【自主レポート】

国際化社会における『住民』サービスについて考える

 奈良県本部/桜井市職員組合 高木 祐子・土家 優子

1. はじめに

 桜井市は、奈良盆地の中央東南部に位置し、人口は62,350人、うち外国人登録者数は693人(2006年7月31日現在)を有するまちである。『第4次桜井市総合計画』において「在日外国人問題に対しより具体的な教育・啓発の取り組みを着実に展開する」とともに、「生活に不安を抱える在住外国人を同じ市民の一員として受け入れ、生活情報の提供体制の充実など、きめ細かな支援を行う」と謳われており、それに基づき外国籍市民(注:「外国人」という言葉を使用することに対して若干の違和感がないわけではないが、本稿においてはあえて以下「外国人」ということにする。)に対する施策に取り組んでいるところである。
 このようななか、近年の国際化の進展にともない、日本人と外国人が同一の世帯で生活する、いわゆる「混合世帯」が桜井市においても増加してきている。しかし、同じ場所で同じように生活していても、適用される法律は異なっているのが現状である。
 本稿では、同じ世帯の構成員でありながら、適用される法律が違うことにより及ぼされる影響について検証するとともに、混合世帯に対する桜井市の取り組みを紹介する。

2. 住民基本台帳法と外国人登録法

 住民票という名の証明は、住民基本台帳法(以下「住基法」という。)により日本国籍を持つ市民に限られる。一方、外国人のそれに代わる証明は、外国人登録法(以下「外登法」という。)に基づいた登録原票記載事項証明書となる。この違いにより問題が生じるのが混合世帯である。混合世帯では、1枚の用紙で家族全員の証明書を発行することができない。そのため、世帯の正確な人数や構成が把握できないという問題が生じるのである。
 また、住基法第39条により日本の国籍を有しない者は法の適用から除外されているので、混合世帯において外国人が事実上の世帯主である場合でも、日本人の世帯員のうち世帯主に最も近い地位にある者の氏名を記載しなければならない。これでは実状と異なる記載がされることになる。ちなみに外国人登録法では日本人を世帯主とすることもでき、実状に沿った登録ができる。
 実際の証明書について考えてみると、次のようになる。

(1) 夫が世帯主である夫婦二人の世帯の場合
  @ 日本人夫(A男)と外国人妻(B女)の二人世帯
    住民票:A男が世帯主である一人世帯の証明書
    外国人登録原票記載事項証明書:A男が世帯主、B女が続柄「妻」と記載された証明書
  A 外国人夫(C男)と日本人妻(D女)の二人世帯
    住民票:D女が世帯主となる一人世帯の証明書
    外国人登録原票記載事項証明書:C男が世帯主となる一人世帯の証明書

(2) 外国人母(E女)と日本人子(F子)の二人世帯の場合
   住民票:F子が世帯主となる一人世帯の証明書
   外国人登録原票記載事項証明書:E女が世帯主となる一人世帯の証明書
   (1)@の場合は、証明書が2枚に分かれてしまうという問題はあるものの、住民票、外国人登録原票記載事項証明書ともA男が世帯主であるという実状に沿った記載となっている。だが、(1)Aの場合は、事実上はC男が世帯主であるのに、住民票ではその事実を把握することができない。それを補うため、当該住民から要望があった場合には、住民票の備考欄に「事実上の世帯主(C男)、続柄(妻)」と記載することもできる。桜井市では、該当となる世帯があれば、できる限り実態を確認し、意向を聞くようにしている。
   また(2)の場合、住民基本台帳上当該世帯に日本人がその子一人しか存在しないのであれば、住基法上、たとえ子どもが1歳であっても世帯主とならなければならず、これも実状と異なることになる。この場合も、(1)Aの場合と同じく意向を確認した上で、住民票の備考欄に「事実上の世帯主(E女)、続柄(子)」と記載する(資料1)。このようなケースでは、ほとんどの世帯で備考欄への記載を希望されている状況である。

