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【自主レポート】
すべての関連団体に労働組合の旗を!
「指定管理者制度導入」対策と
福祉関連職場の組織化の取り組み |
東京都本部/調布市職員労働組合 横川 武志
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1. 東京都調布市における民間委託、アウトソーシングの動き
(1) 義務教育学校へのPFI事業適用
調布市では、1994年(平成6年)の「行政改革指針」から始まり、現在まで第三次にわたる「行革指針」と具体的な取り組みである「調布市行財政改革アクションプラン」の推進がすすめられている。これまで他団体と同様に当初から業務の民間委託推進、アウトソーシングを行政改革の柱に据えて来ている。1999年(平成11年)7月に成立したPFI法の活用を検討し、2002年(平成14年)には義務教育施設としては全国で初といわれる小学校統合新設校建設で「PFI事業」への活用事業を実施している。(※1)
また、これまで公立保育園10園中1園の社会福祉法人への民間委託、不燃ごみ収集委託・粗大ゴミ収集委託、さらに2006年4月から全校実施した中学校給食においては「親子給食方式」を採用し市民の期待に応えたものの、労働組合としては2年にわたる交渉の結果、親子給食実施小学校の給食調理業務の「民間委託実施(試行)」(20校中3校)を受け入れざるを得ない結果となった。
それぞれの課題については、調布市職労との厳しい交渉が重ねられてきたところである。
(2) 調布市指定管理者制度導入
調布市では2003年(平成15年)6月の自治法改正を受けて、同年12月議会にて手続き条例としての「調布市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例」を制定するなど「指定管理者制度」導入は比較的早い段階から取り組んできた。
条例制定に先立って、2003年(平成15年)11月には「指定管理者制度に係る事務処理方針」(市長決定)を定め,市としての「大綱的な事項及び共通する事項についての方針」を定めている。また本格的な制度移行に備え「公募によらない指定管理者の候補者を審査するため」に「調布市公の施設の指定管理者候補者選定審査委員会要綱」(2004年(平成17年)7月制定)を定め、制度の移行に備えてきた。
その時点では、「選定基準」に市の市政運営基本理念などの明記,「兼業禁止規定」や情報公開・個人情報保護の面で不十分さが残っていたのではないかと指摘できるが、この部分は、個別条例の中でどう整理されるのか課題として残っていた。また2004年(平成17年)9月には、「兼業禁止規定の改正」(※2)など不十分さを補っている。
市は、新たな指定管理者制度導入の市民周知を図るため数次にわたって市報で特集を組み、その中で、市の指定管理者に対する基本的な考え方は、
① 市民ニーズの変化に対応し市民の期待にこたえます
② より望ましい施設の管理形態のあり方を考えていきます
③ サービス向上と管理経費の節減を目指します
④ 施設の設置者としての責任を果たします
としてそのメリットを説明しています。
市は、指定管理者が適用できる施設として42対象施設を掲げていた。(※3)
「条例制定」後、第1号として翌3月議会で、地域の集会所(ふれあいの家10箇所)を地域の運営委員会に指定管理者として指定。その後、2005年4月から新たに民間マンションのフロアーを公共スペースとして確保し、NPO活動支援センター(調布市社会福祉協議会委託)、産業振興センター、男女共同参画推進センターなどの機能が入る施設「調布市市民プラザあくろす」管理に指定管理制度を適用した。
市職労との関係で言えば、節々の交渉で「現在、管理委託している施設、現在直営で行っている施設は、労使協議を行う」こととして確認し交渉・協議をすすめてきたところである。
(3) 青少年ステーションで「指定管理者制度」導入提案
具体的な交渉事項としては、2004年(平成16年)12月に直営で正規職員が配置されている児童会館ホール業務と青少年ステーション(※4)の指定管理者制度導入提案を受け協議を開始した。
当該職場としては、制度導入により正規職員が再配置され慢性的な人員不足が緩和されるのではないかなど期待を寄せる雰囲気もあったが、市職労としては「一方的な実施は、反対である」立場で、「委託の目的とメリット(効果的に目的が達せられるのかどうか)」など労働条件面だけではなく、「業務(サービス)の質の確保ができるのかどうか」慎重に検討し協議をすすめていくとする見解を伝え協議開始した。その結果、当初提案の2005年4月実施にストップをかけ「継続協議」となった。
その後、当局は、2005年12月に青少年ステーションの運営について指定管理者制度導入を「断念」し、ステーション業務を「直営の範囲」で継続したいとして、「正規職員の引き上げと再任用職員配置、嘱託職員の活用」に提案内容を変更し、協議の結果は正規職員を再配置し、再任用職員を新たに配置して2006年4月から業務を継続していくこととなった。
