【自主レポート】

自立自治体のあり方

三重県本部/「自立自治体のあり方」ワーキンググループ

1. はじめに(WG研究課題について)

 国と地方の厳しい財政状況と地方分権の流れの中で、財政の効率化を最優先とした平成の大合併が推し進められた。その結果、全国で自治体の枠組みが大きく変化し、岐阜県高山市のように東京都全体の面積を超える巨大自治体も誕生するなど、全国の自治体間に人口や面積規模等の更なる格差の拡大を生み出している。
 三重県内における市町村の数も69市町村(2003年11月末現在)から29市町(2006年1月末現在)に再編され、県内から村が消滅した。
 また、厳しい財政状況や少子高齢化および過疎化、住民ニーズの多様化など自治体を取り巻く課題はさらに深刻になり、これに平成の大合併も加わることで、地域における人と人との繋がりがますます希薄となり、これまで地域の安全や安心を支えてきたコミュニティが崩壊しつつある。
 そのような中で、全国の自治体では、コミュニティが持つ(持っていた)地域の力や特色に光を当て、これを支援し再生することで、地域との協働による行政運営によって生き残りを図ろうとする取り組みが展開されている。
 今回のWGでは、地域の力や特色に光を当てて生き残りを図ろうとする自治体=自治体の自立のためのめざすべきひとつのかたちと考え、そこにわたしたち自治体職員(組合員)や労働組合がいかに関わり、何ができるのかを考察し、提言していきたい。

2. 「自立自治体のあり方」ワーキンググループ体制

 
研究員氏名
単 組 名
座  長
藤 森 久 次
三重県職労
事務局長
沢 田 拓 郎
県本部書記次長
委  員
猪 又 英 樹
三重県職労
委  員
池 田 洋 章
朝日町職
委  員
山 下 憲 一
鳥羽市職
委  員
平 野 典 光
紀宝町職労
委  員
澄 野 正 義
自治研センター
委  員
秋 永 正 人
名張市職労
委  員
柳   昌 紀
三重県職労
委  員
杉 本 寅 昌
いなべ市職

3. 「自立自治体のあり方」ワーキンググループ開催状況

第1回
(1) と き  2006年4月13日(木)
(2) ところ  三重地方自治労働文化センター4F中会議室
第2回 
(1) と き  2006年5月11日(木)
(2) ところ  三重地方自治労働文化センター3F小会議室
第3回
(1) と き  2006年5月29日(木)
(2) ところ  三重地方自治労働文化センター3F小会議室
第4回
(1) と き  2006年6月14日(木)
(2) ところ  三重地方自治労働文化センター3F小会議室
第5回
(1) と き  2006年6月27日(火)
(2) ところ  三重地方自治労働文化センター3F小会議室
第6回
(1) と き  2006年7月10日(月)
(2) ところ  三重地方自治労働文化センター3F小会議室

4. 地方自治体を取り巻く現状と課題

(1) 地方分権
   中央集権型行政システムは、制度疲労を露呈し、多大な借財を残している。また、地方分権一括法施行(2000年4月)から6年が経過し、①個性豊かな地域社会づくり、②少子高齢化社会への対応、③地方財政の健全化、④東京一極集中の是正など新たな課題に対応するため、地方分権推進の必要性は更に高まっている。
   小泉政権誕生後、政府は、市場原理主義、新自由主義、競争原理の拡大、「小さな政府論」と格差の拡大につながる「改革」を推し進め、地方にも同様の「改革」を求めようとしている。
   本来、地方政府は住民自治の上に成り立つものであり、いま自治体が取り組まなければならない喫緊の課題は、「自治体内分権」や「地域住民の自己決定権の拡充」などに向けた制度づくりと、それらの制度を含めた住民と行政の協働による行政システムの構築である。
   そして、その仕組みを含めた住民と行政の協働による行政システムによってその地方政府のあり方が議論されるべきである。

