【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 近年、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を自治体のPRに活用する例が多く見られるようになった。それと同時に、SNSの使い方を誤り大きなトラブルに発展するケースが連日ニュースで取り上げられている。労働組合として、組合員を守るため、自治体SNSを管理する職員の労働環境の整備や、トラブルに巻き込まれないようにするスキルを身につけるための教育体制の整備について考える。



SNSの特性と危機管理
自治体公式フェイスブックの管理体制について

愛知県本部/常滑市職員連合労働組合 片岡 靖貴

1. SNSに関連したトラブルが急増

(1) 安易な考え、行動が取り返しのつかないトラブルに発展
① ツイッター投稿が訴訟問題に
  2013年、スマートフォンの普及に伴い、新聞やテレビをにぎわせたニュースとして、ツイッターを使った投稿がトラブルに発展するという事件があった。それらの多くは、注目を浴びたいという心理から、若者が悪ふざけをした現場を写真に収め、それをインターネットに投稿してしまうことから起こる。その行為が、度を過ぎてしまったことから、インターネット上での反感を買い、個人を特定され叩かれる、いわゆる「炎上」を起こしたという内容であった。以下に、ツイッター炎上事件の一部を紹介する。

番号

年・月

概 要

当事者

場 所

処分内容

2013.12

JR金沢駅に電車内で全裸

飲食店経営

富山県
高岡市

書類送検

2013.10

神戸市営地下鉄の線路に立ち入る

高校1年生

兵庫県
神戸市

家裁送致

2013.10

店員を土下座させ、謝罪強要

介護職(43)

北海道
札幌市

名誉棄損で
罰金30万円

2013.09

コンビニのアイスケースに頭をつっこむ

高校2年生

京都府
長岡京市

書類送検

2013.08

パトカーの屋根に登る

少年(19)

北海道
釧路町

逮捕

2013.07

USJで運行停止などを行いTwitterで告白

大学生ら

大阪府

書類送検

2010.06

YouTubeで著作権侵害し更新状況をTwitterで報告

中学3年生

愛知県
名古屋市

逮捕

② ツイッターの普及とトラブルまとめ
  主なツイッター事件をまとめたものの内、注目する点の一つは、本人たちはほんの悪ふざけ、軽い気持ちで投稿をしている。軽い気持ちで行っているということは、誰もが過ちを犯す可能性があるということである。
  二つ目は、このような事件の当事者の多くは高校生、大学生などの学生が中心となっているが、3番の例にあるように、責任のある大人も時には事件を起こすということである。
  三つ目は、その代償である。損害を被った企業に損害賠償を請求され、訴訟にまで発展するという例もある。また、5番目、7番目の例のように、逮捕されるというケースも。
  四つ目は、7番目にあるように、著作権の侵害など、法に対する無知が原因となってトラブルに発展するケースである。
  ここで挙げたのは、度が過ぎたもののように感じられるかもしれないが、一般的には何の問題もない通常の投稿でも、閲覧者の感じ方はさまざまであり注意が必要である。また、投稿者に落ち度が無くても、悪意を持った閲覧者からいわれのない誹謗中傷を受ける危険性は存在している。

2. 自治体フェイスブックの広がり

(1) 自治体が公式フェイスブックを運用する意味とは
① 主なSNSツールについて
  インターネット上において、さまざまなソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下「SNS」)ツールが用意されているが、SNSについての基本的な事項についてまとめる。
  SNSとは:人と人とのつながりを促進・サポートする、コミュニティ型のウェブサイトの意である。現在、「Facebook」、「GREE」、「mixi」、「Mobage」などが有名で、中でもフェイスブックは2013年3月末期の月間アクティブユーザー数は全世界で11億1,000万人、日本の利用者数は1,382万360人、対人口比は10.81%となっている。実名による登録が義務付けられている点が大きな特徴で、本人の顔写真、実社会でのプロフィールの登録も義務付けられている。主な機能としては、身の回りに起こったことなどを投稿すると、それを見た人が「いいね」という意思表示やコメントを残すことができる。また、友達を検索する機能や、友達を登録しておくと、記事の投稿があったときに表示される機能がある。お互いに投稿された記事に対してコメントを残すことで、繋がりを作ることができ、やり取りを通じてネットワークを広げていくもの。
② 街のPR活動とその効果
  そのような背景がある中で、企業も自社ブランドのPRのためにフェイスブックを利用し始め、自治体においても情報発信のツールとして、特に若者に向けての広報媒体として活用するようになった。これまで、地方自治体の広報ツールとしては、広報誌やホームページが使われてきたが、市民がより手軽に情報を得やすく、コメントを残す機能を備えているということで、市民からの反応も得やすいフェイスブックは、自治体の広報担当からは大変有用な媒体と考えられるようになった。そして、街の活気や、にぎわいなどを発信することにより「住んでみたい街」「行ってみたい街」と考えてもらうことは、税収の面でもメリットを生み、街の発展に繋がるものと考えられるようになった。
③ 愛知県内自治体のソーシャルメディア導入状況

市 名

導入時期

いいね

活用分野

災害情報

防犯情報

市民協働

イベント
情報

観光情報

地域活性
化情報

行政情報
全般

その他

名古屋市

2012.7

486

             

豊橋市

2012.9

1,720

 

   

岡崎市

2012.2

859

 

 

瀬戸市

2012.5

1,313

     

   

半田市

2012.1

880

     

     

春日井市

2013.10

184

   

   

豊川市

2013.1

524

   

 

 

津島市

2013.3

186

   

