【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 大阪市では、「市政改革プラン」に基づき「経営形態の変更及び事務事業の見直し」を推進しています。本レポートでは、「市政改革プラン」によって「地域公共サービスにどの様な影響があるのか」また、「今後の都市内分権において新たな公共サービスのあり方をどう創造するのか」を検証するとともに、市民協働によるボトムアップ型の市政運営システムの構築について提言します。



市民協働によるボトムアップ型の自治体分権改革の推進
―― 都市内分権(地域主権)の実現と
地域コミュニティの再生に向けて ――

大阪府本部/大阪市従業員労働組合

1. はじめに

 2011年12月27日に大阪府知事と大阪市長により設置された大阪府市統合本部は、「大阪都構想」に向けた大都市制度改革を進めるため、「大阪にふさわしい大都市制度の推進に関する条例」の制定をはじめ、「大阪市施策・事業のグレートリセット」とした方針を打ち出し、広域行政と基礎自治体の役割分担とあり方など、新たな大都市制度に向けた「大阪市政運営の基本方針」を示しました。
 そして、この基本方針に基づき今後の大阪市の施策・事業のあり方として「市政改革プラン-新しい住民自治の実現に向けて-」(以下、「市政改革プラン」)の基本方針編及びアクションプラン編が公表されました。
 基本方針編では、市政改革の位置付けを「大阪府・市の施策が、二元行政・二重投資の意思決定をしている」ことが大きな要因の一つであると捉え、また「市民生活に直結する公共サービスを一律に局のもとで決定し実施していることが265万市民の多様なニーズに的確に対応していない」と指摘し、今後は「大阪にふさわしい新しい大都市制度」のあり方として、住民に身近なそれぞれの行政区単位において施策・事業を決定していく、新しい住民自治、新しい区政運営の実現をめざすとしています。
 具体的には、「市政改革の基本的な考え方・地域社会の将来像・区政運営のめざす姿・行財政運営のめざす姿」やそれぞれの取り組む方向性が示されています。
 また、アクションプラン編については、基本方針編で示した方向性を踏まえ、市政改革の3つの柱である、①大きな公共を担う活力のある地域社会づくり、②自律した自治体型の区政運営、③無駄を徹底的に排除し、成果を意識した行財政運営、の取り組み内容や目標とする期限を取りまとめています。
 大阪市従は、社会経済状況の動向や国・地方の財政危機の中で、自治体改革を進めるにあたり、効果・効率性とコストカットの視点を踏まえた内部構造の仕組や自らの働き方改革を進めてきました。そのうえで「市政改革プラン」の実施にあたっては、大阪市が今日まで築き上げてきた基礎自治体の使命や、長年、大阪市政を支えて頂いた既存の地域自治を中心に育まれてきた地域コミュニティとの信頼関係、さらには地域住民との協働の概念などをふまえ、融和の視点をもった新しい住民自治の実現となることを希求しています。
 わたしたちは、地域に根ざし信頼されている区役所や事業所をはじめとする各現場において、連綿と培かってきた技術・技能・経験・知識等を活かし、基礎自治体の労働者として担うべき役割を果たすため、業務執行体制に基づいた公共サービスを提供し市民の安全・安心を支えてきました。
 今般、区役所等への権限委譲が推進され、地域コミュニティとの連携した取り組みの拡充が求められており、所属等を越えた事務事業の横断的な連携の強化と、市民・市民団体との「協働」に注目されていることから、本レポートでは、都市内分権(域内分権)を推進するにあたっての公共サービスのあり様について提起することと致します。

