【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 市民に精神障がいについて正しい理解を伝えるとともに、支援する機関や人々についての情報を周知し、精神障がいがある人が暮らしやすい地域づくりをめざした「精神障がいがある人とみんなのための杵築フォーラム」開催の取り組み報告。



精神障がいがある人とみんなのための杵築フォーラム


大分県本部/杵築市職員連合労働組合

1. 経 過

趣 旨
 心の病気を持つ人は退院しても地域で暮らしづらい現実があります。しかし、適切な支援があれば働ける人も多く、地域で受け入れてもらうことによって、社会復帰も進めることができます。フォーラムでは、市民に精神障がいについて正しい理解を伝えるとともに、支援する機関や人々についての情報を周知し、精神障がいがある人が暮らしやすい地域づくりをめざします。

(1) 目 的
① 地域や関係機関・団体等への啓発を進め、精神障がいに対する理解を深める。
② 当事者・家族、保健・福祉関係者、医療関係者、行政、企業等の連携・協力を広げる。
③ 今後の取り組みの方向を共有する。

(2) 取り組み方法
① 準備会
  2012年10月に、精神保健福祉会ひので会(家族会)代表から、市役所福祉対策課に相談がある。家族会、県東部保健所、社会福祉協議会(以下 社協)、福祉対策課で準備会を開催し、実行委員会の設置・開催について準備を進めた。
② 実行委員会の結成
 ア 構成 
   家族会、事業所、支援機関、病院、企業、行政、保健所、社協等
 イ 役員
   実行委員長 …… 精神保健福祉会ひので会(家族会)代表 藤波志郎
   副実行委員長…… 杵築市区長連合会会長
            杵築市民生委員・児童委員協議会会長
   事務局   …… 杵築市役所福祉対策課
 ウ 運営 
   フォーラム開催に向けて、実行委員会を月1回開催して企画、運営等を協議した。計6回開催した。
③ 呼びかけ・広報について
  実行委員会の中で、確認した呼びかけ先に対して、担当を決定し、呼びかけ文・チラシ・ポスター作成を行い、訪問・郵送・区長便回覧の方法で実施した。
  当日参加は可能であるが、準備の都合上、できるだけ参加団体ごとに大体の参加数を把握するよう努めるようにした。
  区長会及び民生児童委員会、福祉委員等については文書を出し、参加数は把握しないことにした。
  また、広報については、市報掲載・ケーブルテレビ・マスコミ・HPにより行った。
  【参加呼びかけ先】
   当事者・家族、福祉施設事業所(高齢者事業所・ヘルパー事業所等含む)、医療機関(訪問看護等を含む)、行政関係、学校関係、自治委員、民生委員、健康づくり推進委員、福祉委員、公民館、企業、ボランティア連絡協議会、一般市民、その他

杵築市の障害者の現状
●身体障害者手帳交付    1,938人
 療育手帳交付        255人
 精神障害者保健福祉手帳交付 108人……(2012年4月1日現在)


 自立支援医療受給者は200人程度。→ 増える傾向にある。
  在宅サービス利用者は、就労継続支援B型10人、居宅介護6人程度。
  グループホーム利用者は不明。
●実行委員からは、
 ・杵築から別府や大分の病院に行く人が多い
 ・当事者がフォーラムに出てこない状況にならないか
 ・前回見たビデオの国東地域に比べると地域支援体制が乏しい
 ・精神の利用者は数人
 ・1年半で相談者は2~3人
 ・苦しんでいる人がどこにいるのか把握できない状況だ
 ・家族会も市内は数人で高齢化している
 ・地域の人が精神の病気を理解していないので、理解してもらうことがまず大切
 ・精神障がいがあるに対する地域の人の見る目が違う
 ・『火を出されたら困る』・『臭い臭い』などの声も聞かれる
 ・他市に住む家族に連絡を取っても返事が来ない。『自分の生活があるのですみません』という返答
 ・ヘルパーさんやケアマネさんもどうすればいいかわからない
 ・どういう病気なのかを伝え、偏見を取り除くことが必要等
●障害福祉係・県保健所からは、
 ・地域で支える形がまだ弱いと思うが、フォーラムに取り組むプロセスの中で関係者の連携を深め、各事業者の特性を活かし、サテライトで相談するなど検討してみること等、検討できないか
 ・『フォーラム開催』という一石を投じることによって、波が広がり、連携が進めばと考える
 ・精神障がいに対する理解は遅れている。身体・知的障がいはバス代が半額だが、精神障がいはまだ実現していない
 ・家族は「まわりに迷惑をかけないように」という気持ちを持って暮らしている
 ・フォーラム開催を通して精神障がいに対する理解を深めたい
 ・取り組みのプロセスの中で、すぐにできること、次の段階で取り組むことなどを考えながら、取り組んでいきたい等