(2) 少子高齢化(生産年齢人口の減少)
   昨年(2005年)は、わが国が人口動態の統計をとり始めてから、初めて出生率が死亡率を下回り、総人口が減少に転じ人口減少社会が到来した。出生数は、106万人、合計特殊出生率は1.25と過去最低を記録した。
   この少子化傾向が続くと、人口減少は加速的に進行し、総人口は21世紀半ばに1億人を割り込み、2100年には現在の半分以下になると見込まれている。人口の高齢化も世界に類を見ないスピードで進んでいる。2006年版高齢社会白書によると65歳以上の人口が総人口に占める割合(高齢化率)は20.04%となり、2015年には26.0%に達すると推計されている。「4人に1人」が高齢者となるのである。
   三重県においては、現在187万人の人口は24年後の2030年には166万人(約12%減)となる見込みである。一方65歳以上の高齢者人口は全体の31%に達すると見込まれる。
   また、少子高齢化とはすなわち生産年齢人口(15歳から64歳)の減少を意味する。
   自ら稼ぎ、税金を負担し、若年・高齢者層を支える年齢層が激減するのである。2030年には三重県の生産年齢人口は2006年比で約20%減少すると推定され、全国の減少率を上回る。
   現在は3人で1人の高齢者を支えているが、24年後には2人で1人の高齢者を支えなければならない。そしてこれは三重県の平均像であり、宅地化や都市化で人口が急増した市町では平均をはるかに上回る事態が予想されるのである。

(3) 厳しい自治体財政状況
   地方財政の状況は、2004年度で14兆1,489億円の財源不足を生じており、借入金残高は2004年度末で204兆円に達している。また、財政構造の弾力性を判断する経常収支比率・公債費負担比率・起債制限比率などの各指標はいずれも悪化し財政の硬直化が懸念されている。
   三重県においても、各市町村の借入金残高は市町村合計で約7,094億円、県内のほとんどの自治体で、年間の総支出額を上回るかほとんどそれに近い額となっており、県内自治体の財政状況は、非常に厳しいものとなっている。
   また、補助金・地方交付税・税源移譲の「三位一体改革」では、その第1段階として一部の補助金廃止と税源移譲がなされたが、約4兆円の補助金カットと約3兆円の税源移譲にとどまり、地方交付税改革についても、2006骨太方針でその目的を国の負担軽減とし、地方との対等な協議を経ないまま、一方的に負担を地方に押し付けようとしている状況にある。

(4) 市町村合併の影響
   今回の合併の大きな背景は、地方財政危機からの行政コスト削減の必要性、生活圏拡大と住民の利便性の向上、行政基盤、サービスの高度化・維持の必要性を旗印になかば強制的に進められ、1998年3月31日に全国で3,232あった自治体が、2006年3月31日には1,820に再編成され、平成の大合併も一段落となった。三重県においても69市町村から29市町になり、「村」が消え、住民に身近な行政サービスを提供していた多くの市町村(身近な行政窓口)が消えていった。住民の中には行政サービス低下に対する不満も出始めているが、このことが、「これまで住民への利便性やサービスの向上を名目として進めてきたことが、かえって住民の行政への依存を高め、自立性を損なっていたこと」を行政と住民の双方が自覚するきっかけとなった面も見逃せない。
   また、合併に際してサービス水準は高い自治体に、住民負担は低い自治体にあわせた新市・町も少なくなく、さらに厳しい財政状況には何ら変化がない中、行政コストの削減を理由に新規採用を見合わせるなど、人員削減が余儀なくされている。