2. 都市内分権(地域主権)の実現と地域コミュニティの再生に向けて

 大阪市従は、都市内(域内)分権や区政の充実を主張してきた経緯から、真に市民を主人公とする地域自治を実現するための改革を進めることが重要であると訴えてきました。
 現在、社会的格差の進行に拍車がかかり地域社会にあっては閉塞感が蔓延し、さらには経済危機による大阪市財政の深刻な悪化という多重苦のなかにあって、市民とともに人間的価値の維持や実現を創造し、市民に信頼される基礎自治体を確立するためには、市民と協働して施策・事業を追求する「協働」の概念は、市政の中心課題であるといえます。
 とりわけ、独居高齢者の介護・支援の課題や、生活保護施策の問題、DV(ドメスティック・バイオレンス)や児童虐待をはじめとした女性・子どもの安全・安心の担保等が適っておらず、また、ノーマライゼーションやセーフティネットにかかわる大都市特有の諸課題への対応については、「無縁社会」といわれる地域コミュニティの崩壊によって、既存の価値観によるものでは課題解決に苦慮する現状となっています。
 こうした課題への対応は、行政から市民への一方的な押し付けだけでは解決するものではなく、地域の実情を把握したうえでニーズを精査し、行政としていかにコミュニティをサポートしながら地域の主体的なムーブメントとしていけるのか、という観点をもった、行政と市民が一体となった「市民協働」のビジョンによって解決されなければなりません。
 次では、新たな視点に立った地域支援システムの再構築やコミュニティの再生、ネットワーク機能の向上をめざす観点から、基礎自治体としての使命である新たなセーフティネットの確立をはかるための都市内分権改革の礎をめざした取り組みの事例を紹介します。

(1) 施策横断型地域支援システムの構築モデル ~ふれあい収集~
 1996年4月に全国で初めて大阪市が、65歳以上の高齢者世帯や心身に障がいのある方で、自分でごみの持ち出し場所までごみを持って行けない方を対象に、職員が玄関先まで行ってごみを回収し、また声掛けをして応答が無い場合には安否確認をするという「ふれあい収集」を始めました。
 大阪市として、「人に優しいまちづくり」をめざすためにも地域の事情に合わせた作業の実施や、高齢者・心身障がい者の方々に対してきめ細かい行政サービスの提供ができるよう、「ふれあい収集」の実施に向けた取り組みを進めてきましたが、実施に至るまでは福祉との兼ね合いもあり、中々思うようには進みませんでした。しかし、1995年に起きた阪神淡路大震災で、多くの独居高齢者の方が孤独死されたことで、大阪市としてもその教訓を踏まえ、災害時の迅速な対応が図れることにも繋がることから、地域の方との協力も得ながら、「ふれあい収集」の実施を実現できました。
 当初は、まだ介護保険制度が施行されておらず、訪問介護などの利用者が少なかったこともあり、「ふれあい収集」があまり浸透されていませんでしたが、現在では市内全24区で9,380世帯に利用されています。なかには、悪臭や病がい虫の発生を引き起こす、ごみ屋敷問題についても、高齢者世帯に多く見られるため、地域包括支援センターと連携を図り、ごみ屋敷解消に向け、取り組んでいます。
 また、昨年の10月からは、古紙・衣類の分別収集も始まり、同時に、「普通ごみの中に混載ごみが含まれていると残置して帰る」と市民周知されたこともあり、認知症等で分別の作業が困難な方たちの利用が増え、環境局としても利用者のその時々の状況を踏まえ、家族の方やケアマネージャーの方たちとの密な連携等のもと、対策を練りあげて「ふれあい収集」を行っています。

ふれあい収集の様子

利用事由

・認知症で、「曜日がわからない」、「時間がわからない」、「分別ができない」など、ごみ置き場に(ごみが)残置されたままの状態を近所の方に注意されて困っている。
・ヘルパーの来る時間にごみ出しが間に合わないため、ごみが家の中に溜り、困っている。
・朝、家族(子など)が会社に行く前、ごみ出しを行っているにもかかわらず認知症の本人(親)は、そのごみを家の中に戻してしまい家の中にごみが溜まって困っている。
・視覚障がい者の方でごみ置き場まで、ごみを持っていくことができない。

など、様々な理由で、ごみ出しに困っている方がおられます。

 環境局として、認知症の方には、ヘルパーや家族の方にポリ容器にごみを分別するようお願いし、その後職員が回収しています。また、ごみを家の中にしまい込む方などは、玄関の中も確認するなど、認知症の度合いに応じた対応を行っています。さらに、視覚障がいの方については、自分の家の中では安心して移動ができるので、声を掛け、「玄関までごみを持ってきてもらうよう」協力して頂き、高齢者や障がいのある方でも、今できることを低下させないよう、できる範囲で分別などのご協力を頂いています。
 家族の方、ヘルパーから、「ふれあいサービスができたことで、安否確認も含め本当に助かるし、ありがたいサービスなので、このまま行政で続けていってもらいたい」との声や、地域の方から「数年にわたり困っていたごみ屋敷問題についても解消され、衛生的にも良くなり、住みやすい環境になった」との声が数多く寄せられています。
 現在、ごみ収集事業の民営化の論議はありますが、超高齢社会をむかえる中で、ふれあい収集を申し込まれた方やその家族が安心して利用することができるよう、こうした事業は行政が行うべきであり、今後もこのサービスのみに特化することなく、市民が安心して暮らせるまちづくりの充実と市民サービスを構築していかなければなりません。


