【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 越前市職員組合では、NPO法人丹南市民自治研究センターや越前市の市民活動団体の中間支援組織であるNPOえちぜんと連携・協働し、事業を行っています。
 取り組みを通じて、自治体職員が地域の活性化に取り組む多様な主体(地域住民、市民活動団体、行政)を結ぶ「架け橋」になることの必要性を感じました。今後も、多様な主体との「学びあいの場づくり」を継続して進めていきます。



自治研推進委員会と市民活動団体との連携した取り組み
NPO法人丹南市民自治研究センター、NPOえちぜんとの
協働による学びあいの場づくり

福井県本部/越前市職員組合・自治研推進委員会 間所 祐丞

1. はじめに

(1) 越前市の概況
 越前市は、福井県のほぼ中央に位置し、2005年10月に旧武生市と旧今立町が合併して誕生しました。
 面積は230.75km2であり、福井県域の5.5%を占めています。
 人口は85,614人で、世帯数は27,601世帯です(2010年国勢調査)。
 本市の歴史は、継体大王伝承に見られるように大変古く、越の国と呼ばれた頃から拓けた地域で、旧武生市には「大化の改新」の頃に国府が置かれ、政治・経済・文化の中心地として栄えました。「源氏物語」の作者・紫式部が、越前国司として赴任した父・藤原為時とともに1年余り暮らした地でもあります。
 また、モノづくりが盛んで、越前和紙や越前打刃物、越前箪笥などの伝統産業から電子部品等のハイテク産業まで幅広い産業が集積し、福井県内有数の工業製造品等出荷額を誇る産業都市であります。
 なお、越前市では、6年後完成を目途とした新庁舎建設とともに、2026年末に予定されている北陸新幹線の開業により、福井県内で唯一の新設駅ができるなど、半世紀に一度の大きなハード整備を行う時期に来ています。

(2) 越前市職員組合
 越前市の職員数は2014年4月1日時点で600人であり、その内組合員数は435人です。執行部のほか、現業支部、公営企業支部、一般職支部の各支部のほか、専門部(壮年部、女性部、青年部)があります。2005年の合併当時から比べると141人減っており、全ての職場で、慢性的に人員が不足している状況です。
 本市では新行財政構造改革プログラムに基づき、2017年度に職員数を600人にすることを掲げていましたが、3年も前倒しで到達してしまいました。越前市職員組合では、このような状況のなか、業務量の増大、多様化する市民ニーズ・行政需要のほか、新庁舎の建設や2018年開催の福井国体、北陸新幹線の開業に向けた整備などの大きなプロジェクトに対応するため、人員確保を強く訴えています。
 越前市職では、職員一人ひとりが安心して働ける職場づくりを進めるとともに、NPO法人丹南市民自治研究センター(以下「丹南自治研センター」という。)と連携し、職員が参加したい、参加してみたいと思うような取り組みを積極的に企画し、地域の中でともに学んでいく活動を展開しています。
 このレポートでは、直近の取り組みについて、報告します。

越前市の位置

越前和紙

自校直営の給食

2. 前回の報告から

 2012年に開催された第34回兵庫自治研集会において、自治研推進委員会と青年部が取り組んだ活動についてレポートしました。そのときの総括の中で、活動のテーマを深く考えずに実施したことから、取り組んだことを次にどう活かしていくかが課題としてありました。
 そのような中で、これまで連携してきた丹南自治研センターに加え、越前市で活動している市民活動団体の力が必要であると感じました。そこで考えたのが、越前市の市民活動団体の中間支援組織であるNPOえちぜんとの連携です。NPOえちぜんが色々な分野で活動している市民活動団体といっしょになって企画し、共に学び、活動していける場ができないかを考えました。

