【自主レポート】

大阪城公園での市民参加・協働を考えるサークル

大阪府本部/大阪市従業員労働組合・公園支部・東部方面公園事務所

1. Q・Tサークル発足の経過

 公園維持管理業務は、日常的な作業を基本とした「知識・経験」を背景に代々引き継がれながら、基本的レベルの維持管理作業に必要な技術と技能を習得させてきました。しかし、引き継がれる技術と技能は一定レベルには達したものの、個々人の「学び」による度合いや、職場における環境と管理する内容に大きく左右され、その質的レベルにはバラつきが生じながらも、疑われることなくパターン化された「流れ作業」としての公園管理が進められてきました。つまり、私たちにとって「公園」は、いつの間にか単なる「仕事場」となっていました。
 日常の維持管理に「疑問」を抱き、単なる「仕事場」でしかない「つまらない公園」に訪れる市民や公園利用者は「………」。こうしたことを感じた仲間が集まりだし発足したのが「QTサークル」です。(Qはクオリティー:質、Tはテクノロジー:技)
 サークルの拠点は、大阪市の中心に存在する『緑が豊富な大阪城公園』を舞台とし、自然と触れ合う事の少なくなった人々と「大阪城公園をフィールドにした遊び・学び」を提供することとなりました。
 そのために必要な「エキスパートづくり」には、個々の能力を分け合うことが必要であり「誰もが講師であり生徒である」事を基本として進めることとしました。

2. サークル活動

 サークル活動を進めるにあたっては、私たち自身の「仕事のあり方」を総括する「振り返り」と、自身の「真似ぶ」から「学ぶ」へと変化させ、市民・公園利用者とのコミュニケーションから互いに「気づき」を促し、市民参画・協働による公園管理を行っていくことが必要とされています。
 日常から市民・公園利用者を意識し、また、仕事の中で「日々考える」事により「想い」を伝える事はもとより、地域住民・市民・利用者が求める要望を的確に把握し、如何にその実現に向け協働体制を築き上げるのかが最大の課題であると思います。
 過去の経過を振り返ると、画一的な行政サービスの提供を基本としたあり方は、地域の特性を活かすことがなく、閉塞的空間の構築と押し付けの提供であり、ややもすれば「他人まかせ」の体質をつくりあげてきただけではないかと分析されます。また、「地域」を共に育てる視点が欠如していたのかもしれないと思います。振り返ることの重要性に気づいた時、新たな一歩を踏みしめる契機となったことは言うまでもありません。
 こうした考えの流れの中では、自らが持つ知識と経験は必ずしも独占するものではなく、より広く多くの方に提供することが重要であり「自身が学ぶこと」「自身が知ること」の探究心を芽生えさせ、自らの考えの発信──市民・公園利用者の声を集約、これらのことを繰り返しつつ還元するシステムづくりが私たち公務労働者の責任ではないかと思います。
 そうした中では、今一度原点に立ち返り「潤い」「憩い」「やすらぎ」「学習」そして「探求心」あふれるフィールド「楽しく遊ぶ・学ぶ」の拠点として、再構築していくことが急務の課題であると考えます。
 東部方面公園事務所管轄においては、小学生・中学生を対象とした体験学習が盛んに行われており、公園職場での受け入れでは、仕事に対する「理解と責任」、グループ活動による仲間との連携、「命を育む」事の大切さと「人が人であるために自然とどのように共生するのか」などを重要課題として捉え取り組んでいます。また、与えられるだけの仕事ではなく、自らが考え行動できえる「人」の創造に努めたいとも考えています。
 近年国内で発生する凶悪事件の低年齢化は、大きな社会問題として取り扱われていますが、現在の社会倫理が軽視されていることが大きな原因としてあるのではないかと考えています。
 このことは、先にも述べたように「命」の大切さを誰が伝えるのかが問題ではなく、家族・地域・社会全体で導いていくことが基本であることに立ち返ることを示唆していると捉えています。このことに気付いた時、児童・生徒だけを対象とした事業の展開にとどまることなく、家族が一つになり共に学ぶ環境の提供が重要であると思います。私たちは、このことから「家族ぐるみ」「地域ぐるみ」で参加できる事業の実現・展開をめざしています。

3. 取り組み

 これまでも、個人的レベルでの「努力」と「案」により、案内パンフの作成・案内サイン・樹木を使用した創作物、来園者の意見や各種の団体の取り組みを参考にした飾りつけなど、コミュニケーションから多くの取り組みを進めてきました。
 現在、作業場でのコミュニケーションや講習会での意見集約、またアンケート調査を実施する一方で、サークル活動を中心として、市民や各種団体などの外部参加者を募りながら取り組みを具体にまとめています。

4. 参考・職員A

 去年の秋に、大阪城公園で初めて『松の木のコモ巻き』を行いました。他都市では珍しくはない光景ですが、大阪市という大都市の中心部ですることが意味の有るものと思います。大阪市に住んでいてコモ巻きを初めて見る市民の方も多く居られたみたいで、職員が作業中に問い合わせや質問を受けるといった事が多くありました。
 今年に入り『コモ外し』『コモ焼き』を行い、その時にはTV局の撮影も受けることになりました。今回この取り組みは来年、市民参加を行うための準備や安全面を確認するためのデータを取るものでもありました。
 データの結果、来年幼稚園・小学校または市民の方に参加していただけるだけの準備は整ったといえます。
 その他の企画として、『公園の剪定枝を使ったアート作り』『空濠に下り、石垣と植物の生態を見て歩く』『堀に船を浮かべ石垣を下から見る』『剪定枝を板代わりにし、子どもたちに樹木の名札を付けてもらう』等があり、それらを可能な限り現実化にむけるための資料作成等を行っていく段階です。
 これ等の企画を含めた、利用者から見た大阪城公園の印象・要望・期待等を記載したアンケートをとり、よりサークルでの企画を実行することに参考を頂きました。やはり利用者からの率直な意見というのは、管理作業をしている我々では思い付かない様な事が多くあります。
 公園を「職員がつくる・市民がつくる」では無く、自分が毎日のように訪れたくなる公園づくりを進めていき、公園を憩いの場にするもよし、学習の場にするもよし、条例や規則を多少外したような発想を出していく事で、新しい世界が見えてくると思います。しかし、実際には行政という立場が付く以上無責任な事も出来ないのが現状です。
 小学生を招き体験学習を行い、公園に親しんでもらうと同時に公園管理を知ってもらった上で、危険な作業や楽しい作業が有る事を学んでもらい、次に公園に来てくれる時には、公園に対する想いや目線が違ったものになるのではないかなと思います。
 また園芸治療にもなるような取り組みも考え、デイサービスを迎えて一つの花壇を作ってもらい、そこには花と生物が共存できるようなものを完成することによって、今まであった「植えるだけの花壇」「作るだけの花壇」ではなく「作り・育てていく花壇」を作ることによって、やる気・責任感・喜び等を感じてもらいたいと思います。また、障害者の方にも積極的に参加していただき、車椅子の方が植えて育てられる花壇を作り、目線で花や生き物を見て感じてもらえるようなものを作っていきたいと思います。
 大阪城公園には「ごみが一つも落ちていない」と言われるより「いい公園過ぎて、ごみを捨てられない」公園づくりをめざしていきます。