資料1 備考欄に事実上の世帯主の名と続柄を記載した住民票の例

3. オンラインシステム端末における混合世帯の表示

 このような実際の世帯構成と証明書に記載された世帯状況が異なるという問題に対処するため、桜井市のオンラインシステム端末では、混合世帯処理を行うことにより、同一世帯として表示させている。混合世帯処理は、住基世帯番号と外国人世帯番号を関係づけることにより行う。
 ちなみに、混合世帯処理の条件とは、
@ 住所地番が同一
A 住基、外国人世帯とも既に混合世帯ではない
B 住基、外国人世帯とも除票となっていない
C 住基世帯は、世帯主が存在していること
となっている。
 混合世帯の処理が行われていれば、住基画面(資料2)を表示したときも、外国人登録画面(資料3)を表示したときも、両方について画面右上に「混合世帯」との表示が出るように設定している。市民課以外の他の課においても、オンラインシステムがつながっているため、同じ画面を見ることができるようになっている。例えば、資料2の世帯は、母と3人の子どもの4人世帯のように見えるが、画面の右上に「混合世帯」の表示が出ているため、この他に世帯構成員がいることがわかるようになっている。これによって、各課担当者が正確な世帯構成を把握したうえで、業務を適切に行うことが可能となっている。資料3のように、外国人登録画面には日本人の氏名も表示される。外国人の生年月日は西暦、日本人は元号での表示のため、ひと目でわかるようになっている。
 実際、市民課では混合世帯の市民に「世帯全員の住民票」と請求されたとき、混合世帯であることを把握できているため、住民票と外国人登録原票記載事項証明書を提示し説明したうえで、別々にはなるが事実上「全員」の証明書の交付を行うことができるのである。また、市内での住所異動であれば、住基画面、外国人登録画面とも同じオンラインシステムにより情報を共有することができる。

資料2 桜井市のオンラインシステム端末における住基画面

資料3 桜井市のオンラインシステム端末における外国人登録画面

4. 転出入時における問題点と桜井市における対処法

 では、市町村を越えての居住地変更があった場合の手続きはどうなるのだろうか。
 外国人が居住地を変更した場合(同一の市町村の区域内で居住地を変更した場合を除く)には、新居住地に移転した日から14日以内に、新居住地の市町村の長に対し、変更登録申請書を提出して、居住地変更の登録を申請しなければならない(外登法第8条)。
 一方、日本人に関しては、転出をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならない(住基法第24条)。また、転入をした者は、転入をした日から14日以内に、次に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない(住基法第22条)。
@ 氏名
A 住所
B 転入をした年月日
C 従前の住所
D 世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄
E 転入前の住民票コード
F 国外から転入をした者その他政令で定める者については、前各号に掲げる事項のほか政令で定める事項
 このように、外国人は異なる市町村間で住所を変更する場合、転入地でだけ手続きをすれば済むようになっている。一方日本人は、転出時・転入時ともに各市町村での手続きが必要となる。転出の手続きが完了すると、転出証明書(資料4)が交付される。そこには住民票に記載されている住所・生年月日・男女の別・世帯主の氏名及び世帯主との続柄・戸籍の表示・住民票コードの他に以下の事項が記載されている(住基法施行令第24条の4)。
@ 転出前の住所
A 転出先及び転出の予定年月日
B 国民健康保険の被保険者である者については、その旨及びその者が退職被保険者等である場合には、その旨
C 介護保険の被保険者である者については、その旨その他総務省令で定める事項
D 国民年金の被保険者である者については、国民年金の被保険者の種別並びに国民年金手帳の記号及び番号
E 児童手当の支給を受けている者については、その旨
 日本人の転入の手続きには転出証明書が必要であることから、転入地の市町村は本人に問うことなく、前住所地での上記の情報を得ることができる。外国人に関しては、登録証明書(カード)を持っての手続きになるが、そこには前述の住基法施行例第24条の4に規定されたB〜Eの情報が入っていない。つまり、今まで同じように受けていた制度について、そのままでは新住所地で把握することができないことになってしまう恐れがある。混合世帯においては、転出証明書が交付された構成員と交付されない構成員がいるが、同じようにスムーズに制度を移行できるよう窓口職員の対応が求められるのである。
 桜井市では、転入手続きの際に、転出証明書から得られる情報をそのまま書き込んだ異動連絡票(資料5)というものを作成している。この異動連絡票には、前述の住基法施行例第24条の4に規定されたB〜Eの情報に加え、医療給付、社会福祉、税務、教育委員会の欄も加えており、より充実した内容となっている。外国人の場合は転出証明書がないので、情報を直接職員が聞き取り、異動連絡票に記入する。そうすることで、どの窓口を回る必要があるのかがわかり、その用紙を持って各担当窓口で手続きを行えば、前住所地で受けていた制度をそのまま引き継ぐことができるよう配慮している。また、窓口職員も異動連絡票をチェックすることで、次にどこの窓口へ行くよう案内しなければならないかがわかるとともに、手続きを忘れている窓口はないか確認することができるという利点がある。