3. NPO法人丹南市民自治研究センターとNPOえちぜん

(1) NPO法人丹南市民自治研究センターとは
 丹南自治研センターは福井県の中心部である丹南地域「越前市、鯖江市、越前町、南越前町、池田町」の住民、自治体職員、議員、研究者が、地域の課題や暮らし、まちづくり、平和、福祉などについて、気軽に集い語り合い、学びあう「地域の学び舎」のような市民活動団体です。
 全国自治研集会とも縁が深く、沖縄で開催された第31回自治研集会で、「市民立、労働者立の児童養護施設の挑戦」レポートが自治研活動部門の優秀賞に選ばれました。他にも学童ランチや地域鉄道を守る取り組みなどの自治研活動の報告を行ってきました。詳細については「地域を変える自治研力」という本があるのでご紹介します。

(2) NPOえちぜんとは
 NPOえちぜんは、越前市の市民団体同士、市民団体と行政を繋ぐ中間支援組織として、2002年の発足以来、福祉や公共交通、若者の支援のほか、災害時のボランティアセンターの運営等、様々な活動に取り組んでいます。
 丹南自治研センターは、このNPOえちぜんの設立当初から深く関わっており、「市民が集う拠点で自治研することで、初めて市民と自治体職員の間で立場を超えた交流が生まれる」という考えのもと、全国でも数少ない組合事務所以外に自治研の活動拠点として、NPOえちぜんの事務局長や運営委員に参画しています。
 私自身も、2012年からNPOえちぜんに運営委員として参画しており、様々な市民活動団体のイベントに参加しています。

4. 協働の取り組み事例 

(1) プラスポケットセミナー
① 開催までの経緯等
  2013年4月25日に丹南自治研センターは、高知県四万十市の職員で全国地域づくり交流センター代表世話人の宮本昌博さんを講師に招き、越前市公民館連合会、公民館職員組合、福井県地方自治研究センターと共催して「地域づくりとはどのようなことか」と題する市民講演会を開きました。講演会には公民館長さんや地域づくりリーダー、公民館職員、自治体職員約150人が参加しました。
  講演の中で、「地域づくりの主体はあくまで住民、されど住民が何とか地域をよくしたいと思っているときに、知らない顔や、できない・しない理由を口にすることは自治体職員の仕事ではない。地域づくりの材料を提供し、また他の地域でがんばっている人の事例を紹介し、アドバイスする責任が自治体職員にある、そういう意味で、多くの人脈やエピソードのポケットを持ってほしい。」という話がありました。
  越前市にも、私たちが知らないだけで、福祉やまちづくりなど各分野で活躍されている方がたくさんいて、そういう人たちから話を聞き、自分のポケット(知識や人脈)を増やす必要性があると感じました。
  そこで、丹南自治研センター、NPOえちぜん、自治研推進委員会、青年部が協働して、自分のポケットを増やす勉強会、プラスポケットセミナーを開催することを決めました。
② 第1回
 ア 日 時:2013年8月1日(木)
 イ 講 師:野尻 富美 氏(病児デイケア「ままのて」)
 ウ テーマ:病児デイケア「ままのて」や複合型デイサービス「てまり」、障害児の学童保育「杉の子」の事業 実施までの経緯や内容について
 エ 内 容:第1回セミナーの参加人数は、当初予定していた人数の2倍の50人が集まりましたが、人数を感じさせない一体感のあるセミナーになりました。講師の野尻さんも、みんながあまりに真剣に聞いているので、緊張したとおっしゃっておられましたが、時間を追うごとに話もノッていきました。「地域の子どもは、地域の中で育ってほしい」、「市の職員といっしょに活動できればいくらでもがんばれる」、「できないと言うのは簡単だけれど、何か一言でいい、ヒントや声かけのできる自治体職員になってほしい」など、熱のこもった話に胸を何度も打たれ、私だけでなく参加者全員が魅せられていたように感じました。また、すごくよかったことは、児童養護施設「一陽」の職員や市職青年部など、若い方がたくさん参加していたことです。今後もこの流れを断ち切らずに取り組んでいきたいと強く感じました。
③ 第2回
 ア 日 時:2013年10月4日(金)
 イ 講 師:田中 滋子 氏 (NPOえちぜん副代表、ロハス越前事務局長)
 ウ テーマ:地域人として地域づくりに携わることとは
 エ 内 容:第2回セミナーは、米粉を使ったパンを製造とことんお米倶楽部代表出やロハス越前事務局長、またNPOえちぜんの副代表として活躍されている田中滋子さんを招いて行いました。田中さんは過去に自治体職員として地域の活性化に取り組んでこられた方でもあります。地域と行政の両方を熟知している田中さんから、地域と行政が協働することの難しさ、大切さについて参加した約30人が学びました。
  講師の流れるような話しに当初1時間を予定していたセミナーが1時間半になりました。「市民のレベルと役所のレベルは比例している」、「市民と行政がいっしょに知恵を絞って、いっしょに汗をかく。地域も行政もどっちもがんばらないといけない。」、「とにかく"やってみよっさ(やってみれば)"と背中を押してくれた仲間がいるから今のことがやれた。」、「コーディネーターが活躍し、評価されるべき。ネットワーク作りが重要。」という、職員が地域で活動する際のエッセンスが詰まった話を聞くことができました。
  第1回のゲストの野尻さんとは活動分野が違った今回の田中さん。でも、共通する思いや発言が多く読み取れました。

