【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 障がい者自立支援法が成立(2005年11月)、施行(2006年4月、10月本格実施)され、障害福祉計画策定の過程で組織された宇佐市自立支援協議会の取り組みについての実践報告。



宇佐市自立支援協議会の実践


大分県本部/宇佐市職員労働組合

1. 宇佐市の自立支援協議会が今日の形になるまでの経過について

(1) 障害者自立支援法が成立、施行
 障がい者自立支援法が成立(2005年11月)、施行(2006年4月、10月本格実施)されました。
 十分な助走期間もなく、実施主体の全国の市町村・県の現場は大混乱で夜遅くまで長期間の残業を強いられました。
 それよりも障がいのある人、家族、それを支えている施設(事業所)からは悲鳴にも似た声が出る状態でした。
 障がいのある人からは、「自分たちの声を聞くこともなく、他人が勝手に決めないでください」という叫び、施設の方からは県・市町村に問合せしても詳細はまだ決まっていないので解りません。と言われるだけで、どうしたらいいか解らずに追いつめられたという悲痛な叫びがありました。

(2) 誰のための障害福祉計画をつくるのか
 県より障害福祉計画を2006年9月まで(後に翌年3月)に作成することが必要と言われ、計画づくりが始まりました。
 多忙に加え、不安と戸惑いの日々の中でしたが、コンサルを入れずに障がいのある人、家族、施設の現場の人に集まってもらい、その人たちの実態やニーズ(思い)を計画に反映していこうということでした。
 2006年6月から8月にかけ月2回夜の7時~9時に、働く、暮らす、育つをテーマに話し合いを重ねその声を生かした計画を作り上げました。

(3) 「共に生きる支援ネットワーク」が産声を上げる
 この計画づくりの過程を経て、障がいのある人、家族から、行政が私たちのことを理解しようとしてくれただけなく、その声を取り上げ計画をつくってくれたことが本当にうれしいと言われました。
 障害福祉計画は障がいのある人のための計画であたりまえのことなのに、コンサルを入れ職員だけで作成しなくて本当に良かったと思いました。
 そして翌年、計画を地域で実践していくためにこのあたりまえのことを踏しゅうし、「ともに生きる」支援ネットワーク「地域生活」「療育・教育」「就労」「相談支援」(2007年は地域移行)の部会がスタートしたのです。


2. 宇佐市自立支援協議会の取り組み

 前述の通り、宇佐市の自立支援協議会は、各分野別にネットワークを構築し情報の共有化を図るため、4つの部会に分かれて活動しています。
 個別支援会議等で地域から吸い上げたニーズを、相談支援事業所を通じて課題抽出会議にて提案し、事例の内容によって、「地域生活支援部会」「療育教育支援部会」「就労支援部会」「相談支援部会」のいずれかの場所で協議されます。
 協議された内容は、各部会の事務局が集まる運営会議と、市内法人のサービス管理者が集まる定例会で課題を共有したのちに、自立支援協議会委員が集まる全体会にて決定されます。
 全体会で協議・決定された内容を運営会議にて報告し、決定事項を各分会や関係機関に伝え、情報を共有し、決定した内容を実行に移していきます。
 宇佐市の自立支援協議会の特徴として各部会の部会員に当事者やその家族が参加していることです。
 当事者達が参加することで、上がってきたニーズに対してどのような解決方法があるのか考える際、より具体的で現実に即した意見が期待できます。また、部会の場で新たなニーズを拾い上げ、そのまま議論していくことも珍しくありません。
 4つの部会に分け、それぞれの部会の特色を、部会の名前に設定し、テーマをより明確にすることにより、議論を円滑に行い、素早い対応を行っていくためにこのような形で運営しています。
 どのような部会があり、その部会でどのような議論を行っているのか、簡単にご紹介します。

(1) 地域生活支援部会
 地域生活で困っていること、不安に思うこと、どの様な制度があったら良いか等、みんなで話し合って少しでも実現していくことを目的としています。
 自宅の生活、地域の困りごと、社会資源について等、他の部会に比べ、対応できる幅が広く、新たな試みを協議・実践していくことが最も多い部会であり、当事者、福祉関係者からボランティアの方まで数多くの方に参加して頂き、地域の課題や社会資源について毎回活発な議論を行っています。

