【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 現在、地域活性化や地域コミュニティの再生に向けた取り組みは様々な分野で行っています。過疎化や高齢化など様々な問題を抱える今日、どのような目線で取り組んでいけばいいのでしょうか。このレポートでは自治研活動に限らず、私の過去の実体験も含め自分なりの考えでまとめさせて頂きました。



人材改革の重要性
―― これからの共生に向けて ――

島根県本部/奥出雲町職員組合 山崎 進也

1. はじめに

 「美しい国創り」を組織すると所信表明した安倍内閣。国民の中では美しい国とは何が美しいのか、何を美しくするのか、定義があいまいであるという声があります。美しい国を創るのであれば、美しい人間創りからと思うのが私の考えです。

2. 協働の中で感じること

 行政と住民の協働の取り組みは様々な内容があります。例えば各地域のイベントや行事などに加え、セクターなどの行政が住民に委託するケースなどがあります。その中で私が協働と感じるのは普段の業務からです。私は事業課であるため、住民=業者との繋がりは絶対的であり、共に一つのものを作り上げていく、まさに協働で行っていきます。
 協働をとおして感じることは、会社の在り方です。以前から会社についての経営や組織について興味があり、時に業者との触れ合いで疑問を感じることがあります。
 私の住む地域は人口1万4千人で、過疎化の進んだ地域ですが、都市地域などと比べ、地域コミュニティは比較的強く、地縁関係のとれた地域といえます。ですが年々、人口減少や高齢化などの問題でコミュニティの維持が困難なこともあり、今後のさらなる問題進行が懸念されています。そんな中で、規模の大小に関わらず多くの企業や商店などがあり、地域活性の源ともいえる会社は多数あります。
 この多数の企業が発展すればもっと活性化が進むのに……簡単に誰もが思うことですが現実的ではありません。大都市は企業の競争率が激しく多くの企業がしのぎを削っています。
 そんな中に我が町の1つの企業がポンと出て行ったら、果たしてどこまで生き延びれるのだろうかと思います。そこまで考えている企業は我が町に果たしてあるのだろうかとも思います。なぜならばそのような危機感が全く感じられない場面があるのです。
 私の感じる我が町の地域活性やコミュニティは企業努力にあると考えます。

3. 人 材

 企業にこそ地域を盛り上げる多大なパワーが潜んでいると思います。
 企業発展のためには様々な要素の取り組みや課題があります。その一つ一つは全て人間が行っていくものでありその集合体が人間の、企業の成果です。
 その人間=人材が育たなければ発展はもちろん、維持もできません。人材こそが今後の企業なり組織の発展に大きく影響していると思います。
 その人材について、また人材育成について考えてみます。

(1) 人材の課題
 人材の課題について、各層で考えてみました。
① 若手層
 ・一人前になるまでの時間が多 ・自律性の欠如 ・目標の不明確 ・出来る仕事が減少 ・教育制度の非確立により育たない ・分からないことが分からない など
② 中堅層
 ・知識、技術が不安定 ・業務量の増 ・教育におろそか ・昇級まで時間がかかる 
③ ベテラン層
 ・制度確立のためのアイディア不足 ・把握する量の増大 など

 若手層は、知識も経験も無いため、一から学ばなくてはなりません。そのため、個人差はありますが、時間がかかり教育者への負担が増大します。また、学ぶ姿勢が薄れているように思います。そのため、自分の目標が不明確で、自分でどうにかしようとする気が無いようにも思います。
 中堅層は、ある程度の仕事を任せられるようになりますが知識や技術が未熟な部分もあり、全てに対応しきれない部分があります。また、自分の仕事に加え、若手の教育も任される立場でもありますのでどうしても、教育に力が行き届かない部分もあります。
 ベテラン層になると、様々な仕組みや制度を考えなくてはなりませんが、そのためのアイディアや発想が乏しい面もあり、一発で決まることもなかなかありません。
 「ゆとり世代」といわれ、決まり文句が「今頃の若い者は……」と言われる若手層。「今どきの新入社員」問題について、多くが「安定志向」、「まじめだがメリハリが無い」、「ストレスに弱い」など、消極的な面ばかりが強調され、各個人の特徴や特有性が見られず育てられないケースが多いようです。
 ですが、中堅層に求められる教育者としての仕事はきちんと行われているのでしょうか。ある調査によると、「中堅層に求める役割」に対する回答の第1位が「後輩の育成」で、第2位が「自業務の改善」でした。その一方で、実際行っているのが2.9%で、やや行っているのが3割程度でした。行っていない理由が、「実施する時間が無い」、「人を育てるのは自分の仕事ではない」、「教える習慣が身についていない」などでした。よって、「今どきの新入社員」問題の根本は若手層ではなく、教育者である中堅層であると考えます。
 ではこの問題点についてどのように考えればよいのでしょうか。