(2) のっぽ講座「大学と地域がともに取り組むまちづくり」
 【開催までの経緯】
 近年、大学の教員や学生が地域に入り、地域おこし活動に取り組む例が増えています。越前市においても、地元の4年制大学である仁愛大学をはじめ、県内の大学等の学生が独自に、あるいは地域住民と連携して活動しています。ただし、そういった取り組みが継続的に行われているかというと疑問です。
 また、JR武生駅前のセンチュリープラザという建物内に、仁愛大学の駅前サテライト(大学)、NPOえちぜんの市民活動交流室(市民活動団体)、中心市街地活性化を推進しているまちづくりセンター(行政)、越前市観光協会(観光)といった拠点となる施設が入っております。しかし、物理的には近い距離であるものの、各団体が情報共有や意見交換を定期的に行う場や仕組みはありませんでした。
 このような状況の中で、地域住民や市民活動団体、大学が連携して継続的に活動できるような仕組み・取り組みができないか、NPOえちぜんや丹南自治研センターが大学と各団体を結ぶ「架け橋」となることができないかということで、セミナーを開催することにしました。
① 開催内容等
 ア 日 時:2014年1月25日(土)
 イ スケジュール:
   第1部 パネルトーク 1時間30分 
   コーディネーター:谷 雅徳 氏(仁愛大学非常勤講師)
   ゲスト:イシカワ カズ 氏(跡見学園女子大学教授)、島岡 哉 氏(仁愛大学准教授)
   パネラー:前田 浩司 氏(仁愛大学学生)、奥村 麻由 氏(仁愛大学学生)、
        山口 哲弘 氏(あぜみち代表)、橋本 和久 氏(NPOえちぜん事務局長)
   第2部 トライアングルセッション 1時間
   コーディネーター:谷 雅徳 氏
 ウ 内 容:当日は、一般市民、自治体職員、大学関係者約50人の参加がありました。第一部のパネルトークでは、跡見学園女子大学イシカワカズ氏から武生国際音楽祭を通じた学生と地域連携の取り組み事例を、仁愛大学島岡哉氏から菊をメインに栽培している植物園である万葉菊花園を中心会場とした環境イベントである、「菊・地球博」を通じた学生と地域連携の取り組み事例を、仁愛大学学生の前田浩司氏から市内に数多くある寺社で地域の住民を繋ぐことを目的としたカフェを開催する「寺DEラテ」の取り組み事例を、仁愛大学学生の奥村麻由氏から地域住民の足となっているローカル鉄道の駅の利用促進を目的としている北府駅を愛する会との連携企画や福井鉄道感謝祭の取り組み事例を、あぜみち山口哲弘氏から仁愛大学の学生から社会人になって継続して地域活性化に取り組んでいる事例について学びました。最後にのっぽえちぜん橋本事務局長から隣の鯖江市の学生と地域の連携の報告を聞きました。
   第二部では、谷雅徳(俵越山)氏をコーディネーターにトライアングルセッションを行いました。トライアングルセッションとは、コーディネーターを中心に、3つの違う立場から議論を行う手法です。越前屋俵太として、テレビ番組を中心に活躍された俵さんのコーディネートについて、発言者の思いや意見を引き出し、周りで聞いている人たちにも自分の意見を言いたいと思わせるコミュニケーション力に驚きました。学生に限らず、越前市のよさがわかる人(結婚を機に移り住んだ人やUターン者)たちを地域の活性化に巻き込んでいくことの重要性を学びました。また、島岡先生が提唱された、地域で育った子どもが地域の大学で学び、卒業して地域を支えるという「社会的ネットワークの編み直し」について、地域の大学である仁愛大学に求められているものであり、その取り組みについて、支援をしていく必要があるなと感じました。

