【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 本稿は、行財政改革による基礎自治体の現場力や組織力の低下が指摘されて久しい中、改めて基礎自治体職員の役割や働き方を問う材料として出先機関に着目し、その機能・役割を再評価することを目的とする。その具体例として、高知市の現状等を踏まえ、福祉部門に求められる役割や職員の働き方を考えながら、それを体現する出先機関の再構築試案として、地域の総合支援拠点を提示する。



基礎自治体職員に求められる役割・働き方から
出先機関をデザインする
―― 高知市の福祉部門における出先機関の再構築試案 ――

高知県本部/高知市職員労働組合・書記長 池添 健太

1. 基礎自治体職員の働き方を問い、出先機関を再評価する

 4月、人事異動。本庁から出先機関に異動となった職員がいる。「ゆっくりできる」と安堵する者あれば、「飛ばされた?」と怪訝な面持ちの者あり。事務系の行政職にとって出先機関のステレオタイプなイメージは「中枢ではなく末端、定型的業務、のんびりした職場」であろうか。
 かくいう私自身(事務職)、新規採用で配属されたのは出先機関である土地区画整理事務所、「高知市都市整備部高知駅周辺都市整備課」であった(事業終了により今はない)。事業区域内にある現場事務所で4年間、地域住民対応や移転補償交渉を中心に、幅広い仕事に携わらせてもらった。また、技術職とチームで仕事をすることが多く、上司・同僚にも恵まれ、そこから基礎自治体職員として大切なことを色々と学ばせてもらった。
 私が携わった土地区画整理事業は、JR高知駅周辺の人口約2千人の住宅密集地域であった。その地元対応や移転交渉は、本庁の窓口対応とは異なり、時間をかけた濃密かつ継続的なもので、いかに信頼関係を構築していくかが事業推進の鍵であった。地区内には、多種多様な階層・職業・ライフスタイルの市民が暮らし、それぞれがプライベートな問題を抱えていた。当然、事業は市民の財産を動かし、生活を大きく変えるものであることから、移転交渉等を通して、市民から強い抵抗を受けたり、それまでの平穏な生活に隠されていた問題が噴き出したり、市民一人ひとりの家族・隣人関係、利害関係、感情や本音が交錯する。それらに対しては、事業推進という行政の立場や市民との関係性を考慮すると、単純に無関心・不介入という訳にはいかず、市民のよろず相談に乗りながら、必要に応じて行政機関や専門機関などへの接続を図ったり、地域の協力・調整に奔走したりするなど、職種に関係なく現場総体としてできる限りの努力を払ってきた。
 こうした私自身の経験を今振り返ってみると、地域・市民と行政の関係性や、出先機関の意義を強く意識してしまうのである。地域やそこで暮らす市民は、ひとつの事業・制度・視点で割って割り切れるものではなく、統合も分断もできない存在と言える。行政は、それを承知の上で丸ごと受け止め、地域・市民と職員がお互いに顔と心を突き合わせながら、信頼関係の構築と相互理解によって事業推進や課題解決に汗をかくべきであろう。そのためには縦割り意識や職種間の壁を越えた対応や、地域・市民との協働も必要になる。それは、地域に密着した出先機関だからできることかもしれないが、同時に、私たち基礎自治体職員の働き方にとって重要なことではないだろうか。
 そのようなことを考えてしまうのは、人員削減により現場が疲弊している一方で、権限移譲、制度改正、複雑化する市民ニーズへの対応などを求められる中、仕事に臨む姿勢の余裕のなさや組織的熟議の弱さも看過できなくなっている状況下において、私たちは基礎自治体職員として地域や市民としっかり向き合うことができているのか、またそういう機会が失われつつあるのではないかと疑問に思うことが多々あるからだ。だからこそ出先機関の役割と機能を再評価したい。そのような観点から本稿では高知市における現状・課題等を踏まえ、今一度、私たち基礎自治体職員の役割と働き方を問いながら、それを体現する出先機関の再構築試案を提示してみる。


