【論文】

自治労京都市職「公契約研究会」の取り組み

京都府本部/自治労京都市職員労働組合・常任執行委員・政策企画部長 楳田 博之

1. はじめに

 国からの地方交付税が大幅に削減され、各自治体の財政事情が厳しくなり、経費節減のため民間活力の導入という名目で、全国的に公共サービスの民間委託化が積極的に行われています。さらに、地方自治法改正により指定管理者制度が導入され、公共サービスのアウトソーシングが進んでいます。
 京都市においても財政健全化プランのもと、民間委託化が進められています。さらに今年度から指定管理者制度が本格的に実施され、公共サービスのアウトソーシングが進んでいます。
 厳しい財政事情を反映し京都市は徹底的な経費節減する中で事業が発注され、受注する企業者についても落札するため激しい競争が行われています。こういった状況の中、過剰な低価格競争を引き起こさず、質の高い公共サービスを提供するためにはどういった施策が必要なのかが問われています。
 また、これらの取り組みの前提として、可能なもの全てを民間企業に任せるのではく、公務員が責任をもってやるべき仕事はやはり、公務員がするべきであると考えます。そうでなければ、いくら民間と良い契約を結んでも責任の持てる良いサービスを提供できなくなってしまいます。
 私たち自治労京都市職は公契約を通じ京都市の公共サービスにかかわる全ての労働者が安心して生活できる環境のもと、より良い公共サービスが提供できるよう、2005年9月に公契約研究会を立ち上げ、以下のメンバーで、7月までに全10回の研究会を行いました。
 リーダー 澤井  勝 (奈良女子大学名誉教授)
      小畑 精武 (自治労中央本部)
      山田 博之 (自治労京都市職副委員長)
      高橋 直樹 (自治労京都市職書記長)
      徳田 千恵子(自治労京都市職)
      元部  弥 (自治労京都市職)
      楳田 博之 (自治労京都市職)
      黒岩 洋子 (京都地方自治総合研究所)

2. 安さの追求

 厳しい財政状況の中、京都市では少しでも良質な公共サービスをより安く提供できるよう努力がなされています。価格については予算を削減した成果を数値化できるため、市民へのアピールは容易です。一方、サービスの質については、厳密に数値で表しにくい面があり、価格を下げたことによるサービスの質の低下がおこったとしても、それがどれだけ低下したかということがわかりにくいという面があります。
 価格を高く評価する傾向が強まると、請負の実績を作るため赤字覚悟で契約を請け負う業者があらわれてきます。こういったことは、京都市の財政面では助かりますが、地域の経済全体を捉えた場合、歓迎すべきことではありません。
 また、必要以上の価格競争がおこると、京都市からペナルティーを受けない程度に契約を履行することが目標となり、必然的に質の低下を招きます。さらに、不当に安い価格を提示しなければ京都市との契約が取れなくなり、そのしわ寄せは、弱い立場の労働者にかかることになります。

3. 社会的価値

 価格は評価材料のひとつですが、それをどの程度評価するかについて考える必要があります。高い技術力を持つ人や、熟練の作業員など、優秀な人材を確保し続けるには、コストがかかります。環境や福祉、男女平等参画、公正労働基準などの社会的価値の実現にむけた取り組みを行うにもコストがかかってきます。こういった取り組みを排除して価格を下げてきた業者に対して高い評価はできません。
 社会的価値の実現にむけた取り組みを実践するには、請け負う額や会社の規模で、具体的に取り組める内容は違ってきますが、価格以外の部分を大きく評価していくことが重要です。少しでも税金の無駄を無くす取り組みは、重要ですが、社会で果たすべき責任を放棄してまで、安い価格を求めることは許されません。

4. 「低入札価格調査制度」と「最低制限価格制度」

 設計価格は市場価格などを調査した資料を基に綿密な積算を行い決定されています。この設計価格と落札価格が大幅に違う場合は市場調査もしくは設計にミスがあったか、落札業者に重大な問題があると考えられます。
 なぜ、予定価格を大幅に下回る価格で落札できるのかは、さまざまな理由が考えられますが、下請けへの丸投げ、不当に安い賃金でパートやアルバイトを雇うなどの不正が行われている可能性が大いにあります。
 予定価格と落札価格に大きな相違が見られる場合は、「低入札価格調査制度」を用い時間と労力をかけて徹底的に調査を行い不正があった場合は、二度と不正が行われないための十分な対策をとる必要があります。
 さらに、直接経費を下回るなど、現実的に契約履行不可能な落札価格を提示した業者については、「最低制限価格制度」を用いると同時に、処分を行うといった厳しい態度で臨むべきです。
 こういった取り組みを進めるにあたっては、発注者において高度な積算能力と、業者を評価する技量を持っていることが条件であるため、技術者の育成が重要な要素の一つとなります。

