【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第12分科会 ほんとうの住民協働とは? ~地元スペシャルになろう

 給食調理員の手荒れが当たり前だった1980年頃から、合成洗剤の有害性とウミガメがやってくる岡垣町の海を守ろうと環境問題について、組合で学習を重ねてきました。同時に、給食現場から出る廃油を使ってリサイクルプリンせっけんづくりと住民への配布に取り組みました。社会教育の一環として「せっけん作り教室」の講師を務め、地域の方と環境問題を考え、ついに自治体の事業として認められるようになりました。



「行政と地域でつなごう環境の輪」取り組み


福岡県本部/岡垣町職員労働組合・現業評議会

1. はじめに

 地域と行政が一緒になって行う資源回収の取り組み「行政と地域でつなごう環境の輪」と題して私たちの取り組みを報告します。
 まず、はじめに自然溢れる我が町岡垣町を紹介します。
 福岡県遠賀郡岡垣町は北九州市と福岡市の中間に位置し、人口約32,000人のベッドタウンです。玄界灘に面し、ウミガメが産卵に来る自然に恵まれた町です。そのため環境保全にも積極的で「自然との共生」を目的にごみの収集等に前向きな姿勢で取り組んできました。
 私たち岡垣町現業評議会は、長年の組合運動の一環としての住民サービスの構築をめざしてきました。現業職場の活性化の取り組みの一つとして、各家庭から出る廃食油の回収を行い、その油を使って固形せっけんを作製し、住民に配布する、という資源循環を確立することができました。
 また、行政職員としてこの豊かな故郷(ふるさと)の自然を守るため、そして、給食調理員としての教育的観点から自然の大切さと給食への関心を高めることを目的にせっけん作りや廃油回収の取り組みを継続してきました。


2. これまでの経緯

 岡垣町給食調理員は、1980年まで合成洗剤を使用していました。その頃の調理員の手は、手荒れやあかぎれは当たり前だったと聞いていましたが、当時の先輩方が合成洗剤の有害性と環境問題について学習を重ね、まず粉せっけんの使用に踏み切りました。同時に、給食現場から出る廃油を使用して、リサイクルプリンせっけんを作製する取り組みも進めていきました。リサイクルプリンせっけん作製のきっかけは、隣町の調理員が「合成洗剤追放全国大会」に参加した会場で、天ぷらの廃油を利用した手作りプリンせっけんの作り方を聞いてきたのがきっかけでした。その後、教育的観点と行政職員としての立場からの取り組みとして、リサイクルプリンせっけんに5年の期間をかけて移行しました。
 リサイクルプリンせっけんの本格的な使用が始まり、せっけん作製用の機械を教育委員会の予算で購入し、今までの手作業を機械化したことで作業軽減となり、更なる取り組みとしてリサイクル固形せっけんの作製に取り組みました。
 その間、せっけん工場の視察や研修会、質の高いせっけん作りをめざしての学習会。町内公共施設5箇所での無料配布。町主催のイベントへ積極的に参加し、そこでの環境啓発やせっけんの無料配布を行いました。住民の方々には「油汚れの落ちが良い」「手荒れがない」と好評な意見を聞くことができました。
 また同時に学校教育の現場では、総合的な学習のゲストティーチャーとして児童に廃油のリサイクルの話をし、社会教育の一環としては「せっけん作り教室」の講師を務め、せっけん作りを通して地域の方と環境問題について考えました。
 リサイクル固形せっけんの配布も定着し、さらに一歩進んだ取り組みを組合員で協議し、せっけん作りには欠かせない廃油を家庭から回収してはどうかという取り組みに辿り着きました。回収した廃油でリサイクル固形せっけんを作製し、無料配布することにより結果的に私たちがめざしていた"リサイクルの輪"が完成しました。
 当初、組合活動として調理員だけで廃油回収を実施していましたが、町が取り組む環境衛生推進と目的が一致し、教育委員会の事業として認められることとなりました。


3. 取り組みの現状

 年3回町内5箇所の小学校に於いて、回収期間は学期末終業日から3日間実施します。町発行の広報誌やホームページにて目的・日時・回収場所を住民全体に知らせています。
 当日持参された廃食油は、調理員が受け取り、回収された廃油で作製されたリサイクル固形せっけんと交換してリサイクルの意義を伝えています。
 回収量は、1回で最大約1,200リットルまで達したこともあります。リサイクル固形せっけんの作製に使用しきれなかった廃油は、廃油業者に引き取ってもらう。引き取り業者については、業者工場の視察を行い、廃油がどのように処理され、リサイクルされているかを確認した上で選定しました。工場に渡した廃油は、不純物を取り除き再度精製され、印刷用のインクなどに再利用されています。
 先輩調理員の方々の想いを受け継ぎ、今年で37年の取り組みです。その都度、ある段階で満足して終わるのではなく、さらなる発展を求め続けて今日に至っています。「合成洗剤追放」を前面に掲げた運動ではありません。しかし、リサイクルせっけんを作製し、使用することで自然に優しいせっけんとはどんなものなのか。自然に優しいせっけん濃度はどのくらいなのか。自然に人に優しいせっけんを作製、使用することで環境保全とごみの減量に貢献できていると考えています。