資料4 桜井市の転出証明書

資料5 桜井市の異動連絡票

 ここで、桜井市の各担当課における外国人への対応を一部紹介する。
 年金の窓口では、20歳以上の対象者のなかで日本の年金制度について知らない人には、社会保険庁が発行している『外国人の方と日本の公的年金』について書かれた書類(日本語・英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語・ドイツ語・ハングル・タガログ語・インドネシア語)を見せて説明している。転入してきた外国人に関しては、年金手帳を持参していないと年金番号や加入状況などの情報が何もないので、社会保険事務局の市町村照会専用電話に氏名と生年月日などから問い合わせて確認する。そうすることで、年金の担当職員は日本人と同じ情報を得られることとなる。
 また学校教育に関しては、日本では6歳に達した子には就学させる義務があるが、その対象者名簿となる学齢簿の編成は当該市町村の住民基本台帳に基づいて行うものとすると規定されている(学校教育法施行令第1条第2項)。そのため、外国人はその年齢に達しながら、規定から外れてしまうことになる。しかし、外国人にも教育を受ける機会を提供するため、義務はないが、原則として外国人も就学年齢に達すると学齢簿に記載するようにしている。また、事前に就学の希望を確認し、母国語での案内を送付している。このように国籍に関係なく該当する子どもに同じ就学通知書を送ることで、外国人にも公立義務教育諸学校への通学の機会を提供している。もちろん、市町村をまたいでの異動の際も、同じように地域の小中学校に通えるよう案内をしている。
 このように、日本人と外国人に適用される法律の違いはあるが、桜井市においては異動連絡票を活用し、転入手続きの際に不都合が生じないように努めている。私たちの先輩が永年の経験を通じて作り上げた産物であるこのシステムを、これからも大事に活用していかなければいけない。

5. おわりに

 2003年、住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる「住基ネット」のサービスが開始された。桜井市においては現在住基ネットを活用した独自のサービスは行っておらず、住基ネットサービスを利用できない外国人からの不満は今のところ聞こえてこない。しかし、将来的に住基カードを活用し、自宅のパソコンからインターネットを通じてさまざまな行政手続きをいつでも簡単に行えるなどサービスが充実すれば、その適用を受けられない外国人との格差が広がってしまうことが懸念される。とりわけ混合世帯においては、同じ世帯の構成員でありながら、住基ネットのサービスを受けることのできる者と受けることのできない者が存在することになってしまう。
 法律をまったく同じにすることは困難ではあるだろう。しかし、国際化が進むなかにあって、同じ場所で同じように生活しているにもかかわらず、国籍によって不合理な行政サービスの格差が生じることがあってはならない。窓口の最前線で業務に携わる私たちは、より一層工夫を行い、外国人に対する適切なサービスの提供に努めるとともに、適用される法律の違いによりもたらされる問題について、今後さらにどのような取り組みが行えるのか考えていかなくてはならない。