【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

水場公開による地域との"絆"作り


三重県本部/公営企業評議会

1. 公営企業評議会と水週間

 公営企業評議会(以下「公企評」)は、水道、工業用水道、電気、下水道、ガスといったライフラインを担う社会的役割を果たすため、また住民ニーズに応えられる質の高い公共サービスの実現をめざし、取り組みを行っている評議会です。
 その中で、水道事業に関する取り組みとして、毎年8月1日から7日までの1週間を自治労「水週間」と位置付け、水を一番多く使うこの時期に、水の大切さをみんなで考えることを目的として全国でさまざまな行事が行われています。
 この水週間の取り組みは、住民のための地方公営企業確立にむけた全国公企統一闘争として1985年から始まり、今年で30回目となる取り組みです。その中で、三重県では浄水場の一般公開を行い、地域住民とのふれあいや対話を進めることにより、水の大切さや、水道事業が抱える諸問題についての啓発活動を行っています。

2. 全国の取り組み状況

 「水週間」の取り組みとして、多くの県本部、単組、支部、分会、評議会で多彩な行事が展開されています。
 全国的な取り組みとして、ポスター掲示やビラの配布、さらにより参加型の取り組みとしてコンクールを実施し、子どもでも気軽に参加できる「塗り絵の部」と日曜写真家向けの「写真の部」の2部門を設定し、全国から多くの作品が寄せられています。受賞作品については、自治労中央委員会や地方自治研究全国集会で展示されています。
 各県本部などの活動としては、水源地や河川敷などの清掃や水質調査、水源涵養林の下草刈りなどが行われています。水の大切さを考えてもらうための学習会や、浄水場などの見学会を実施している県本部などもあります。

3. 三重の取り組み状況

 三重県の取り組みとしては、水の大切さをみんなで考えることを目的に、第4回(1988年)「水週間」から、普段なかなか見ることができない浄水場の一般公開に取り組んでいます。
 当初は津市周辺において浄水場公開を行ってきましたが、開催地域が津市周辺のみに偏っていたこともあり、1996年から県南部にある企業庁の多気浄水場へ会場を移しました。その後、2006年からは、旧一志町の高野浄水場と多気町の多気浄水場で交互に開催することとし、地域住民との協働活動の場を広げています。
 2007年からは、三重県企業庁においても水と電気の安全・安定供給及びCSR(企業の社会的責任)の取り組み認知度を向上させるための展開方法として「施設見学の充実」が広報活動方針に位置付けられ、その実践活動として、複数浄水場の同時公開を実施することとなりました。結果として、公企評で一般公開に取り組んでいる浄水場では、企業庁での公開と合わせて、年2回の一般公開が行われることとなりました。
 このため、2010年からは、公企評の浄水場公開と企業庁施設同時公開を同日に共同開催することとしました。これは、単独で行う場合と比較して、両者の人的負担を軽減できるほか、公企評で行っている新聞折込チラシの他、企業庁側で市役所・小学校等に配布しているビラ等により集客効果が見込まれる事、またイベント・模擬店等もより充実したものにできる利点があり、来場者数の大幅な増加が見込まれるためです。
 実際、共同開催にしてからは、来場者数を2倍程度に増加させることができました。

○これまでの活動状況実績

開催年度

開催日

公開施設

参加者数

1988年度

8/6(土)

片田浄水場(津市)

記録なし

1989年度

8/6(日)

片田浄水場(津市)

記録なし

1990年度

8/5(日)

片田浄水場(津市)

記録なし

1991年度

8/4(日)

片田浄水場(津市)

記録なし

1992年度

8/2(日)

高野浄水場(企業庁、旧一志町)

記録なし

1993年度

8/1(日)

高野浄水場(企業庁、旧一志町)

記録なし

1994年度

8/7(日)

高野浄水場(企業庁、旧一志町)

記録なし

1995年度

8/6(日)

高野浄水場(企業庁、旧一志町)

記録なし

1996年度

8/4(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

記録なし

1997年度

8/10(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

140超

1998年度

8/1(土)

多気浄水場(企業庁、多気町)

130超

1999年度

8/1(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

130超

2000年度

8/6(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

約130

2001年度

8/5(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

約140

2002年度

8/4(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

約140

2003年度

8/3(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

103

2004年度

8/1(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

93

2005年度

8/7(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

132

2006年度

8/6(日)

高野浄水場(企業庁、旧一志町)

101

2007年度

8/5(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

176

2008年度

8/3(日)

