6. 各自治体の取り組み事例
県内の自治体においても、限りある財源の中で多様化する住民ニーズに対応し、公共サービス水準を維持していくため、補完性の原則に基づく協働のまちづくりに向けた取り組みが行われている。ここでは、具体的な取り組み事例として名張市、明和町、熊野市の事例を紹介する。
【事例1】名張市の事例 ~ゆめづくり地域予算制度~
名張市は2003年4月に、「住民が自ら考え、自ら行う」ことを目指し、市民参加により自立的、主体的なまちづくりを行うための財政支援として「ゆめづくり地域予算制度」を創設した。この制度は補完性の原則に基づき地域内分権の推進を目指すものであり、同時に住民主体のまちづくり活動に対する支援策である。
(1) ゆめづくり地域予算制度
一言で言えば、地域向けの補助金を廃止し、その財源でもって使途自由で補助率や事業の限定のない交付金を市内14の「地域づくり委員会」に交付する制度である。各委員会は地域の課題解決のための事業を自ら実施するが、交付金の交付対象は住民の合意により実施するまちづくり事業であれば良く、ハード、ソフトを問わない。
(2) 地域づくり委員会
地区公民館(おおむね小学校区)を単位とする市内14地域で住民の合意により設立された住民主体のまちづくり組織のことをいう。ゆめづくり地域交付金の受け皿であり、まちづくりの実施主体である。なお、14の地域づくり委員会会長で組織する「名張市地域づくり協議会」があるが、これは各委員会の上部組織ではなく、各委員会相互の情報交換や交流を目的としている。
(3) ゆめづくり地域交付金
地域交付金には基本額と加算額の2種類があり、基本額の年間予算は5,000万円である。(制度を導入した2003年から2006年度まで同額。)基本額の地域交付金額の算定方法は以下のとおりである。(資料として地域ごとの交付金額一覧表を記載)
① 均等割=予算総額5,000万円×30%÷14地域
② 人口割=予算総額5,000万円×70%×(地域の人口÷市の総人口)
①と②の合計額がその地域への交付金額(基本額)となる。
ゆめづくり地域予算制度は地域内分権と住民自治を進めるためのひとつの手法であり、名張市が実践する具体的施策のひとつである。と同時に結果として住民はもとより、市職員にも抜本的な意識改革が必要になってきている。
《資料》 各地域づくり委員会の特徴と交付金額一覧
地域づくり
委 員 会
|
地域人口
(人)
|
地域交付金額(円)
|
地域の特徴
|
区の数
|
基本額
|
加算額
|
名 張
|
8,303 |
4,506,000 |
12,422,800 |
市の中心市街地 |
20 |
蔵 持
|
3,587 |
2,554,000 |
4,684,800 |
農村部と住宅団地 |
6 |
梅 が 丘
|
8,082 |
4,414,000 |
5,221,800 |
住宅団地と農山村部 |
10 |
薦 原
|
2,201 |
1,981,000 |
4,481,800 |
農山村部と住宅団地 |
8 |
美 旗
|
9,151 |
4,856,000 |
10,822,800 |
農村部と住宅団地 |
20 |
比 奈 知
|
5,342 |
3,280,000 |
5,234,800 |
農村部と住宅団地 |
6 |
すずらん台
|
4,038 |
2,741,000 |
5,196,800 |
住宅団地 |
4 |
つつじが丘
|
11,514 |
5,834,000 |
10,140,800 |
住宅団地 |
10 |
錦 生
|
2,183 |
1,974,000 |
5,047,800 |
農山村部 |
11 |
赤 目
|
4,411 |
2,895,000 |
5,954,800 |
農村部と住宅団地 |
10 |
箕 曲
|
3,041 |
2,328,000 |
4,593,800 |
農山村部と沿道商業地 |
5 |
百合が丘
|
7,773 |
4,286,000 |
7,408,800 |
住宅団地と農山村部 |
14 |
国 津
|
936 |
1,458,000 |
4,379,600 |
農山村部 |
9 |
桔梗が丘
|
14,044 |
6,880,000 |
14,834,800 |
住宅団地 |
21 |
合 計
|
84,607 |
49,987,000 |
100,426,000 |
|
154 |
交付金合計
|
|
150,413,000
|
|
|
地域内人口は、2006年1月1日現在の住民基本台帳による。 |
【事例2】明和町における「NPO法人めいわ市民活動サポートセンター」について
(1) 目 的
市民活動を担う団体や個人を支援するとともに、住民相互の交流と市民活動の活性化を促進し、行政等との協働や地域住民の社会参加を通じて、住民が助け合う、明るい住みよい町づくりを共につくっていくことを目的としている。
(2) NPO法人めいわ市民活動サポートセンター設立の経過
1998年(平成10年)明和町女性グループ連絡会の話し合いからスタートしている。その後、市民活動は、明和町全体の問題であるという認識から女性グループだけではなく、市民活動に関心のある人を中心に発起人会を組織し、2002年(平成14年)1月に「明和町市民活動サポートセンター設立に対する支援について」の趣意書を町に提出し、準備会を発足させ、活動実施に向けて必要な資金の支援を願い出た。そして、2002年(平成14年)10月に「明和町市民活動サポートセンター」として発足した。その後、2005年(平成17年)8月1日からは、「NPO法人めいわ市民活動サポートセンター」として発足し、活動している。
(3) 明和町との協働事業
めいわ市民活動サポートセンター助成金として、明和町補助金交付要綱により、ボランティア団体、NPO団体等が活動の拠点となるサポートセンターの運営に対して助成する。補助率は、町長が別に定める。2005(平成17)年度については、200万円、2006(平成18)年度については、180万円である。また、活動拠点となる場所については町が施設を提供し、町民が主体となって運営している。
(4) NPO法人めいわ市民活動サポートセンターの事業
総務部、研修部、広報・宣伝部、してして・するする部の4部で構成されており、事業内容は別図とおりである。
《別図》 NPO法人めいわ市民活動サポートセンターの事業内容
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