【自主レポート】

　岡崎市職員組合で実施している「地域貢献活動」は、地方公務員としての地元密着だからこその活動の展開として、業務外の交流をすることで市民との見えない距離を縮め、地域社会に開かれた組合、地域社会に理解される組合として重要性のある活動と共に、公務員への理解を得てもらうことを目的の一つとしています。
　その取り組みの実績と、見えてきた課題をレポートします。

1.　ボランティア活動意識のスタートは「純情きらり」から

(１)　「純情きらり」とは
　「純情きらり」とは、ＮＨＫが放送開始80周年記念番組として2006年度上半期（４月～）放送された朝の連続テレビ小説で、原作は「火の山－山猿記」（作者：津島祐子）です。この小説では山梨県が舞台になっていますが、岡崎市の市制施行90周年記念事業の一環として、岡崎市の八帖味噌蔵を舞台に製作されました。ちなみに、出演（敬称略）は宮崎あおい、福士誠治、寺島しのぶ、西島秀俊、劇団ひとり、三浦友和、竹下景子、戸田恵子、室井茂、八名信夫、など有名な俳優陣です。また、同じくこのドラマに出演した女優の井川遥は岡崎桜まつりのメーンイベントとなった「家康行列」において、一日警察署長として行列の先頭に立ち行列を先導する重要な役割を担いました。

(２)　岡崎きらり隊発足
　「純情きらり」の撮影でときどき岡崎市にも撮影隊が訪れました。撮影に伴い、ボランティア・エキストラの必要性から岡崎市の主導で「純情きらりサポーターズクラブ」を発足させ、様々な活動をしてきました。ＮＨＫの放送終了後、クラブは解散しましたが、クラブの中から「岡崎市のためにもっと何かしたい」という声が多く、立ちあがったのが「岡崎きらり隊」です。岡崎市とは直接関与しなくなりましたが、岡崎市のイベント事業にボランティアとして参加し、イベントを盛り上げる一役を担っています。こうした組織の活動を通じてボランティア活動の意識が少しずつ高まっていると考えています。

2.　そして組合ができること

(１)　地域ボランティア活動（地域貢献活動）
　「純情きらりサポーターズクラブ」解散後、市として関与してきた活動も終了しました。しかし、ボランティア活動の有益性や必要性をヒントに、「地域社会に開かれた組合」、「地域社会に理解される組合」であることの重要性を合わせて考え、2006年から組合でボランティア活動をする取り組みが始まりました。また、背景として公務員バッシングや、公務員を見る目が非常に厳しくなってきていることからも、普段の業務で市民と接する機会とは別に、顔の見える業務外活動をめざして取り組みを開始して以降、様々なボランティア活動を実施しました。
　地域ボランティア活動は2008年から「地域貢献活動（ワンコイン活動）」に名称を変更しました。活動の基本はボランティアですが、派遣先へ到達するまでにかかる往復の交通費程度は弁償するという考え方を新たに決めて、参加者には500円を渡しています。

(２)　地域貢献活動の実績

実施時期	依　頼　元	内　　　　　　容
2006年	実績なし	町総代会や小学校ＰＴＡに対して各種行事のボランティア派遣募集をＰＲ
2007年	実績なし	町総代会や小学校ＰＴＡに対して各種行事のボランティア派遣募集をＰＲ
2008年	広幡小学校ＰＴＡなど	広幡小宵まつりで実施された「映画鑑賞会」に参加する児童が夕暮れ時に安全に登校できるよう誘導
	小豆坂小学校ＰＴＡ	小豆坂小ＰＴＡバザーの開催に伴う、来場者用駐車場の整理、即売会の手伝い
2009年	三島小学校ＰＴＡなど	三島小学校区納涼夏まつりを盛り上げるため、組合で不用品バザーを展開、ＰＴＡバザーコーナーの手伝い
2010年	大樹寺小学校ＰＴＡ	学校の運動会の実施に伴う、来場者用の駐輪場の整理
2011年	大樹寺小学校ＰＴＡ	依頼はあったが、実施日及び予備日共に雨で運動会が中止のため未実施
	菅生川を美しくする会	菅生川草刈一斉清掃に参加し、菅生川河川堤防の草刈り・除草・清掃（市労連対応）
2012年	大樹寺小学校ＰＴＡ	学校の運動会の実施に伴う、来場者用の駐輪場の整理
	菅生川を美しくする会	菅生川草刈一斉清掃に参加し、菅生川河川堤防の草刈り・除草・清掃（市労連対応）
2013年	大樹寺小学校ＰＴＡ	学校の運動会の実施に伴う、来場者用の駐輪場の整理
	菅生川を美しくする会	菅生川草刈一斉清掃に参加し、菅生川河川堤防の草刈り・除草・清掃（市労連対応）
	岡崎市観光協会	岡崎市観光夏祭りに参加するパレード（盆踊り・おみこし）の誘導整理、街路清掃
2014年	大樹寺小学校ＰＴＡ	学校の運動会の実施に伴う、来場者用の駐輪場の整理
	菅生川を美しくする会	菅生川草刈一斉清掃に参加し、菅生川河川堤防の草刈り・除草・清掃（市労連対応）
	岡崎活性化本部	地元Ｂ級グルメのＰＲ活動イベント「まぜ麺駅伝」に参加し、ＦＢを活用してＰＲ（市労連対応）
	岡崎活性化本部	岡崎城下家康公夏まつり実施期間中の公園内清掃、夜間パトロール（自治労岡崎対応）
	竹水鉄砲実行委員会	岡崎市発祥のレクリエーションスポーツ「竹水鉄砲合戦」に参戦して普及ＰＲ
	自治労岡崎	康生地区で実施した組合員交流イベント「くみ合コン」の運営スタッフ（市労連対応）
2015年	大樹寺小学校ＰＴＡ	学校の運動会の実施に伴う、来場者用の駐輪場の整理
	六名小学校ＰＴＡ	学校の運動会の実施に伴う、学校近隣私有地の迷惑駐車防止の見回り
	菅生川を美しくする会	菅生川草刈一斉清掃に参加し、菅生川河川堤防の草刈り・除草・清掃（市労連対応）
	竹水鉄砲実行委員会	岡崎市発祥のレクリエーションスポーツ「竹水鉄砲合戦」に参戦して普及ＰＲ
	岡崎活性化本部	岡崎城下家康公夏まつり実施期間中の公園内清掃、夜間パトロール（自治労岡崎対応）
	自治労岡崎	組合員交流イベントとして康生地区で実施した「くみ合コン」及びＪＲ岡崎駅東地区で実施した「くみ会い駅バル」の運営スタッフ（市労連対応）

