【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 福山市では、公務労働拡大の取り組みを通して、現場業務の活性化と、市民ニーズに迅速に対応できる体制を作ってきた。こうした公務労働拡大の取り組みの実践を踏まえ、改めて「公務労働拡大」の取り組みについて整理する。そして、非正規化・民間委託・行(二)問題など矢継ぎ早にかけられる現業職場(業務)に対する合理化攻撃の中で、公共サービスに不可欠な現場業務の必要性と今後のあり方に向けた現場からの具体的な提起。



「公務労働拡大」の取り組みから、
現業職場のあり方に向けて

広島県本部/自治労福山市職員労働組合連合会・福山地方自治研究センター・事務局長 岡田  誠

1. 「公務労働拡大」に取り組むまでの経過

(1) 1997年当時の福山市の公務職場(労働者)を取り巻く情勢
① 当時の情勢は、全国の自治体と同様に恒常的な財政悪化を口実とした「賃金合理化」と、民間委託・退職不補充などによる「人員合理化」を中心とする、いわゆる従来型の『行革合理化』攻撃が行われていました。一方、現業職場に対しては、議会のたびごとに職場を名ざしにした攻撃も行われていました。
② また、この時期と相前後して現業職場の直営部門と民間企業の同種部門とのコストを比較し、直営部門に要するコストが高いことを口実にした、人員合理化(パッカー車の乗車人員の削減や、職員の採用抑制)や職場合理化(民間委託の推進・拡大)の攻撃が行われるようになっていました。この「コスト論」に基づく攻撃は、いわゆる従来型の「行革合理化」攻撃を一歩踏み込み「コスト」に焦点を当て、官民の較差を根拠に直営部門の存在自体を否定する世論形成を図りながら、その勢いに乗じて合理化を画策・強行するものであり、これまでにない厳しい攻撃となっていました。
③ 組合としても「現業統一闘争」のたたかいを強化するとともに、現業職場に対する合理化攻撃に対し、どのようなたたかいを構築すれば「職場はもとより『組合員の生活と権利』を守ることができるのか」という一点で、労使交渉において、直営堅持を「確認」することに力点を置いた取り組みを進めました。しかし、当局は直営堅持の「確認」については、しぶしぶ応ずるという姿勢を貫き、回答を引き出すことに苦労しました。
④ 一方で、直営堅持を「確認」する取り組みも年月を経るにつれマンネリ化し、知らず知らずのうちに直営堅持の「確認」ができさえすれば、「現業統一闘争」の目標が達成されたような気分や、成果が得られたような錯覚に陥っていたのではないかと思っています。
⑤ そこで、当局が直営堅持の確認にこだわりを持つ「財政赤字」について考えてみます。当局が施策や事業を決定する場合、第一に、市民生活の安全・安心を「最優先」しなければならないという基本があります。しかし、この基本は「行政の都合」が優先される中で、置き去りにされやすいという欠陥をはらんでいます。第二に、私たち公務労働者は、日々市民と直接的にも間接的にも多くの接点を持ち、市民の行政に対する要望・要求事項の具体的内容を「一番」よく知っています。にもかかわらず、当局は政策や事業の立案は、行政の上層部だけに与えられた業務であるという意識が根強くあり、私たちの意見や提案を吸い上げ反映するという考え方や営みは欠如しがちであり、そうした制度もありません。第三に、国・地方公共団体ともに政策や事業の実施に必要な財源を確保することに汲々としている実態にあり、市町村の財政負担は一方的に拡大するという悪循環に陥っているといえます。
⑥ こうした実態にあるにもかかわらず、行政内部では、政策や事業を必要とする理由や根拠、優先順位、財源の確保などの議論が不十分なまま、前年踏襲主義や縦割り行政の弊害なども改められることなく、行政の都合に合わせた政策や事業が立案され実施されるなど、無責任な行政運営が行われてきた結果として、年々、財政赤字が膨らむことになりました。したがって、行政の財政赤字は、いわば行政当局による「失政」の繰り返しにより累積したものであり、この財政赤字の責任をそこで働く労働者に一方的に転嫁するために、『行革』を口実とした合理化攻撃を今日まで継続して行っているのが現実の姿だと思っています。