高野浄水場(企業庁、旧一志町)

160

2009年度

8/2(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

113

2010年度

8/1(日)

高野浄水場(企業庁、旧一志町)

206

2011年度

8/7(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

292

2012年度

8/5(日)

高野浄水場(企業庁、旧一志町)

480

2013年度

8/4(日)

多気浄水場(企業庁、多気町)

256

※ 2010年度以降は企業庁と同日開催

4. 水道事業の現状

 日本の水道は世界的にもトップクラスと言えますが、戦後高度成長期に構成された施設の老朽化といったハード面の問題や、団塊世代大量退職といったソフト面での問題などさまざまな課題があります。
 ここで水道事業がかかえる問題のうち、大きな課題について紹介します。

(1) 人員削減
 全国の水道事業体において、職員の減少が進み、豊富な経験を有する職員が少なくなる傾向にあります。これは、各自治体において長期的な構想を持たないまま、行財政改革にあわせた人員削減、財政難などを理由にした安易な民間委託を進めてきたことに起因するものです。
 このような中、東日本大震災に際しては、長年にわたる合理化、民間委託など現場力の軽視の結果、多くの自治体で人員や資機材が不足し、被災地への支援活動が生じても対応する余力が無いことが判明しました。自治体の基本的役割である住民の生命と財産を守る力が失われつつあり、現場力の回復が急務であることが明らかとなりました。
 住民の生活をささえる水道は、地震・風水害などで供給が停止した場合、住民生活に大きな影響をもたらします。安全で安定した水を供給するためには、確実に事業を進めることができる体制を確保する必要があります。
 しかし、日常的な施設の維持管理や、水道管・設備等に起こる突発的な事故対応に必要な技術は、経験によるところが大きく、現状の人員体制では、十分な経験を得ることができず、技術継承も難しく、安定給水を継続することは困難な状態です。

(2) 民間委託
 民間委託では、水道メーターの管理と検針、料金徴収の業務といった事務業務の委託、浄水場等の運転監視委託、維持管理業務委託(設備の更新・改修を含む委託・含まない委託)といった部分的な委託、これらを組み合わせた包括的な委託と、さまざまな委託形態が行われています。
 しかしどの様な委託であれ、民間会社であれば利潤を追求することは当然であり、契約期間内での補修・機器への投資を抑える事は十分に考えられます。つまり、自治体が直接運営する直営なら中長期的視野に立ち実施されることが、民間であれば先延ばしされることになります。
 また、水道の経営・運営はこれまで自治体だけが行ってきたこともあり、受託する業者の体制も十分とは言えません。ある浄水場で経験を積んだ技術者を、新たな受託先の指導者として異動も行っています。各浄水場では個々のノウハウがあり、経験を積んだ技術者が確保できない民間委託は、決して安心できる体制とは言えないのが現状です。
 実際に、事故などが起これば自治体職員での対応が必要ですし、災害時の復旧も委託化されている事業体と、直営の事業体では、復旧速度が同じとは言えません。
 民間委託が進んでいるヨーロッパでは、民間企業が自社の資産を投資せず、市場から資金調達をするため、返済利率が公的資金よりも高く、さらに民間企業の過剰な利益を上乗せしているため水道料金が高騰しています。また契約不履行も多くあります。このため、再公営化の動きが進んでいます。
 安易な委託化は、水道の安全性、技術力の低下、水道料金の高騰をまねき、サービスの低下につながりかねません。

(3) 水の公共性と適正な利用
 近年の異常気象による洪水や渇水、森林の荒廃、水源地の汚染・外国資本による土地購入、大口需要者の地下水利用による地盤沈下や水脈の枯渇、世界的な商品としての「水」など、さまざまな水問題があり、健全な水循環の構築と水の公的管理が必要となっています。
 このため、これまで5省庁で、それぞれに所轄されている水に関する法・規制を一元化する水循環基本法(水基本法)が2014年3月27日に成立されました。今後の総合的な水の公的管理が期待されます。