(5) 地域間格差の拡大と過疎化の進行
   小泉構造改革路線が市場万能主義の政策を推し進めた結果、「ヒルズ族」に代表される富裕層の華やかな生活が報道される一方で、年収200万円以下の世帯の割合や生活保護受給世帯数が増加するといった所得間格差のほか、大企業と中小の企業間、大都市と農山村部など社会のあらゆるところで格差が拡大している。
   また、平成の大合併が全国で推し進められた結果、岐阜県高山市のように東京都全体の面積を超える巨大自治体も誕生するなど、全国の自治体間における人口や面積規模等の格差をさらに拡大させている。あわせて、国と地方の厳しい財政状況によって、財政力の差も拡大しており、自ら財政再建団体への道を選択する市も発生している。
   さらに、少子高齢化と人口減少に加え、核家族化と都市部への若年層の流失が農山漁村を直撃している。高齢者世帯は徐々に高齢者単身世帯となり、全国的には「限界集落」が現実のものとなっている。そして、ここにきて旧市街地や1970年代に開発された大規模住宅地でも高齢化と人口減が急速に進んでおり、過疎化はもはや田舎の問題ではなく、地方都市全体の課題となっている。
   過疎化が進行すると、生活道路や農業用水の管理、冠婚葬祭や消防団などの地域社会の機能を維持することが困難になる。また、地方自治体の税収が落ち込み、十分な行政サービスの種類や量の確保ができなくなる。さらに、地域産業の衰退を招くことにより過疎化がさらに進み、医療サービスの確保などさまざまな問題を引き起こしてくる。

(6) 住民ニーズの多様化
   住民ニーズの多様化とは、とりもなおさず住民の価値観の多様化ということである。もはや都会対田舎というような二元論では価値観を量れないし、それは年齢差、性差等においても同様であろう。最大公約数的なニーズに対応すれば、全体のニーズを満足させることができたというかつての"平均モデル"が存在しないのが現状である。
   平均モデルが存在しない中で、しかも将来減少していくことが確実な財源で地方自治体がなし得ることは何か。それは多様なニーズの全てに対応することではなく、地域のニーズにあわせて柔軟に対応できる仕組みを作ることではないかと思われる。地域に密着した形で社会的な課題を解決することが重要になってきており、地域に存在する様々な課題を、住民の選択と責任のもとに、まず住民の支えあい・協働により地域で解決していく組織づくりが必要である。
   また、これらを支援する自治体も、組織のフラット化、横割化の実現等が必要である。あわせて、地域社会やNPO、ボランティアによる活動や企業のサービスからも抜け落ちる部分に対するセーフティネットとしての役割が重要になると考えられる。

(7) 団塊世代の大量退職(2007年問題)
   2007年問題とは本来、団塊世代の社員が大量に定年退職することで、企業組織のスキルやノウハウが失われるのではないか。それを継承するにはどうすれば良いかという企業側の問題提起であった。
   しかし、地域の側から見ると、この世代が今後、企業中心の生活から、本来の暮らしの場である地域社会へ戻るきっかけになる新たな出発の時でもある。会社から地域に帰ってくる団塊の世代の居場所、受け皿が地域にあるのかという受け入れ側の課題がそこにはある。もとより退職者の全てが地域活動を始めるということはないが、全国で500万人といわれる退職者が生活の大半を過ごす場所を企業から家庭や地域に移すことは間違いない。そして、彼ら自らの生き方の選択にもなる。この世代が個性豊かに退職後の人生を生きること、そして、彼らは、社会への提供や還元できる能力とサービスとは何かを考え、出し合っていけるのではないか。
   様々な分野の元プロフェッショナルであり、かつ元気な人たちの居場所や活躍の場をどのように確保するか。これが地域や自治体が迫られている課題である。と同時に、自治体の財源や選択肢が縮小するなかで、地域活性化のまたとないチャンスであり、「元気な元プロの手を借りない法はない…」ということでもある。
   地域や自治会の活性化が、自治体がもはや財源的に実施できない分野の代替機能を果たし、むしろ自治体が行うよりも効果的な結果をもたらすというのは行政の都合の良い理屈であるが、団塊世代の退職者が住民主体のまちづくりの起爆剤になりうるというのは的外れではないと考える。
   ただ、他方で団塊世代が地域活動において、かつての肩書きや価値観、手法を押し通そうとするならば、地域に対立と混乱をもたらす恐れがあるということも指摘しておきたい。

5. これからの地方自治体とは…(めざすべきひとつのかたち)