菅生川草刈一斉清掃の活動の様子		竹水鉄砲合戦に参加
夏まつりで開催されたカヌー体験受付のお手伝い

3.　取り組んで見えてきた課題

(１)　周知不足
　地域貢献活動の目的は２(１)でも述べているように「地域社会に開かれた組合」や「地域社会に理解される組合」の姿を求めることです。そのためには、広く組合員にこの取り組みを理解してもらい、活動への参加を呼び掛け周知しなければならないと考えています。
　組合の大会議案書の活動方針に取り組みを掲載し、その目的や意義を口頭で説明し、また、依頼内容によっては組合配布物などで組合員に参加を呼び掛けていますが、呼び掛けに応えてもらえる組合員は皆無ではないものの、ほとんどいません。
　現状はほとんど執行部で対応しているため、執行部への負担増が課題となってきています。

(２)　進まない組織構成
　地域貢献活動の理想的な最終形は、市内の小学校区単位で小グループを作り、そこに住んでいる組合員を地域貢献活動派遣構成員として、地元地域から貢献活動の依頼があれば、当該地域を含む小学校区の組合員が必要に応じて派遣するというものです。組合員の隅々まで周知し理解度が高まらないとなかなか実現が望めません。(１)のように周知が全然足りない状況で全地域をカバーすることは絵に描いた餅の状態です。また、組合員の中には行政職、技術職、保育職、看護職など職種が多様にあり、勤務先によっては休日が土日でない公所などもあります。さらに、岡崎市外に生活圏を持つ組合員など、岡崎市内の地域活動に普段から接していない組合員もいることから、負担のかかる組合員に偏りが生じてしまうことは容易に想像がつきます。

(３)　「地域貢献活動」に含まれない地域貢献活動
　地域貢献活動は組合が取り組む活動として制度を設けましたが、組合員の中には以前から地元組織の中で町内会の役員や子ども会、ＰＴＡ、消防団等々を務めてきました。公務を離れた場であってもどうしても公務員という肩書は離れず、持ち回り番で順番が回ってきて引き受けることもあるかもしれませんが、立場上役職を依頼されると断れない現実があります。地域貢献活動とは違って手当や報酬が得られますが、目的である「地域社会に開かれた組合」や「地域社会に理解される組合」を考えたとき、地元地域の役職を務めることも地域貢献活動ではないかと考えさせられます。

4.　まとめ

　「地域社会に開かれた組合」、「地域社会に理解される組合」をめざすため岡崎市職員組合で取り組んでいる地域貢献活動（ワンコイン活動）は10年以上の実績があるにもかかわらず、組合員への周知不足から、運用面で上手に進められていない現状があります。そのため、執行部で対応せざるを得なくなり、執行部にかかる負担の増大が懸念されます。また、組合で取り組む地域貢献活動とは異なりますが、組合員にとっては昔から地元町内会などの組織の役職員を務めることが多い背景があり、手当や報酬の受け取りの有無こそ違いがありますが、地元組織の活動をすることに変わりが無いことから「地域貢献活動」と考えることができます。公務員の中でもより地元に密接に関わり合いがある地方公務員だからこそ、地元への貢献を求められることは必然で、「地域貢献活動」を組合として問題提起し、何らかの対策を検討しなければならないと考えます。