2. 高知市における出先機関の状況から見る組織運営の方向性

(1) 出先機関の状況と市当局の姿勢
 高知市の出先機関は、現業職場を含め直接市民サービスに係る業務・施設などが中心であり、本庁行政機能が一部移譲または分離された出先機関はごく少数となっている。また、これまで実施してきた行財政改革により、出先機関は統廃合・アウトソーシングなど縮小傾向にある。
 総合支所的機能を持つ出先機関は、合併区域の春野・鏡・土佐山庁舎のみで、旧高知市区域としては存在しない。かつて存在した「支所」は、コミュニティセンター機能に特化した「ふれあいセンター」(非常勤職員のみ配置)と、市民課的機能の「地域窓口センター」(利用状況により一部で廃止)へ再編されている。「市民会館」(隣保館に相当)は、地域福祉的機能がありながらも、現在、拠点館以外は非常勤職員配置となっている。
 福祉系の出先機関は、公立保育園などが一部アウトソーシングや統廃合されており、今後も提案の可能性は否定できない。現に、介護職(現業職)の最後の直営施設である「誠和園」(生活保護法による救護施設)についても運営方法の検討がなされている。地域包括支援センターは5か所全てにおいて直営を維持しており、地域に密着した支援を行っているが、三職種の確保などの課題もあり、民間委託の火種は消えていない。
 なお、現在、高知市では、新庁舎建設計画が進められており、5庁舎(本庁舎を中心に徒歩5分以内の場所に点在)に分散している本庁機能の集約化によりワンストップサービスなど市民の利便性、事務の効率化・迅速化、連携体制強化をめざしている。したがって、市当局が出先機関に着目し、その機能を再評価する姿勢はほとんどないに等しい。ただ、それは、単に効率化という観点からではなく、市当局がめざしている組織運営のあり方や職員像がその根底にあるのではないだろうか。次にその点について確認してみたい。

(2) 基礎自治体職員は現場主義的であるべきではないか
 高知市は三位一体改革以降、財政再建や行政改革の取り組みとして、定員適正化計画やアウトソーシング推進計画を実施してきた結果、現場の疲弊、組織力の低下や人材育成への支障など、市役所内外から「マンパワー不足」が指摘されるようになっており、職員の現場力の低下やリスク管理能力も不安視されている。
 しかし、市当局は、そうした財政再建の副作用に対する十分な検証・総括もないまま、2014年度中の次期定員管理・アウトソーシング計画の策定に向けて、その方向性を言及している。即ち、これまでの「人員削減ありき」の計画ではないとした上で、①権限移譲等により事務量は増加しているが、人口減少を考慮すると、職員は増やせないため、基本的に現行定数内でアウトソーシングやIT化により削減した人員を新たな業務に振り分ける、②アウトソーシングについては、民間が得意とする市民対応等の分野において更に推進し、政策立案や権限行使など真に職員が行うべき分野に集中的に職員を投資できる体制をめざす、というものである。
 ただ、これには大きな疑問がある。そもそも基礎自治体職員は、市民対応等の現場に携わらずして、しっかりとした政策立案や権限行使ができるのか、また、私たちはそういう働き方を市民から求められているのか、ということである。市当局はどちらかと言えば、「官僚的・管理者的」な職員像をイメージしており、そうした集権型・管理型とも言える組織論が、前述のような出先機関に対するスタンスの根底にあるのではないだろうか。
 組合側からすると、基礎自治体職員ならば、当然、「現場主義」が一義的なものである。そして、その現場力とそれに裏打ちされた組織力・調整力・問題解決能力こそが市政運営には不可欠であり、そういった観点からの人材育成が必要である。地方分権下における基礎自治体としては、市民ニーズや地域課題の把握によって、地域の実情に即した施策を展開していくために、むしろ市民対応や現場の体制を強化していくべきであると考える。
 勿論、次期計画の労使協議の中で、このような基礎自治体職員の役割や働き方を十分議論しながら、仕事に対する責任を労使双方で持つことが重要である。しかし、市当局の思惑は別にして、私たち自身が市民対応のしんどさを避けたい本音から無意識に官僚的な仕事をしているかもしれないし、あるいは市民からすると既に私たちは官僚なのかもしれない。このように考えると、理念だけではなく、私たち自身が「基礎自治体職員としてどこを向いてどう働くべきか」を議論しあい、具体的なイメージを共有する必要があるだろう。以下では、そのひとつの材料として、自治体行政の主軸である福祉部門において、現場職員がどのような働き方をしていくべきか考えてみる。