(1) これからの自治体に求められるもの
   前章でも述べたように現在の自治体は、多岐にわたる課題を抱えている。しかも住民ニーズが多様化する中で、新たに対応が必要な課題も発生している。自治体には、これらの問題の解決と住民生活の質向上のため、幅広い分野でより専門的な知識やより高度な問題解決能力が求められている。あわせて、現在の自治体財政は、かつてないほど厳しい状況にあり、更なる歳出の見直しが迫られている。
   現在の自治体には、限られた財源と人材の中で、いかに地域住民の行政に対する満足度を上げることができるのかということを重視した取り組みが求められている。時には、現在当然のように行われている行政サービスについても、地域住民の満足度という視点に立って、サービスの質と量を見直すことも必要なのであり、あわせて、自治体が真に行うべきサービスであるかどうかを見極める力も求められている。
  ① 効果的な自治体運営(行政サービス全体の見直し)
    限られた財源や人材の中で、より効果的な自治体運営が求められている。「選択と集中」の手法による事務事業の見直しなど歳出削減への努力ならびに自主財源確保など歳入増への取り組みの強化、職員個々の能力を最大限に生かすための人材育成や組織体制の確立が不可欠となっている。
  ② 更なる情報公開の推進(住民への説明責任と情報・課題の共有化)
    地域や住民との協働を進めるためには、行政の情報が広く地域や住民に対し公開されることが不可欠である。情報公開を進めるためには、行政の運営手法や事業の成果等を明確に住民に示していく必要があり、行政の透明性を高めることができる。
    透明な行政運営は、事務事業の見直しやより効果的な行政運営、職員意識の向上などが期待でき、あわせて、住民の行政に対する信頼感を高めることにもつながる。行政側が、積極的に行政課題や財政状況等を地域住民に情報公開し認識を共有化することで、地域住民の行政参画を促すこともできる。
  ③ 地域内分権の強化(地方分権から地域内分権へ)
    地域住民が行政に求める公共サービスが多様化・高度化するなかで、自治体は、これらによりきめ細やかに対応していくため、住民に身近な問題や課題に対しては、より身近なところで解決できるよう地域内分権の推進が求められている。
    また、多様化・高度化する住民ニーズに対して、行政だけが対応していくことには質的・量的な限界があることから、行政に変わる新たな公共サービスの担い手の育成や支援が自治体に求められている。

(2) 補完性の原則(自助・共助・公助)に基づくまちづくり
   現在の多くの自治体では、かつてないほど厳しい財政運営が迫られており、これまで行政が担ってきた公共サービス水準の維持が困難になっている。
   そのため、自治体の中には、それぞれの地域が持つ特色や潜在的能力(=地域力※)に目をむけ、行政だけでは直接担えきれなくなった、また新たに必要となった公共サービスの担い手として、地域住民やコミュニティ、NPO等への支援を行い、これらとの協働や役割分担によるあたらしい公共サービスの運営により公共サービスの維持を図ろうとする動きも出てきている。
   そのための具体的な手法として、補完性の原則(自助・共助・公助)に基づく、地域住民やNPOとの協働のまちづくりをめざした取り組みが各地で展開され始めている。

『補完性の原則(自助・共助・公助)』に基づくまちづくりとは?

① まず、自分にできることは自分で(=自助)
② 地域でできることは、地域で(=共助)
③ 自助・共助で解決できない課題は、行政とともに(=公助)
⇒地域の中でそれぞれが役割を果たしながらまちづくりを展開

補完性の原則のイメージ

※『地域力』とは?
 今回のWGでは、それぞれの地域が持つ特色や潜在的な能力として、次のように定義している。
  ① 人と人とのつながりが強化されること。
  ② その地域の人々がそこに住み続ける覚悟を持つこと。
①②が高まる = 『地域力』が高まる
  ③ その結果、地域住民が自発的にまちづくりに参画し、自助・互助によるまちづくりを展開していく(行政は、各地域の活動をサポート)
  ④ その上で、どうしても不可欠となる公共サービスを行政が展開

行政の担うべき役割の重点化と新しい公共空間の多様化 ≪イメージ図≫

 

※総務省「分権型社会に対応した地方行政組織運営の刷新に関する研究会報告書」(2005年4月)
 分権型社会における自治体経営の刷新戦略 ─ 新しい公共空間の形成を目指して ─ より  