5. リビング・ウェイジ(生活保障賃金)と自治体最低賃金

 労働者にまともな賃金が支払われていないとサービスの質は確実に低下します。2005年10月1日現在の京都の最低賃金は682円で、これは単身者がぎりぎりの生活ができるかどうかの額です。最低賃金を守るだけでは、家庭を築き子どもを育てていく生活は保障できません。連合リビング・ウェイジ(生活保障賃金)(注1)や自治体最低賃金(注2)さらには、ILO(国際労働機関)94号条約(公契約における労働条約)(注3)批准にむけた取り組みを進めることは、全ての労働者が安心して生活できる収入を得ることにとなり、京都の地域経済発展にもつながります。

6. 「雇用保障」と「優先雇用」

 質の高い公共サービスを提供するには、業務に対する長年の知識と経験が必要です。そのためには、雇用の安定を図ることが、重要となってきます。競争入札や指定管理者の選定において事業者が変更になった場合、そこで働く労働者が変わると、その業務についての経験を積むことができません。また、そのつど業務の引継ぎが行われては事業効率の面からも良くありません。さらに、そこで働く労働者は、いつまでその業務ができるのかわからず、不安な気持ちで働くこととなり、勤労意欲の低下も考えられます。
 こういったことから、事業者が変更になっても、そこで働く労働者が、継続してその業務につけるよう、また、安心して働きつづけられるように、雇用の引継ぎ・賃金をはじめとする労働条件・勤続年数・労働協約・労働慣行の継続をはかることのできるよう「雇用保障」や「優先雇用」などの施策をとることが必要です。

7.  法令の遵守

 公共サービスを提供する企業のみならず、法令遵守はすべての企業がすることですが、耐震強度偽装事件などにみられるように、全ての企業がきちんと法令遵守を行っていないのが現実です。法令遵守がきちんと行われていないような企業が京都市の公共サービスを請け負っているという事態になることは問題です。さらに、法令遵守が行われていない企業が罰則をうけるのは当然として、そういった企業を使用した京都市においても責任を逃れることはできません。
 こういったことから、事前の審査は勿論、契約時において法令遵守を確認し、仕様書に遵守する法令について記載するなどの京都市として対策を十分にとる責任があると考えられます。

8. 指定管理者制度

 指定管理者制度は地方自治法上の契約ではありませんが、低価格競争において、そこで働く労働者が負担を強いられている事例がみられ、公契約と同じような問題が全国的におこっています。
 また、新しい制度ということもあり、総合評価入札の形をとっている場合が多いようですが、結果的には低い価格を提示した事業者が指名されている傾向があります。
 一般的には、長年業務に従事するに従いノウハウを得て業務の質を上げていくものですが、指定管理者においては、3年から5年のサイクルで競争が行われる場合がほとんどで、指定管理者が変わればそれまで蓄積されていたノウハウを失う危険性があります。また、業務に精通した職員を確保しつづけるには、それなりのコストがかかり、新規で参入してくる団体の新人職員と単純に価格競争をすると、新規参入の団体に有利にはたらきます。
 新たに民間業者が指定管理者に選定された場合において、長年その業務に従事してきた職員や、その職能を希望して採用された職員の高いスキルを生かすことが出来ないということは、市政にとって大きな損害を受けたことと同じです。

9. 優越的地位の濫用

 多くの赤字を抱える各自治体は可能な限りの予算削減を行っています。しかし、自治体(発注者)という優越的地位を利用した、理不尽な行為で予算を削減しても、市政のプラスにはなりません。他都市では指定管理者の選定を行ったあと、協定書を結ぶ段階で市の予算が減らされたという理由で、当初の応募額を一方的に減額するといった事例があります。優越的地位を利用した強引な契約金額の削減は法令違反の恐れもあり、企業からの信頼を失うと同時に市民からの信頼も失います。

