【要請レポート】
1. はじめに 1960年代に燃料革命といわれる薪炭から化石燃料への転換と田畑における化学肥料の普及が始まるまでは、地域の森林・里山から産出されるバイオマスは建築等の生活資材、薪炭や田畑の堆肥としてうまく利用され、地域の森林・里山は我々の生活と密接に結びついて存在していた。しかし、価格や効率が優先される現在では、輸入木材や化石資源に取って代わられ、社会全体がこうしたバイオマスがなくともやっていける仕組みに替えられてしまい、森林と人々との関係は希薄になり、森林・里山の荒廃と地域経済の長期低迷が進行している。 2. 森林バイオマスを利用した地域づくりの意義 (1) 森林バイオマスとはバイオマスとは、光合成によって太陽エネルギーを有機物として固定している植物とその植物を食べる動物及びその排泄物のことで、農業や林業の副産物、家畜の糞尿や生ゴミなど、さまざまな形で存在しており、「再生する資源」であることが最大の特徴である。 これらのうち樹木に由来するものを「森林バイオマス」(一般的には「木質バイオマス」と呼ばれる)といい、間伐材、伐採現場の林地残材、製材工場から出る端材の他、産業廃棄物として扱われている建築解体廃材等に分けられる。 森林バイオマスは、①化石燃料に変わるエネルギーとしての利用、②プラスチック等に取って代わられているマテリアルとしての利用、③石油の代わりに精製し各種の工業用原料や燃料を取り出すバイオマスリファイナリー的な利用がある。最近は、ストーブやボイラーでバイオマスをそのまま燃焼させるだけでなく、バイオエタノールやバイオディーゼル等の輸送用液体燃料としての研究開発や普及がスタートしている。 (2) 森林バイオマスを利用した地域づくりの意義
バイオマスエネルギーは、大気中の二酸化炭素が光合成によって植物体内に固定されたエネルギーであり、それを燃やすことにより再び大気中に二酸化炭素が放出されたとしても、エネルギーの消費と植物育成のバランスを保つ限り、実質の二酸化炭素排出がゼロとなる「カーボンニュートラル」なエネルギー源である。さらに、NOxやSOxの排出も少ないことから、環境への負荷が低いクリーンなエネルギーであり、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出削減に大きく貢献できる。 ② 循環型社会の構築を実現する再生可能エネルギー 現在、地球温暖化や資源の有限性等の問題から持続可能な循環型社会への転換が課題となっており、森林や農地が生み出す再生可能なバイオマスを循環型資源として有効に活用していくことで、資源循環型の環境にやさしい地域づくりに貢献できる。 ③ 林業木材産業の採算性向上と森林整備の促進に貢献 用材生産を目的とした現在の林業生産にバイオマス的利用が加わることにより、林業・木材産業の採算性を向上させ持続可能な森林経営の確立に貢献できる(経済面)。こうして林業生産活動が活発になることで健全な森林整備の促進と、生物多様性の確保や森林生態系の安定化に貢献できる。(環境面) ④ 新産業・雇用の創出に貢献 森林バイオマス資源は小規模に分散し、収集・運搬に割高なコストがかかることが欠点であるが、この性質は半面、長所でもあり、地域分散型のエネルギー(電気・熱)供給を行うシステムを確立することで、地域に新たな産業と雇用を生み出すという効果が期待できる。 3. 森のバイオマス研究会のこれまでの活動の成果 (1) 研究会の組織及び活動の概要
(2) ペレットストーブ・バイオマスの普及活動及び広島型ペレットストーブの開発
助成金を活用して導入した4台のペレットストーブを活用して2002年から始めたモニター活動は、導入先の農産物加工販売施設等の公共施設や小学校等、どこでも大変好評で,新聞やテレビの報道を見て広島市内から見学者が訪れるなど、多くの方に関心を持ってもらうことにつながった。 |
(図-3)庄原市でのフォーラム(06年3月)
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(3) ペレット生産システムの導入に向けた活動
また、現在、市民の生活の中に森林バイオマス利用を浸透させる目的で、広島型のペレットストーブを開発した企業が家庭の給湯用小型ペレットボイラーの開発を行っており、今年秋には完成の見込みになっている。今後は、「ペレット生産販売組合」と連携し、ペレット生産の事業化も視野に入れた活動に力を入れていくことにしている。 (4) 森の手入れ活動
4. 今までの活動の成果と今後の課題 広島県北地域の森林・林業の現状をみると、人工林資源が充実し蓄積量が増大している中で、林業は元気をなくし、森林バイオマスを安定して供給できる体制や、地域の森林を持続可能な状態で管理していく仕組み自体がなくなりつつある。そのため、当研究会では、エネルギーとして森林バイオマスの新しい需要をつくることにより、森林バイオマス(木材)を循環的に利用していく仕組みづくりが出来ないかとの問題意識で活動を行ってきた。
5. おわりに 現在、地球温暖化等の様々な社会問題の原因である大量生産・大量消費型社会への反省から、持続可能な循環型社会への転換が求められている。 |