【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第12分科会 ほんとうの住民協働とは? ~地元スペシャルになろう

 現業職場は永年の行財政改革によって、経費削減を目的とした合理化が進められている。安易な職場縮小と職員削減は、住民にどのような影響を及ぼすのか、安心・安全な行政サービスのために現業職場が担うべき役割とは何かを模索するなかで、学校用務職場における取り組みを報告する。



宮崎市小中学校用務員部会の実態と単純労務からの脱却


宮崎県本部/宮崎市役所職員労働組合・現業評議会 野島 邦彦

1. はじめに

 これまでの行財政改革により、現業職場は合理化攻撃の標的にされ、職場の存続さえ困難な状況になっている。宮崎市の現業職場も例外ではなく、正規職員の退職者不補充や業務の民間委託等により、職員数は減少の一途をたどっている。しかし、このような状況だからこそ、現業職場における問題を整理し、職員一人一人が職場の実態を把握することで、何をしたら良いか、何ができるかを考え、行動を起こさなければならない。
 そもそも現業職場は、ハード面での定常的な作業が中心であるが、多様化する住民ニーズに応えるためには、地域福祉団体等とのパートナーシップ形成が必要と考える。ここでは、住民が主役となった活動に対し、地域団体や企業・ボランティア等と協力しながら、直営職員がコ―ディネートやサポートを行う共同事業について報告する。

2. 各職場の現状

 現在、宮崎市における現業職場は、清掃・学校給食・道路維持・運転手・学校用務の5職種であり、配置職員数は清掃43人、学校給食89人、道路維持9人、運転手9人、学校用務61人の計211人(内正規職員121人、再任用職員90人)となっている。これとは別に嘱託職員(学校用務)が12人いるものの、職員の高齢化は進むばかりである。このまま退職者不補充が進むと、5年後には正規職員が47人にまで減少することになる。
 各職種の状況をみると、清掃については現在、可燃物・不燃物の一部・資源物(蛍光灯・乾電池)の回収、ごみ排出指導、集積所設置指導等を行っている。職場は東部・中部・南部の3事務所があったが、現在は南部の1事務所に削減され、かつては運転・管理業務を行っていた焼却施設についても、現在は民間委託化されている。また、塵芥車は独居老人対策と、それに伴う狭隘道路対策のため、4t車から2t車へと移行された。
 学校給食については、4か所の給食センターと14小学校の直営単独調理を行い、中学校の単独調理はすべて民間委託、4保育所の調理員は7人の正規職員と1人の再任用で対応している。学校給食業務については、更なる委託提案を受けているところである。
 道路維持については、以前は未舗装道の重機整備やガードレール新設等も行っていたが、ほとんどが民間委託となり、現在ではパトロール巡回や軽微な補修など維持管理作業のみとなっている。
 運転手については、退職者不補充により再任用職員の職場となりつつある。現在は、12台の公用車の運転業務を正規職員1人、再任用職員8人で行っている。
 学校用務については、市内小中学校73校が用務員直営職場となっているが、正規職員27人、再任用職員34人、嘱託職員12人となり、正規職員以外は1日約6時間の短時間勤務であるため、学業時間外の営繕修理や登下校時の安全管理面に苦慮している。

宮崎市現業正規職員推移

3. 学校用務員部会の取り組み

 草花育成については、休日の灌水作業や育成作業など、時間外での対応が必要な状況であった。以前は、時間外の勤務については代休のみの取り扱いであったため、学校用務員部会で意見を集約し、交渉の中で時間外手当を支給するよう要求してきた。
 草花育成に取り組むことの必要性や成果を示しながら交渉を続けた結果、三六協定を締結する中で、2012年には年間75時間の時間外手当支給、2015年にはそれを年間150時間へ拡充するなど、草花育成を学校用務業務として認めさせ、実態に沿った時間外手当が支給されることとなった。
 また、当局が掲げる宮崎市現業職中長期計画については「学校用務員職場を再任用職場として活用する」として労使合意し、市内73校については1校1人配置の直営職場を維持している。しかし、正規職員の平均年齢は56歳になり、学校用務職員全体の体力面・勤務時間等の制限から、これまでのような活力ある部会活動が困難になりつつある。
 それでも、市主催のイベントへの花装飾協力、市の景観課が行っている花づくりコンクール等への挑戦、そして春季・秋季の市庁舎花飾り活動を30年以上続けるなど、今でも育成技術の向上に努めている。また、学校行事での花装飾はもちろん、生徒会活動の一環として草花育成や花壇整備支援、支援学級における草花育成学習支援や野菜づくり指導等、生徒及び教諭への学習援助を通して花育活動を行っている用務員も少なくない。