3. 福祉部門において求められる基礎自治体職員の働き方

(1) 制度横断的な包括的支援と地域連携に対する公的責務
 近年、基礎自治体の福祉部門においては、制度改正はもとより、地方分権による権限移譲、多様化・複雑化する福祉課題やニーズへの対応など業務量は増加の一途をたどっている。また、支援やサービスの「質」の検証・向上、支援ネットワークの確立が重視され、制度間・部署間の密な連携調整も重要となっている。加えて、高知市の地域性として、全国的に低位にある所得水準や高位にある高齢化率などを考慮すると、支援の度合いや潜在性は非常に高い。このような中、基礎自治体、高知市には、地域の実情に応じて多様で複雑な福祉サービスや支援をどうコーディネートし、マネジメントしていくのか、その責任が問われている。
 現場レベルでの業務・市民対応においては、相談者が本人とその家族を含め複合的な問題を抱えていることから、ひとつの窓口や制度で完結しない場合も多々ある。また、窓口や電話などで、困りごとの相談さえできない市民も相当数存在し、予防支援の観点からアウトリーチも重要である。こうした現場の課題から発するものを含めて福祉部門には、子どもから高齢者までの全世代型支援、地域生活と自立を尊重した支援、どのような立場にあっても排除しない社会的包摂による支援、それらを地域の様々な担い手との連携により推進していく地域福祉というように、社会全体での包括的支援の推進が求められている。そうした福祉行政や地域社会の確立のためには、個々のサービス提供が民間中心であったとしても、基礎自治体とその職員が責任をもっていくべきであって、トータルサポートや地域連携の観点から、市民一人ひとりに応じた相談支援やサービスのコーディネートなどの実践にしっかりと取り組むべきであろう。そうした積み重ねがあってこそ、地域の実情に応じた福祉行政全体のマネジメントが可能となるのではないだろうか。

(2) 地域により身近な場での実践が必要ではないか
 このような責務を果たしていくためには、制度・組織横断的対応とともに、人材の多様性や様々な職種による能力の相互補完や連携のもとで、基礎自治体としての現場力や組織力をフルに発揮しながら、より地域・市民に身近な場で市民に寄り添う(表面的な対応ではなくきちんと向き合う)働き方が必要であるだろう。
 しかし、現実問題としてそれには大きな困難が伴う。人員不足により目下の事務処理に追われるばかりという現場実態と、本庁に権限、機能、人員が集約されている状況の中では、そもそも地域との距離は縮めにくい上、組織として機動性や柔軟性に欠けている面がある。そこに多種多様な制度とその複雑さが加わることで、職場間・職員間での目的・課題意識の共有が阻害され、制度や施策ごとの縦割り組織・意識をなかなか突破できない。そうした状況を変え、求められる働き方を担保していくには、人員面での体制強化はもとより、本庁集約へのこだわりを見直し、出先機関の再構築を軸としながら、そこに一定の機能や人員を分散・再編させ、制度間・職種間の連携強化が可能となるような組織づくりが必要ではないかと考える。その出先機関の具体的な試案を提示してみたい。


4. 福祉部門における出先機関の再構築試案

(1) 地域の総合支援拠点を構築
① 基本的な考え方と拠点の機能
  ここで示す出先機関の試案は、高知市の実情を踏まえたものであり、その基本的な考え方としては、相談支援や地域連携を軸とした制度横断的な機能を有し、多職種のチーム連携により対応していくもので、直営による地域の総合支援拠点(以下「総合支援拠点」)とする。設置場所としては、現在、高知市の地域包括支援センター(直営)がある、5か所の健康福祉センター等(東西南北ブロック+旧春野町)を想定する。
  まず、機能としては、【表1】のとおりである。地域包括支援センターに、本庁で実施している他制度の機能を分散または新設により付加し、総合支援拠点を構成する。そして各機能の連携と地域の支援ネットワークにより、生活上の様々な問題を抱える地域住民に対して、包括的かつ重層的な支援を行う。


【表1】総合支援拠点の機能
機能 主な業務内容
地域包括支援
センター
引き続き直営による高齢者支援の拠点として、介護予防支援、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援を実施。地域の社会資源等との連携により、必要なサービスへの接続、高齢者の健康保持や地域において安定・自立した生活を続けられるように支援する。
生活保護
生活困窮者支援
本庁に集約されている生活保護業務(地区担当)を各総合支援拠点に分散させ、より地域に近い場で生活指導・自立支援を充実させる。あわせて、地域の生活困窮者の状況を把握、相談支援により必要なサービスへ繋ぐ(生活困窮者自立支援法による「高知市生活支援相談センター」との連携)
地区保健活動 本庁に集約されている保健師の地区担当業務を各総合支援拠点に分散させ、より地域に近い場で市民の健康管理を行うとともに、訪問調査等による市民の実態把握やハイリスクの発見などアウトリーチ機能を充実させる。その情報を他の機能・職種と共有を図り、必要なサービス・支援に繋げる。
地域子育て
支援拠点
利用者支援
在宅児を含めた地域の子ども・子育て家庭を支援するため、「地域子育て支援拠点事業」と、新制度における「利用者支援事業」を合わせて実施。あそび場の提供などを通して、子育て家庭の相談支援や必要なサービスへの接続とアフターフォローを図るとともに、地域の保育・教育施設や社会資源の連携から地域の子育て課題に対応。
障害者相談支援 障害者相談支援事業所等と連携しながら、障害福祉(在宅等)に関する相談支援を行う。
※機能④:地域子育て支援拠点については、既に民間委託で併設している健康福祉センターは利用者支援のみの実施を想定。
※機能⑤:高知市では、障害者相談支援事業を民間委託しているため、総合支援拠点の機能は補足的業務にとどめる。