(3) アースデー越前2014
【開催内容等】
 ① 日 時:2014年5月11日(日)
 ② 内 容:アースデーとは、「地球のことを考え、行動する日」としてアメリカで始まった取り組みで、越前市でも2008年から毎年春に開催されており、多くの市民活動団体が集まって環境に関するイベントを実施しています。
   丹南自治研センターでは、越前市役所から塩竃市へ復興支援業務に職員を1人派遣していることから、塩竃市の被災状況や現状を紹介するとともに、復興へのささやかな応援を主旨とした「塩竃市物産販売」を行いました。市民活動団体が主催のイベントですが、丹南自治研センターがブースを出すということで、当日は一般の参加者に加え、多くの職員が来場し、イベントを楽しみました。

5. 今後の課題と方向性 

 上記の取り組みを行う中で、自分の仕事とは全く別のところで、自分の身銭をきってまで、社会貢献や地域活性化に取り組んでいる市民や市民活動団体がたくさんいるということを知りました。そして、彼らも自治体職員と連携し、より良い取り組みをしていきたい、地域の活性化につなげたいと考えていることがわかりました。そのためにも、今後もプラスポケットセミナーを継続して開催していきたいと思います。
 また、東北大震災から3年が経過しましたが、復興はまだ緒に付いたばかりです。その中で生活し、地域活性化に取り組んでいる住民や企業と、それを支える自治体職員をこれからも支援していかなければならないと感じました。

6. おわりに 

 自治体職員であれば、誰もが望む「安心して健康に定年を迎えられる職場」。この今まで当たり前であったことが「何もしなければ壊される」時代が到来しています。
 その答えになるのかはわかりませんが、前回のレポートにおいて、「自分たちの職場を守り、よりよい職場環境にしていくために、地域の人に『ありがとう』と言ってもらえるような活動は必要不可欠なのではないか。地域から求められる自治体職員にならないといけないのでないか。」と問題提起しました。
 今回、丹南自治研センターやNPOえちぜんと協働して活動する中で、自治体職員として地に足のついた仕事を行うとともに、地域人として地域づくりに取り組むことの大切さを学びました。そして、バランス感覚を磨くことの大切さを改めて認識し、人間としての総合力を身につけることが必要であると感じました。
 また、地域住民や市民活動団体、行政を結ぶコーディネーターが不足しているということを目の当たりにしました。自治体職員が、地域の活性化に取り組む様々な人と人の「架け橋」になる、これが地域から自治体職員に求められていることなのではないでしょうか。
 最後に、セミナー講師の田中さんがおっしゃっていました、「一人のスーパー公務員よりも、職員みんなががんばっている市役所をめざしてほしい」と。「安心して元気に働ける職場」、「やりがいのある仕事ができる職場」をつくるために、「職場や職員組合が自分のために何をしてくれるのか」ではなく、「自分が職場や職員組合にどう関わるべきか」を考え、行動する時期に来ているのではないかと問題提起して、今回のレポートとします。