4. 学校での取り組み

 近年、学校では発達障害や保健室登校等、教育活動を進める上で支援を必要とする生徒が増加してきている。私が勤務している田野中学校でも増えつつあるが、教職員が支援するには十分な時間的余裕がないのが現状である。
 そこで私は、支援を必要とする生徒たちと関わりをもち、草花育成や農作物・工作物づくりを教諭・支援学級・生徒会役員等と一緒になって取り組んだ。このことが生徒にとって、成功体験とそれぞれの得意分野を発見する貴重な経験になるのではないかと期待したからである。
 その結果、今では生徒が主体となり、地域住民や老人クラブの方々に草花の育て方に関する講習会を毎月1回開催、秋にはそれぞれの花を持ち寄って校内で鑑賞会を行うまでに至った。特に鑑賞会については、生徒と支援者が一緒になってチラシやポスターをつくって地域住民に案内し、オープニング当日はミニコンサートや婦人会の抹茶振る舞いで盛り上げるなど、生徒と地域住民が一体となって取り組み、期間中の来場者は延べ500人を超えるほどの盛況をみせた。
 学校単体で始まった取り組みだが、支援の輪は広がり、地域のまちづくり協議会の協力や、婦人会が菊づくりクラブを新設するなど、地域全体での盛り上がりを見せた。さらに、地元企業から鑑賞会をメインとした秋祭りを開催したいとの話があり、地元の秋祭りへと拡大定着できるよう支援を続けたいと考えている。


 
卒・入学式の様子   支援学級の生徒と菊づくり

 
鑑賞会の見学者   婦人会の菊づくりクラブ「菊汝会」

5. まとめ

 今回、学校という場で生徒や教諭に草花の育て方を指導したことは、私にとって技術向上と意識改革だけでなく、最終的に自治体職員の使命である、地域住民への福祉や公共サービスに繋がったと自負している。特に、私がこれまで行ってきた播種・苗の株分け・移植・定植・殺虫剤や殺菌剤の散布・追肥等々といったハード面の作業を教えるため、企画立案やスケジュール調整、学校管理職・教育委員会との予算協議や材料の手配といった、ソフト面に携われたことはとても貴重な経験であり、今後も主体性を持って取り組みたい。
 どの自治体においても、民間委託や指定管理者制度の導入を推進し、私たちの職場を削減している。安心・安全な行政サービスを長期にわたって継続することは、労使共に重要な課題であり、自治体職員の使命である。地方分権といわれ久しいが、特色ある自治体をめざすためには、地域実情を踏まえた政策とサービスの実施が求められる。
 住民と直結している現業職員こそ、自治体政策・立案の会議に参加し、住民ニーズを的確にとらえたサービスの提供をしなければならない。現業職員は、それぞれの職種・職場で経験を重ね、知識・技術、あるいは地域との連携・職務能力を向上させながら業務にあたり、単純労務の枠を超えた仕事を行っているということを広げていくべきではないか。その中でも私たち用務員は、安心・安全な学校づくりは自治体の責任であることを認識させることが重要であり、その担い手として直営の職員はこれからも必要である。
 大変厳しい状況ではあるが、職場の生き残りや必要性を懸けて一人一人が問題意識を持ち、質の高い公共サービスを提供できる能力を磨くことで、必要とされる現業職場を積極的につくっていかなければならない。これからの現業職員はアイデアとプライドを持って職務にあたり、その成果を堂々と、かつ広く世間に主張することが必要と考える。