【自主レポート】

都立公園、都立動物園等の指定管理者制度
移行後の検証

東京都本部/自治労東京都庁職員労働組合・建設支部

1. 小山内裏公園指定管理者制度導入の問題点

(1) 新規開設「都立小山内裏公園」に東京都で初めての指定管理者制度を導入、民間事業者「日比谷アメニスグループ」による管理運営開始
   東京都建設局は、2003年9月の自治法改正施行以降、都行革推進室の方針に基づき、2004年7月に新規開園する「都立小山内裏公園」について、指定管理者による管理を行うとの方針を決定。2004年第1回定例都議会での東京都立公園条例改正により、東京都立公園条例の適用を受ける一般開放公園、庭園は例外なく指定管理者制度が導入できることになった。
   2004年7月1日から2006年3月31日までの1年9ヶ月という指定期間で、4月1日に指定管理者の公募が開始され、現地説明会、二次の審査会等を経て最終的に4月30日に選定・内定し、2004年第2回定例都議会で、「日比谷アメニスグループ」が小山内裏公園の指定管理者として指定された。
   東京における民間指定管理者の指定は、福祉保健局で建設中の東部療育センターに続き都で2例目。民間企業の参入は始めてのケースとなった。新規開園公園への指定管理者導入検討や公園条例改定にあたって、支部は、直営管理を主張したが、局との条例改正協議について詳細まで追及できなかったことは、反省せざるを得ない。公園条例の改正時の取り組みがポイントであったと考える。また具体的な指定のあり方に関しても、今後の取り組みに大きな影響を与えることになった。

(2) 2004年7月からの指定管理開始に伴う建設局への申し入れと回答

申し入れ事項
局回答(口頭)

1. 今後の公園管理に関わる局の考え方について
(1) 今回の選考過程と結果をどう受けとめているのか。また、今後これを踏まえてどのような公園管理を進めていくのか明らかにされたい。

 今回の選定では、グループの創意工夫ある事業展開を評価したものである。今後とも指定管理者の持つ能力やノウハウを活用し、質の高いサービスの提供を図る。

2. 東京都の業務について
(1) 指定管理者による小山内裏公園の管理に関して、今後の公園緑地部及び西部公園緑地事務所の役割分担と具体的な業務内容について明らかにされたい。またその業務に関する根拠規定を示されたい。

 部においては、組織細則に基づき、小山内裏公園の指定管理者の管理実績の評価及び監督に関することを行う。 所においては処務細則に基づき小山内裏公園に付属する施設の管理に関すること及び同公園に附属する施設及び植物の維持補修に関することを行う。
(2) 指定管理者の指定は、契約に当たらな いとの総務省見解があるが、指定管理者に対する東京都の関与について、通常の委託、工事(清算)契約の都職員の監督業務との違いを明らかにされたい。  指定管理者の指定は請負契約に該当しない ため、履行の場所においての立会いや工程の管理などを行う監督員による監督業務は不要となる。
(3) 指定管理者は、事業報告書を作成し都に提出、都はこれにより公的施設の目的に沿った利用をチェックするとしているが、具体的な業務は?  法令の規定による事業報告書の提出により、管理業務の実施状況や施設の利用状況、経費の収支状況など、適切に施設の管理運営が図られているかをチェックする。
(4) 東京都知事は、指定管理者に対し、業務、経理の状況に関する報告徴収、実地調査、必要な指示を行うとしているが、具体的にどのような業務となるのか。  指定管理者の業務に関して、必要に応じて実地調査や指示を行うものであり、管理委託制度において行っている業務と同様である。使用許可等法的手続きについては、現行の都立公園条例の中で許可権限をもっている。小山内裏公園は有料施設がない。これがでてくれば貸す、貸さないといった問題が出てくる。当面は問題がないと思っている。
(5) 東京都が指定管理者による管理継続が不適当と認めるとき、指定の取消、業務の停止命令はどのように行うのか。  始まったばかりで、具体的手続きは今後検討していく。問題意識はもっているが、発生した時点で検討したい。
(6) 指定管理者が行う使用許可に対する不服申立が出された場合、東京都の対応、処理は?  行政不服審査法の規定により処理される。都が使用許可の権限は有しているが、撮影許可とか問題が出てくればあり得る。
(7) 施設の設置管理の瑕疵に基づく損害賠償や、指定管理者の行為による損害賠償について東京都はどのように処理するのか。  被害者と東京都の関係では国家賠償法で対応するが、ますは管理者の責任において、現場対応で、民民の問題で対応すべきであり、解決がつかなかった場合東京都が対応することになる。
(8) 出納監査などについて、どのような業務が対象となるのか。  指定管理者の業務に係る出納関連の事務については、監査委員による監査の対象となると認識している。
(9) その他、東京都が関与する内容について明らかにされたい。  小山内裏公園の指定管理者導入に伴う東京都の業務については、上記に記載の事項のほか、募集に関すること、選考に関すること、指定に係る事務に関すること、指定管理者との協定に関することなどである。