(2) 「コスト論」による攻撃への対応
① そこで、労働組合(役員)としても「コスト論」による攻撃を放置できないことは十分に分かっていましたが、「どうにかしなければ……」という思いが前面に出すぎて、肝心の具体的な対応策が見いだせないまま、苦悩する時間だけが経過をしていました。
② そうした中で、労働組合(役員)が「コスト論」による攻撃に対峙する方法として、現場労働者自らが日々提供しているサービスを見直し、市民からこれまでのサービスとは異なるものとして、「喜びを実感」してもらうことのできる新たな付加価値のついたサービスを創造し実践しない限り、「職場はなくなる」ということに気づかされました。
③ このような経過をたどりながら「公務労働拡大」の取り組みにつながる一歩を踏み出すことができました。

2. 「公務労働拡大」の実践手法

(1) 「市民サービスの充実・拡大」をめざして
① そこで、市民から「喜びを実感」してもらえるサービスを提供するための具体的な実践に向けて、現場や部会に対し「公務労働拡大」の取り組みを提起しました。
② 勤務時間内における「公務労働拡大」の取り組み
  最初に、労使が行政課題で未解決となっているものについて、
  ○実施可能な業務の洗い出し項目を整理する。
  ○項目ごとに、業務のエリア別・職種別の担当部署をリストアップする。
          ↓
  次に、組合役員はリストアップしたものに基づき、エリア別・職種別の担当ブロック窓口(役員)に対し、業務の詳細図面等(業務場所、業務内容、工期、実施条件など)を持参し、業務の実施を依頼する。
          ↓
  担当ブロックにおいて、業務実施の「可否」について検討し決定する。
          ↓
  業務の実施を決定した場合、関係者等と調整し、協議が整い次第、具体的に実施する。
          ↓
  業務の完成報告に基づき、労使で現場を確認する。
③ 勤務時間外における「公務労働拡大」の取り組み
  「公務労働拡大」の具体的な実践に至っていない部会役員を対象として、
  ○ なぜ「公務労働拡大」の取り組みを実施しなければならないか?
  ○ なぜ、市民から「喜びを実感」してもらえるサービスを提供しなければならないか?
  ○ なぜ、組合役員が現場に入り組合員から嫌われることを言わなければならないか?
  などをテーマとした学習会を実施し、組合員(職場)の抵抗感はどうか、前向きな受け止めができるようになっているか、などを検証し、そのうえで、
  ○ 「公務労働拡大」の取り組みを前向きに受け止められる者が、一定数(10人程度)揃っていれば、そのメンバーでグループ(班やチームを含む)を編成し、部会などの関係者全員に対し「公務労働拡大」の取り組みを「試行実施」することについて提起し、了解を得たうえで、具体的な「実践」を開始する。
  ○ 公務労働拡大にかかわる現場(ブロックやグループ)の課題は、すべて「組合」が責任を持つ。
  ○ 当局サイドの課題については、公務労働拡大を担当する当局(部署)が責任を持つ。
  ○ 公務労働拡大の実施については、勤務時間内での取り組みを基本とする。したがって、新たな手当や時間外勤務手当などは生じないものとする。
  ○ 現場(ブロックやグループ)には、責任者(窓口担当者)を設け、当局と組合との窓口一本化を確立し、職場混乱の回避に努める。
  ○ 現場からの「SOS」などの即時対応の「要請」があった場合は、直ちに現場へ直行し対処する。組織としても現場を「最優先」に対応する体制の強化を図る。
  ○ 部会間の協働や現評総体の取り組みは、現場役員を中心に調整し対応しながら、さらなる「公務労働拡大」の深化を探る。
  などについて、順次、構築しながら取り組みを進めてきました。
④ しかし、この「公務労働拡大」の取り組みは、日々自らが提供(実施)しているサービス(業務)の「どこに、どのような課題があり、どうすれば改善できるか」を自らが見つめ直し、具体的な課題や改善策を明らかにしなければならない作業から始めなければなりません。言い換えれば、「自らの仕事のやり方やあり方を自らが全否定」するところから始めなければ「具体的な実践にはつながらない」という、大きな壁を乗り越えなければならないという厳しさがともないます。

⑤ また、労働組合(役員)は、「公務労働拡大」の取り組みを提起しさえすれば、現場は「動いてくれる」という甘い捉えに陥りがちですが、そのようなことはあり得ないことを肝に銘じて取り組んでください。一定程度の抵抗や摩擦が生じることは想定していましたが、実際には想定をはるかに超える巨大なものであったことだけを報告しておきます。

