【自主レポート】

「分権型社会完成に向けた都道府県再編成の将来展望」
静岡県「内政改革研究報告」を補強する3段階構想

静岡県本部/静岡県職員組合・行財政研究フォーラム準備委員会・事務局長 勝又 直人


目  次

1. はじめに
2. 都道府県再編成の意義と展望
3. 「道州制」と本県「報告」への態度
4. 「道州制」展望に不可欠な3段階構想
(1) 第1段階―現行都道府県の自治権拡充
(2) 第2段階―都道府県再編成の中間過程
(3) 第3段階―都道府県再編成の完成過程
  資料Ⅰ 静岡県内政改革研究会報告書
  資料Ⅱ 広域連合制度
  資料Ⅲ 2004年度静岡県広域連合研究報告書概要

1. はじめに

 当組合は、地方分権推進法が成立した直後の1996年2月8日に地方分権の検討・研究を開始しました。当初、「地方自治・分権対策委員会」の名称でスタートし、その後、課題の変化に対応して、「行財政対策会議」、「行財政研究委員会」と名称変更をしつつ、10年間に5回の提言を発表してきました。活動の基本として、「学者・知識人等の教授やアドバイスは積極的に受けるが、提言作成の委嘱・依存はしない」ことを位置づけ、組合員手作りで提言作成をしてきました。そのため、提言のレベルは、決して高いものではなく、今読み返すと首をかしげるものも多々あります。しかし、逆に、少しずつ表現・内容が「まとも」になってきている「成長」の過程をも見ることができるともいえます。
 平均すれば月1回は、10年間欠かさず検討・研究会を開催してきたことになりますが、「継続は力なり」を掲げ、シンクタンク「行財政研究フォーラム」結成へと一層の発展を期しています。
 さて、本題に入り、当組合は2006年7月8日に結成60年を迎え、この日の記念事業の1つとして、第21回自治研集会を行い標記の提言を発表しました。
 6回目の提言になりますが、これまでの提言と異なり、「今後の研究への基本的考え方」を簡潔に提起する内容になっています。内容の本旨は、①道州制の検討・対策は自治体及び自治体労働者が中心を担うべき、②まず道州制ありきは間違いであり中間課程が極めて重要、③そのプロセスは3段階に分けられるがいずれの段階でも広域連合が不可欠、の3点に集約されます。
 そして今後の研究の軸は広域連合であり、この組織は、都道府県再編成の決定的役割を担うだけでなく、広範な県・市町村の自治体労働者と一部の国公労働者の働く職場として重要視される必要があると位置づけています。その一方、広域連合には、制度の壁もあり、行政分野毎にその壁を取り除く研究作業が不可欠ですが、その作業の中から再編成への展望が開かれると確信しています。
 以上の趣旨に沿って、考え方を以下より詳しく提起していくこととします。

2. 都道府県再編成の意義と展望

(1) 現在、都道府県は、今後のあり方のみならず、存在そのものが問われる状況を迎えつつあります。この背景には、「市町村合併促進特例法」によって市町村合併が推進され、およそ3,300の市町村が1,820へと2/3以下に減少するとともに、この合併が特例市、中核市さらに政令市拡大へと連動し、都道府県業務の市町村移譲が大きく進行したことにあります。都道府県は、広域自治体として、広域的・調整的・補完的な地域公共サービスを提供していますが、市町村の変動は、この現状に大きな影響を与えることは不可避であり、都道府県のあり方が「今のままでよい」ということは許されない状況になりつつあります。この意味から、市町村の任務拡大に対応して、都道府県自ら新たな任務を明確にすることは、必要不可欠になっているということができます。

(2) 一方、2000年の地方分権一括法による地方自治法改正は、機関委任事務の廃止による国・地方自治体対等化という前進をもたらしました。
   しかし、事務権限と税財源の移譲は全くなく、2000年の分権改革は「実質権限移譲なき制度改善」というレベルに止まり、自治・分権がやっと一歩スタートしたという以上のものではありませんでした。
   その後、地方財政の「三位一体改革」が検討され、不充分とはいえ、初めて本格的財源移譲が俎上に上りました。結果は、またもや中央省庁の厚い壁の前に、地方財政確立の「道半ば」にも至らなかったものの、全国知事会を中心とした地方団体の連携した積極的行動が大きく発展したことは、未だかつてないものであり、分権は、国から「闘いとるもの」であることを改めて示しました。
   また、このことは、90年代半ばから今日に到る分権推進のなかで、国・中央省庁の権限・権益維持の壁は、並大抵の取り組みでは微動すらしないことを一層明らかにしたともいえます。地方分権の完成は、国権限を外交・司法・経済・金融に限定特化させ、国民生活に関わる権限・事務は原則としてすべて地方自治体が担うことにあります。中央省庁の壁を破り、より地方分権社会の完成に近づけるためには、自らの再編も含めた将来展望を確立することが、都道府県の任務としてもとめられる時代に入ったことは明らかといえます。