(2) 人材育成
 人材育成には様々な教育制度がありますが、一番に思うことはきちんと部下のことを見ているかということです。なぜならば、教育者が教育している部下のことを知らないからです。上司から「最近、部下はどうなの?」と聞かれても、答えられない場面がよくあります。それは普段からコミュニケーションを取っておらず、いざ部下のことを聞かれても知らない、分からないことばかりで部下が何に困っているか、何が出来ないのかが分からないのです。"(1) 人材の課題"で挙げた、各層の課題で若手層にあった自律性の欠如や分からないことが分からないというのは、教育の欠如によるものだと思います。新入社員に学び方を学ばせることや学ぶ姿勢を教えるのは教育者が教えてあげなければいつまでたっても新人のままになります。
 ある企業では、新人教育で学び方や人への気づきについて以下のような研修を行いました。
 研修として行ったのは、1つ目は、「新入社員が配属されてからの実務実践の経験をフォロー研修の場で一緒に振り返り、同期との関係性を深めるとともに、さらなる成長に向けた意識を高め、課題を見出すこと」。2つ目に、「研修とその後の実務実践の連動や、先輩や上司との関係性を促進する仕掛けを研修に組み込むこと」でした。
 まず新入社員は、研修の事前課題として、自分が所属する職場や仕事の状況などを図で表した「現在の仕事環境」と、配属されてからの経験や仕事のやりがいを時系列で書き表した「実務実践の振り返りシート」を作成しました。これらを研修の場に持ち寄り、入社時以来の再会となる同期社員と、現状や配属後の経験を共有することにより、自分自身の現状の立ち位置を再認識することができます。さらに、同期のさまざまな経験に触れることで、仕事の内容、仕事に対する考え方、辛かったこと、楽しかったことなど、自分とは異なる環境や考え方があることをあらためて認識することができます。このように「自分自身」を認識し、他者の経験との比較を通じて、新たな視点や、拡大された視野を獲得していくことができるのです。
 続いて、日頃指導を受けている先輩からの「手紙」を、新入社員一人ひとりに渡していく。この「手紙」には、先輩から見た新入社員の「強み」や「弱み」、そして「期待」が書かれているのです。「手紙」の存在は研修当日まで新入社員には秘密となっており、「手紙」を渡されると、その存在と内容に軽い衝撃を受けます。ですが、この手紙により新入社員は「ちゃんと自分のことを見てくれている」と思うようになるのです。この手紙を目にすることで、同期とは異なる視点から、より客観的に自己を知ることが可能となり、そして何よりも、先輩社員から「見守られている」という、大きな励みを得て、つながりを感じることができたのです。
 このように、「見てくれている」と思わすことが重要なのです。先輩から後輩へのフィードバックにより、"気づき"や"学び"を得ることが出来ることを理解するのです。
 この研修ではさらに、先輩への働きかけを促進するために、先輩宛ての「手紙」を作成し、研修後にその「手紙」を直接先輩に手渡し、研修での気づきや学びを報告し、それが、その後の先輩とのコミュニケーションの活性化につながったそうです。そして、その報告の場で新入社員のこれからの成長の姿を共有し、今後の支援のあり方を話し合い、それが実践されていくという自然な流れの中で関係性が生まれ、日常の職場での育成へとつながっていったのです。
 関係性の促進によりお互いがお互いを支援することができれば、自然に人が学ぶ環境は出来ていくのだと思います。これは、組織内のコミュニケーション力アップにも繋がり、さらには人材が育つという一石二鳥の効果のある例でした。
 人材を育てる上で、個々の能力も高めなくてはなりません。技術力や、スピーチ力など様々な面で様々な能力が必要となります。ですが、業務を遂行する上で本人のやる気や想いはどうでしょうか。ひとつのものを作り上げていく上でどんな想いでいるのか、またどのように部下に想いを持って欲しいのか、やる気を持ち続けることや、他の人のやる気を引き出すことは重要ですが安易ではありません。どのような考えを持つか、持たせるか、それなくして企業の成長は無いと思います。
 以前、このような企業がありました。
 ある新人研修でのこと、講師が会社の業務内容などを説明し、どのような想いで社員は業務を行っているかを伝えました。そのためにどのような経緯があり、どれだけの労力を費やしているかを伝え、またお客様はどのような相手先で、どれくらいの規模なのかも。ある程度説明をして、講義の終盤に講師は新入社員に折り紙で鶴を作らせました。ただ作るのではなく、以下の条件を出しました。
 ・制限時間は10分
 ・自分の大切な人へ贈ると思って、丁寧に、想いを込めて作ること
 ・仮に鶴の折り方が分からない人は他の人に聞くなど、どんな手段を使ってもいいので必ず作り終えること
 以上の条件を伝え、手早く作業に取りかかる新入社員達は必死に作り出します。そして10分後、数人を残してほとんどの人は作り終えていました。講師はそれを全て回収し、皆の前で確認します。そして、そのきれいに、丁寧に作った折り紙を講師はビリビリに引き裂き、グシャグシャにし出しました。皆は唖然とし、中にはムスッとする人もいます。
 グシャグシャにした後で講師は「今、私は皆さんの大切に作り上げた折り紙の鶴を引き裂きました。これを見てどう思いますか?」と尋ねました。
 「びっくりした」や「特に何も思わなかった」などありましたが、「正直、腹が立ちました」という人もいました。
 この研修で条件を持って教えたかったことは、制限時間は会社で言う納期、想いを込めて丁寧に鶴を折ることは自分の成果に対する熱意、どんな手段を使ってでも終えるのはそのままの意味で自分の力で、または仲間と協力し合うことで業務遂行をし、成果を成し遂げるということでした。
 これは、簡単に言うと社会の厳しさを教えるためのことで、今までの学生生活から社会人になった新入社員へ社会での厳しさを伝えたかったのです。これから各業務を行っていく上で、自分が想いを込めて多くの時間を割いて作り上げた成果や商品を上司や顧客は簡単にやり直しをさせ、時にはこの講師のように破り捨ててもう一度一からやり直す事を要求するかもしれません。そこで自分はどう思うかです。絶対に納得させてやると思うのか、また一からやるのは嫌だと考えるのか、そこで明暗は分かれるということです。社会ではこのようなことは普通にあることで、逆境に立ち向かってこそ得るものは大きいのです。
 実はこの研修は、以前勤めていた会社で私が新入社員に実際に行った研修でした。このような事は極普通にあり、社会での厳しさ、それに太刀打ちできる精神力は必要だということを教えたかったのです。この研修で完成出来なかった人は仕事でも納期が間に合わない、お客様との約束を守れないということです。厳しい事を言うようですが、研修くらいのことで出来ないようでは、ましてやこの段階でたかが研修と思っているようでは、実際の業務できちんとした仕事は出来ないと思います。その後の業務にこの研修が役に立ったかどうかは定かではありませんが、仲間意識は大いに持てたと感じました。