(2) 災害時における公助としての役割 ~市民の生命・財産を守る港湾の取り組み~
 大阪市では、この間大きな津波こそ発生しませんでしたが、1995年におこった阪神・淡路大震災では、非常に大きな犠牲を払うこととなりました。
 もともと大阪市は、大阪城のあたりを南北に通る上町台地を頂とし、そこから西に向かって傾斜しています。西には大阪湾があり、大阪港に面した最も低い地域では過去に過度の地下水のくみ上げを行ってきた結果、大規模な地盤沈下が発生し高潮等の水害に見舞われやすくなっています。
 私たちは、こうした地理的な負の要素を認識したうえで「いずれ起こるとされている大地震に備え」の検討を進めてきました。

災害の『事前/発災/事後』の分類
事  前 発 生 時 事  後
○初期初動体制の確立
○初期初動訓練の定期実施
(時間内・外)
○各防災施設の点検・維持管理
○漂流を防ぐための岸壁パトロール
○住民・企業などへの啓発活動
○水際の人たちに対する避難ルート
 の広報活動
○企業・水防団と共同で行う鉄扉閉
 鎖訓練
○老朽化する防波堤・岸壁・鉄扉
 その他港湾施設の点検・維持管理

○海上掃海
○船舶退避支援
○初期初動体制に基づく
 各行動(鉄扉閉鎖・簡易鉄
 扉・土嚢・避難勧告等)

○破損・倒壊箇所における
 復旧作業
○傷病者・食糧・飲料・医薬
 品 ・その他物資の輸送
 (陸・海)

小学校体験学習
 事後に所有する船舶・車両・施設・資材・道具等を用いて復旧活動や支援活動をするためには、地震や津波の被害にあって使えなくなるということを回避しなければなりません。
 そのためには、地震や津波が発生したら、その後の対応がしっかりとできるようにするためにも安全な保管場所を事前に確保しておき、確実にそこへ移動させておくことが重要です。もちろん発生時には移動させること、それから職員自身の身の安全を確保する時間も必要です。試算では、地震発生から津波の到達までに要する時間は2時間2分。逆算すると、発生時に防災・減災のために使える時間はあまりにも乏しく、さらにその限られた時間内に確実にすべての鉄扉を閉鎖し、必要に応じて避難支援や避難勧告も同時に行っていかなければなりません。
 もちろん地震の影響により、想定していた移動ルートや避難ルートが利用できない状況に陥ることも含めて、複数の案を企画し対応できるようにしておかなければなりませんし、迅速・確実に対応できるよう日頃から訓練を行うなど、より多角的視点でのシミュレートが必須です。
 このように大阪市従は、基礎自治体の根幹を担う社会的セーフティネットを担う公務労働者として、阪神淡路大震災での大都市における災害、東日本大震災での津波による沿岸部の災害を行政支援業務、さらには、ボランティア活動を通じて地域防災行政と地域コミュニティによる相互補完の重要性について、身をもって理解を深めてきました。
 また、近年多発している台風や局地的集中豪雨などの自然災害による浸水や河川の氾濫の被害においても、基礎自治体に住む市民の「いのち」と「財産」のライフラインを守るため、日夜、業務に精励しています。
港湾局と水防団との鉄扉開閉訓練
 こうした過去の災害や教訓を生かした防災の取り組みは、基礎自治体の重要な使命・役割であり、防災の観点から地域・行政それぞれが補完し得る、画一的でない地域事情に即した危機管理体制は日常的に備えるべき課題です。とくに大都市においては近い将来、災害が起こることが高い確率で予測されており、「備え」の観点から平常時の機能(防災)と非常時に求められる機能(減災)の両面から考えても、まず地域防災体制の基礎となっている「地域力」と、技能職員の培った「現場力」との連携・協働の体制をしっかり整える必要性があります。
 地域コミュニティの再生は、大都市が抱える重要な課題であり、災害時における帰宅困難者対策をはじめ一時的に生活を保障する場としての機能を備えることが大切です。市民の生命と財産を守るため、公助の役割を基礎とした技能職員の有効活用と「多様な協働(マルチパートナーシップ)」との、より一層の拡充と連携を追求しなくてはなりません。