10. まとめ

 京都市は厳しい財政状況にありますが、公共サービスを提供する労働者と、受ける市民を無視した過剰な予算削減競争を行うと市政への信頼を無くすこととなります。
 法令遵守を徹底し、そこで働く労働者が安心して働ける環境を整え、質の高いサービスを市民に提供できるような体制を確保し、社会的責任を果たしている企業が入札に参加し、価格競争が行われるべきです。
 自治労京都市職としては、こういった考え方を要請書としてとりまとめ、自治体議員・公共民間労働者・地方連合会などに協力を呼びかけるとともに、この取り組みを幅広く市民に働きかけ、社会の気運を盛り上げ、京都市に対し社会的価値の実現をめざした公契約を行うよう、提案していくとともに、公契約条例制定にむけた取り組みを進めています。

【資料1】京都市長への要請書

2006年 月 日

 京都市長 様

自治労京都市職員労働組合
中央執行委員長 橋元 信一 

要  請  書(案)

 日頃、京都市政の発展にご尽力されている貴職に敬意を表します。
 さて、自治労京都市職では、公共サービスに従事する全ての労働者の雇用安定、賃金をはじめとする労働条件の維持、生活の確保と公共サービスの向上へ向けて、労働法の遵守、雇用保障と公正労働基準の制度化、および社会的価値の実現に質する自治体条例の制定にむけた取り組みを進めています。
 また、京都市における公共サービスをさらに充実して、厳格な法令遵守のもと、市民にとって安心できるものとなるように努め、京都市の公共サービスは高品質であるというブランドイメージを市民に持ってもらうような施策を進めていくことが必要です。
 つきましては、こうした状況をふまえ、公正な入札、雇用保障と労働条件の維持のため、以下の内容を要請しますのでよろしくお願いします。

1. 雇用の安定
  雇用の安定をはかるため、事業者が変更になった場合でも、総合評価方式を活用して、これまで従事してきた労働者の「雇用保障」や「優先雇用」等の施策をとること。
  さらに、公共サービスの維持・発展をはかるために、雇用引継ぎとともに、賃金、労働条件、勤続年数、労働協約、労働慣行の継続をはかること。
2. 法令遵守(コンプライアンス)の徹底
  事業者の入札参加にあたっては、労働基準法、労働組合法、労働安全衛生法、パート労働法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、雇用保険法、社会保険法、就業規則整備等の法令遵守(コンプライアンス)を参加条件とすること。特に、過去1年間における労働基準法等違反企業や不当労働行為企業を契約から排除すること。
3. 公正労働基準の確立
  人件費の積算にあたっては公正労働基準を確立するため、ILO94号条約(公契約における労働条項)の趣旨を活かし、これまで従事していた職員賃金を原則として、少なくとも京都市内の同様な職種の平均賃金を下回らない積算をすること。また、週40時間、完全週休二日、有給休暇の完全取得ができる人員を確保した適正な価格とすること。
  京都市における全ての入札・落札及び指定管理者の選定においても、公正労働基準に基づく「最低制限価格制度」「低入札価格調査制度」を正式に導入し、ダンピングを排除すること。
4. 契約書、仕様書の改正と優越的地位の乱用防止
  仕様書や委託先企業との契約において、労働基準法、労組法、労働安全衛生法、パート労働法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、雇用保険法、社会保険法、労働者派遣法等が遵守されるよう徹底をはかるため、こうした労働法(指針を含む)を遵守する旨の公正労働条項を設けること。
  また一方的な仕様書の変更など自治体の優越的地位を濫用しないこと。
5. リビング・ウェイジ(生活保障賃金)と自治体最低賃金
  京都市の補助金、委託費などに依拠する事業所の労働者(パートを含む)に適用される最低賃金として、連合リビング・ウェイジ(連合が試算した単身労働者の必要最低生計費 月額146,000円)もしくは、自治体最低賃金(月額149,500円以上〈新国公行(一)1-13水準〉日給7,500円以上、時給930円以上)を確立すること。
6. 公契約条例の制定
  安さを追求する競争入札から、公共サービスの質の向上や自治体政策実現に資する入札に向け、公正労働、雇用継続、障害者雇用、男女平等参画、環境、人権等を総合評価する公契約基本条例を制定すること。


【資料2】

京都市公契約の基準に関する基本条例(案)