(2) 若い世代や前向きな感性を持った組合員からの「実践」
 このような抵抗や摩擦を経験しながらも、「具体的実践」に基づいた意識改革や継続した粘り強い取り組みなどにより、徐々にではありますが、若い世代を中心に「提起」した内容を前向きに受け止めることができるようになりました。そして、様々な感性を持った組合員個々が、自ら提供しているサービスを見つめ直す取り組みを開始できるようになりました。そして、「個」の取り組みから「職場」の取り組みへ、「職場」から「部会」の取り組みへ、「部会」から部会を越えた「現評総体」の取り組みへと順次拡大・発展しながら、行政の本来業務として位置づけられ、組織・体制も整備されながら今日の取り組みへとつながっています。

(3) 「公務労働拡大」=「現業(現場)活性化」=「職の確立」の具体的実践
 この「公務労働拡大」の取り組みを現時点で振り返って見れば、「市民サービスの充実・拡大」に向けた具体的実践であり、同時に、「現業(現場)活性化」の具体的実践、「職の確立」に向けた具体的実践そのものであったと総括しています。

3. 「公務労働拡大」の取り組みの基本

 「公務労働拡大」の取り組みのすばらしいところは、当局から実施を依頼された業務を、現場(現業関係職員)が実施可能と判断したものは、「すべて実施することを『基本』」に、現場が、①現地(業務場所・業務内容等)を確認し、②関係職場・者、住民等と調整し、③実施計画書を作成し、④実施し、⑤実施報告書(完成写真の添付を含む)を作成するという、一連の業務を事務処理も含め、現業職場・職員が「始めから終わり」まで責任を持って対応しているところにあります。したがって、職員(人員)が不足している場合は、現場で十分な調整を行い、現業職総体の協力体制のもと、限られた職員体制の中で、業務に必要な職員数を調整し合いながら業務を行っています。また、職員数の確保が困難な場合は、重機や車両、機械、器具機材等を積極的に導入するなど、柔軟な対応もしています。

4. 「公務労働拡大」の取り組みに対する評価

 「公務労働拡大」に対する評価については、○市民からは「迅速で丁寧な行政サービスが提供されている」、○行政・職員からは「予算対応が困難な状況にもかかわらず、行政課題が着実に解決できている」、○現業関係職員からは「自らの具体的な取り組みにより、『やりがい・達成感』を実感するとともに、取り組みの積みあげにより自己の『意識変革=プロとしての自覚』につながっている」など、肯定的な評価につながる内容となっています。

5. 地方自治体の現業関係職場・職員に対する攻撃

(1) 今日時点の現業関係職場・職員を取り巻く労働環境
① わが国の行財政を取り巻く環境は、少子高齢化の進行や生産年齢人口の減少傾向が常態化する中で、今後もさらに厳しさを増すことが見込まれています。
  総務省は、2005年3月に「地方公共団体における行財政改革の推進のための新たな指針」を策定し、同指針において、定員管理については抜本的な事務事業の整理、組織の合理化、職員の適正配置に努めるとともに、積極的な民間委託化等の推進などにより、極力職員数の抑制に取り組むとしています。
② とりわけ、技能労務職員の賃金については、国における同種の賃金を参考とし、民間の同種の職種に従事する者との均衡にも留意しながら適正な賃金制度・運用とすることとしています。
③ また、2013年8月の人事院による「職員の給与等に関する報告」において、「民間と同様に業務委託等によることが可能な部署においては行政職俸給表(二)適用職員の削減がより一層進められる必要がある一方、行政職俸給表(二)の水準については、直接雇用が必要と認められる業務を担当する職員の賃金を念頭に、民間における技能・労務職員の賃金水準を考慮した見直しを検討する必要がある」旨が報告されました。
  この報告は、政府(総務省)と人事院が一体となって、地方公務員全般に対する賃金合理化攻撃と、現業職場(職員)の廃止を前提とする攻撃として強力に推進しているものです。
④ 現業関係職員数の全国的な状況は、2003年の224,192人から2012年の119,990人に推移しており、9年間で約46%(104,202人)減少しています。加えて、今後、賃金については行政職賃金表(二)を導入する自治体が増加していくことが見込まれています。
⑤ したがって、全国の現業職場や職を廃止する動きや、行政職賃金表(二)の導入が今後も増加していくことが見込まれています。
⑥ こうした全国の現業職場(労働者)に対する厳しい攻撃は、今後、労使で「現業職場のあり方」を是々非々で議論する福山市にとって大きな影響を及ぼすことが想定されます。