(3) 担当事務所からの聞き取り調査
   日比谷アメニス管理開始から9ヶ月経過した段階で、小山内裏公園指定管理の状況について組合員から聞き取り調査を行った。
(要 旨)
  ① 小山内裏公園は、学識経験者が入って整備した公園であり、募集要項で整備主旨が明確になっている。管理方針も明らかになっている。それにそって管理をしてくれということだ。住民対応は事業者から対応する。当初法的なものはよくわかっていなかった。助言を多く求められた。
  ② 有料施設もないし駐車場も1箇所、サンクチャリーが多く管理が必要な場所が少ない。西尾根のごみ処理ぐらいか。地域の特徴は、新住宅市街地整備法で整備した地域、新興住宅地であること。占用自体少ない。消防訓練で2件どちらかといえば管理しやすい公園だと思っている。
  ③ 完了届け(実績報告)を毎月提出する。課長が写真や調書で履行確認一部にあげて支払い、日報は1週間ごとに送っている。
  ④ 市民協働・ボランティアについては、公園整備の段階で、都がボランティアの声かけを実施してきた。条件は整っていた。(ドッグラン、里山活動(田んぼ)、サトイモ畑、フラワーアレンジメントや大自然塾的な講習会)
  ⑤ 管理システム(IT)について1,000万単位で支出しているようだ。日報を毎日入力して管理運営月報を出力次の企画に反映させるというもの

(4) 指定管理者制度に関わる現場視察(調査)を実施
   2004年3月、第1回現場調査(小山内裏公園)を実施した。日比谷アメニスグループが自主事業計画で提示をした「公園運営管理情報システム」の内容説明を中心に質問、意見交換を実施。その後現場を視察した。
支部組合員の感想(要旨)
  ① 日比谷アニメスグループの都立公園に対する受注への意気込みを感じた。このことの背景は、小山内裏公園が全国的にも「実験場」になっていることである。
  ② 運営管理(企画調整、利用指導、案内、苦情対応、自然環境、利用促進)のうち、企画調整・都民協働に関して、民間業者としての発想がいろいろ出ているが、協会でも同レベルの発想はあるはずであるが、実態を調査し、比較をすべきだと思う。
  ③ 公園の施設管理(植物管理、清掃、施設保守点検、設備等法定点検、補修修繕、安全衛生管理、高熱水費支出等)のうち、植物管理、施設保守点検、設備等法定点検などにおいて、協会との違いがあるのか。他はないはずだ。
  ④ インターネットを利用した業務のうち、事後報告書(日報、週報、月報)などは、この日立ち会った限りでは、都職員・公社社員でも「できる」範囲と感じた。その後、協会や公園に関係する人に聞いたところ、出先には、パソコンが1台しかないため、利用できない、「覚えられない」という実態があるとのことである。つまり、民間業者との「格差」とは、厳密な意味でのレベルの高さ低さというよりも、条件の悪さを無視して、あえて比較していることである
  ⑤ こうしたことを、局・協会が放置していると、全面的に「格差」が生じる仕組みができる。研修と、設備の充実で対応すべきだ。また、この差は、落札価格にも反映しているのではないか。
  ⑥ 各出先に、案内していただいた副所長Aさんのような人を配置しているのか。(主任クラスを評価も含めて)人的配置に、「高齢化」問題が放置されていないか。高齢者と一緒に業務に携わるのは当然だが。
  ⑦ 公園協会やNGOと落札価格の「差」を発表できないことは、今後の民営化による「経費削減」の根拠がなくなることであり、市民への説明責任を果たさないことになる。その額と根拠を局からも説明すべきである。