② 配置する職種とその役割・働き方
  次に、配置職種としては、ケースワーカー(以下CW:事務職)、保健師、介護職(現業職)、保育士である。現在、本庁に集約されている生活保護CWと保健師のうち、地区担当を各総合支援拠点に分散配置する。介護職は本庁や直営の救護施設(誠和園)から、保育士は公立保育園から人事異動により総合支援拠点へ配置する。なお、各機能独自で必要となる職種については別途配置する(地域包括支援センターの社会福祉士や主任ケアマネ、ケアプラン作成や生活保護関連の非常勤職員等)。
  総合支援拠点内での各職種の役割や働き方は、【表2】のとおりである。各職種は主担当機能に基本的に従事しながら、それ以外の機能についても各職種の能力を活用した支援や業務に携わり、必要に応じてチーム編成やケース会議により対応するなど、職種間連携を密にした支援を行う。

【表2】総合支援拠点における主な配置職種とその役割・働き方

職種

主担当機能

役割と働き方

ケースワーカー
(事務職)

生活保護
生活困窮者支援

・地区担当ケースワークを基本としながら、地域の生活困窮者の調査・把握や相談支援を行う(「高知市生活支援相談センター」との連携→必要に応じて個々の支援プランに関与)
・他職種と連携により、必要に応じて担当ケース等を他機能の支援に繋げるとともに、他機能の支援対象者のうち生活困窮者等の相談支援を行う。

保健師

地区保健活動
地域包括支援
センター

・地区保健活動を基本として、地域住民の健康管理を行うとともに、訪問調査等による地域の実態把握やハイリスクの発見などアウトリーチ機能を充実させる。その情報を総合支援拠点内で共有化し、他機能・他職種による支援に繋げる。
・地域包括支援センターの必置職として、介護予防支援や総合相談支援等を行う。
・他の機能の支援対象者に対して、必要に応じて健康管理や保健指導を行う。

介護職
(現業職)

生活保護
生活困窮者支援

・介護職は、誠和園(直営の救護施設)において、貧困、介護、障害、社会的孤立など複合的な課題を抱える利用者の直接処遇や自立支援を通して、オールマイティな処遇能力を保有している。この専門性を活かしながら、ケースや生活困窮者を中心として、支援対象者の心身や生活の状況を見極めながら、日常生活・社会生活を続ける上での相談支援や生活指導等を行う。また、中間的就労や自立支援など地域資源の開発にも取り組む。

保育士

地域子育て
支援拠点・
利用者支援

・公立保育園で培ってきた直接処遇、障害児保育や保護者・家庭支援の能力を活かし、地域子育て支援拠点と利用者支援を行う。そこでの相談支援や地域の保育・教育施設等との連携からアウトリーチ機能を果たしながら、他機能・他職種による支援に繋げる。また、他機能の支援対象者(子育て家庭)に対しても、子育て相談や家庭訪問などによる支援を行う。

