【自主レポート】

「杜の都仙台」 緑の維持管理を考える

宮城県本部/仙台市職員労働組合・青葉区役所支部・副支部長 松本 郁雄

1. 「杜の都」 仙台の由来

 仙台が「杜の都」と呼ばれるようになったのは、明治後期といわれています。藩政時代から受け継がれてきた屋敷林と周りの丘陵が美しい姿でまちを覆っていました。「杜の都」と呼ばれている都市は全国に10都市以上ありますが「もり」を「杜」と書く都市は仙台市以外になく、「杜」の意味は木立のある神域、神霊の宿る森と解されています。
 この豊かな緑は、昭和20年の戦災によって失われますが、その後、緑を取り戻すために、市街地には再び木が植えられ、それから50年。青葉通や定禅寺通のケヤキは、仙台の新しいシンボルとして大きく成長しました。
 振り返れば、「杜の都」とは、暮らす人が木を植え成長を見守りながらつくり上げてきたもの、樹木への思いなくして、「杜の都」を保ち続けることはでき、「杜の都」のネーミングが仙台の緑行政を発展させてきたと言えます。
 仙台のまちが築かれてから400年。私たちが受け継ぎ育んできた緑は、いま都市化の中で少しずつ失われています。だから、もっと木を植えたい、じっくりと時間をかけて町に木を青々と茂らせたい、緑を慈しむ人を一人でも多く育てたい、そういう思いをもって、これまでの仙台の緑行政をふりかえっていくこととします。

2. 昭和50年代の維持管理と造園技術の継承

 私自身、昭和47年に仙台市役所に作業員として(その後技能職)入職しました。配属された職場が建設局緑地部の出先機関である公園工事事務所でした。仙台市内の公園樹及び街路樹の維持管理等をまた、小規模な整備等を行政職員・技能職そして、嘱託職員と総勢30人余の人員で一丸となって、緑の維持管理、緑化業務に励んでおりました。
 この頃の私達技能職員の業務体制は、仙台市内の各公園の樹木、街路樹の剪定及び刈り込み、樹木苗木の育成植栽を行う植木班、公園・街路植栽・緑地帯の除草を行う除草清掃班、各公園遊具の安全点検補修を行う遊具点検班で一年を通して行っていました。
 当時は今ほど公園の数も少なく、また、街路樹の本数も今よりずっと少なかった時代であり、三班体制で連携し、直営で維持管理業務を遂行していました。
 入りたての私は仙台市内の道路も知らない、公園の場所がどこにあるのかも分からない、なおさら公園樹及び街路樹の名前も知らないという中、毎日の作業現場で先輩方々の技術指導のもと日々、働いておりました。公園樹・街路樹等を維持管理する剪定技術(技)そして、先輩方々の豊富な造園技術に接しながら、日々樹木に登っておりました。当時の事務所の一年間の作業日程は先輩方々の長きにわたる実績と経験により計画され、遂行されながら、なおかつ市民の要望・苦情にも迅速に対応するというものでした。
 この先輩方々の幅広いそして、奥の深い造園の技術指導・技の伝授・後輩への技術の継承があって、杜の都仙台の緑を維持育成できてきたと言えます。しかし、今日、官から民への流れの中で直営がやってきた業務が委託され、職員の技術低下が進み、業者に対する技術指導も低下しています。
 幸い当時からいる少ない職員で現在、宮城県造園建設業協会(造園業者加盟)と協力し、年2回の剪定講習会を開催し民間業者社員の技術向上をはかっていますが、職員の人材育成はこれからの課題です。

3. 政令都市移行そして行政改革の中で

 昭和50年代頃の公園の数は仙台市全体で250ヶ所余りだったのが、昭和63年に1市2町の合併、政令都市に移行し、平成18年度現在では公園の数は1,492ヶ所、街路樹の本数は昭和50年当時が7,136本余りで、平成17年度現在仙台市全体で総本数53,467本、中低木1,930,597本余りとなっています。これらの維持管理は5つの区役所で行っています。
 業務内容は軽易な作業及び公園のパトロール、修繕を少ない職員でこなさなければならない状態にあり、緑を担う人材育成も進んでいません。
 指定管理者制度の導入は、交通公園やスポーツ施設公園が委託化される等、自治体の維持管理能力は急激に低下し、緑の政策も現場地域の実状に基づかない聞こえの良い机上の論理がまかりとっています。
 緑行政は長い期間を要するだけに、地域、現場を基礎に築き上げていく体制を求めていくことが重要になっています。

4. 百年の杜づくりと今後の課題

 仙台市は、99年に「百年の杜づくり行動計画」を策定し、その内容は「自然と街がとけあう杜の都・仙台」を基本理念に
① 緑と水を守り育てる(緑の保全)
② 緑の空間を創り育てる(緑の創出)
③ 緑の文化を広げる(緑の普及)
を基本理念の三本柱として16の方針と10の重点取り組み施策をさだめました。なかなか素晴らしい計画そして基本理念であるが、緑の現場では絵に描いた餅であり理念を支える人材、職場の機能が弱まっています。
 今、各区職場のおかれている現状はどうなっているのでしょうか、各区の維持事務所が区役所の中にとりこまれて10年、その間、数少ない技能職員の高齢化が進む中で杜の都仙台の緑を維持管理しながら、そして、日々要望苦情に翻弄されています。
 入職した頃、先輩方々からの公園樹・街路樹の剪定等の技術(技)そして、色々な経験談を聞き育ってきた私にとって、今、自分の残された少ない在職年数の内に後輩方々に剪定等の技術を伝えなければいけないと思うが現実の業務状況の中で難しくなっています。
 行政改革等で技能職職場の存続が危ぶまれる中で、逆ピラミッドの最先端の一部で奮闘している技能職の将来に未来があるためにも、緑を担う人材育成の積極的な取り組みが必要であり、働く者にとって、働きがいのある仕事、働きやすい職場、働きやすい環境があってこそ、仕事に誇りがもてるのではないでしょうか。

今後の課題として、

① 造園関係職員の技術向上をめざし日常の業務を通して人材を育成すること。
② 本庁、各区の造園関係職員の剪定等講習会を定期化する等努力し現場でつちかってきたノウハウを継承すること。
③ 現業職員の増員と緑行政を通して現業職場の活性化をめざしていくこと。
 今後の自治研究活動を通し引き続き、誇りがもてる仙台の緑づくりに邁進していきたい。