(3) 以上のような、国・県・市町村の新たな任務区分がもとめられる情勢のなかで、都道府県再編の将来展望として道州制をめぐる論議が次第に活発化しています。2003年末に本県が「内政改革研究会報告」(以下「報告」という)を出した時期を前後して、各県・政界・経済界から様々な「道州制論」が示され、最近では全国知事会が「分権型社会における広域自治体のあり方」を、そして、第28次地方制度調査会が「道州制のあり方に関する答申」及び全国を9~13の道州に収斂する区域案を示しています。
   しかし、道州制が、都道府県再編成という地方分権拡大の延長線であるならば、当然、各都道府県自身がその取り組みの主役でなくてはなりません。
   従って、各都道府県は、自らの「構想検討・提示」を行うとともに、それに止まることなく、具体化実現への積極的行動を担うことが重要です。国に関わる制度設計は「国待ち」、というような従前の姿勢や、国の「特例法誘導」による市町村合併と同様のことが繰り返されてはなりません。
   このためには、地制調答申に基づく国主導を許さず、各県がそれぞれ独自の主体的な行動を起こすとともに、全国知事会や地方団体における一定の連携調整・意思疎通を図ることが必要です。

3. 「道州制」と本県「報告」への態度

(1) 私たちは、都道府県が「いつまでも今の規模・形でよい」という立場でなく広域化・高度化した組織へと変化、発展することが必要であり、また、多様な将来構想の選択肢の1つとして「道州制」検討も含まれうるものと考えます。
   しかし、市町村を減少させ、次に都道府県を減少させるために統合再編する「自治体縮小論」には強く反対します。地方自治の拡大こそが、わが国政治行政の民主的改善にとって不可欠であり、国権限の縮小=自治体権限拡大という視点から道州制をとらえていくことが何よりも重要と考えるからです。
   そうである以上、今後、都道府県の再編成、そして更なる広域化=道州制という段階であっても、それは自治体であること、かつ、住民自治が可能な地域としての一体性を維持しうる規模・範囲であることの2点が絶対的な基本的要件でなくてはならないと考えます。

(2) 同時に、140年近い歴史をもち、憲法上の位置づけもされている都道府県制度を再編・改組していくことは容易なことではなく、住民合意や国・自治体の任務明確化などの前提条件づくりが不可欠です。私たちは、道州制を展望する場合は、3つの段階を経て始めて到達が可能となりうる将来構想と考えます。
   その3つとは、第1段階が、現行都道府県・市町村の枠組みにおける徹底した自治権限拡充と財政確立、第2段階は、移譲された国権限の一部(支分部局等)を包含した広域・高度な行政サービスを担いうる都道府県再編成(本県「報告」でいう政令県構想もその1つ)、第3段階がこの広域・高度に再編された都道府県に対し、さらに国・中央省庁から権限の「大幅分割移譲」が行われる「道州制」の完成です。道州制は、第1と第2の制度改善拡充が徹底して深化されるなかで初めて展望可能となるものであり、このプロセス抜きの国機関・審議会による如何なる構想も「絵にかいた餅にもならない」どころか、私たちがもとめる分権完成への再編成とは全く逆の結果を招く危険性があると考えます。