(3) 市民協働による地域コミュニティの再構築 ~協働の公園づくり~
子どもたちに野菜づくりと花・苗を育て(ゾウ糞の有機堆肥を使用した土壌づくり
 と野菜の苗植え作業)
 大阪市のこれまでの直営による公園管理は、ハード面での定常的な作業が中心でしたが、多様化する市民ニーズに応えていくには、市民に安心して安全かつ快適に公園を利用してもらうためのサービスの提供と、公園や緑を質・量ともに充実させていこうとする、自主的な市民活動等とのパートナーシップの形成が必要です。
 一方で、公共緑地(公園)は市民のものであり、行政は市民の財産である公共緑地(公園)を管理する責任を担っています。今後、市民の自主性を尊重し、かつ財産を有効に活用していくためには、市民を主役とした事業の運営がますます重要となっています。
 大阪市では、公園管理や緑化普及は、直営作業を主体に愛護会をはじめとした地域団体や企業、緑化リーダー・グリーンコーディネーター等の協力のもと、取り組みを進めてきました。
 今後も、人と環境にやさしい地域コミュニティの拠点としての公園や緑を、持続的に発展させていくため、コーディネートやサポートを軸とした役割を公園事務所が担い、市民が主体となって活動を行う協働事業の構築が求められます。
 大阪市が策定中の「緑の基本計画(改訂版)」の基本理念には、「みどりの魅力あふれる大都市・大阪」が掲げられています。しかし、市街地及びその周辺を自然の緑に囲まれた横浜市や神戸市等とは異なり、大阪市は市街地の大半が沖積平野からなり、しかも急速な市街化によって緑やオープンスペースの確保が十分なされてこなかったという、歴史的、地形的経過を有していることから、市民の理解を得て、止むを得ず多額の予算を投入して緑を形成して来ました。
卵パックによる苗づくり
(リサイクルと緑化普及啓発事業)
 しかし、90年代以降、景気が長期的に低迷し、市税の落ち込みが続く中、投資的経費が大幅に削減され公園緑化事業も、その影響を大きく受けています。「新規事業=新規要員」の時代はすでに終わり、今ある緑をいかに活用して、持続可能なまちづくりにつなげていくのかが大きな課題です。
 また、環境保全・地域コミュニティの核・防災等といった観点で公園や緑が果たす社会資源としての役割は極めて重要であることから、技能職員が培った技術・技能等を活かし、前述した公園・緑の社会的役割を着実に実行していかなければなりません。そのためにも、市民ボランティアの育成・緑化普及啓発・市民協働を推進することで、企業や市民との連携を深めるとともに、公園緑化事業にかかる地域の自律的運営をサポートするなど、市民を中心とした地域における公園緑化事業に対して、どれだけ深く関わっていくことが出来るかが重要であるといえます。


(4) 子育て支援を通じた子どもの健全育成 ~公立保育所における技能職員の役割~
 現在、市内71箇所の市立保育所と食育担当を配置している16箇所の子育て支援センターでは、市内24区で「食」を通じた食育支援(表1)を行っています。
 今後、現行業務を拡充させ、以下に示しています「地域への情報等の発信」や「防災対策」の取り組みの検討が求められます。
 これらを実施するにあたっては、本庁(こども青少年局)・子育て支援センターなどと調整を要すること、また今後の増加するニーズに対応できえる担当職員の配置と公的役割を果たす体制機能を確保することが必要です。
保育所の昼食調理中
表1)保育所で実践する食を通じた子育て支援の事例
主食提供事業(アレルギー児食、離乳食、障がい児食、嚥下食、宗教食、配慮食、
体調不良児食、など)
特別事業の拡充(一時保育、病後児保育、夜間保育)
手作りおやつの充実(週4回以上の提供)
食育の充実(クッキング・菜園活動・試食会・啓発活動等)
家庭的保育の「食」のバックアップ
(0歳から5歳児の未就学児に対しての親子教室・離乳食講座の開催・食の相談事業)
地域・関係機関との連携、発信
(区役所・保健所・社会福祉協議会・市民共済会・消防署・警察署・民間企業等)