6. 各自治体の取り組み事例

 県内の自治体においても、限りある財源の中で多様化する住民ニーズに対応し、公共サービス水準を維持していくため、補完性の原則に基づく協働のまちづくりに向けた取り組みが行われている。ここでは、具体的な取り組み事例として名張市、明和町、熊野市の事例を紹介する。

【事例1】名張市の事例 ~ゆめづくり地域予算制度~
 名張市は2003年4月に、「住民が自ら考え、自ら行う」ことを目指し、市民参加により自立的、主体的なまちづくりを行うための財政支援として「ゆめづくり地域予算制度」を創設した。この制度は補完性の原則に基づき地域内分権の推進を目指すものであり、同時に住民主体のまちづくり活動に対する支援策である。

(1) ゆめづくり地域予算制度
   一言で言えば、地域向けの補助金を廃止し、その財源でもって使途自由で補助率や事業の限定のない交付金を市内14の「地域づくり委員会」に交付する制度である。各委員会は地域の課題解決のための事業を自ら実施するが、交付金の交付対象は住民の合意により実施するまちづくり事業であれば良く、ハード、ソフトを問わない。

(2) 地域づくり委員会
   地区公民館(おおむね小学校区)を単位とする市内14地域で住民の合意により設立された住民主体のまちづくり組織のことをいう。ゆめづくり地域交付金の受け皿であり、まちづくりの実施主体である。なお、14の地域づくり委員会会長で組織する「名張市地域づくり協議会」があるが、これは各委員会の上部組織ではなく、各委員会相互の情報交換や交流を目的としている。

(3) ゆめづくり地域交付金
   地域交付金には基本額と加算額の2種類があり、基本額の年間予算は5,000万円である。(制度を導入した2003年から2006年度まで同額。)基本額の地域交付金額の算定方法は以下のとおりである。(資料として地域ごとの交付金額一覧表を記載)
   ① 均等割=予算総額5,000万円×30%÷14地域 
   ② 人口割=予算総額5,000万円×70%×(地域の人口÷市の総人口)
      ①と②の合計額がその地域への交付金額(基本額)となる。
   ゆめづくり地域予算制度は地域内分権と住民自治を進めるためのひとつの手法であり、名張市が実践する具体的施策のひとつである。と同時に結果として住民はもとより、市職員にも抜本的な意識改革が必要になってきている。

《資料》 各地域づくり委員会の特徴と交付金額一覧

地域づくり
委 員 会
地域人口
(人)
地域交付金額(円)
地域の特徴
区の数
基本額
加算額
名  張
8,303
4,506,000
12,422,800
市の中心市街地
20
蔵  持
3,587
2,554,000
4,684,800
農村部と住宅団地
6
梅 が 丘
8,082
4,414,000
5,221,800
住宅団地と農山村部
10
薦  原
2,201
1,981,000
4,481,800
農山村部と住宅団地
8
美  旗
9,151
4,856,000
10,822,800
農村部と住宅団地
20
比 奈 知
5,342
3,280,000
5,234,800
農村部と住宅団地
6
すずらん台
4,038
2,741,000
5,196,800
住宅団地
4
つつじが丘
11,514
5,834,000
10,140,800
住宅団地
10
錦  生
2,183
1,974,000
5,047,800
農山村部
11
赤  目
4,411
2,895,000
5,954,800
農村部と住宅団地
10
箕  曲
3,041
2,328,000
4,593,800
農山村部と沿道商業地
5
百合が丘
7,773
4,286,000
7,408,800
住宅団地と農山村部
14
国  津
936
1,458,000
4,379,600
農山村部
9
桔梗が丘
14,044
6,880,000
14,834,800
住宅団地
21
合  計
84,607
49,987,000
100,426,000
 
154
交付金合計
 
150,413,000
   
地域内人口は、2006年1月1日現在の住民基本台帳による。

【事例2】明和町における「NPO法人めいわ市民活動サポートセンター」について
(1) 目 的
   市民活動を担う団体や個人を支援するとともに、住民相互の交流と市民活動の活性化を促進し、行政等との協働や地域住民の社会参加を通じて、住民が助け合う、明るい住みよい町づくりを共につくっていくことを目的としている。