(目 的)
第1条 本条例は、京都市が行う事務事業に関して締結する公契約(地方自治法第234条(契約の締結))についてその基本的な基準を定め、そのことを通じて、地方公共団体が処理するべき事務事業を定めた地方自治法および各法律およびこれ基づく政令が求める社会的公正や公共の福祉の実現、および地域経済の活性化という理念が、当該地域において実現されるよう、契約とその履行過程を規律することを目的とする。
(適用範囲)
第2条 本条例の基準は、公契約(地方自治法第234条)のうち、特に契約の目的、性質等を考慮して行う「総合評価一般競争入札」(施行令167条10の2)に適用されるものとする。
  ただし、市長その他の機関、および議会はその他の一般競争入札、指名競争入札、随意契約を締結し、審議し、議決する場合において、本条例の定める基準およびその考え方を最大限尊重しなければならない。
(適用事業)
第3条 本条例は次の各号に掲げるような事業に伴う契約に適用する。
 (1) 市が発注者となり、受注者が土地の形状を改変し、建造物の建設、改築、増築を行い、補修、解体を行う工事を完成させ、市がその対価を支払う契約。
 (2) 市が発注者となり、受注者が土地、建物の清掃、警備、維持管理及び運営に関する業務を履行し(指定管理者を除く)、市がその対価を支払う契約。
 (3) その他、市が発注者となり、市がその対価を支払う請負及び業務委託に関する契約。
2 本条例の規定は、別に定める要綱に規定する予定価格以上の事業に適用する。
(公契約の基準)
第4条 市長および教育委員会等の市の機関が公契約を締結するため、総合評価一般競争入札等を行うときは、その入札者の資格として次の各号を事前に公示しなければならない。また、その入札審査会における審査の評価点の配分についても事前に公表するものとする。
 (1) 最低制限価格制度、低入札価格調査制度の適用があること。
 (2) 環境基準としてのISO14000または京都スタンダードの取得者であること。又は取得見込み者であること。
 (3) 障害者雇用促進特別措置法に定める障害者雇用率を達成している者であること。又は達成見込みの者であること。
 (4) 男女雇用機会均等法を遵守し、次世代育成促進法に言う一般事業者の推進計画を策定している者であること。
 (5) 過去の一定期間において労働基準法、労働組合法、最低賃金法などの規定に著しく違反した者でないこと。
 (6) 年金・健康保険・雇用保険等に加入している事業者であること。
 (7) 請負契約等の場合、従来の請負事業者のもとで雇用されていた労働者の継続的雇用と労働条件を継承する意思を持つ者であること。
 (8) 地域経済の活性化に資する条件を持つか、その施策等を提示できる者であること。
(入札資格審査の評価項目)
第5条 入札資格審査の評価項目は以下の項目を基本として、別に定める評価点のうちで評価するものとする。
 (1) 当該契約に係る事業目的の理解度
 (2) 技術的専門性の保有度
 (3) 環境基準
 (4) 経営の安定性
 (5) 価格の適正度と効率性
 (6) 障害者等の雇用等に関する基準
 (7) 男女共同参画社会への貢献度
 (8) 公正労働基準の遵守程度
 (9) 営業努力の工夫など
(入札資格審査委員会)
第6条 入札資格審査委員会は、その事業につき専門的な知識と見識を有する5人以上の委員で構成するものとする。
 2 任期は当該事業の契約が締結され、議会の議決を得るまでの期間とする。
 3 審査委員には3人以上の外部の専門委員を含むものとする。
 4 審査会の議事録および関連資料は公開するものとする。
(電子入札における事後資格審査)
第7条 電子入札を行う場合、これにより落札した者が、第4条および第5条の規定に合致しているか否かを審査するものとする。
 2 当該審査を行う審査委員会は第6条の例による。
(優越的地位の乱用の禁止)
第8条 市長およびその他の市の機関は、契約における発注者としての優越的地位を濫用して、受注者である事業者に対して、一方的に当該事業者の不利益となる契約条件の変更を行ってはならない。
(情報公開)
第9条 公契約に関して全ての事務処理過程で作成された文書(電子情報を含む)、会議記録等はこれを公開する。公開の手続きは京都市情報公開条例に基づく。
  京都市個人情報保護条例による個人情報の保護の規定は、公契約の締結行為においては、事業者と市の機関との関係であることを考慮して、これを適用除外とする。


