【自主レポート】
1. はじめに 最近、新聞等で「少子化対策」「子育て支援」の文字を目にすることが多くありませんか? 年金や国の財政を論ずるときに「このまま少子化が進めば出生率が減少し、年金(財政)は立ちゆかない。」なんていう風に取り上げられることが多いようです。2006年に入ってから児童手当に関する法律が改正された時は「額が少ない」「いや十分」「安易に増やしていいのか?」といった議論が行われていました。 2. 日本の児童福祉の歴史 明治時代以降で考えてみると少子化対策よりはむしろ産児制限などの印象が強かったりします。何しろ避妊に関する知識と道具が広まったのは戦後以降のことであり、それ以前は「子どもを産まないためにはどうしたらいいか、産む場合には丈夫な子どもを産みたい」ということの方が問題でした。たくさん産んで、死亡率も高いという「冷たい方程式」が成り立っていたわけです(図1、図2参照)。政府も出生率には着目していましたが、これは「富国強兵」をめざす中で、安定した税収を確保し、徴兵制を維持するのが目的だったようです。1941年には人口政策確立要綱と言う方針が閣議決定されますが、これを見てみると、国を支えるために「健康な子ども」を両親は育てるべきであるという書き方をしてあります。子どもを育てるのは親の義務であり、国が責任を持つものではないという考え方が色濃いですね。
3. 諸外国との比較 日本の制度を検討する前に、諸外国の制度をちょっと見てみましょう。対象国は日本・フランス・ドイツ・アメリカ・ノルウェーの5カ国、日本とアメリカ以外のデータは2003年~2004年海外情勢白書から引用してあります(別紙1参照)。児童手当以外の制度についても比較したかったのですが、資料を集められませんでした。 4. 現在の群馬県における諸制度
今度は日本国内で制度の比較をしてみましょう。児童手当については国内ではほとんど違いはありません。現在は手当として支給される金額の内、およそ2/3を国が補助し残りの1/3を自治体が負担する仕組みのようです(支給内容について細かく補助割合が定められています)。東京都の一部の区では所得制限をはずしてその分を自治体単独で補助するという制度があるようです。自治体単独分については国の補助対象にならない可能性が高いので、これを行っているのはかなり財政状況が良い自治体だと思われます。 |
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(県補助対象) |
未就学児童 (市単独) |
(市単独) |
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79,471 |
85,842 |
165,313 |
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71,227 |
82,132 |
27,901 |
181,260 |
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66,576 |
84,415 |
36,912 |
187,903 |
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73,129 |
86,674 |
43,161 |
202,964 |
乳幼児福祉医療制度の場合、国が直接関与しないため事情は異なります。都道府県の制度を比較した場合(別紙2参照)、都道府県ごとに制度にばらつきがあり、群馬県はかなり手厚い給付制度を実施していることがわかります。また県内市町村の制度を比較してみると(別紙3参照)、他市に比べて藤岡市の制度は対象範囲が一番広いことが読みとれます。ほとんどの市は対象範囲を就学前としており、沼田市と藤岡市のみが突出しています。さらに藤岡市の乳幼児福祉医療費支出の内訳を調べてみると(表4参照)、範囲の拡大により、県補助の対象にならない支出が年々増加しています。県補助の対象となる乳幼児医療費の範囲はむしろ縮小する方向で検討が進んでいるため(例:入院中の食事費を自己負担とする)、今後、市の支出はさらに増加する見込みです。 5. おわりに 閣僚が「乳幼児手当」の創設について発言したり、民主党も「子ども手当法案」という対案を発表したりと、少子化対策を巡る動きは相変わらず活発です。児童手当も法律が改正され、既に支給手続きが始まっています。しかし、小泉政権が全面的に「構造改革」を打ち出して色々な社会保障が切り捨てられる中で、なぜ「少子化対策」については頻繁に取り上げられるのか、どうしても違和感を感じてしまいます。今回、情報を集めてみて「少子化対策」に関する問題は他の政策と一緒に考えなければいけないと強く感じました。出生率が上向きにならないのは、年々格差が広がってゆく現在の日本において、子どもを育てることに対する社会全体の不安の現れでしょう。この問題についてはこれからもしっかりと考えていきたいと思います。 |