(2) NPO法人めいわ市民活動サポートセンター設立の経過
   1998年(平成10年)明和町女性グループ連絡会の話し合いからスタートしている。その後、市民活動は、明和町全体の問題であるという認識から女性グループだけではなく、市民活動に関心のある人を中心に発起人会を組織し、2002年(平成14年)1月に「明和町市民活動サポートセンター設立に対する支援について」の趣意書を町に提出し、準備会を発足させ、活動実施に向けて必要な資金の支援を願い出た。そして、2002年(平成14年)10月に「明和町市民活動サポートセンター」として発足した。その後、2005年(平成17年)8月1日からは、「NPO法人めいわ市民活動サポートセンター」として発足し、活動している。

(3) 明和町との協働事業
   めいわ市民活動サポートセンター助成金として、明和町補助金交付要綱により、ボランティア団体、NPO団体等が活動の拠点となるサポートセンターの運営に対して助成する。補助率は、町長が別に定める。2005(平成17)年度については、200万円、2006(平成18)年度については、180万円である。また、活動拠点となる場所については町が施設を提供し、町民が主体となって運営している。

(4) NPO法人めいわ市民活動サポートセンターの事業
   総務部、研修部、広報・宣伝部、してして・するする部の4部で構成されており、事業内容は別図とおりである。

《別図》 NPO法人めいわ市民活動サポートセンターの事業内容

【事例3】熊野市における地域まちづくり総合計画の策定と実践
(1) 目 的
   熊野市におけるまちづくりの基本理念である「市民が主役、地域が主体のまちづくり」を実践するため、各地域において住民自らが自分たちの地域をどのようなまちにしていくのか協議して、その方向性と具体的な取り組みを定めた「地域まちづくり総合計画」を策定するとともにその取り組みを実践する。

(2) 地域まちづくり協議会の設置
   市内のすべての地域に地域まちづくり協議会を設置し、地域まちづくり総合計画の策定とその取り組みの実践を行う。(2004年度に15の協議会を設置、その後の紀和町との合併により2006年度からは18協議会に拡大)
   各協議会の委員は、区長や自治会長との相談により、自治会役員や老人クラブ、婦人会、PTA会長から選任されている。(1地区当たり委員は11人~26人)

(3) 地域まちづくり総合計画の策定
   上記の地域単位で教育文化、健康福祉、産業振興、生活環境などあらゆる分野において住民自らが考え実行するための「地域まちづくり総合計画(5年間)」を策定。
   この計画は、自らできることは自らで行う「自助」、地域でお互いに助け合って解決できることは地域で行う「互助」、「自助」・「互助」で解決できない時に市民と行政が協働して行う「公助」の『補完性の原則』の視点に立ってまとめる。

(4) 地域まちづくり協働事業
   各協議会の総合計画に基づいて地域住民と市が協働で実施する「公助」の事業には、原則1地区1事業に対し、200万円を限度に支援を実施(地域まちづくり共同事業補助金)
   ※参考資料「2006年度熊野市地域まちづくり協働事業一覧」参照

(5) コミュニティ形成推進チームの設置
   「地域まちづくり協議会」の設置及び運営について、アドバイザー的な役割を担うため、各地区に市職員で構成するコミュニティ形成推進チームを配置し、各地域協議会に3~6人のアドバイザーを派遣、市民との協働によるまちづくりを推進する。
   ※市職員は全員いずれかの推進チームに参加、各推進チーム内の互選によりアドバイザーを協議会に派遣している。