③ 総合支援拠点の全体イメージ
  上記を踏まえ、試案の全体をまとめると、イメージとしては別図のとおりとなる。

(2) 事業効果は各職種の働き方と連携で決まる
① 総合支援拠点に期待する事業効果
  この試案を改めて整理すると、本庁から分散させる生活保護・地区保健業務をベースとし、CWと保健師による人的スケールメリットも活用しながら、地域包括支援センター、生活困窮者支援、子育て支援、障害者福祉の相談支援・地域連携機能をパッケージ化し、地域や市民が抱える様々な福祉(保健)課題を地域の中においてワンストップで対応していくものである。これにより次のような事業効果が期待される(期待したい)。
 ○ 個々の市民とその家族が抱える課題や生活実態に応じて、相談支援、サービスのコーディネートや地域との橋渡しなどトータルサポートが可能となる。
 ○ 地域との近接性により、アウトリーチの充実が可能となり、支援の重度化、社会的孤立、様々な虐待などハイリスクの発見・予防に繋がる。支援の継続性やアフターフォローも担保しやすい。
 ○ 各機能で地域の支援ネットワーク(各種行政機関、民生委員、住民組織、医療機関、学校・各種施設など)を共有化でき、連携する側としてもワンストップ化となるため、行政側とより重厚で密接な関係を構築できる。
 ○ それによって支援対象者と地域社会との接続がよりスムースになり、抱えている課題の改善・解決、社会参加や自立支援、地域生活の継続に繋げていくことができる。また、地域課題への迅速な対応、地域資源の開発や地域の人材の発掘・育成の充実など地域コミュニティの強化も期待できる。
 ○ これらの現場実践の積み重ねにより、総体として全世代型支援、社会的包摂、地域福祉(市社協の地域福祉活動との連携による充実も期待)の確立に資する。また、地域包括ケアシステムの構築にも資する。


◆地域の総合支援拠点のイメージ(高知市の福祉部門における出先機関の再構築試案)

② 職種間連携を軸にした働き方がポイント
  このような効果自体は、前章で述べたような福祉部門の責務と職員の役割を果たすものと考えるが、それが上手く発揮されるには、各機能間の連携というよりは、やはり、職員の働き方、職種間連携が重要になるだろう。保健師はその幅広い専門知識と地域の中での活動による情報力を支援に活かし、介護職と保育士は直接処遇のスキルにより心身や生活の状況を見極めながら支援を組み立て、CWは支援業務とともに、事務職として全体的な調整や補助、進行管理をしていく。そうした各職種の能力を相互補完することを基本としながら、同じ地区を担当するCWと保健師でグループを編成したり、個別の課題・案件に応じてチームを構成したりするなど、制度・機能の縦割りに捉われすぎず、職種間で目的・課題認識の共有化を図りながら、市民と地域が抱える課題を丸ごと受け止めていく体制が地域拠点全体の運営にとって必要であろう。それには困難がつきまとうだろうが、高知市の現場力と組織力が問われる出先機関であり、かつ、それらを育んでいく出先機関でもあると考える。
③ 課題・問題点
  当然、この試案には多くの課題がある。実際、健康福祉センター内での設置スペース確保は難しく、本庁での事務手続きの必要性などワンストップ化には限界がある。行政側からすると、個々の案件に深入りすることへの懸念、本庁側の体制整備(本庁所管課間の連携、拠点との連絡調整、各種計画見直し等)、「本庁による統制がとれない」といった指揮命令系統の課題もあるだろう。ここではその対応策までは言及しないが、最後の点については、「出先機関が管理される側」という感覚自体を捨てる必要があるだろう。この試案の目的はまさにそこにある。出先機関職員による地域密着型の働き方が本庁組織に波及し、行政全体を変えていくことに期待するからである。

5. 出先機関は組織の末端ではない

 基礎自治体は、地域課題や市民ニーズを把握する市民対応などの現場から、それを政策に反映していく機能までを一体的に有する行政組織であるからこそ、権限移譲など地方分権が進んできたと言える。また、人口減少局面における持続可能な市政運営として、地域・市民との協働や地域実情に応じた公助・共助のベストミックスを追求・構築していく必要もある。こうしたことを考慮すると、地域・市民に身近な場での現場実践とそこからのボトムアップが一層重要になると考えられる。そのためには、人材育成として、地域と関わるスキルやコミュニケーション能力を行政内部でしっかりと培っていく必要がある。こうした観点から基礎自治体は、その責任や職員の働き方を(労使間を含めて)真摯に議論していく中から、対地域・市民の最前線である出先機関(現業職場や直営施設含む)を組織の末端として扱うのではなく、その機能と役割を組織全体の中で位置付けていくべきではないだろうか。
最後に、本稿の試案は私のオリジナルの発想などではなく、現場職員との雑談から生まれるちょっとした声やアイデアを組み合わせたものである。そうした横の繋がりから私たち基礎自治体職員の働き方や公共サービス・組織のあり方を描いていくことが重要であろう。




※ 参考資料:自治労通信連載記事「福祉・医療分野の『公共性』とは何か」(淑徳大学教授・結城康博氏)