(3) この視点から、様々な「道州制」論と比較したとき、本県の示した「報告」は際立った特徴点をもっており、徹底した地方自治・分権から都道府県再編成を展望する私たちの立場からも、一定評価に値する内容を包含し、また、真剣に検討すべきいくつかの課題を指し示しています。
   具体的には、①「内政改革」と位置づけ、国・地方の任務明確化と都道府県のあり方を主眼としており、最初から道州制を目的化している地制調答申など多くの「道州制」論のもつ誤りを犯していないこと、②改革のプロセスを現実かつ段階的に明示し自治体としての主体性と一体性保持を追求していること、③県民への高度・広域行政サービスの均等提供を図るため、新型指定都市に対応できる広域連合を提唱しかつ緻密な検討を進めていること、等々の特徴点があります。いくつかの不十分な点もありますが、この「報告」には、都道府県だけでなく市町村を含めた自治体の将来のあり方に加え、そこで働く自治体労働者の職場・仕事の将来展望のべ一スともなりうる提起が含まれていると見ることもできます。
   以上の評価から、私たちは、この「報告」を参考素材とし、また、「報告」を補強しながら、独自の都道府県の将来構想を明らかにしていくことが重要と考えます。以下、都道府県の直面する課題、中期・長期展望を3段階に分け、それぞれについて検討することとします。

4. 「道州制」展望に不可欠な3段階構想

(1) 第1段階─現行都道府県の自治権拡充
  ① 2000年改革において、都道府県行政の70%を占めるといわれた機関委任事務が廃止されました。しかし、未だ国の出先機関的要素を払拭するには程遠い状況にあります。このことの改善なしに次のステップはありません。
    現在進行している税財源の移譲をより一層拡大し、自主課税権限の拡大、交付税制度の改善、県債発行権の自主性拡大は必要最低条件です。この税財源の移譲と連動して、事務事業と権限の移譲を実現していかなくてはなりません。
    もし、仮に、この改善がないまま再編成・「道州制」に転化していく事があるならば、それは単なる地方政府縮小への行革にすぎず、自治権拡大とならないだけでなく、そこでつくられる「新組織」は、自治体というより、国がつくる国機関的要素が強い、私たちがもとめる分権完成型自治体とは全く異なる「道州制」となる危険が極めて高いといわざるを得ません。
  ② また、事務権限の拡大や地方財政の確立とともに、国・県・市町村の対等関係の徹底と県が現在担っている市町村に対する補完・調整・広域などの支援機能の充実強化が求められます。合併が進んだとはいえ、合併しないことを主体的に選択した市町村も多く、また、合併したとしても、政令市あるいは中核市には至っていない自治体が圧倒的に多い現況下、現在の都道府県機能は、当分の問、何ら変わるものではありません。地方分権の基本理念は、基礎自治体である市町村を公共サービスの中心に置くことによって、住民自治の拡大を図ることにあることからしても、合併の有無で財政困難に陥り、住民サービスの格差拡大が生じることがあってはならないはずです。市町村の自主・主体性重視、県・市町村の相互信頼、相互支援関係が、今まで以上に重要です。とくに、県が参加する広域連合を展望する本県にとっては、この点が強く求められます。同時に、国による財政統制に対しては、県・市町村一体となった自治・分権闘争を拡大強化することが不可欠であることはいうまでもありません。