 雇用形態が複雑化する状況で、24時間保育の必要性が求められるなか、大阪市立保育所の特別事業である夜間保育については、技能職員が食事提供を行っていますが、休日保育については、業務に従事するのは保育士のみであることから、食事提供が行えていません。昼間保育に通所する児童と生活リズムの違う休日保育に通所する児童に対しての「食育」を図るためには、何よりもまず食事提供が基礎であるといえます。
 また、2歳児からの食育支援の視点から、児童と保育士が共に食事を行うことで食育の促進を図ることから、「指導食」の必要性も含めて取り組みが必要です。
保育所の昼食調理中
 現在、支援が求められているにもかかわらず、地域課題として顕在化してこない子育て世帯(子ども・保護者)へ専門職として各家庭を訪問し、「食」を通じたサポートを可能とするため、地域・関係各所との連携をもとに、全保育所が地域の基幹保育所として取り組む体制づくりや、そのための技能職員の充足等が必要不可欠です。
 また、発災などの緊急時に外国籍住民や障がい者等、容易に一人では避難することができない方たちを避難場所まで誘導することを可能とするためには、事前の情報収集・把握・蓄積・活用等を要することから地域住民・団体等と連携し、地域の防災支援のシステム構築に取り組まなければ実効あるものとはなり得ません。
 そして、避難場所という様々なものを制約されたなかにおいても食の提供を可能とすること、さらには「食育」を求められる場面もあることから、「外国籍住民への宗教食」「離乳期食」「食物アレルギーへの対応」等についても、技能職員の専門性を最大限発揮した対応が求められます。
 このように、自然災害の発災等といった緊急時の場面では個人情報保護といった課題が内包されていることから、「公」の役割というべきものであり「公的責任」の名の下で行い得る業務であるといえます。


(5) 下水道事業からみる地域安全システム ~自然災害等への対処~
 大阪市の下水道事業は、下水処理場・抽水所・管路管理の3部門で構成されています。下水処理場では、1日/2,844,000m3の処理を行うとともに環境問題にも積極的に取り組んでおり、「活性汚泥法」による高級処理や雨水・水質改善対策としてファーストフラッシュ(初期雨水の高濃度負荷量の流入)の解消など、河川放流水質の改善・向上を図っています。局地的集中豪雨の対策では、アメダスや降雨レーダーを活用し雨天時の動員体制を強化し迅速な初動体制により浸水対策に努めています。また、市民への啓発活動では、大阪市内12か所の下水処理場で処理場毎にシンボルツリー(つつじ・バラ・さつきなど)の開花時期に合わせて一般公開するとともに、小学生の社会科見学や中学生の職業体験学習などを通じ、多くの市民に処理場の必要性を理解していただくよう努めています。
 大阪は、南から北にのびる上町台地と、その周囲をめぐる低地から成り立っており、市内については民家より河川の方が高い位置にあるところが多い地勢となっています。そうしたことから、家屋の浸水を防ぐために下水や雨水をポンプアップするために抽水所(ポンプ場)が設置されており、ゲリラ豪雨などの自然災害から市民の生命と財産を守っています。さらには、降雨時の浸水対策に加え、小学生や地域の方への施設見学を通じて、大阪市の地形の特徴や下水道の仕組みへの理解と抽水所が果たす機能の重要性について理解していただくことに努めています。また、市内の道路には緊急災害時用のトイレを設置しているところもあることから施設見学に来られた方に説明を行うなど災害時に向け呼びかけも行っています。
 管路管理では、管路施設の保全調査、パトロール・各許認可業務や埋設管の状態調査など下水管維持管理の保全業務、道路や家屋の浸水などを未然に防ぐ管理業務を行っています。また道路陥没など緊急を要する補修工事や清掃業務についても、直営による器具機材や車両を有しており、早急な対応を図ることができ市民生活に支障をきたすことなく、下水道施設の維持管理や市民サービスに貢献しています。
 老朽化した下水管路の維持管理業務だけではなく、市民との対話によって道路や家屋の浸水を未然に防ぐため早急に対応を行っているとともに、特に地形が低いところの浸水被害を軽減させるため、配布用の土嚢を用意しています。その他にも浸水被害が発生した民家への説明や発災対応への注意喚起を行っています。
 今後も、水循環基本法の理念「水は、国民共有の貴重な財産であり公共性の高いもの」に立脚し、公共サービスの低下を来すことなく行政の処理責任のもと、民間やNPO法人、住民等との連携した取り組みを進めなければなりません。