取り組みの必要性
① 全国で300万人、大分県で3万数千人と言われる心の病気を持つ人、そして家族の多くは、今なお地域で暮らしづらい現実がある。
② また、精神障がい者に対する偏見も根強く、地域での生活や就労もままならないのが現状である。
③ 実際は、適切な支援があれば働ける人も多く、地域で受け入れてもらうことによって、社会復帰も進めることができる。
④ 精神障がいについて正しい理解を広げ、精神障がいがある人と家族が暮らしやすい地域をつくっていくためにどのような取り組みが必要か話し合う場としてフォーラム及び実行委員会は重要な場になると考える。
開催の目的
 地域や関係機関・団体等への啓発を進め、精神障がいに対する理解を深める場とする。
 更に、当事者・家族、保健・福祉関係者、医療関係者、行政、企業等の連携・協力を広げ、今後の取り組みの方向を話し合う場とする。
開催期日:2013年2月20日(水)午後1時30分~4時00分
開催場所:杵築市健康福祉センター 多目的ホール
参加対象:市民 
     特に、民生児童委員、区長、サービス事業所並びに施設関係者、行政関係者等

フォーラムの概要
名  称 「精神障がいがある人とみんなのための地域フォーラム」
主  催 実行委員会
構成団体 杵築市・杵築市社会福祉協議会・杵築市障がい者地域自立支援協議会・杵築市区長連合会・杵築市民生委員・児童委員協議会・大分県東部保健所・大分県精神保健福祉会ひので会・大分精神障害者就労推進ネットワーク
●講演「誰にでもわかる心の病気」
     誰もがなりえる「心の病気」
     周りの理解と支えの大切さをわかりやすく専門医師にお話しして頂く。
     精神障がいとは何か、どう理解しどのように受けとめればいいか、これからの地域福祉のあり方も含めてわかりやすく講演していただく。
●地域の報告「いま地域では」
  ―― 地域の関係者から現状と課題について報告する ――
 当事者・家族、福祉関係者、医療関係者から
●シンポジウム
 「ともに生きるために~地域とのつながりの中で(地域連携の重要性)~」
 みんなが安心して暮らしていけるまちにしていくために、講演と地域報告を受けて、地域でこれからどのように取り組んでいくか等について、参加のみんなで話し合う。
  ―― 事業所、支援機関、病院、企業、行政 等

2. 成果(アンケートの報告)

 フォーラム参加者全員に配布し、96人の方から回答をいただきました。フォーラム参加者数(約200人)に対して、回答された方の比率が高いように感じました。
 報告は、「全体集計」と「クロス集計」及び「記入分」にまとめました。
 「全体集計」では、①「よかった」「とてもよかった」の割合が高い、②「考えが変わった」という人が約6割、③いろんな方が参加し、特に民生委員・福祉委員の参加が多かった―ことなどがわかります。
 「クロス集計」では、①家族、福祉関係者、民生委員、行政等の方がほぼ全員「よかった」と受けとめている、②参加して考えが「変わった」という人が家族で8割、民生委員で約7割いる、③市報・ケーブルテレビで知って参加した人が、当事者、家族、その他、無回答の方に一定程度いた―ことなどがわかります。
 記入分では、「デイケアに行きたい」という当事者、「本人にかけてあげる言葉が見つからなくなる」という家族、「地域での支援の必要性を強く思った」という福祉関係者、「実際に患った方の実体験など聞く場を」という医療関係者、「地域の患者さんに関わっていて、少しでも話をして聞くしかできません。このようなフォーラムに出席して少しでも寄り添えるようになりたい」という民生委員、「ネットワークを構築し、漏れのない対応が必要。一人ではなく、チームで対応」という行政の方など、具体的な声が多く書かれていました。

3. 参加者の声(アンケート記入分より)