(4) 問題は先送りされただけ―3年後は、公募を含んで見直し
調布市としては、市報で連載するなど「指定管理者制度」導入に積極的であったと思われるが、当初の42対象施設を掲げていたものの2006年4月時点での「指定管理者」制度の適用は以下にとどまっている。
施 設 名 指定管理者 募集方法
八ヶ岳少年自然の家 (株)レストラン・ピガール 公募による
調布市総合体育館 (社)調布市体育協会 公募によらない
調布市グリーンホール ホール施設 (財)調布市文化振興財団 公募によらない
調布市文化会館たづくり文化会館 (財)調布市文化振興財団 公募によらない
(以上、2006年4月1日から)
既指定済み
調布市市民プラザあくろす 三幸株式会社 公募による
ふれあいの家(市内10箇所) 運営委員会 公募によらない |
これ以外の対象施設は,引き続き直営方式と管理運営委託をしている施設は,従来団体に3年間(2009年3月末まで)の業務委託方式に切り替えて継続していくこととなった。
改めて点検・検証しなくてはならないと考えているが、調布市が当初の意気込みから上記の範囲にとどまったのは、第1に制度がスタートしたばかりであり指定管理者制度のメリット(利用料金制度など)や経費節減の見通しがつかないこと。第2に市出資の監理団体(※5)の存立に関わる問題であり、固有職員の雇用継続、処遇問題の見通しが建てられないこと。第3に運営主体が変わることで、利用者などの不安や反対が懸念されること、などが推測されるところである。反面この評価は、上記の課題に見通しがつけば、3年後には全て「公募による選定」に踏み込む可能性もあるということであり、3年後の見直しにむけ問題が先送りされただけだという認識を持つ必要がある。
実際、各団体の業務レベルでも各所管部長に対して「調布市監理団体の経営改善について」とする通知を発し「行政依存型といわれている調布市監理団体の経営改善」について指導監理を求め本格的な見直しが始まっている。この「通知」は、調布市が監理団体に対し、指定管理者制度との関連で当面3年間は、現在の団体を「直営=業務委託方式」により継続するとしているものの、各団体に対し、具体的に各団体が「取り組むべき視点」が示されている。効率的な運営をどうすすめるか、人事制度は、成績主義を基本とすることなど大枠を定めている。さらに、3年後には「公募」を含んで見直しを行うことも明らかにしており、引き続き危機感をもって組織強化と拡大を一歩一歩すすめていかなくてはならない。
調布市の指定管理者制度が「軌道にのり機能」していくことは、場合によっては、監理団体から他の民間事業者などの参入の可能性を含んでいくことであり予断は許されないことである。しかし、調布市の指定管理者制度の評価を行うことも必要となっているのではないか。条例制定時段階では、不十分であった市の施策推進、「公契約条例制定」の取り組みと併せ公正労働基準や社会的価値の実現を図る取り組み、指定管理者の情報公開と個人情報保護の確保、さらに制度の改善を求めていくことも必要になってくるのではないかと思われる。
2. 指定管理者制度対策を通じた組織強化の取り組み
(1) 関連団体の組織化・「市労連」結成方針を調布市職労「組織強化計画」に位置付け実践
調布市職労は、2002年(平成14年)度調布市職労運動方針で決定した「調布市職労組織強化計画」の重要課題として「調布市関連労働組合連合会(調布市労連)の結成をめざしてきた。
既に結成されていた各組合は、個々の課題を抱え少人数の仲間が力をあわせて組合活動の強化・要求実現にむけ取り組んでいた。それぞれの組合では結成にあたり市職労から特別執行委員を配置し、一定の労使関係が確立した段階で特別執行委員の配置を解き、自律的な運営へ移行するよう取り組んできた。また関連団体内での労働組合結成が困難な時期には、団体固有職員を調布市職労へ直加盟として受け入れ実質的な交渉権を確保してきた。こうした3年余りの助走と関係者の努力を経て、「調布市労連」(※6)は、2004年(平成16年)6月に関連5団体で結成することが出来た。(調布市職労、財団労組、福祉教育ユニオン、社協ユニオン、非常勤労組の5組合)
さらに未組織職場の組織化を図るため、指定管理者制度導入対策の一つとして関連団体の組織強化について、重点的な取り組みを行うこととした。
(2) 指定管理者制度導入対策として、「調布市関連団体対策本部」発足
自治法改正と以降の市内部における指定管理者制度導入にむけた具体的な検討がすすめられている中で、当該団体の経営側、職員側で問題意識がどうであったかは別にして社会福祉施設など関連(監理)団体では、指定管理者問題は組織の死活問題となる何らかの対策が必要となってくることは明らかであった。こうした背景と機運をとらえ、自治労都本部組織局の支援を受けて組織化オルグの選任を得て2004年12月に「調布市関連(監理)団体対策本部」を立ち上げて本格的な対策に取り組むこととした。対策本部を開催し個別団体の課題整理や未組織職場対象の指定管理者学習会の開催を重ね、制度導入(手続き条例制定)後の具体的な指定管理者適用の動向把握や情報収集、各団体内対策を進めてきた。