《参考資料》 2006年度熊野市地域まちづくり推進事業一覧

地区名
事  業  名
予算額
(千円)
荒 坂
防災まちづくり事業(避難誘導灯の設置)
1,399
遊 木
災害に強いまちづくり整備事業・新鹿湾ブルーツーリズム推進事業(避難誘導灯の設置等、体験漁業受け入れのための救命道具などの購入)
1,934
新 鹿
観光振興事業(砂浜の清掃、駅前への観光案内看板の設置、観光PRチラシの作成及び配布)
2,000
波田須
熊野古道活用波田須地区活性化事業(案内マップ、案内看板の作成)
737
磯 崎
葉生姜栽培事業、とうがらし酢漬け販売研究事業
430
大 泊
観光案内板等整備事業(案内板の設置と町内清掃)
1,274
木 本
地域資源パンフレット作成事業(パンフレットを作成し、学校における地域学習での活用を検討)
630
井 戸
井戸川環境美化普及事業(講演会の開催、井戸小学校プールの浄化、環境施設整備)
1,788
有 馬
文化伝承・後継者育成事業、地域文化力創造支援事業、健康ウォーキング推進事業(有馬地区独自のソーラン創作、木工・竹細工等の体験講座の開催等
1,000
育 生
ほたるの里整備づくり(床根広場に樹木を移植)
1,136
神 川
那智黒石の里神川温泉活用事業(温泉施設の整備)
2,000
五 郷
安心して住めるまちづくり事業(初期消火資材整備と初期消火及び救急救命訓練を実施)
1,955
飛 鳥
新規作物開発事業(遊休農地において新姫を栽培)
708

7. わたしたちが出来ることとは?(提言)
   ~出来ることから始めてみよう! 積極的に地域に出てみよう!~

(1) 地域との協働のまちづくりのために
  ① 自分で考え、目的を持って実行することの喜び
    自治体が住民との協働のまちづくりを進める上で重要になってくるのは、いかに地域の住民が行政やまちづくりに関心を持ち、主体性を持って参加してもらえるかにあるのではないか? 協働のまちづくりの主体となる地域住民が無関心のままでは、協働のまちづくりなどできるはずがないのである。
    このためにはまず、「自らが決断し、納得した上で実行していく」という自己決定の楽しさを地域や住民に伝えていくことが必要なのではないだろうか。高い会費を払ってスポーツジムで大汗をかくのも、ダイエットや健康管理という人それぞれの目的があり、目的のために実行することでそれなりの成果が現れるからである。だからこそお金を払ってまで苦しい思いを(自ら進んで)行うのである。
    スポーツジムの例は、同じこと(大汗をかく)であっても、その場に置かれている人がどう考える「(いやいや)やらされている」のか、「(目的を持って)自ら進んでやる」のかによって全く状況が異なるという例でもある。
    厳しい財政運営の中で、これまで行政が担ってきたサービス水準を維持していくためには、地域住民との協働が不可欠となっていることを踏まえ、行政の側も、現状をどう考え実行していくのかという「意識改革」が必要なのである。
⇒自らが考え、そして実行する楽しさを知り、伝えよう!
  ② まずは、日常生活の何気ないあいさつや会話から
    地域住民との協働に向けた対等な協力関係や信頼関係の形成のためには、いかにお互いの立場を理解し思いやり、共感できる関係を作ることができるかにあるのではないか。相互理解や共感というものは一朝一夕にできるものでもないし、理路整然とした理論があればできるというものでもない。それは、地域の中においては、日常生活の中での何気ないあいさつや会話、祭りや地域行事の中でお互いが協力し共に汗をかきながら緩やかに形成されるもののはずである。
⇒地域の中で信頼関係を築こう!

(2) 自治体職員であるわたしたちが地域の中で果たせる役割
  ① ひとりの地域住民として
    まず私たちは自治体職員である以前に地域においてはひとりの住民なのである。
    どの地域においても、それぞれの自治会やPTA、子供会、NPOなどの様々な組織があり、祭りや行事など様々な活動が行われている。例えば、地域の清掃活動や夏祭りの実行委員会、PTA行事など、それぞれがあまり無理をせず、自然に関われるところから参加し、顔なじみを増やすことや挨拶のできる人間関係を作っていくことから始めてみてはどうか?
    地域活動への参加を通じて自分の住む地域に仕事以外で貢献できることの満足感や、何かを成し遂げることの喜びを発見できるかも知れない。決して無理をしないことが長続きの秘訣である。
⇒地域住民として「共助」の担い手になっていこう!
  ② 自治体職員として