5. 住民参加型の意味

 水週間の全国的な取り組み内容を見てみると、様々な内容がありますが、三重県ではできるだけ多くの地域住民が参加できる、参加してもらえる取り組みとして、浄水場の一般公開という手法をとっています。
 ではなぜ、地域住民に参加してもらう必要があるのかを、考えてみたいと思います。
 多くの地域住民からすれば「水は生活になくてはならないもの」である反面「水は安定的に安全に供給されて当たり前のもの」として認識されています。「重要であるが当たり前のもの」という考えから「水を安定的に安全に供給する責任が行政にはある」と、いわば行政任せの考えになっているのではないでしょうか。
 当然のこととして、行政には責任があります。しかし、「4. 水道事業の現状」で述べたように、現在その責任が全うできなくなるリスクを含んだ問題が発生しています。この問題を行政側だけで解決することは非常に困難なことです。なぜならば、水道事業は地域住民への貢献を果たしている一方で、常に地域住民の理解を求めながら、協力を得て事業を運営していく必要があるからです。例えば「節水」の取り組みなどは地域住民の協力無くして成し得ません。また、水源となる河川等の保全も行政だけで行えるものではありません。
 このことからも、「地域住民へのアピール」と「地域住民との交流」は必要不可欠なもので、また、現状の問題を訴え改善していくためには、地域住民の協力が必要であり、その力は大きなものとなります。
 しかし、水道事業について問題意識を持っている人々はあまりに少ないのが現状ではないでしょうか。まして、現在の水道事業の状況、抱える問題となるとなおさらです。
 そこで、どのような過程で水が飲み水になるかを知ってもらうことをスタートラインと考えて、毎年水を一番多く使う時期に、普段訪れる機会の少ない浄水場の公開を行い、各種イベントを通して気軽に楽しく触れてもらうことによって、水道に関心を持ってもらうきっかけ作りをしています。
 浄水場に見学に来てもらい、普段飲んでいる水はどこから来ているのか、水をきれいにする方法など、身近な事から興味を持ってもらい、水源や民間委託等といった発展した水道事業の問題点に関心を持ってもらうことも期待しています。
 また、水は限られた資源であり、飲み水とするためには沢山のコストやエネルギーがかかることを知ってもらえば、川を汚してはいけないという意識も高まり、節水等の取り組みも期待できます。

6. 昨年の報告

 昨年は多気町にある多気浄水場で一般公開を行いました。浄水場の見学のほか、公企評からは水週間塗り絵、カキ氷、ヨーヨー風船、ジュース、企業庁から水処理実験、ビデオ上映、水の飲み比べ、綿菓子、スーパーボールすくいが行われました。
 公開開始は10時からの予定でしたが、公開前の9時30分頃からお客さんが来始め、暑い中大勢の方に来ていただきました。午後から空模様が怪しくなり、一時期は大雨となりましたが、最後には天気も回復し、時間を少しずらしながらも最後の浄水場見学班の見学も実施することができました。
 午後から天気が悪くなってきたこともあり後半の客足は鈍ったものの、子ども連れの家族を中心に256人と大勢の方に来ていただき、楽しみながら学んでいただくことができました。

7. 今後の取り組みに向けて

 当初は自治労水週間に公企評として単独で開催していたので、会場準備・運営等をすべて単独で行うため組合員への負担が重くなっていました。
 その後企業庁との共同開催とすることにより、企業庁側の運営に同調する形で開催することが出来たため、組合員の負担を大きく軽減させることができました。
 また、両者の広報活動による集客効果も大きく、見学者数の大幅な増加から、会場が賑わい、開催している組合員の意欲向上にもつながり、より活気のある開催となりました。
 しかしながら、最近の開催地を見てみると、旧一志町にある高野浄水場と、多気町にある多気浄水場とで毎年交互に浄水場公開を開催し、地域住民との交流を広げていますが、その他の地域での活動は行っていません。
 尾鷲熊野地域については、現在定期的に公開している浄水場はないうえに、小規模な浄水場であるため、新たな企画を計画しても、多くの地域住民に参加してもらう事が出来るのかといった心配があります。
 県北部には企業庁の播磨浄水場があり、企業庁での一般公開が行われているものの、公企評組合員が、県中南部地域に多いため県北部地域で開催がしにくい状況にあります。
 こういったことから県中南部の高野浄水場、多気浄水場での浄水場公開継続のなか、今後より多くの地域住民と接する機会を増やしていくことを考えると県中南部以外での開催についての検討が必要ですが、その為には公企評の組織の充実が重要になります。
 また、浄水場公開への参加によって、水道事業へ関心も持ってもらう第一歩として取り組んでいますが、その先の水道事業が抱える問題等にまで関心を発展させるのが難しく、今後の課題でもあります。
 しかしながら、小さな関心の積み重ねが大きな問題意識に変わることを期待し、また、地域住民が参加する事で、地域住民と行政との"絆"を育み、一丸となって事業を進めるために、今後も地道に活動を続けて行きます。