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【自主レポート】
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2006年5月3日、憲法改悪反対の共同行動の報告
~ばらばらでは勝てない。壮大な統一戦線の構築を!~
茨城県本部/茨城県職員組合
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1. はじめに
2005年秋に自民党が憲法改正草案を明らかにし、国民投票法案が示され、戦後始めて憲法改正が、政治日程に上ってきた。憲法9条を無視して既に自衛隊がイラクに派兵され続けているとはいえ、憲法9条を守り抜くことは、日本の平和、世界の平和にとって絶対条件である。最近はこのような危機感を反映して各地で「護憲派」の動きも活発になってきてはいるが、今ひとつたたかいの大同団結が弱いという感じは否めない。
茨城県に於いても毎年5月3日には、水戸市内だけでも大きな4つの団体がそれぞれに憲法集会を開いていた。小さな集会まで含めればその数はさらに多くなるだろう。これらの団体が「統一集会」を開催できれば、「改憲派」に与える打撃は、遙かに大きいものになるであろう。「9条改憲反対」という一点で、政党や、上部団体の枠を超えた統一戦線はできないのだろうかという思いがいつもあった。
それぞれの団体は、背景に政党が存在したり、長い歴史があったりして9条改憲反対という目的が一致しているとはいっても簡単に一緒になることはできない状態である。このような状況は全国で似たり寄ったりなのではあるまいか。「ばらばらであっても、まだ、改憲反対の運動が存在することはそれだけでも評価すべきであり、やがて来るべき時が来ればこのような勢力は自然に一緒にたたかうことになるから心配ない」といった何の根拠もない楽観論も、裏返せば困難性を回避した現状肯定論なのかも知れない。「一緒に集会が出来れば、それはすばらしい。しかしそれはなかなか難しい。誰もが考え、誰もが試みたけどうまくいかなかった。」といった「総論賛成各論困難」的な考えが多数を占めていた。
2. 有事法制に対する取り組み(2002~2003年)
茨城県職は、従来から反戦平和の運動を重要視して運動してきたが、2002年それまでの状況を大きく変えることを目指し、組織的な取り組みを始めた。
2002年武力攻撃事態法などの有事法が政治課題になった時、県職委員長が呼びかけて「反対しましょう、有事法制 茨城ネットワーク」という組織を立ち上げたが、その時の呼びかけ団体が茨城県職、自治労茨城県本部、茨城県教職員組合、茨城県高等学校教職員組合、茨城自治労連、日赤労組水戸支部、茨城県医労連、茨城新聞労組、全水道水戸水道労組、いばらきコープ労組の10労組である。立ち上げと同時に活動を開始し、その中心は県内各地での講演学習会、街頭行動、意見広告掲載などであった。10団体の呼びかけに応えて県内の57労働組合、18団体、72個人から賛同が集まった。
呼びかけ団体になった10労組は上部団体も違い、それまではこのような統一的な取り組みが実現したことはなかった。そして、これらの労働組合の呼びかけに多くの市民団体や、個人が参加してきたことも画期的であった。組織は入会時の賛同金と集会カンパで運営した。
しかし、2003年6月有事法の成立を許してしまったこともあり、この運動はその後残念ながら事実上休止状態に入ってしまった。
3. 改憲がいよいよ政治日程に
「まもり活かそう憲法9条・教育基本法 茨城ネットワーク」の結成(2005年~)
2005年、憲法改正・教育基本法改正の動きが活発になってきたことに危機感を抱き、事実上休止状態になっていた「反対しましょう、有事法制 茨城ネットワーク」を改組する形で「まもり活かそう憲法9条・教育基本法 茨城ネットワーク」という組織を前述の10団体が中心になって改めて立ち上げた。目的は憲法9条改悪と教育基本法の改悪に全力で反対することである。
具体的に掲げた方針は、年間を通じて県内各地(7カ所)で憲法集会を開催し、その集大成として2006年5月3日には大統一集会を水戸市で開催することであった。
県内7カ所の集会はその地域で実行委員会を結成し、地元中心に企画運営が行われた。中心を担ったのは、労組や市民団体などである。7月に水戸で東京大学の高橋哲哉先生を呼んで集会を開催したのを皮切りに10月つくば市、11月日立市、2月古河市、3月行方市、下妻市、4月に常陸大宮市と7カ所の集会をやり抜いた。振り返ってみると、実行委員会の結成、講師の決定、準備期間、宣伝期間などを含めると年間7カ所の集会をやりきったことは一年中集会開催に係わってきた感がある。しかし得たものは大きかった。
労働組合として活動していただけでは、交流できなかったであろう多くのユニークな市民団体の皆さんと熱い連帯が生まれた。環境問題に取り組んでいる団体、教科書問題・教育問題に関わっている地元の若い母親達の集まり、音楽仲間、演劇集団、「9条の会」とその準備会等々の人達が私たちの呼びかけに応えて実行委員会に加わり、それぞれ特色のある企画が作り上げられていった。
それぞれの集会は、多くの結集があり全体で1,700人余を集めることができて大成功であった。