具体的には未組織の関連(監理)団体に対しても「指定管理者導入」対策を呼びかけ、制度導入にあたり賃金・労働条件の変更もありうることを受けとめて、各団体内で労働組合の結成を支援してきた。対象は、財団法人ゆうあい福祉公社、社会福祉法人かたばみ会、社会福祉法人調布市福祉事業団、(社)調布市体育協会、公共施設管理公社、シルバー人材センターといった市の業務を管理運営委託している団体などに呼びかけて、「指定管理者学習会」を重ねた。この学習会を深めていく中で、固有職員の仲間は、将来的にどうなるのか、今の諸権利が維持できるのか問題意識を深めていくきっかけになったと思われる。
市労連結成1年後の翌2005年5月には、かたばみ会の約180人の固有職員、嘱託職員が職員組合を結成し、自治労、市労連に加盟申請し、また同年7月には体育協会固有職員4人が調布市職労へ組織化(直加入)した。さらにゆうあい福祉公社、福祉事業団など組織化にむけ取り組みを継続しているところである。
市労連は、結成後、調布市長に直接「統一要求書」を提出し、関連団体の責任者に当該組合と誠意をもって交渉するよう求めている。組合が結成された後も賃金合理化など受け入れざるを得ない厳しい状況もあるが、当局の提案―組合員意見集約―組合方針確立―交渉-妥結のルールを確立し労使合意を前提とした労使関係を築きあげていく一歩を踏み出している。
3. 今後の課題
3年後の見直しの時期にまた条件が整えば、対象施設の指定に向けた動きが急速にすすめられることも想定できる。各団体内では、当面3年間の業務委託など確保できたことにより安心感を抱いており、今後の課題について本気で対策を講じなければ、外圧も含んで民間との競争の場に引きだされること。業務委託方式を継続するにしても委託費などの切り下げなど職員定数、雇用条件に大きく関わってくることとなる。この市労連結成を機に、市内公共関連団体内の労働組合の連携が深まるとともに調布市労連各構成組合の取り組みに一層の奮起が促され役員の構えもできてきている。
市労連は、今年6月に第3回定期総会を開催した。私たちの目的は、市労連への結集をつうじて関連団体の固有職員・臨時非常勤職員の仲間の雇用と生活を守ることにおき、引き続き実質的な元締めの調布市との交渉団体としての位置を確保するため市労連機能の強化と充実を図り構成組合との連携、未組織職場の組織化にむけ引き続き取り組みを強めていく決意を固めたところである。
(※1)PFI BOT方式による。三井物産グループ。統合新設校建設と維持管理、市立図書館分館と温水プール併。―SPC=調和小学校市民サービス株式会社。契約期間―2001年3月から2017年3月末まで。学校用務については、委託しないことを確認。
(※2)「市長、助役、収入役、法第180条の5の規定により市に設置する委員会の委員若しくは委員又は市議会の議員の職にある者が、法人その他の団体の無限責任社員、取締役、執行役、監査役、支配人若しくは清算人又はこれらに相当する職にある者であるときは、当該法人その他の団体を指定管理者として指定することができない。」とする「欠格条項」を追加
(※3)指定管理者対象施設について
市は、指定管理者制度の対象となる施設として、市庁舎、学校等をのぞく、42施設(種別区分)を掲げた。ただし、実際の保育園、図書館、児童館、学童クラブ、都市公園など施設数となると膨大な数となる。
(※4)青少年ステーション
中・高校生世代の居場所施設として2003年(平成15年)4月開設。
設立時は、児童青少年課所管で正規職員2人と嘱託職員配置8人で運営してきた。
(※5)調布市監理団体について
「市が出資等を行い地方自治法第244条の2-3の規定により市の施設の管理を委託している団体及び継続的な人的支援を行っている団体のうち、市が指導管理等を行う必要がある団体」(調布市監理団体指導監理要綱)として、以下の団体を指定し、主管部を通じて指導監理を行っている。
調布市公共施設管理公社 調布エフエム放送((株)調布市土地開発公社 (財)調布市文化・コミュニティ振興財団 (社福)調布市社会福祉協議会 (財)調布市ゆうあい福祉公社 (社福)調布市社会福祉事業団 (社)調布市体育協会 調布市国際交流協会 武者小路実篤記念館運営事業団)
(※6)調布市労連加盟組合について(2006年7月現在)
調布市職員労働組合 1955年結成 組合員数 1,180人
調布市文化・コミュニティ振興財団労働組合 2002年結成 組合員数 23人
調布市福祉・教育ユニオン 1999年結成 組合員数 18人
調布市社会福祉協議会臨時・嘱託職員労働組合 2002年結成 組合員数 24人
調布市非常勤嘱託職員労働組合 2002年結成 組合員数 48人
自治労東京かたばみ会職員組合 2005年結成 組合員数 180人
※ 調布市公共施設管理公社固有職員5人、調布市体育協会固有職員4人は調布市職労に直加盟している。 |