(2) 公務職場の中で「現業職場(労働者)」に特化した攻撃
① このような現業職場(労働者)を標的とした攻撃は、何も今に始まったものではなく、市職労連合も市職労の時代から現業職場に対する執拗な攻撃を受けてきた歴史があります。資本の側の常套手段として、景気が少しでも悪化しようものなら国・地方の別なく、支配する側が一丸となって、私たち公務労働者の存在自体を「悪」とする世論操作を行いながら、あらゆる手段・方法を駆使し、「行財政改革」の断行を合言葉に、合理化攻撃を推進し続けています。
② 本来、景気対策については、各国の政策担当者が世界や国内の社会・経済情勢を踏まえ、それぞれの国が抱えている諸課題を考慮しながら、「情勢に適応した最善の政策」を立案し実行しなければなりません。このことが政治に課せられた最大の使命でもあります。しかし、現実の政治は、国や自治体において「情勢に適応した最善の政策」が実行されておらず、まさに失政といわざるを得ない状況が散見しているのも事実です。問題なのは、そうした失政を国民に隠蔽し覆い隠す手段として、公務職場(労働者)を標的とした「行財政改革」攻撃が声高に叫ばれ、特に現業職場(労働者)に対する攻撃が露骨に繰り返されていることにあります。

6. 現業職のあり方

(1) 今後の現業関係職場(職員)のあり方
 そうした中で、2003年10月14日の福山市職労連合(当時は福山市職労)現評統一交渉において、当局から今後の「現業関係職場のあり方」について、次のような「公と民の協働について」と題する考え方が明らかにされていますので、その概略を紹介します。

公と民の協働について

 今後の行政運営の大きなポイントは、公と民、それぞれの役割と責任をふまえた協働の形をいかに構築していくかである。

 その結果として、市民へのサービスが効果的に実施され、市民サービス全体がレベルアップし、市民福祉の向上が図られることが求められている。

 公と民、それぞれの役割としては、大枠次のように考えている。
○公の役割
・政策形成、政策決定、公権力の行使に関すること。
・基本的人権、公平性、安定性の確保、公的支援等関与が不可欠なもの
・民間の育成、誘導、活性化に関すること。
○民の役割
・選択的、付加価値的サービス等で採算性、収益性があるもの
・市場の競争性によりサービスの向上が図られるもの
・行政の役割を縮小することで、市民の自主的活動の活性化が期待されるもの

 しかし、市民へのサービス業務は非常に広範囲であり、行政と市民、企業との協働、民間の人材活用等の面から、最も効果的な手法をバランスよく選択すべきであるが、大切なことは、その基底には、市として最低限市民に対して負わなければならない責任の確保が存在することであり、このことは行政としての危機管理意識・責任をどう持ち、果たしていくかである。

○行政責任の確保のための具体について
1 市民サービスの安定的供給と安心の確保
 ~日々の生活に密着した市民が負託する業務であり、危機管理の面からも、最低限対応できる体制は必要であること。

2 市民の基本的人権の確保
 ~市の業務は、個人情報があふれている。プライバシーの確保等、市民の負託に応えるためには、基本的には、直営で実施することが必要であること。
  しかし、市としての管理監督責任等関与のあり方によって、委託可能な業務もあるが、個別具体で検討することが必要であること。

3 行政水準の維持・向上
 ~効率性、採算性の観点から、民間ではできない部分や福山市の行政水準の低下を招かないためのけん制的役割、そういった行政水準の維持、向上の役割を果たすためには、直営部分が必要であること。

4 現在以上に行政サービスの向上が図られるもの
 ~業務内容が高度な専門性とノウハウが求められ、委託することによって現在以上の市民サービスの向上が図られるものについては、行政責任の確保を基底に個別、具体について検討する必要があること。

5 特別の事情のあるもの
 ~直営で十分市民サービスが提供でき、また、委託以上にサービスの向上が実態的に図られているが、例えば、病院給食のように企業会計という性格上、経営的視点から委託せざるを得ないものも例外的にあること。