    地域と行政との協働のまちづくりを進める中で、地域組織が担う行政サービスが円滑に提供されるよう、自治体がこれまで培ってきた行政サービス提供のノウハウを地域組織に伝えることが重要となってくる。自治体職員には、公共サービスを提供するためのノウハウの蓄積があり、これを行政サービスの担い手となる地域組織や住民に惜しみなく適切に伝えていくというアドバイザーとしての役割を果たす必要がある。
    また、地域組織の考え方や要望等を自治体に伝え、また自治体の考えを地域組織に伝えるなど、パイプ的役割を果たす必要もある。
    このため、地域組織を主に担当する職員は上記の両方の役割を担い、他に主な業務を担っている職員は専門的なアドバイザーとしての役割を果たすことになる。
⇒地域の中で役割を果たし、必要とされる職員を目指そう!

(3) 労働組合(自治労)が果たせる役割
  ① 地域および行政に対して果たせる役割

    地域公共サービス労働者の結集する労働組合である自治労にとって、地域のまちづくりに対して決して無関心でいることはできない。
    自治体に対しては、情報公開制度や住民参加の仕組みづくりなど住民との協働を推進するための政策提言やまちづくり総合計画等への意見反映を行うという役割があげられる。
    地域に対しては、労働組合の地域貢献活動として清掃活動などのボランティア活動の実施や各地域のイベント等への参画やスタッフ派遣など、地域におけるまちづくりの主体のひとつとして積極的に役割を果たしていく必要がある。あわせて、地域活動の中で連携した地域組織や住民と行政との橋渡し的役割も期待される。
    労働組合が積極的に地域活動に参加することで労働組合の活動が住民にも認知され、住民からの信頼も得ることができる。そのことで初めて、私たちの自治体職員の賃金・労働条件への理解にもつながっていくのである。
⇒地域に信頼される労働組合を目指そう!
  ② 組合員に対して

    まず、組合員が地域活動やボランティア活動に参加できるような職場環境の整備や休暇制度(ボランティア休暇等)の整備といった労働組合としての役割を挙げることができる。自治体職員が日常業務のみに追われ、地域に目を向ける時間や意識を持つことができなければ地域住民との協働のまちづくりはできるはずがない。
    また、全国組織としての自治労のスケールメリットを活用し、全国の具体的な取り組み事例などの情報提供や学習会などの開催、組合員が地域で活動するにあたってのマニュアルの作成など、組合員が地域活動の中で役割を果たせるようなバックアップを行うとともに、地域イベントやボランティア活動へのスタッフ派遣(組合動員)や参画によって組合員が地域活動に参加するきっかけをつくることも重要な役割である。
⇒組合員の地域活動をバックアップしよう!

8. おわりに

 合併の有無にかかわらず、今後の自治体において、多様な住民ニーズに対応しきめ細やかな公共サービスを提供するためには、地域やNPOとの協働は不可欠となっている。
 また、地域内分権を進める上でも、住民の行政への参画や住民に身近なところでの行政運営が重要な要素となっている。職場では公共サービスの中核を担うわたしたちも、職場を離れ地域や家庭に帰れば、地域を構成するひとりの住民なのであり、ひとりの住民として地域の中で果たすべき役割は少なくない。
 今回のWGでは、ひとりの住民として、また地域公共サービスを担う労働者が結集する労働組合として何ができるのか、何をすべきなのかという視点で、できるだけ無理せず身近なところから始めるためのヒントとしての提言を行った。
 今回の提言が地域活動に参加しようとする職員(組合員)や労働組合への一助となることを期待する。


参考文献
・身近なまちづくり実践マニュアル(2006年3月、身近なまちづくりサポート会議)
・市民自治体、社会発展の可能性(2005年10月、須田春海)
・分権型社会における自治体経営の刷新戦略(2005年3月、分権型社会に対応した地方行政組織運営の刷新に関する研究会)
・協働推進ハンドブック(2006年3月、三鷹市)