4. 回収の実績

 廃油回収を開始して、16年目になりました。今年の夏、46回目を回収しました。これまでの実績を一覧表にしています。(単位 リットル)
回収日山田小海老津小吉木小内浦小戸切小合計
第1回2001.7.2630254500100
第2回2001.12.2550505000150
第3回2002.3.28326207065
第4回2002.7.24262511354.3101.3
第5回2002.12.2660573900156
第6回2003.3.27001151062
第7回2003.7.22~2400400040
第8回2003.12.24・2500250025
第9回2004.4.5~7000000
第10回2004.8.2~6005022072
第11回2004.12.27・28272040300117
第12回2005.4.8、1100170.5017.5
第13回2005.8.1~500507.3057.3
第14回2006.1.5・6302017040
第15回2006.3.22~240057.310067.3
第16回2006.7.18~200067.10067.1
第17回2006.12.20・2100510051
第18回2007.3.22・232525480098
第19回2007.7.19・20181.650.56177.1
第20回2007.12.20~22545.2208.100.35267.65
第21回2008.3.21~24911.510.46541.9
第22回2008.7.17・18152063.3153116.3
第23回2008.12.22~24602033.51.810125.3
第24回2009.3.19・2319826.438022284.4
第25回2009.7.16・178313.3275013186.3
第26回2009.12.22~245133.574.13423215.6
第27回2010.3.23・241310.617.301.542.4
第28回2010.7.20・2110224.519.619.529.5195.1
第29回2010.12.22・24260233233.054644.5816.55
第30回2011.3.23・24369178.05178.6561.533.3820.5
第31回2011.7.19・20208133160.42523549.4
第32回2011.12.20~22340280247.791.2431,001.9
第33回2012.3.21~23188.5154.8154.83615549.1
第34回2012.7.18~20150151.214379.229.5552.9
第35回2012.12.19~21226270234287.8765.8
第36回2013.3.19~21206297264.5425796.5
第37回2013.7.17~19213257.4187.31.827.8687.3
第38回2013.12.18~20471.4375.33617.2171,231.9
第39回2014.3.19・2031428898.73.321.5725.5
第40回2014.7.16~18296267303.52044930.5
第41回2014.12.19・24309234359.23210944.2
第42回2015.3.23~24322.6306.527018.523940.6
第43回2015.7.15~17355302.437120161,064.4
第44回2015.12.21~245724125361623.51,559.5
第45回2016.3.21~24215182173.32048638.3
第46回2016.7.19・20243.52353583543.5915
 2013年度より町の事業として町内各施設、量販店などに廃油回収ボックスを設置してリサイクルに取り組んでいます。回収実績は、以下の表の通りです。
廃食油回収ボックス実績表
単位=リットル
回収年月東部公民館中央公民館西部公民館イオン岡垣合計量
2013年4月108568172
5月14413810292
6月80778165
7月1098619214
8月585916133
9月46680114
10月1188027225
11月56460102
12月13710725269
2014年1月9088011189
2月59600141260
3月634446125283
合 計1,0689091592772,418
回収年月東部公民館中央公民館西部公民館イオン岡垣合計量
2014年4月784417201340
5月763811128253
6月67640120251
7月110607167344
8月105925188390
9月54336208301
10月132893153377
11月79816142308
12月696819165321
2015年1月82596241388
2月50384154246
3月527019201342
合 計9547361032,0683,861

回収年月東部公民館中央公民館西部公民館イオン岡垣合計量
2015年4月743962172347
5月899515202401
6月51341202288
7月85778182352
8月668740191384
9月746531175345
10月1036436218421
11月364119137233
12月95767255433
2016年1月72685146291
2月66373161267
3月85655141296
合 計8967482322,1824,058


5. 今後の課題

 廃油回収から16年が経過しました。廃油が大量に出る給食現場からの回収は、確実にリサイクルされています。地域住民の方々からの回収量も回収場所の常設もプラスに働き、毎年、回収量が増加しています。
 私たち大人がリサイクル意識を持ち、行動する姿を見せることが岡垣町の将来を担う子どもたちにも伝わります。幼少期からリサイクル意識の育成が今後の課題です。学校現場では、牛乳パックの回収、ダンボール回収、プルタブの回収、トレーの回収、ペットボトルの回収、給食食材の生ごみの堆肥化を行っています。引き続き、各家庭からのリサイクル意識を高め、自治体と住民との橋渡しこそが、私たち現業職員が果たすことができる役割だと考えます。住民ニーズに応じることのできる職場の1つとして、今後も地道に取り組んでいきたいと考えています。