 以上が、直営か委託かを判断する場合の基準になると考えているが、過去の事例を教訓にし、行政責任の確保の視点から、危機管理意識をどう持つかであり、そこに働く職員の思いに配慮する中で、職員の身分保障を前提とした責任ある対応を基本に、個々具体について協議しながら方向性を求めていきたいと考えている。

7. 市民サービスとしての公務労働

 ―現業関係職場・職員の全廃に向けた攻撃が強化されている。市民サービスの受け手である市民の立場から見て本当にそれでいいのか―
① 今から20年くらい前のことになりますが、隣町のある首長が、ひっ迫した財政状況を改善する目的で、土木職場を全廃する合理化を提案しました。これに対し、組合から「この間、直営業務として市民に安全と安心を提供してきた道路維持補修サービスが、『切り捨てられる』」と強い反対や批判の声が上げられました。これに対し首長は、「土木職場全廃後の道路維持補修サービスは、業者対応とするので問題は生じない」と回答していました。しかし、市民の命と安全に直結する道路維持補修サービスさえも、財政事情により合理化提案せざるを得ないという首長の言い分にはやはり無理があり、結果的に公言していた業者対応すらされず、サービスだけの切り捨てにしかなっていません。
② 市民が満足するサービスを提供するためには、行政として非現業と現業が一体となって、市民の日常生活に寄り添い、日々の生活の中で生起する諸課題を解決する具体的な取り組みの「実践」が不可欠になります。しかし、現在の行政(国や自治体)当局は、現業関係職場を縮小・廃止し、現業関係職員を削減すれば、行政が抱えている財政赤字などの諸課題がたちどころに解決・解消するかのような思考回路に陥っています。問題なのは、こうした風潮や考え方が全国的に蔓延していることです。「市民が『必要とし・喜ぶ』サービスを提供する」ということは、頭の中で考えてさえいれば物事が解決するとともに、机上の論理だけで答えが導き出せるという簡単なものではありません。
③ たとえば、ディズニー映画の『アラジン』に出てくるジーニーの魔法や、ドラえもんの四次元ポケットがあればどんなことでも簡単にできると思いますが、そのようなことは物語上の「つくり話」であり、現実にはそのようなことはあり得ないことです。また、今日の行政の姿を落語の「熊さん八つぁん」流に言えば、「人もいない・金もない・物もない」残っているのは「汗をかく」ことだけではないでしょうか。市職労連合発の「公務労働拡大」の取り組みも、よくよく考えてみれば「汗をかく」ことから始めています。皆さんも大いに「汗をかく」ことから始めてください。