① 当事者(障がい者)
  当事者(障がい者)からは、「自分は作業所の人に偏見を持っていました。これから偏見を持たないようにしたい。」、「今回のようなフォーラムが継続してあるといいと思います。自分の役割についても考えていきたいなあと思います。(当事者・福祉関係)」、「地域の人々や職場の上司の理解と対応が重要と思います。」、「僕は身体障がい者ですが、障がいが軽いため、あまり障がい者と思われていないで、障がい者福祉サービス事業所に行っても、あまりまわりから相手にされていない。あまり行ってもおもしろくない。」等、障がい者施設等への意見等が聞けました。
② 家 族
  家族からは、「地域の人に理解してもらうにはどうしたらいいか……。自分の中に世間体を気にしている部分がある。」、「25年間同居していた義妹の統合失調症を知り、家族の自覚のなさにショックを受け、つらい思いをしました。が、少しずつ周囲に相談することで、いろんな支援をしていただき、負担もかなり減って感謝しています。地域の支援は本当に重要だと思います。」、「熊本先生の講演はよかったです。先生の温かい正直な人柄を感じました。精神疾患への偏見・誤解・無理解を地域連携の力で解決してほしい。他障がいと連携を行い、杵築市も障がい者・家族が暮らしやすい条例を作ってほしい。」、「本人が一番きつく、つらいということはわかっているつもりです。それでも時々、一緒に生活している中で、どう接してよいのかわからなくなってしまい、かけてあげる言葉が見つからなくなってしまいます。」等、家族の思い等が聞けました。
③ 福祉関係者
  福祉関係者からは、「精神障がいについて、いろいろ知れてよかったです。周りの人の協力や理解されることが大事だなと思いました。」、「地域での支援の必要性を強く思いました。お手伝いできることがあればいいのですが、窓口がわかりません。傾聴ボランティアの利用はいかがでしょうか。」、「誰にでも身近なテーマだとは思いますが、今日参加して重たいテーマを感じ、また実際の具体的な活動を知ることができてよかったです。専門的な支援機関の必要性を感じました。」、「デイケアに行っていろいろな人と話すことが大事ではないかと思いました。」、「まずは当事者が偏見をなくさないと、偏見はなくならない。どんどん地域に出て行き、見て感じていただけば、偏見をなくす近道ではなかろうか。」等、福祉職場の状況等がわかる意見が聞けました。
④ 医療関係者
  医療関係者からは、「精神疾患のある人に対する偏見は少なくなっているが、なくなってはいないと思います。また、熊本先生の話にもあったようにマスコミによる影響もあると思います。より偏見を少なくするには、市報などの利用(障がい者のスペースを作り、俳句や手工芸の写真を載せる等)、勉強会をして地域の方に対し精神障がいとはどういうものか、実際に患った方の実体験など聞くと、理解に少しでもつながるのではと思いました。」等の意見が聞けました。
⑤ 民生委員・福祉委員等
  民生委員・福祉委員等からは、「『家族の声』を知って、改めて当事者の大変さ、深刻さを考えさせられた。家族だけではどうにもならないとよく分かる。周囲の援助がぜひとも必要と思った。藤波会長のお話、思いが心に響きました。」、「地域の患者さんに関わっていて、専門的なことはわかりませんが少しでも話をして聞くしかできません。このようなフォーラムに出席して少しでも寄り添えるようになりたいと思います。」、「今日来てよかったと思いました。かつてわが家でも長男が登校拒否となり、精神異常をきたしたことがありましたが、家族の深い愛情のもとによくなり、現在社会人として嬉々として仕事に打ち込んでいます。杵築にもこんないい会ができて安心しました。」、「大変良い話を聞くことができました。今日出席してよかったです。私の知らない大変な人たちがいるんだなあと感じました。家族の中でこういう問題になった場合、どのようにしたらよいかわかったような気がします。」、「気持ちでは理解していても、心の奥には偏見があるように思う。できればかかわりたくない、また表面的にだけかかわるということがあると思う。」、「精神障がいのある人本人、または家族の気持ちを考えると言葉にならないくらい、大きな心痛を感じました。本人さんが、薬や地域、家族とのつながりがうまくでき、病状が安定しているときは、つながり見守り続けたい。症状があまり良くないときは、行政・相談窓口に、私は見守りながら、つなげていきたいと思います。(民生委員・児童委員)」、「日頃は精神障がい者と会う機会がないので、今回のフォーラムを多くしていただき、地域の人が相談窓口や知識を持っておく必要性を感じました。」等、地域の状況がわかる意見が聞けました。
⑥ 行 政
  行政職員からは、「『誰にもわかる精神障がい』講演がとても分かりやすかったです。『精神障がいって何?』と感じている人もすっと入ってきたのではないかなと感じています。今回のフォーラムを継続することが、精神障がいについての理解、支援につながっていくと思います。実行委員の皆様お疲れ様でした。」、「ネットワークを構築し、漏れのない対応が必要。一人ではなく、チームで対応。」等の意見が聞けました。
⑦ 企業関係者
  企業関係者からは、「子どもから高齢の方まで、それぞれの世代向けでもっと知る時間を市や町がつくっていって下さい。」、「熊本先生の講演を聞いて、精神障がい者と向き合う方法を学ぶことができた。」等の意見が聞けました。
⑧ その他
  その他の皆さんからは、「1. 一人ぼっちにさせない。2. 予備軍? 早期発見(そのために近所の人の声を拝聴する?)。3. 2.の「近所の声」に対して簡単に「近所の人の対応が悪い」という中で片づける民生委員は困る。4. 社会的地位の高いOBの言動にも関心を(いつまでも退職時の地位にこだわる人に)」、「できるだけ地域の人たちと話し合いを持ってボケ防止に努めています。」等の意見が聞けました。