(2) 療育・教育支援部会
 障がいのある子ども達が成長していく中で、どの様な支援が必要か、また、その支援を途切れなく続けていくためにはどのようなシステムを構築しなければならないのか、考えていく部会です。
 ただ障がいのある子どもたちの支援の方法を考えるだけではなく、地域の子どもたちが生まれてから学校に入るまでの乳幼児期から、小学生、中学生、高校生の時代を過ごす学齢期、そして学校を卒業したあと、就労や今後の生活について考える青年期までに必要な支援を、途切れることなく行っていくために、市の関係各課や学校等の教育関係者、当事者やその家族の方々と、生まれてきた子ども達が地域で当たり前の暮らしができるような宇佐市にするための協議を行っています。

(3) 就労支援部会
 障がいのある人一人ひとりの思いに耳を傾け、そのニーズの実現に向け考え、話し合い、行動をしていく事業所づくりが求められている中で、そんな事業所づくりに向けた思いを持ち寄り、一事業所や立場を超えて、一緒に考え、話し合い、創造していくことを目的とした部会です。
 アンケート調査を行い、その結果を基に、現在障がいのある方たちが自分の仕事に不満や困りごとはないか、雇用条件に満足しているか等の情報を集め、支援学校や、ハローワーク、福祉事業所や一般企業等とその情報を共有し、障がいのある方の雇用をより良いものにしていくための協議を行っています。

(4) 相談支援部会
 相談支援部会では、市と相談支援事業所の職員が集まり、個別支援会議で拾い上げた、課題抽出会議で提案された困りごとや、要望に、どの様な流れで応えていけば良いのかを考える部会です。
 基本的に事務局のみで会議が行われ、地域の方が参加することはないですが、この部会から他の部会に繋がり、議論をしていくことになります。
 このような4つの部会を中心に宇佐市の自立支援協議会は運営されています。


3. 宇佐市自立支援協議会の成果

 これまで、各部会で挙がった要望に応えるため、宇佐市自立支援協議会では様々なことに取り組んできました。その一部をご紹介します。


(1) グループ型移動支援事業「かけはし」号

 地域には、障がいがあることによって、社会参加が極端に制限されている方が多く存在し、特に移動に困難があることがそのことを助長しています。そして、そのような方々の多くが余暇活動として、仲間達みんなで遠くに出かけたい、買い物に行きたい、という様なニーズがあることが地域生活支援部会で行ったアンケート調査を通じてわかりました。
 地域にそのようなニーズがあることから、地域生活支援部会にて2007年、2008年と長い時間をかけて協議を進め、解決方法を協議していく中で、余暇活動に利用する車を購入することが決定しました。
 宝くじの売上金を財源とした「共生のまちづくり助成事業」を利用し2台のリフト付きワゴン車を購入し、県内初のグループ型移動支援事業である「かけはし号」が誕生しました。
 「かけはし号」での移動には運転者と介護者共にボランティアの方にお願いしているため、「かけはし号」の運行は宇佐市社会福祉協議会に委託しています。
 利用の申請があった際には、宇佐市社会福祉協議会が運転・介助のボランティアの方に連絡し、ボランティアの確保ができたら運行というシステムで行われています。このように、「かけはし号」の運行のためには、市民の方々の協力が必要不可欠であるため、ボランティアを随時募集し、定期的にボランティア講習会も行っています。当初は、ボランティア登録者も少なく、急な申請に対応できず申請者の方に諦めてもらうことや、日程を調整してもらうことも少なからずありました。また、その後の地域生活支援部会において、当日のボランティア確保のため、申請締め切りを運行日の3週間前と定めているため、咄嗟に利用することができず利用しづらいというような厳しい意見が挙がることもありました。現在は、申請締め切りを運航日の10日前に改善しており、また、申請者の方々自身でボランティアの方の確保が可能な場合には、直前の申請でも可能になりました。その他にも、「かけはし号」に関する様々な事柄について地域生活支援ネット部会において、活発に議論されています。例えば、障がいのある方が外に遊びに行きたくなるような、色々な企画を考えて欲しいというような意見もありました。
 そういった意見に応え現在では2か月に一度、利用者やボランティア、社協、市福祉課で「かけはし号」の企画会議を行っており、その中で考案された潮干狩りや、花見等の企画が実現してきました。
 「かけはし号」は運行開始からまだ3年程しかたっていませんが、これからも自立支援協議会から上がってきた要望や意見を生かして発展していけばと思います。