8. 現業関係職場・職員の「あり方」議論の「柱」

(1) 「公務労働拡大」の取り組みをどう活かすか
 「公務労働拡大」の取り組みが、組合主導の取り組みから行政の主要な施策として位置付けられ、行政の「本来業務」として取り組まれるようになるとともに、今日まで組織・機構や人員体制が整備されながら推進されてきた成果や意義を踏まえ、市民サービスが低下することのない対応を基本に、次に掲げる項目との整合性を勘案しながら進めていきたいと考えています。
① 現業関係職場・職員を廃止した場合、行政そのものが直営で存在する意義が大幅に失われ、利潤追求を本質とする民間企業による「市民サービスの市場化」の拡大につながることは明らかであります。これにより、社会的セーフティネットとしての市民生活に対する「安心と安全の保障と、網の目のような救済策や仕組み」が崩壊することは明らかであり、このような危機意識を持った対応が不可欠になります。
② 私たち公務労働者を取り巻く厳しい社会・経済情勢の中で、現行体制すら守ることが非常に困難な情勢にあり、「情勢に適応」しつつ「柔軟に対応」せざるを得ない側面もあると考えていますが、「市民サービスをどう保障するのか」という視点は、どのようなことがあっても譲ることはできません。
③ 「公務労働拡大」の取り組みは、現場(現業関係職場・職員)が「紆余曲折」を経ながらも、「主体と責任」を持って取り組み、関係者(市民、行政・職員、現業労働者等)のすべてからも高い評価を得ているところです。したがって、今後の現業のあり方議論においては、「公務労働拡大」の成果や構築されてきたシステム・体制などを、「どのように継承し、発展させること」ができるかが大きなポイントになると考えています。
④ この間、労使交渉において勝ち取ってきたはずの「既得権や確認事項」そのものが廃止・縮小され、保障されていたはずの「身分や賃金、労働条件(働き方)」さえも改悪されている現実があります。したがって、現業関係職場の「あり方」議論に際しては、当局の「真摯で責任ある対応」と「腹をかけた対応」が不可欠の要素になると考えています。ただ単に「職場や職員さえ削減できればよい」というような安易な考え方や机上の空論に対しては、「妥協の余地はない」ことだけを申し上げておきたいと思います。
⑤ 2003年10月14日の現評統一交渉において、当局より、今後の「現業関係職場のあり方」について、『公と民の協働について』と題する考え方が明らかにされました。その後、当局が、交渉などにおいてこの考え方に基づくものとして「公と民の役割分担……」という言葉だけが強調され、今日までその考え方に基づく具体的な議論は行われていません。したがって、「公と民の役割分担」という言葉だけが一人歩きしている現実があり、このことを踏まえたうえで、今後は、当局が責任を持って具体的に議論ができる考え方を、早期に提示できるよう取り組みを強化する必要があります。
⑥ 管理監督者全員に共通することですが、「職員とその家族の生活と権利、将来をどう保障し守るのか」について、「自らの言葉で職員に語る」とともに、現業関係職場の「あり方」議論に腰を据えて責任を持って対応することが不可欠になります。
⑦ 「公務労働拡大」を行政の枠の中だけの取り組みから、地域住民が主役の「市民協働による公務労働拡大」の取り組みへと発展させ、各地域がいい意味で、共に競い合い、切磋琢磨し合い、この延長線上にある「協働のまちづくり」の具体的な実践へとつなげていきたいし、そのための「絶好の機会」になるのではないかと考えています。

(2) 今後の労使交渉に臨む基本的な構え
 今後の労使交渉においては、「市民と組合員の利益を最大限に守る」ため、運動の基本に立ち返り「点検と確認」を繰り返しながら、一歩一歩着実に前進するよう取り組んでいきたいと考えています。具体的には、
① 今後の労使交渉における組合の構えとしては、是々非々の立場を貫くこと、組合員との丁寧なキャッチボールを繰り返すことを大切にしながら、労使合意ができる内容を模索すること。
② 労使交渉に当たっては、この間の市職労連合の歴史的な経過と確認や事前協議協約などの組織間ルールを遵守し、諸手続きに則り、誠意と責任を持って対応すること。
③ 労使合意が得られるまで粘り強い交渉に努めるとともに、合意が得られていないものについては、当局が一方的に強行(実施)することのないよう対応するとともに、物事を拙速に進めることだけは厳に慎むよう対応すること。
④ これまで有効な行政施策として位置づけられてきた「公務労働拡大」の取り組みが、引き続き、同様の位置付けのもと、行政になくてはならない体制の「一つの部門」として、保障されなければならないこと。
⑤ 直間比率(直営と民間委託の比率)については、この間の交渉経過・確認に基づき対応すること。

(3) 今後の公共サービス提供体制のあり方(類型)
 本来、公共サービスは、市民生活において欠くことのできないサービスとして「保障されている」ことを前提とします。しかし、現在の社会経済情勢や自治体を取り巻く状況として、少子高齢社会の進展、生産年齢人口の大幅な減少、自治体が抱える財政問題などの課題を総合的に勘案した場合、今後ともすべての公共サービスを私たち公務職場やそこで働く労働者だけで担うことは、不可能な状況にあると言わざるを得ません。したがって、今後の公共サービスの「提供体制のあり方」議論の中で、一定の見直しは避けて通れないし、内容によっては、市民から行政責任のあり方について厳しく問われることになると考えています。
 そうした視点に立って、公共サービスの「提供体制のあり方」として、次のような類型についても検討せざるを得ないものと考えています。
① 公(直営)による対応が適しているもの
② シルバー人材センターによる対応が適しているもの
③ 自治会・町内会との市民協働による対応が適しているもの
④ PTAなどの団体との市民協働による対応が適しているもの
⑤ 民間企業(請負・委託を含む)による対応が適しているもの
※ この類型は、検討する際の一応の目安とすること。
※ ケースバイケースによる対応を基本に柔軟に発想すること。