       

碧南市

2013.9

66

               

豊田市

2013.3

296

     

     

安城市

2013.12

126

     

 

 

犬山市

2013.2

317

             

小牧市

2013.6

441

             

新城市

2013.4

358

   

     

尾張旭市

2012.4

610

   

 

 

岩倉市

2012.5

1,252

             

日進市

2013.9

148

             

常滑市

2013.10

993

 

  2014年2月、常滑市が行った調査によると、愛知県内で自治体がソーシャルメディアを導入している状況は、表のとおりとなっている。
※ この他に、
  ・ツイッター  14市
  ・ライン    1市
  ・ユーチューブ 13市
  ・ブログ    6市 で
  それぞれ導入されている。

(2) わが常滑市も公式フェイスブックを導入
① ええね 常滑市
  そして2013年10月、わが常滑市にも公式フェイスブックページ「ええね! 常滑市」が開設された。

  2014年4月現在、1,000を超える「いいね」が付けられている。

3. 労働組合としての視点で考える

(1) マニュアルの整備はどうか
① 実際の運用を考えたマニュアルになっているかどうか
  前述したように、インターネットの利用には即時性や若者層への情報発信の有効性といったメリットと、投稿内容によっては炎上の危険性や悪用される可能性などのデメリットが存在する。自治体職員がフェイスブックなどのSNSを扱う状況で、それらのデメリットと、それを回避するためのスキルを正しく身に着けているかというのは、非常に疑問を持つ部分である。組合としては、マニュアルの内容が適正かどうかをチェックする必要があると考えた。「常滑市ソーシャルメディアガイドライン」については、一定限、「炎上」に対する防止方法や、悪用されないような注意点が述べられているが、職員の個人名を使用しての投稿や、顔写真の投稿を前提に考えられており、危険性を完全に排除できていないものという感想を持っている。この危険性を減らすためには、職員一人ひとりへの教育が必要である。

(2) フェイスブックを管理する端末や時間帯は
① スマートフォンからのコメントUP
  当組合は、市の公式フェイスブックの運用が始まる時点において、職員の勤務労働条件の変更に当たるとして当局と協議を行った。ここでの焦点の一つとして、当局は職員が個人のスマートフォン端末を使用して市に関する情報を投稿することまで想定しており、これについては公私の混同に繋がり、また職員に費用負担を強いるものとして反対の意思を伝えている。
② フェイスブックの管理は勤務時間内のみ
  このように、当局の理想のカタチと、組合側が考える理想のカタチが大きくずれていると感じた。それは、投稿やフェイスブックページの管理時間についても現れた。投稿のチェック、返信をいつ行うのかについて、市の当局は勤務時間中のみという事を担保していない。担当者が休日や勤務時間外にフェイスブックのコメントなどのチェックに縛られることが無いよう組合として意見するべきと考えた。

(3) フェイスブックの運用方法を当局にまかせっきりではいけない
① ここまで記載したことを含め、当局・組合の考え方をまとめる。
  当局の考えとは
  ・職員は全員が市の広報担当としてフェイスブックを扱う。
  ・個人のアカウント、端末を利用して市の情報を広める。
  ・個人の時間(勤務時間外)も投稿やコメントへの返信を行う。
  組合の考えは
  ・炎上、悪用に対する職員教育を行い、危険性があることを理解、同意したうえで扱う。
  ・扱うのは公式アカウントのみ。投稿は個人名や個人の顔写真は避けるべき。
  ・端末は業務PCのみ。投稿時間も勤務時間中に限定する。
  大きく考え方の違いが現れた。
② 運用方法について、このような考え方の違いがある中でスタートしたフェイスブックであるが、その運用を当局側の考え方のみに任せては組合として組合員を守ることはできない。組合としてもこの問題について学習を深める必要があると考えた。

(4) 先進自治体から学ぶ
① 三重県名張市のフェイスブック担当者へヒアリングを実施
  当局との協議の中で、三重県名張市のフェイスブックを参考にしているとの発言があり、組合は先進自治体である当該の広報担当者からヒアリングを行い、適切な運用方法を考える材料とすることにし、自治労のネットワークでそれを実現させることができた。
  写真は、その際の記録である。手前右側に名張市職労の書記長と名張市広報担当者、奥が常滑市職連役員。愛知県本部役員にも同行していただいた(手前左)。
  名張市の広報担当者から直接話しを伺うことができ、運用に関する考え方について大きな違いがあるということが分かった。また、一日一記事を目標としており、担当者の業務量が増加しているという現状も伺うことができた。これらの事は、フェイスブック画面の見た目からは判断できないことであり、とても有意義な経験であった。
② 名張市から学んだこと
  名張市の広報担当者の考え方としては、
  ・記事内容については、必ず担当課や広報担当課で確認を行い投稿する。
  ・投稿者名は本人の同意を前提とし、強制はしない。
  ・フェイスブックの取り扱いは完全に勤務時間中のみとする。
  ・個人の端末は使用しない。
  ・フェイスブック運用方針に、コメントへの返信は担保しない旨の記載を行っている。


4. まとめ

 このように、同じように見える公式フェイスブックページでありながら、名張市と常滑市の運用方法には大きく違いが現れた。前者の考え方は、公と私の線引きが明確なのに対して、後者ではそれがあいまいなままとされている。組合としては、組合員を守る立場から、先進自治体の視察結果を活かした当局への提言を行うことが必要であると考えており、そのことを通じてより良いフェイスブックページに成長させるべく今後も活動を行っていく。