(5) 都民・議会に対する東京都の説明責任は?
   小山内裏公園の指定管理者公募については、2004年3月に公募のプレス発表、4月1日から21日まで募集要項配布、現地説明会4月7日、4月12日から21日までの応募受付で17団体が応募した。4月26日には、書類第一次審査で3団体を選定し4月28日にプレゼンテーションでの第二次審査が行われた。5月14日には日比谷アメニスグループを内定し報道発表を行った。
   6月16日の第二回都議会定例会で議決したが、その議案は、行政処分議案として小山内裏公園管理について、日比谷アメニスグループを指定管理者に指定するというものであり、通常の契約議会案件と異なり、契約金額も公表していない。少なくとも都民の財産、公的施設に指定管理者制度を適用する場合、都は説明責任をはたすべきである。問題点については、以下のとおり。
  ① 契約価格の内容説明をしないこと
    小山内裏公園の指定管理者内定時や議会で指定決定した後にも、契約金額が公表されていない。議会で決定した後、指定管理者が提示した費用を基本に契約書が取り交わされる。契約書は公文書開示請求をすれば見ることができる。
  ② 応募した公園協会、その他の事業者との比較等公表もなし
    第2次審査に残った3事業者についてどのような基準で、どのような評価がされたのか比較対比できる評価結果を公表すべきではないのか。契約における総合評価方式が導入されるようになったが、いわゆる選定基準、評価項目、その基準を公表しオープンにして客観的な選定といえるのではないか。

(6) 指定業者の仕事の内容の特徴
   日比谷アメニスグループが事業計画で提示した、樹林地管理作業をインストラクター養成の一環とすることや、「公園運営管理情報システム(インフォメーションランドスケープ)」の導入による都民サービスの向上などが特徴であり、選定の要素となったようだ。システムを実態管理にあうように修正レベルアップしつつ都に提出する報告書等もこのシステムで行っている。本社のサーバーとリンクさせ相当の投資をしているという。
   指定管理者制度の導入目的について、公園管理について、創意工夫ある企画や効率的な運営により、利用者の多様なニーズにこたえ質の高いサービスの提供を計り、効果的・効率的な管理運営を目指すとしているが、選定の理由となった新たな公園管理システムがサービス向上につながったのか検証されていない。

(7) 2006年4月から公園協会に指定変更
   日比谷アメニスグループから2回目(1年9ヵ月後)の公園協会に指定が変更された。公園協会は、これまで直営管理公園9施設を除くすべての公園等を長年管理受託してきた外郭団体である。
   公園協会職員からは、市民団体が使用したスコップ等の園芸用具の整理が悪く次の利用者のことをあまり考えていないようだ。市民協働、ボランティア等も偏りがみられ、公平公正な都立公園の利用を考えるとどうかと思うなど率直な意見が出されている。日比谷アメニスグループの管理を経て何が変わったか。公園協会の派遣・固有を含めた人たちに集まってもらい、小山内裏公園をどのように思うか、率直に意見を出してもらうことが必要である。選考されなかったNGO・市民団体とも接触し、今後の対応をする必要がある。