(6) 地域の安全・安心を見守る ~地域安全防犯対策の取り組み~
 2005年、大阪市は「市政改革マニフェスト」での5年間の職員の採用凍結、そして次年度に向けた「事務事業の見直し」や「指定管理者制度の導入」等にともない相当数の職員が現在の所属での再配置が見出せない状況に至ることから、「新たな職域を検討する」としました。このなかで、①所属における検討とあわせて市全体においても、これまで地域に密着した業務を行ってきた現業職員の技能・経験等を生かした市民サービスの向上に寄与する業務について、②子どもが被害を受ける事件が多発し、子どもをはじめ市民の安全確保が極めて重要な課題となっていることから地域の安全・安心を確保する取り組み等について、③具体には、新たな業務として「地域の安全・安心を確保する取り組みが最重要課題である」との観点から、学校等の周辺や通学路における巡回監視等を行いながら、これまで局・事業所を拠点として行ってきた業務をさらに充実するため、地域の実情に詳しい区役所においてより細やかに行うことを目的として、地域との連携を図りながら各局・事業所等とも連携した効果的な業務実施を行う新たな体制を構築していく旨の考えが示されました。
 市従は、この新たな業務を実践していくことこそが、市民・住民の信頼回復につながるとともに、「市民サービスのさらなる向上」、「新たな職の確立」、「職員の人材育成」等につながる重要な「職域」であるとの認識のもとで、2006年4月より「地域安全対策業務」に取り組むこととしました。

通学路での安全監視を行う組合員

 都市内分権に対応した市政運営には区への権限移譲が必要不可欠であり、現行の「地域安全防犯業務」においても地域課題のデータづくりや、それを基にした課題解決のための企画・立案など、「地域に求められ、根付く職域」として発展させる必要があります。また、今後の地域安全防犯対策にかかる取り組みへの対応について、この間の現業職場活性化の取り組みを基本に地域の中で私たちの仕事を明確に位置付けさせ、業務の充実と新たな業務を付加価値として積み上げるなかで、コーディネート機能を併せ持つ、地域の支援職としての「職の確立」に向けた取り組みを図らなければなりません。
 地域安全防犯業務は今年で9年目を迎え、本来業務の「子どもの見守り」「道路維持管理」「公園の設備点検」は勿論のこと、現在では幅広い取り組みを担うまでに至っています。電気自動車で啓発活動を行う「青色防犯パトロール」や幼稚園や保育所において「ペープサート(人形劇)」で易しく教示する「防犯・交通安全教室」、小学校の土曜授業の一環である「防災講座」等です。
訓練所の開設訓練
 また、高齢者を狙った手口が巧妙な詐欺が多発している現状から「吉本新喜劇に似せた寸劇」を実演し、啓発活動を行っている区もあります。
 私たちは、日々の業務を通じて住民等の意見や要望等を把握していることから、今後は技能職員が集積する広範な情報等について区域内全般に効率・効果的にフィードバックする仕組みづくりを追求しなくてはならないと考えています。


3. ボトムアップ型の自治体分権改革の推進

 「市政改革プラン」では、区政運営を進めるにあたり、局の視点ではなく各区・地域の視点でそれぞれの実情に即して進めることを基本原則として、市役所の行政運営システムを根本的に変革すると示されています。
 この間、各事業局が進めてきた事業は、各区の地域実情や住民ニーズに即して事業所や区役所を拠点に実施されてきた経緯があり、「局の画一的な内容」との分析は、実状とはやや乖離した印象が否めません。
 また、基本方針編では「施策や事業が画一的であることから地域と行政との距離感が遠く、地域のニーズや要望に迅速かつ的確に応えきれない」との分析がされていますが、大阪市従はこれまで、現場での不断の努力により、啓発業務や各事業所における日々の業務を通じて市民ニーズや要望等を適切に把握し、「現業職場事業所等連絡会議」を活用した地域課題の共有化や事業所間の連絡調整など、地域情報を区政へフィードバックする仕組みづくりを実践してきた経過を持ち、全国に先駆け市民協働の先鞭となった取り組みを行ってきました。
 現在、各事業所と区役所との連携および緊密な連絡体制は着実に整備されつつあり、今後より迅速で的確に地域ニーズへの対応をはかるためには、統治機構を基本とする改革だけにとどまらず、行政と市民・地域との信頼関係に基づく組織機構への再編と人材育成の両輪が相互に作用することが必要です。
 そのためには、事業実施を担う現場から地域のきめ細やかな情報を的確に反映した政策形成と事業を円滑に実施し得る効果的・効率的な業務執行体制の確立を図るためには、地域・市民と接する現場の声が施策・業務に活かされるボトムアップ型の市政運営システムの構築が大切です。
 市民に最も近い現場で、市民と向き合い業務を遂行する技能職員の特性を最大限生かした、市民との相互の信頼関係を基軸とした自治体分権改革が今求められています。