【資料3】

京都市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例(改正案)
(*下線部分が改正が必要と考える箇所)

(趣旨)
第1条 この条例は、地方自治法(以下「法」という。) 第244条(公の施設)の規定ならびに第244条の2第4項の規定に基づき、同条第3項から第11項に規定する指定管理者(以下「指定管理者」という。)の指定の手続等に関し必要な事項を定めるものとする。
(自治法の趣旨をより明確にする改正案)
(公募)
第2条 市長、公営企業管理者又は教育委員会(以下「市長等」という。)は、法第244条の2第3項の規定により指定管理者を指定しようとするときは、次に掲げる事項を明示して、指定管理者になろうとする法人その他の団体(以下「団体」という。)を公募しなければならない。ただし、指定管理者に管理を行わせようとし、又は行わせている公の施設(以下「指定施設」という。)の管理上緊急に指定管理者を指定しなければならないときその他公募を行わないことについて合理的な理由があるときは、この限りでない。
 (1) 指定施設の概要
 (2) 申請することができる団体の資格
 (3) 申請を受け付ける期間
 (4) 申請に必要な書類
 (5) 第4条第1項の規定により同項に規定する指定候補者を選定する基準
 (6) 指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲
 (7) 指定施設の利用に係る料金(以下「利用料金」という。)に関する事項
 (8) 指定管理者に指定しようとする期間
 (9) その他市長等が必要と認める事項
(指定管理者の指定の申請)
第3条 指定管理者の指定を受けようとする団体(以下「申請団体」という。)は、次に掲げる事項を記載した申請書を市長等に提出しなければならない。
 (1) 申請団体の名称及び代表者名並びに主たる事務所の所在地
 (2) 指定施設の名称
2 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
 (1) 申請団体の組織及び財務の状況の概要を記載した書類
 (2) 指定施設の管理に係る事業計画書
 (3) 指定施設の管理に係る収支予算書
 (4) その他市長等が必要と認める書類
(指定候補者の選定)
第4条 市長等は、前条第1項の規定による申請があったときは、次に掲げる基準に照らして審査したうえ、指定管理者の候補となる団体(以下「指定候補者」という。)を選定するものとする。
 (1) 指定施設の利用に関し不当な差別的取扱いが行われるおそれがないこと。
 (2) 指定施設の設置の目的に照らしその管理を当該公の施設の設置目的に照らして有効に、かつ効率的に行うことができる者であること。
 (3) 指定施設の管理を適確に遂行するに足りる専門性をもった人的構成及び財産的基礎を有するものであること。
 (追加4) 最低制限価格制度、低入札価格調査制度に基づく審査を受けた者であること。
 (追加5) 環境基準としてのISO14000または京都スタンダードの取得者であること。又は取得見込み者であること。
 (追加6) 障害者雇用促進特別措置法に定める障害者雇用率を達成している者であること。又は達成見込みの者であること。
 (追加7) 男女雇用機会均等法を遵守し、次世代育成促進法に言う一般事業者の推進計画を策定している者であること。
 (追加8) 過去の一定期間において労働基準法、労働組合法、最低賃金法などの規定に著しく違反した者でないこと。
 (追加9) 年金・健康保険・雇用保険等に加入している事業者であること。
 (追加10) 請負契約等の場合、従来の請負事業者のもとで雇用されていた労働者の継続的雇用と労働条件を継承する意思を持つ者であること。
 (追加11) 地域経済の活性化に資する条件を持つか、その施策等を提示できる者であること。
1の2(欠格条項)

