからも保育に活用してきます。
・回収ボックスにいれるとお洋服になるということがどうしてなのかよくわからなかったようです。
・(絵本を読んだ後)子どもたちの思いや考えを話す姿が見られました。子ども達と一緒に職員も学び伝えていきたいと思います。


5. さいごに(今後の展望を簡単に)

 今回の環境学習絵本の製作は、子どもたちに、楽しく資源の大切さやリサイクルとはどんなものかを理解していただくために取り組んできました。また、「絵本を製作して寄付をして終わり」ではなく、親子でリサイクル・資源の有効利用の大切さを広く理解してもらうために、この絵本を基に現場職員が子どもたちのところへ行き読み聞かせをするなど、環境学習が広がっていく取り組みを進めていきたいと考えています。
 最初にも触れましたが、高知市では、民間・直営・市民の3者が協力してごみ・資源物の分別収集を実施しています。この「高知方式」を維持・発展させていくためには、地域・市民の協力、地域の自治力が不可欠です。私たちごみ収集部門の現場組合員も、通常業務だけではなく、こうした環境学習などの取り組みから、地域や市民をサポートしながら、つながりや協力関係の維持発展に不断の努力を払う必要があると考えています。

環境学習絵本「おようふくになりたい」(抜粋)