4. 実効ある業務執行体制について

 市民生活にとって身近な環境問題や安心・安全のまちづくりに寄与する課題を市民協働事業として推進するためには、地域のインターフェースとしての役割を担っている技能職員は自治体にとって必要不可欠な存在です。
 大阪市従は、大阪市政の発展と基礎自治体の役割を発揮するため、地域の実状を把握した現場経験を活かし、時代の変化に的確に対応するため「自らの仕事は自らが改革する」理念をもって「働き方改革」を実践し、行政職員・市民相互のアンテナの役割として、よりお互いの距離を身近なものにするための存在として、「市民協働」を推進してきました。
 しかしながら、「裁量権や執行するための権限」などが法的に制限されており、そのことによって事業の企画・立案や実践の過程での職制サイドの情報連絡や伝達の遅延など、いわゆる企画と実践の乖離により、住民ニーズの地域へのフィードバックの遅れや、地域のさまざまな実状を把握しているにもかかわらず、事業実施主体による施策事業の企画・立案からの参画ができない故に、現場の創意工夫が事業に反映されないことも多く見受けられます。
 行政職員と等しく市政を担う一員として、技能職員が裁量権・権限に関する公権力の行使が認められていないという法制度は、自らの手で公務改革を進めたいと願う現場職員一人ひとりのジレンマとなり、ひいては「働きがい・やりがい」を持って職務を担ってきたモチベーションを阻害してしまう現状は、活力ある組織ひいては職員の人材マネジメントの観点からも決して得策とはいえません。
 また、技能職員自らが、自主運営・自主管理を標榜する「現業管理体制」は、地域・現場の要望や苦情処理をはじめとした市民ニーズに精確に応えるため、企画(プランニング)と実践(アクション)の両部門を主体的に担うべく、日々研鑽を続けていますが、業務における意思決定に関しては、法的にわずかの権限しか与えられておらず、現場でのきめ細かくかつ迅速な地域のニーズ処理や自立的な業務遂行の弊害となっています。裁量の段階において行政職員の判断を仰がなければならないという制度的限界をどう取り払うのかが課題であり、早急な検討が必要です。
 具体的には、「縦割り行政を払拭する総合性の発揮」があります。縦割り行政による弊害を地域の中で探し出し、自治体の課題として明らかにしたうえで、解決するためにいろいろな部署をコーディネートしていくといった「新たな技能職」を追求しなくてはなりません。
 現場での管理監督業務をはじめ、社会資本など公的な市民の財産を厳正に管理するためには、職員としての公権力の行使が必要であり、現場の第一線で培ってきた「知識・技術・技能」を大阪市政に活かすためにも、大阪にふさわしい自治の仕組みづくりを見すえた市独自の取り組みを模索する観点から、権限や仕事のあり方を限定するような法制度を見直し、技能職員の企画・立案段階からの行政職域へのより一層の参画と、職制主体にとらわれない柔軟且つ効果的な業務執行体制が求められます。