(2) 第2段階―都道府県再編成の中間過程
  ① 現行都道府県における自治権拡充の次の段階は再編成の中間過程に移ります。この段階の目的と意義は、合併による市町村広域化に対応するとともに、国・事務権限の一部を組みこんだ都道府県づくりにあります。より具体的にいえば、新たな都道府県の行政範囲を明確にし、市町村との新たな分業により、一層地域住民へのサービス拡充を図ることと、分権型社会の完成に向けて地域生活に関わるすべての行政を国から自治体へ移行させるスタートを切ることの2つの達成が目標になります。この2つを達成するには、現行制度では限界があり、一定の制度改善と自治体再編成が不可欠です。
    そして、この過程を経ることなくして最終的分権型社会の完成や、その1つの形態である「道州制」には到達し得ないことを強調するのが私たちの主張の大きな特徴です。何故ならば、私たちの最終目的は、国支分部局の一部移譲などではなく、「霞ヶ関体制」といわれる中央集権の解体再編成にあるからです。
  ② この最終目的を達成するには、相当な難問克服と長い期間を要します。
    このためには、長い中間的プロセスをしっかり位置づけることが出来るか否かが、真に分権型社会完成としての「道州制」を具体的、現実的に展望しうるか否かのメルクマールと考えます。このプロセスを経ずして、中央省庁からの事務権限移譲は「微塵」たりとも実現しえないことは、長い今までの中央集権の歴史をみれば明らかです。また、国・支分部局の一部移譲があれば「分権完成」とみることも、私たちの目標と大きく異なるばかりか、中央集権の追認=永続化という大変間違った結果を招くことになります。
    この中間的プロセスを持たない「いかなる構想」も現実性がないばかりか、達成する終着点が住民の期待に反するものとなることを重ねて強調しておきます。将来構想としての道州制は、この中間再編過程の徹底した拡大強化の延長線のなかにのみ展望が開かれると考えます。
  ③ 次に、この中間課程のあり方について提言することにします。まず、最初にいえることは多面性・多様性をもつことです。都道府県同士の合併や広域連合、本県が提唱している政令県、などが考えられます。この中間過程が自治体・住民の自治権拡大のたたかいの中で次第に拡充し、高度化され、「道州制をつくるしかないという状態」がつくりだされるなかで、はじめて国権限分割縮小=分権型社会完成の基盤を得ることができるのです。従って、完成される段階での道州制の数は未定です。15~16かも知れないし、20以上かも知れません。
    それは、自治体と住民が決めます。しかし、中間過程であれ、完成過程であれ、自治体である以上、住民自治を維持できる距離・範囲と組織・機構が要件であることは先述したとおりです。
  ④ 次に、この中間的再編成の内容が問題となります。とくに市町村行政との関わりが重要になります。市町村は合併により数的には減少しましたが、行政エリアは拡張かつ多様化しています。とくに特例市、中核市そして政令市は増加傾向にあり、これを反映し県行政の市町村との関連も多様化することになります。しかし、相当長期的に考えても、すべてが政令市になることは想定できません。そこで重視されるのが広域連合制度です。この制度は、もともと市町村合併の代替とも位置づけられるものであり、従来はあまり活用されてきませんでしたが、今後は、大いに活用される必要があります。同時に重要なことは、この広域連合は、政令市並みの高度な行政サービスを住民に提供するというだけでなく、国事務権限の受け入れを可能にする制度でもあります。県が参加する広域連合の意義はここにあります。もちろん広域連合は多様性・多面性をもっており、参加自体も市町村の主体的な判断です。従って、広域連合の目的・意義・事務範囲についての県・市町村の連携への意思統一は極めて重要です。
    しかし、その過程における大変な作業そのものが自治体づくり、分権へのたたかいとみることができます。
  ⑤ ここで、広域連合は、自治体再編成過程のすべての段階において重要な位置を占めることを示すこととします。
    第1に、現行の段階では、小規模市町村から政令市まで市町村形態の多様化に伴う格差縮小の任務を担うことになります。具体的には、県が参加して、政令市並みの高度性・機能性のある行政サービスを、より住民に近い自治体をとおして提供していくことに大きな意義を見出すことができるとともに、個々の市町村の主体性と一体性を尊重することにもなります。
    従って、想定される広域連合は、当初は、内容も規模も多様・多面性を持つべきです。そして、内容や連合組織の充実発展に対応して拡充・収斂していくことが期待されることになります。本県の場合、3つの大広域連合が想定されていますが、これは、目標として位置づけることが適当であり、6つの広域連合ができても決して不思議ではないということができます。
  ⑥ 第2に、都道府県再編成という段階では、広域連合の重要性は飛躍的に高くなります。それは、都道府県行政の広域化は、市町村行政の広域化と相互に連動するからです。つまり、県・市町村の広域連合が機能しない限り、都道府県の広域化・再編成は順調には進まず、逆に、都道府県再編成が先行したとき、広域連合が機能しない場合、現行都道府県機能を一定程度維持する「中間的組織」が必要ということになりかねません。しかし、自治体2層制を堅持すべきという私たちの立場から、この事態は避けるべきであり、その意味からも広域連合の不可欠性を見ることができると考えます。また、市町村行政広域化を言う場合、合併によっても可能ですが、もはや、半強制的な合併や誘導を繰り返すべきでなく、国・県・市町村対等の自治原則の観点からも、広域連合のもつ意味は大きいものがあります。
  ⑦ 第3に、「道州制」も含め、分権型社会完成時の段階でも、広域連合は決定的な要素となります。この段階では、基礎自治体(市町村)は、現行の都道府県業務の相当部分を移譲され、一定の広域・高度な行政サービスをも担うことになります。従って、原則、すべての基礎自治体は、政令市化されているか、広域連合に参加しているかが想定されることになります。つまり、分権型社会完成の可否は、第1段階から第3段階までをとおして、広域連合が、設立され、拡充され、収斂され、成功・成熟するか否かで決せられることになります。もちろん、現行制度は、国・都道府県・市町村の必置業務を基本としており、課税権を含めた広域連合への広範な事務権限の移譲が必要になりますが、地方分権完成という「革命的事業」にとって大事の前の小事と捉えるべきです。
   以上のように、広域連合の不可避・重要性を位置づけた時、都道府県および町村職員の相当部分さらには国の職員の一定部分が広域連合に所属することになります。この点は、「自治体再編と公務員労働者の職場」として、別途研究する課題にしたいと考えます。