主催は「まもり活かそう憲法9条・教育基本法 茨城ネットワーク」と「地元実行委員会」の共同主催という形をとり、ポスター、チラシ、講師謝礼などの財政は「茨城ネットワーク」が殆ど担った。講師には高橋哲哉先生、三宅晶子先生、早乙女勝元さんなどをお願いしたが、事情を話して講師料は格安でお願いした。
4. 統一集会の実現へ(2006年)
統一集会に向けて動き出したのは、2005年の12月末である。「茨城ネットワーク」が呼びかけて大きな4団体(共産党系、社会民主党系、新社会党系、その他の市民団体)代表とその他の関係者に一堂に会してもらい、2006年5月3日統一集会実現の必要性を訴えた。
全ての団体からその場で快い返事が得られたわけではなかったが、「よく言ってくれた。このような呼びかけを待っていた。」というような勇気づけられる言葉も少なくなかった。それぞれの団体は、自分たちだけで何百人ほどの集会を主催できる力量があるので、統一集会の中で埋没しないでその独自性をどこまで確保できるのかということが大きな課題であったように思う。これまでの経緯も無視するわけにはいかないし、中央の政治情勢なども背景にはある。ここでも総論賛成各論困難式の難しさがつきまとっていた。しかし改憲を本気で阻止するためには、絶対に統一集会が必要であるということに反対する人は一人もいなかった。難しいことは重々承知の上で、何とか2006年5月3日憲法記念日の統一集会実施に向けて動き出すことになった。
約4ヶ月(1~4月)の間に準備会2回、事務局会議4回、実行委員会4回を開催した。事務局会議で原案を検討し、実行委員会には趣旨に賛同する団体、個人、労組等は全て参加してもらい企画運営を討論した。政党は当初から含めない方針で臨んだ。
統一集会に関しては、2004年に一度試みられていて、今回が初めてではなかったが、実行委員会を結成しての本格的な取り組みは事実上今回が初めてであった。
企画は屋外集会とするのか、屋内集会とするのかで大きく違ってくる。屋外集会は様々な試みが可能であり捨てがたいが、雨天の場合は人が集まらない危険性がある。屋内集会にすれば天気には左右されないが、講演会形式にならざるを得ない。両方並行で進めるほどの財力もない。迷った末に屋外集会として企画を進めた。屋外集会で人が沢山集まった時のイメージは、心躍るものがあったからである。
5. 2006年5月3日「まもり活かそう憲法フェスタ」開催
集会名称は「まもり活かそう憲法フェスタ」と決まり、メインの講師には法学館憲法研究所所長伊藤真氏をお願いした。
2006年5月3日憲法記念日当日はすばらしい晴天にめぐまれた。会場は千波湖畔のはなみずき広場(約7,000m2)を水戸市から借りた。集会は午前10時に開始され、午前中は伊藤真氏の40分間の講演と千波湖(一周約3キロ)一周ウオーキング等を中心に進められ、午後にかけては高校生や大学生のバンド演奏、女性団体の合唱、オカリナ演奏などが続いた。伊藤氏の講演は、屋外集会にしてはやや長時間になったが内容は分かりやすく大変好評であった。音楽演奏などの合間に行った高校生代表の発言、大学生の発言は新鮮であった。メッセージボードを設けて小さな紙に自分の思いを自由に書いてもらい次々と貼り付けていった。最後はベニヤボード3枚がメッセージで埋め尽くされるほどで、現在これらのメッセージを集約しているところである。子連れの家族のために「子供の広場」を設けたが、高齢者などのための休息の場を提供することにもなって喜ばれた。
会場全体を取り囲むように20近くの参加団体が テントを張ってそれぞれ写真展や、模擬店、自分たちの取り組みの紹介、出版物の販売など自由に自己主張を展開した。
全体としてはメインステージの統一企画に集中するが、それぞれの参加団体の独自性はそれぞれのテント内で保障するという形でバランスをとった。旗、幟などは林立状態をさけるために各団体一本だけ認めることにした。
最後は「翼を下さい」を会場全体で合唱し、14時前には全てのプログラムを終了することが出来た。
6. 成功の要因と今後の展望
当日の参加者数約2,000人。大成功であった。
成功要因の第一は、事務局会議、実行委員会をきめ細かく開催し、できるだけ多くの皆さんの意見を採り上げて企画に当たってきたことである。あらかじめ原案を示して賛同を得ていくという形をとらずに、できるだけ白紙状態から出発した。「さて、皆さんどうしましょうか」という問いかけから出発した。その中からいくつものアイデアが生まれ、当日もほぼ予定通りプログラムを実行することができた。第二は屋外集会ではあったが午前中に伊藤真氏の講演を充分時間を取り、メインに据えて集会全体の目的を強くアピールしたことである。第三には合唱・ジャズ演奏・ダンスなど様々なグループの催し物を企画したことによりそれぞれの関係者が自分の仲間を引き連れて集まったことである。第四は労働組合、市民団体、個人などが実行委員会に集まったことにより幅広い動きを作り出すことができた。
今回の取り組みを通して自治労運動にも大きな成果があった。
私たち自治体労働者は、民営化、人員削減など厳しい攻撃にさらされているが、この攻撃を跳ね返す鍵は、自らがたたかいに立ち上がると同時に、労働組合以外の人達との連帯が大きな位置を占めている。自治体労働者への攻撃は単に自治体労働者の労働条件切り下げにとどまらず、住民生活と直結している公的責任の放棄、公的サービスの低下を招くことは明らかである。ヒトもカネも削って質の高い公共サービスなど出来るわけがない。