(2) 地域共生社会をめざす宇佐市市民集会
 地域共生社会をめざす宇佐市市民集会は、障がいのある方やその家族の方々が、地域で当たり前の暮らしを実践し、併せて市民誰もが安心して暮らせる地域づくりをめざし2007年より開催されています。
 障がいのある方が、これまでの生活の中で体験してきた出来事を体験報告として語って頂くことや、講師の方を招き講演を行うことで、地域の方々に障がいのある方の思いや困ったこと等を理解してもらい、障がいのある方もそうでない方も、安心して暮らせる地域に近づけていきたいと考え、毎年開催しています。
 自立支援協議会の活動の中でも市民の方々と市や福祉事業所の職員が協働して開催すること、また、自立支援協議会の年間活動の集大成として、重要な意味を持った催しとなっています。

(3) ピアサポートフェスティバル
 「将棋教室」、「音楽教室」、「絵手紙教室」、「料理教室」等、現在市内で行われている、障がいのある方の余暇活動であるピアサポート活動の集大成として、隔年で開催しているお祭りです。
 各福祉事業所の方々や、障がいのある方が力を合わせて各教室内容に基づいたイベントや焼きそば、餃子などの食べ物や、各事業所で生産した農作物や雑貨などの販売等を行っています。収益の全ては、今後の宇佐市のピアサポート活動の充実のために利用する予定です。

(4) 事業所見学会
 障がいのある方や家族の方から例年多くの声が上がってくるのが、ケアホームやグループホーム、福祉事業所や支援学校等、今後子どもたちが生活する場や就労する場になると思われる場が、どのような場所であるのか、その場所でうまくやっていけるのであろうかという様な不安の声です。
 そのような心配を少しでも緩和するため、上記のような事業所の見学会を各部会で行っています。
 障がいのある方のご両親は特にそのような心配をされている方が多く、生活、就労、療育の場を直接見学できるこの事業所見学は、多くの好評の意見を頂いています。

(5) 要援護者支援活動
 障がいのある方が地域で生活する上で必ず不安要素として挙がってくるのが緊急時の避難活動に関してです。以前から問題視され続けてきた内容ですが、特に近年、東日本大震災や豪雨による災害を目の当たりにし、一層不安の声が多くなっています。
 地域生活支援部会の活動として、いざ震災があったとき、市が、事業所が、家族がどのような意識でどのような行動をとるべきなのかを学ぶため、防災アドバイザーの方を招いての講演会の開催や、地域の方々に自分の身近に、もしもの時に誰かの力が必要な方が生活していることを知って頂き、協力体制を作るため、障がいのある方が生活する地域全体での避難訓練を行いました。

(6) 5歳児健やか健診
 療育・教育支援ネット部会でお母さん達から「関係機関の連携がとれていなくて、行く先々で子ども達のことを聞かれ嫌になる。特に小学校入学時は保育園、幼稚園と学校の連携が全くなく振り回されてしまう」と発言がありました。
 部会終了後に保健所の保健師、子育て支援課の保健師、障害者福祉係の療育担当者がなんとかしようと話し合い、お母さん達や保健所、幼稚園、教育委員会も参加した協議会を立ち上げ、就学一年前に保育園、幼稚園に通所している全員を対象とした「5歳児すこやか発達相談会」を実践継続しています。
 この成果は全員を対象としたことで「子どもが年齢にあった成果をしているのか分からず、ついつい子どもを叱ってしまう」というお母さん達の不安を解消する場となっていること、保育園、幼稚園だけでは解決できない、集団行動が上手くできない子ども達と家族を支援する輪が拡がっています。
 療育コーディネーターの保育園、幼稚園家族への訪問相談やとぎれない支援のためのツールとして「あしあとファイル」が作成されました。
 お母さん達から「一番怖いのは孤独だと感じること、支えてくれる人がいるということは本当に助かる」という発言につながっています。

(7) 夏休み日中一時支援事業「すきっぷ」
 療育・教育支援ネットで、障がい児のお母さんたちからの要望で事業化しました。
 夏休みの長期休暇の間、子どもの居場所がない。いろんな大人に接して欲しい。いろんな人に障がいのある児童のことを理解して欲しいという切実な願いからでした。
 事業自体は、大分県福祉事業団に委託していますが、子どもとマンツーマンで接するのは、多くの市民のボランティアや職員で対応しています。

(8) バリアフリー検討対策委員会
 地域生活支援ネットの会議の中で、当事者の方より「宇佐市の駅にはエレベーターが無いのでエレベーターがあったらいいな」というような意見がありました。
 しかし個人が要望をしても実現するのは難しいのではという考えがあったため、駅に限らず公共機関などを調査し、要望を送るのを目的に、バリアフリー対策検討委員会を発足しました。
 これまでの取り組みとして、JR九州に対して、宇佐市柳ヶ浦駅へのエレベーター設置の要望書の提出を行いました。また、各公共機関や避難所などの調査を行いました。
 今後は調査内容を精査し、各機関への要望書の提出や、バリアフリーマップの作成を行いたいと考えています。
 これらの取り組みは全て、自立支援協議会の活動からニーズを見つけ実現していった内容であり、障がいのある方を支援していく上で、如何に自立支援協議会が大きな役割を担っているのかがわかって頂けるかと思います。