2. 2006年4月開始の指定管理者制度施設について

表1 建設局における新たな指定管理者指定結果

施設名称
指定管理者
(内定)
指定
期間
選定方法
公募
団体
木場公園、和田堀公園、城北中央公園、光が丘公園、舎人公園、篠崎公園、葛西臨海公園、善福寺川緑地 (財)東京都公園協会
5年
グループ公募
防災公園グループ(8公園)
芝公園、戸山公園、東白鬚公園、猿江恩賜公園、 亀戸中央公園、大島小松川公園、林試の森公園、蘆花恒春園、砧公園、祖師谷公園、善福寺公園、尾久の原公園、汐入公園、浮間公園、赤塚公園、石神井公園、大泉中央公園、東綾瀬公園、中川公園、宇喜田公園 (財)東京都公園協会
5年
グループ公募
都市部の公園グループ(20公園)
狭山公園、八国山緑地、東大和公園、野山北・六道山公園 西武・狭山丘陵パート ナーズ
5年
グループ公募
狭山丘陵グループ(4公園)
長沼公園、平山城址公園、小山田緑地小山内裏公園、桜ヶ丘公園 (財)東京都公園協会
5年
グループ公募
多摩丘陵グループ(5公園)
綾南公園、小宮公園、滝山公園、武蔵野中央公園、武蔵野公園、浅間山公園、府中の森公園、野川公園、武蔵野の森公園、小金井公園、狭山・境緑道玉川上水緑道東村山中央公園、武蔵国分寺公園、東大和南公園、六仙公園(18年度開園予定)秋留台公園 (財)東京都公園協会
5年
グループ公募
武蔵野の公園グループ(17公園)
浜離宮恩賜庭園、旧芝離宮恩賜庭園、小石川後楽園、六義園、旧岩崎邸庭園、向島百花園、清澄庭園、旧古河庭園、殿ヶ谷戸庭園 (財)東京都公園協会
5年
グループ公募
文化財庭園グ ループ(9公園)
夢の島熱帯植物館 日比谷アメニス夢の島グループ
5年
公 募
夢の島公園    
 
 
日比谷公会堂・大音楽堂 大星ビル管理・共立・ 日比谷アメニス共同事業体
5年
公 募
潮風公園台場公園 埠頭公社・テレポートセンターグループ
5年
公 募
駒沢オリンピック公園 財団法人東京都障害学習文化財団
3年
特 命
 
青山霊園、谷中霊園、雑司が谷霊園、染井霊園、八柱霊園、八王子霊園、多磨霊園、小平霊園 (財)東京都公園協会
5年
特 命
 
青山葬儀所 日比谷花壇グループ
5年
公 募
瑞江葬儀所 (財)東京都公園協会
3年
特 命
 
恩賜上野動物園、多摩動物公園、井の頭自然文化園、葛西臨海水族園 (財)東京動物園協会
10年
特 命
 

(1) 都立公園について
   都立公園、庭園63施設について、防災公園グループ、都市部の公園グループ、狭山丘陵グループ、多摩丘陵グループ、武蔵野の公園グループ、文化財庭園グループの6グループにわけて公募にかけられ、表1のとおり指定された。
   単独公募は、夢の島熱帯植物園、日比谷野外音楽堂日比谷公会堂で、両施設とも民間事業者が指定管理者となった。青山葬儀所は単独公募となり民間事業者が指定された。
   霊園、瑞江葬儀所は、財団法人東京都公園協会が特命指定された。

(2) 動物園の指定管理者指定について
   結果は、特命指定―東京動物公園協会を特命で10年間の指定となった。
   平成17年5月23日建設当局は、指定管理者制度導入に関する「今後の動物園の管理運営(建設局検討案)」について建設支部に対し提示した。
   検討案の提示内容は、現行管理委託されている売改札・案内・清掃・警備・施設維持管理部門に加えて、飼育工事部門(派遣)で許認可、財産管理を除き、全部門を指定管理者に任せるというものだったが、支部の反論により、さすがに工事部門は直営で残すことになった。

(3) 都立駐車場について

表2 都立駐車場の指定管理者内定状況

施設名称
指定管理者(内定)
指定期間
選定方式
応募団体
中野駐車場
東武ビル管理(株)
3年
公募
11
三田駐車場
スターツアメニティ(株)
3年
公募
10
八重洲駐車場
(財)東京都道路整備保全公社
 
5年
公募
日本橋駐車場
室町駐車場
新京橋駐車場
東銀座駐車場

3. その他の問題点と取り組み(紙幅の関係で、項目のみとさせていただきます)

(1) 利用料金について

(2) 土木研究所と一般地方独立行政法人との関係
   (土木技術センターとし、地方独立行政法人化を止められたが、2年後見直し検討。産業技術研究所は、今年4月から一般地方独立行政法人に移行)

(3) PFIによる河川内のプレジャーボート係留施設整備
   (7年前に都における最初のPFI活用検討に組合が反対し、現在も未実施)

(4) 固有職員、非常勤職員、再任用、再雇用、派遣職員の身分
   都職員の派遣期間と身分

(5) 市場化テスト法が成立と指定管理者制度等との関連について

(6) 2006東京都行政改革指針(2005年11月)と実行プログラム策定(7月)

(7) 2007組織・予算に向けて