4. 担当者の声(最終実行委員会より)

・開催期日・場所・時間等については、概ねよかった。
・駐車場係の1人が誘導灯を持ってきてくれて、あった方がいいと感じた。
 身障者スペースがなかったが、作った方がよかった。
・医師の話が聞けて自分としてもよかった。
・どのような支援場所があるか知ってもらえた。当事者・家族の思いを知れて、自分もよかった。
・どこに相談していいかわからない人が多い現状があると思うので、支援場所を紹介できてよかった。
・民生委員さんが理解してくれて、よかった。
・勉強になった。いろいろと考えさせられた。
 家族のコメントカードを読んだら、短い言葉にずしりと重いものがあるのを感じた。
 そのうちに、86歳の母親が「自分のいなくなったときに1人で生きていけるか不安」と書いていたのが印象に残った。
・医療・福祉関係者でも知らない精神障がいの実態があることを知った。知らない・気づかないということは、知らない間に人権を脅かしているかもしれない。気づきから行動を起こすことが大切。地域の人をどう巻き込んでいくかが課題。
・フォーラムは成功してよかったが、フォーラムがきっかけで相談に来た人はいない現実がある。でも、相談したいけど踏み出せない人や本人は求めていないが支援が必要な状態の人もいると思う。待ちの支援では難しいところを感じる。
 国東フォーラムでは、厚生文教委員会の議員さんを来賓で呼んだとのこと。もし次に実施することがあれば、議員さんを呼ぶと、取り組みを知ってもらえたり、理解してもらえるからよいのではないか。
・フォーラムを聞いた人で家族会に入りたいという方が1人あった。

5. 今後の取り組みについて

① 最終実行委員会での意見
 ・国東では旧市町ごとにフォーラムをしている。それもおもしろいかも。
 ・得られたものと課題をじっくり話して、今後の方向性を決めてはどうか。
  宇佐市は自立支援協議会の中で専門部会をつくって、いろいろな取り組みをしている。それも1つの方法かもしれない。
  宇佐は、4つの専門部会(地域生活支援ネット、相談支援ネット(相談支援員が中心)、就労支援ネット、療育・教育支援ネット)がある。その中で、移動支援サービスが薄い現状があるという話から、宝くじの売上金を財源とした「共生のまちづくり助成事業」を利用し、運転ボランティアを雇って移動サービスを充実させたりしている(社協が運営)。それを利用し、障害者の人たちで、真玉に夕日を見に行ったり、ぶどう狩りに行ったりもした。
  また、「共に生きるための宇佐市民ネット」を開催し、2012年度は500人の参加があった。
  さらに、ピアカウンセリング事業を行い、音楽教室や料理教室などをしている。
② まとめ
  今回のアンケートは、各職場で共有して、それぞれの立場でできることを考えてみることとした。今後の取り組みについては、また集まる場を設けて、それぞれの機関で考えたことを持ち寄ってから考えることとした。次回のフォーラム開催に向けて、活かしていくこととした。