4. まとめ

 ここまで、主に人材育成についての内容ばかりでコミュニティや地域活性との繋がりに触れませんでしたが、人間が育つということは、企業や地域が盛り上がることであり、また、その人間の個々が育つということです。冒頭で「美しい国を創るのであれば、美しい人間創りから」と述べましたが、人間が育つということ、いわば人間力が磨かれるのは企業にとっても地域にとっても財産の一つだと考えます。このような人材育成をこれからもっと活発にし、将来へ繋げることがこれからさらに求められるのではないでしょうか。
 また今回のレポートは主に企業に視点を向けた内容ですが、行政も同じです。むしろ、地域住民の顔とまで言われる行政は、残念ながら民間企業よりも人間力が無いと感じます。行政の皆が無いわけではありませんが、総合力でいえば民間企業が優位だと感じます。それだけ企業は危機感を持ち、存続のために日々努力をしているからです。地域住民の顔の行政とは、恥じぬよう、また、地域に、時には住民に教える立場であると思います。あくまで住民と行政は対等な立場です。ですが、そのためにはまずは行政から動くことが大切ではないでしょうか。そしてそれを地域住民や企業と共有し合い、共に活性化に繋げること、それこそが美しい人間創りに、そして、これからの地域財産になるのではないでしょうか。
 『やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ。
 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。』
 これは有名な山本五十六の残した名言です。やってみて、その中でお互いがコミュニケーションをとり、人が動くことに感謝と信頼を持つことで人間力が磨かれる。今の環境に置き換えると、なかなか難しい面もあるかと思います。ですが、人間と人間です。コミュニケーションをとることで今の環境から改善していくことが大切です。
 『こんにちは』、『ありがとう』、『すみません』。このような普通の言葉が素直に飛び交う環境こそ人材が育つ第一歩なのかもしれません。