4. 担当者の声

 地域生活支援ネットの会議では、市の職員や相談支援事業所、福祉事業所、そして障害のある方やその家族などの当事者の方々が集まり、地域生活の困りごとや取り組みについて話し合いをしています。
 当時私は市役所に入ったばかりであり、市役所は所謂「市民課」や「税務課」的な、窓口で色々な手続きをする場所という様なイメージしか持っておらず、色々な立場の方が集まり市の良いところ悪いところを考えるこの会議に参加したとき、「市役所ではこんな仕事もしているのか」と私はとても驚き、すばらしいと思った記憶があります。
 話し合いで議論されたこともその場で終わらず、上記の取り組みの様に何らかの形で市の福祉の発展にしており、今では私たちが当事者のニーズを拾い上げる場所として無くてはならないものであると感じております。
 世界的に障がい者の権利について激しく議論される中、今後も自立支援協議会の役割は大きくなってくると思いますので、今後も自立支援協議会の発展のために努力していきたいです。


5. 市民の声

 私は幼いころから37年間肢体不自由施設へ入所し4年前に両親との暮らしとなりました。施設の暮らしは外からの情報もなく変化のない日々が流れる味気ないものでした。
 地域に帰ってからの4年間は信じられないほど次々に暮らしが広がり、いろんなことが叶えられました。そのようになった理由の一つに、宇佐市自立支援協議会の「共に生きる支援ネット」があったことが挙げられます。
 両親の家に帰ってすぐに市の担当者が来て、日中どんなサービスを使って過ごすのか話し合いがありました。私は「どんなサービスがあるかもわからない」というと市の担当者から「どんなサービスがあるのか、ほかの障がいのある人がどんなサービスを使っているのか等がわかる支援ネットがあるから参加しませんか」と誘われたのが参加のきっかけでした。
 私は「地域生活」と「就労」の支援ネットに現在まで参加を続けていますが、参加者の発言を全体で受け止め新たな取り組みが必要なときは○○プロジェクトや○○実行委員会を結成しその実現をめざすネットとなっています。まさに新たな地域資源を生み出す「協働の場」です。
 一人の思いがみんなの思いとなるのです。地域生活支援ネットからバリアフリープロジェクトを立ち上げ、それを通じてJRに要望書を提出したことで、柳ヶ浦駅にエレベーターが設置されることが決まりました。
 私はいずれは働きたいと思っていましたが、家に帰った当時は体力が落ちていてできず、週5日生活介護に通所していました。就労ネットで働くところが宇佐市内に多くあることを知り、車いすで働けるところがあるのか少し不安でした。
 私の働きたいという思いを知った事業所の方がトイレ等を改修してくれ、2年前より就労することができました。
 初めは週2日でしたが同年代の人も多く友達が欲しいと週3日、今では週5日働くようになりました。
 友達もでき、休日にはかけはし号を使ってパークプレイス等にも行くことができます。
 さらに夢は広がり、友達と自由に集まれる場としてバリアフリー住宅での一人暮らしをめざしています。
 支援ネットには移動支援サービスを使って参加していますが、一人で参加の時は、専門用語が出て理解できないこともしばしばでした。
 ヘルパーさんがついてくれるおかげで理解ができ、昨年度は部会長もできました。私にとって支援ネットは自分らしく人として生きるための場となっています。
 もう一つの療育・教育支援ネットには障害のある子どものいるお母さんたちが大勢参加しています。
 家族、特にお母さんは子どもから離れられない毎日でした。支援ネットで子どもが親から離れていろんな体験ができる場が急速に広がりました。子どもが大きくなったお母さん達から今の様な社会資源が前にあったら子どもを叱らないですんだのになあ、でも私たちと同じ苦しい体験をしないで済むようにしていく力になればと参加しています、と発言がありました。
 「今までは働くことなんて考えられない」「子どもから離れることなんてできない、誰が見てくれるのですか」から、お母さんが働くのは当たり前になってきています。
 想像できない「生きづらさ」を抱えた障害のある方が「地域で愛する人と暮らす」「いきいきと働く」そんなことをめざして支援ネットは続きます。