 (1) 京都市税、法人税、消費税及び地方消費税を滞納している場合。
 (2) 京都市競争入札参加停止取扱要綱に基づく指名停止処分を受けている場合。
2 市長等は、前項の規定による選定と同時に、申請団体のうち指定候補者以外の団体(以下「非選定者」という。)を指定管理者に指定しない旨の処分をしなければならない。
3 市長等は、第1項の規定により指定候補者を選定した後、法第244条の2第6項の規定による市会の議決を経るまでの間に、当該指定候補者を指定管理者に指定することが著しく不適当と認められる事情が生じたときは、当該指定候補者を指定管理者に指定しない旨の処分をし、非選定者の中から指定候補者を選定することができる。
4 前項の場合において、市長等は、同項の規定による選定前に、指定候補者に選定しようとする非選定者に対する第2項の処分を取り消すものとする。
5 (追加、優越的地位の濫用の禁止)市長等は、指定管理者の指定と第7条の協定を締結するにあたっては、その優越的地位を濫用して、公募条件を超えて応募者の一方的不利益となるような不当な変更処分をおこなってはならない。
(指定管理者の指定)
第5条 市長等は、指定候補者を指定管理者に指定する旨の議案が市会において議決されたときは、速やかに当該指定候補者を指定管理者に指定しなければならない。
2 市長等は、前項の議案が市会において否決されたときは、速やかに当該指定候補者を指定管理者に指定しない旨の処分を行わなければならない。
3 市長等は、指定管理者の指定をしたときは、その旨を告示しなければならない。
(指定の条件)
第6条 指定管理者の指定には、指定施設の管理上必要な条件を付することができる。
(協定の締結)
第7条 指定管理者は、第2条第8号に規定する期間の開始前に、市長等と指定施設の管理に関する協定を締結しなければならない。
2 前項の協定には、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 第3条第2項第2号に規定する事業計画書に記載された事項
(2) 指定施設の管理に要する費用に関する事項
(3) 指定施設の利用者等に係る個人情報(京都市個人情報保護条例第2条第1号に規定する個人情報をいう。以下同じ。)の保護に関する事項
(4) 指定施設の管理を行うに当たって保有する情報の公開に関する事項
(5) 法第244条の2第7項に規定する事業報告書に記載すべき事項
(6) その他市長等が必要と認める事項
(事業報告書の提出)
第8条 法第244条の2第7項の規定による同項に規定する事業報告書の提出は、毎年度終了後60日以内(同条第11項の規定により指定管理者の指定を取り消された団体にあっては、その取り消された日の翌日から起算して60日以内)にしなければならない。
2 前項の事業報告書には、指定施設の管理に係る収支決算書を添付しなければならない。
(区分経理)
第9条 指定管理者は、指定施設の管理の業務に係る経理とその他の業務に係る経理とを区分して整理しなければならない。
(業務の休廃止)
第10条 指定管理者は、指定施設の管理の業務を休止し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ市長等の承認を受けなければならない。
(原状回復義務)
第11条 指定管理者は、その指定の期間が満了したとき(当該期間の満了後引き続き指定管理者に指定されたときを除く。)、又は法第244条の2第11項の規定によりその指定を取り消されたときは、速やかにその管理しなくなった指定施設及びその設備を原状に回復しなければならない。ただし、市長等が特に支障がないと認めたときは、この限りでない。
(市長等による管理)
第12条 市長等は、法第244条の2第11項の規定により指定管理者の指定を取り消し、若しくは期間を定めて管理の業務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、又は指定管理者が天災その他の事由により管理の業務の全部若しくは一部を行うことが困難となった場合において必要があると認めるときは、他の条例の規定にかかわらず、管理の業務の全部又は一部を自ら行うものとする。
2 市長等は、前項の規定により管理の業務を行うこととし、又は同項の規定により行っている管理の業務を行わないこととするときは、あらかじめ、その旨を告示しなければならない。
(秘密保持義務)
第13条 指定管理者の役員及び職員並びにこれらの者であった者は、指定施設の管理の業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は自己の利益のために使用してはならない。
(情報公開)
第14条  指定管理者は、指定施設の管理の業務に関して保有する情報の公開について利用者の個人情報の保護に係わるものを除き公開の措置をとるものとする。市長等は、指定管理者の指定および協定の締結に関する情報を公開するとともに、指定管理者からの報告等について市民及び利用者に積極的に公開するものとする。
(意見の聴取)
第15条 市長等は、第2条本文の規定により公募しようとするとき、同条ただし書の規定により公募を行わずに指定候補者を選定しようとするとき及び第4条第1項の規定により指定候補者を選定しようとするときは、複数の学識経験のある者その他市長等が適当と認める者の意見を聴かなければならない。ただし、指定施設の管理上緊急に指定管理者を指定しなければならないときその他意見を聴かないことについて合理的な理由があるときは、この限りでない。
(委任)
第16条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。



(注1)連合が試算した単身労働者の必要最低生計費
(注2)現行の高卒初任給水準
(注3)自治体などの公機関が事業を委託する場合、その地域の同種の労働の労働条件を調査し、委託先の労働者の賃金などの労働条件が調査による水準を上回るように契約しなければならない。