自治体労働者攻撃は「小さな政府」と称して地域の医療・福祉などを切り捨てることで、格差社会で生まれた社会的弱者の最後のよりどころさえも奪っているのである。公務員バッシングとたたかうには多くの仲間との連帯が急務だが、憲法問題を共にたたかったことで、そのような場が形成されつつある。労働組合はどうしても労働組合の中だけで活動することが多くなりがちであるが、本当に腹を割って地域住民と話をしたことがあるだろうか。「財政難の時代に自治体労働者は自分たちだけの権利を主張している」などという誤解を払拭するために行動しているだろうか。自治労のたたかいは、地域住民の利害と対立するものではないということを私たちはもっともっと積極的に外に向けてアピールして行かなくてはならないが、今回の実行委員会を中心とした取り組みはその大きなきっかけになった。
労働組合は戦後一貫して反戦平和のたたかいを担い続けてきた。「教え子を再び戦場に送るな」(日教組)、「白衣を戦場の血で汚すな」(医療)、「二度と赤紙を配るな」(自治労)などのスローガンはそのことを示している。今こそ自治労は改憲反対、戦争反対のたたかいの旗手にならなければならない。
今回の集会の成功で、私たちが目指した、これまでの枠を超えた県内の改憲反対勢力の統一的結集に向けた第一歩が踏み出された。
そして教育基本法も国民投票法案もすべて秋の国会に先送りされた現在、私たち一人ひとりは力を緩めることなく、与えられた時間を充分に活かしてさらに大きな運動を目指して行かなくてはならない。むしろ、今秋に向けての取り組みがますます重要になってきたということである。この秋の憲法改悪反対、教育基本法改悪反対のたたかいを全力でたたかい、改悪を阻止し、2007年の5月3日はさらに大きな共同行動を目指すことを全体で確認して実行委員会を解散した。
資 料 「これまでの主なたたかい」
(1) 『反対しましょう、有事法制 茨城ネットワーク』
結 成:2002年8月28日
構 成:57労働組合 18団体 72個人
主な活動
活 動 内 容 |
日 時 |
場 所 |
『また戦争なんてイヤです』(茨城新聞意見広告15段) |
2002/10/2 |
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JR駅頭チラシ配布行動 |
2002/10/22 |
水戸市 |
県民大集会(講師:太田昌秀氏) |
2002/10/26 |
水戸市 |
イラク戦争に反対する緊急県民集会、水戸市内デモ |
2003/3/25 |
水戸市 |
県民学習会(講師:脱原発ネットワーク田巻一彦氏) |
2003/5/24 |
牛久市 |
(2) 『まもり活かそう憲法9条・教育基本法 茨城ネットワーク』
結 成:2005年3月17日
構 成:47労働組合 12団体 110個人
主な活動
集 会 名 称 |
日 時 |
結 集 |
『まもり活かそう憲法9条・教育基本法 水戸集会』
(講師:髙橋哲哉氏)
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05/7/3 |
350人 |
『まもり活かそう憲法9条・教育基本法 つくば集会』
(講師:三宅晶子氏)
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05/10/29 |
300人 |
『まもり活かそう憲法9条・教育基本法 日立集会』
(講師:吉田照久氏)
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05/11/26 |
250人 |
『まもり活かそう憲法9条・教育基本法 古河集会』
(講師:早乙女勝元氏)
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06/2/4 |
250人 |
『まもり活かそう憲法9条・教育基本法 鹿行集会』
(講師:内田雅俊氏)
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06/3/4 |
100人 |
『まもり活かそう憲法9条・教育基本法 下妻集会』
(講師:浜林正夫氏)
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06/3/25 |
200人 |
『まもり活かそう憲法9条・教育基本法 大宮集会』
(講師:早乙女勝元氏)
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06/4/15 |
280人 |
(3) 『まもり活かそう 憲法フェスタ』実行委員会
実 施:2006年5月3日
構 成:31労働組合40団体 134個人
主な活動
集 会 名 称 |
日 時 |
結 集 |
『まもり活かそう 憲法フェスタ』 |
06/5/3 |
2,000人 |
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