5. 都市内分権改革に向けた地域ニーズの拠点づくりと技能職員の人材マネジメント

 「市政改革プラン」では、市民に最も身近な区役所や事業所について、地域の自治力を高めるための「市民協働」を核とした基礎自治行政を発揮する総合的な拠点の役割として位置付けられていることから、そのことを可能とする権限と組織機構の拡充をめざした理念を明確に打ち出した政策が求められています。
 大阪市の「区政改革基本方針」では、①地域ニーズに迅速、的確に対応する身近なまちづくりの拠点、②地域活動を支援し、地域課題の解決に市民とともに取り組む「協働」の拠点、③情報を積極的に提供し、市民の声を広く聴く情報発信の拠点、④便利で快適なサービスを効率的に提供する身近な窓口とした区役所像を目標に掲げています。とりわけ、区役所改革を進めるにあたっては、各局所管の事業所が果たしてきた区役所との連携・強化をより強固に推し進めるため、複合的な地域の諸課題を一元的に解決に出来る機能を持った拠点づくりを進めることによって、事業間連携さらには住民ニーズに即応した効果的な事業展開が推進できるといえます。
 区役所に所属する技能職員は、この間、校区等地域を単位とした地域コミュニティの安心・安全を守る業務にとどまらず、「市民協働」を基軸としたさまざまな地域の諸課題の解決に向け、相互補完の実践に取り組むことで、地域と区政をつなぐコーディネーターとして着実な成果をあげており、現在、サイレント・マジョリティの民意集約をはじめとした区民ニーズや区政の広聴機能の強化といった有効かつ新たな人的財産として活用されています。
 現在、24区では局から権限と財源の移譲を受け、住民に身近な区内の施策や事業についての決定権を持つことで、区長自らの権限と責任のもと、各区・地域の実情や特性に即した施策・事業を展開するとともに、その成果を区民が評価し、各施策・事業の改善や新たな展開につなげていく区政運営と住民や地域コミュニティの声を行政に適切に反映させる新しい住民自治の実現をめざしています。
 各局の権限と責任で進めてきた施策・事業を円滑に区行政に移行しつつ、ニア・イズ・ベター(補完性・近接性の原理)をさらに推し進めた、ニアリー・イズ・ベター(市民にもっとも近い)な存在として、地域のインターフェースとしての役割を担う技能職員が区域で新たな専門職域として位置づくよう、自治体分権改革を追求していかなければなりません。


6. 大阪「都」構想の破たんと都市内分権の創造

 第30次地方制度調査会答申に基づき、二重行政解消に向けた府県と政令市の調整会議の設置や都市内分権を定めた地方自治法改正案と府県事務の政令市への移譲を定めた地方分権一括法案が成立しました。具体的内容では、①二重行政解消のために条例設置の「調整会議」を設置し、協議不調の場合は国が調停、②都市計画のマスタープランや病院の開設許可、学級編成権・教職員給与など市民生活に不可欠な権限や財源を大阪府から大阪市に移管、③大阪市条例で、区役所が所管する事務を定め、区役所機能を高め、大阪市内分権を推進。「総合区」の設置も可能、④総合区では区長を特別職にし、副市長並み権限(予算と人事権)を持たせるなどとなっています。
 このように、二重行政の解消や都市内分権の推進は地方自治法改正などに基づく条例改正によって対応が可能です。現時点において法定協議会は、委員の差替論議等で野党が激しく反発するなど混迷の一途を辿っています。また、大阪市会や大阪府議会では、自治法改正案と地方分権一括法に基づく大都市制度改革を巡る協議が進行しつつあり、自民党は地方自治法に基づく「調整会議」設置条例を各党と協力して提出する方針を示しています。
 松井知事(大阪維新の会幹事長)は2015年4月からの「大阪都」移行は困難との見通しを示しましたが、今なお、橋下市長は、「都構想」か、自治法改正をベースにした「大都市制度改革」かを秤にかけて、どちらがよりベターかを「住民投票」で決めてもらうと主張しています。
 現実的には、府市統合を前提としない「調整会議」が設置されれば、大阪市の解体と特別区の設置を前提とする「都構想」が破たんすることは明白であり、いま求められているのは、改正地方自治法に基づく「調整会議」や大阪市内分権のあり方についての具体的な姿を市民とともに創り出すことなのです。
 大阪市従は、地域コミュニティの安心・安全を守る業務にとどまらず、「市民協働」を軸としたさまざまな地域の諸課題の解決に向けて相互補完の実践に取り組み、地域と行政(区政)をつなぐコーディネーターとしての重責を果たすことで住民等の信頼を得てきたといえます。都市内分権が、真に住民福祉の発展に寄与するものとなるためには、新たな視点に立った地域コミュニティの再構築やネットワーク機能の向上をめざす視点が求められることから、地域のインターフェースとしての役割を担う技能職員が、基礎自治体としての使命である「新たなセーフティネットの確立」をはかるための自治体分権改革を追求しなくてはなりません。