(3) 第3段階―都道府県再編成の完成過程
  ① 再編成が完成した姿を想定することは、大変困難であるといえます。その困難な理由は、現行の都道府県がどのように機能強化・高度化・再編成されていくのか、その過程が多様に存在することです。つまり、本提言の第1および第2の段階がどのように推移・展開するかによって、完成型は変わってきます。地方分権が着実に進行し、分権型システムが蓄積されていくならば、国は、外交・防衛、経済・金融など国家存立や全国統一の活動に特化・傾注し、それ以外の事務権限は、すべて新広域自治体である「道州制」と市町村(広域連合)に移行するという「理想型」が現実化します。しかし、それには、中央省庁という大きな壁があります。
    第1段階の現行都道府県の「完全自治体化」である事務権限や税財源の移譲が遅々として進まない状況一つみても、中央官僚制の強靭さは、自治体が期待する分権型再編成は、容易でないことを示しています。この官僚から根本的譲歩を引き出すことは、まさに、分権「革命」とも位置づけ得るたたかいであり、これを国民運動にまで高める中心を担いうるのは、都道府県を中心とした自治体であり、自治体に働く労働者です。
    このたたかいの成否の度合いによって、完成時の姿が、どれだけ、「理想型」に近づくかが規定されることになります。従って、10年前に地方分権が本格化し始めた時の基本であった「国事務の限定列挙による自治権の飛躍的拡大をめざす分権型社会」を、改めて、十分に検討・意思統一することが必要であることを重ねて強調したいと考えます。
    以上の考え方にたって、今回の地方制度調査会の「道州制のあり方に関する」答申を検証すると、答申は多くの誤りを包含しており、検討に値するものにはなっていません。この答申の大きな欠点として、(ア)国の任務を限定明確化し、それ以外の行政・公共サービスすべてを自治体に移譲する目的・方法が不明確かつ非現実的であり、「道州制」は分権完成への手段・方策であるべき、という徹底した分権姿勢が極めて不十分であること、(イ)一体性と住民自治を否定しかねない平均1,000万人を超える「住民」となる区割り案に示されるように、答申作成過程で、各県など地方の意見と実体の把握がほとんどされていないこと、(ウ)「道州制」へのプロセスが全くなく、法改正で一斉に制度移行を図ろうとする非現実的・非民主的・「中央集権的」な方法、等々です。(ア)については、「できる限り移譲」などと記されているが、この表現では、結果は限りなくゼロに近いものにならざるを得ないこと(イ)については、欧米の最大の地方公共団体でも、500万人を超えるものはない実態比較からしてもあまりにも大き過ぎる「自治体」であること(ウ)については、市町村行政機能や都道府県行政機能の広域化への集約状況を無視した都道府県の組織形態変更はありえないことなどが、3つの欠点の理由・補足説明です。
    すなわち、地制調答申のめざす「道州制」は地方自治体ではなく、国の機関に近いものになる危険性が高いといわざるを得ません。しかも、その一方では、国からの移譲は、精々のところ国の支分部局の一部に終わる可能性すらあります。このような完成型は、わたしたちのめざす分権とは全く逆の、霞ヶ関体制=中央集権の永久化につながるものでしかありません。
    私たちは、地制調答申に反対であり、今後の運動の中で全面修正をもとめていく必要があります。今後も、政府・各界の「道州制」論議・検討状況を厳しく検証し、それに対応して説得力をもつ批判・対案を連続的に提起していくことが、あるべき都道府県構想確立に向けた私たち自治体に働くものの任務であると位置づけたいと考えます。

資料Ⅰ 静岡県内政改革研究会報告書

資料Ⅱ 広域連合制度

資料Ⅲ 平成16年度 静岡県広域連合研究報告書の概要