【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第2分科会 地方税財政と公共サービス

 「平成の大合併」から10年を経過する団体が増加してくる中で、「合併算定替」の縮減・終了に伴う一般財源の減少が問題になっている。また、「合併特例債」という合併団体に非常に有利な起債メニューもあり、新市建設計画に基づいて事業執行がされている。「平成の大合併」がどのような影響をもたらしたかを考えていきたい。



合併・非合併から見える財政運営
―― 合併がもたらした影響を考える ――

新潟県本部/自治研推進委員会・第1小委員会(自治体財政分析)

1. 研究の概要

(1) ねらい
 合併算定替や合併特例債といった財政支援とセットで進められてきた「平成の大合併」であるが、合併算定替がまだ解消されていないこともあり、合併が財政運営にどう影響したのか十分総括されていない。そこで、新潟県内の類似団体として十日町市(合併)・小千谷市(非合併)を取り上げ、財政状況や財政運営方針等を調査し、合併・非合併による差異や特徴について検討する。

(2) 調査方法
 総務省ウェブサイトに掲載されている「決算カード」により財政指標の分析を行う。また、2市に対し、財政状況、財政運営方針(財政計画等)、既存施設の維持管理・整理統合方針などの照会を実施する。これらにより、2市の差異・特徴を見出していく。

2. 2市の概要

(1) 十日町市
① 合併に至る経緯
  2001年2月に新潟県が示した「新潟県市町村合併促進要綱」において、十日町市、川西町、津南町、中里村の1市3町村を「都市高度拡大型」の合併パターンとして、生活圏を重視したその他のパターンとして、十日町市、川西町、津南町、中里村、松代町、松之山町の1市5町村のパターンが提示された。その後、合併問題研究懇談会、任意合併協議会、法定合併協議会を経て、2005年4月1日に旧十日町市、川西町、中里村、松代町、松之山町の5市町村が新設合併して、新しい十日町市が誕生している。津南町は、2002年12月に実施した住民アンケート調査で、合併に否定的な回答が過半数を占めたことなどから、任意合併協議会への不参加を表明している。
② 新市建設計画
  合併任意協議会は、2003年2月に住民代表25人で構成される「新市将来構想検討委員会」を設置し、合併後の新しいまちづくりの方向性についての検討を依頼している。2003年9月には検討委員会の答申を受け、新市将来構想を決定している。さらに、合併任意協議会は、検討委員会に対し新市建設の具体的方策について検討を依頼し、2003年11月に新市建設計画(素案)として答申されている。
 新市建設計画は、5市町村の合併による新市の建設を総合的かつ効果的に推進することを目的とし、内容は、5市町村の総合計画を引き継ぐとともに、2003年9月に策定された新市将来構想の理念を継承している。計画の期間は、2005年度から2014年度までの10年間である。新市の将来像は、「雪・自然・農が織りなす温もりと躍動の大地(まち)」であり、基本目標は「地域に誇りと愛着をもつ創造性豊かなひとづくり」、「雪国文化や地域資源を活かした、活力ある産業づくり」、「緑豊かな自然環境や雪国の風土と調和した、快適な生活環境づくり」、「子どもからお年寄りまで安心・安全・元気に暮らせる社会づくり」、「人・自然・産業とふれあえる、もてなしの心で迎える体験交流づくり」、「公・民の協働と相互扶助の精神に基づいた、行財政運営のしくみづくり」の6つからなる。
 十日町市では、旧十日町市役所を本庁舎とし、旧町村役場を支所としている。そのほかに、中心市街地に分庁舎がある。庁舎建設については、合併後5年を目途に検討するとしていたが、耐震補強等の一部改修にとどまっている。

(2) 小千谷市
① 平成の大合併の経過
  2001年2月に新潟県が示した「新潟県市町村合併促進要綱」では、小千谷市は川口町(現在は長岡市)との1市1町のパターンとなった。これに基づき、川口町との情報交換会や勉強会などを重ねたが、川口町から合併は時期尚早との意思表示を受け、県のプランによる合併は見送りとなった。また、長岡地域合併協議会への参加も検討しましたが、市議会特別委員会において「現時点で長岡地域との合併は見送る」との報告がなされたことなどを勘案し、今回の合併特例期限(2005年3月31日)内における長岡地域との合併は見送られた。この結果、「当面は自立」として、小さいながらも魅力あふれるまちをめざしている。

十日町市と小千谷市の比較

項  目

十日町市

小千谷市

人 口(2014.2.28)

57,842人

37,988人

面 積

589.92km2

155.12km2

一般会計予算(2014年度当初)

33,232,000千円

17,890,000千円

特別会計ほか(2014年度当初)

21,258,420千円

15,584,846千円

職員数

(2013.4.1)546人

(2012.4.1)463人

3. 2市の特徴

(1) 普通建設事業の財源充当方法
 2010年度から2012年度までの3か年について、事業費が大きい3事業における2市の財源充当方法を比較すると、対照的な特徴をみることができる。
 特に2市とも継続的に行っている学校整備事業において、十日町市では積極的に合併特例債を充当し、小千谷市では学校教育施設整備事業債を主に充当している。合併特例債は、充当率95%、交付税算入率70%という地方負担が比較的低い優良債とされ、合併団体の多くが新市建設計画に整備計画を計上し、活用している。一方、学校教育施設事業整備事業債は適用条件により異なり、充当率75%~90%、交付税措置率30%~60%と合併特例債よりは地方負担が多いものの、非合併団体における学校施設整備に充当されることが多い。
 また、十日町市は、過疎地域でもあるため、過疎対策事業債をハード事業やソフト事業にも活用している。過疎対策事業債は、充当率100%、交付税措置率が70%と、合併特例債を上回る数少ない事業債であり、過疎計画に計上されているハード事業やソフト事業に充当される。特に通常、臨時財政対策債等の一部の例外起債を除いて充当事業としてはハード事業にしか認められないが、過疎債については、一定の範囲内でソフト事業にも充当できるため、活用している団体が多い。
 小千谷市においては、非合併団体であり、過疎地域でもないため、合併特例債や過疎債のような大幅に有利な起債充当ができないことから、国県支出金や一般的な起債充当以外の財源充当方法としては、基金繰入金が事業費の大きな割合を示していることが多い。また、2012年度の学校施設整備事業では、東日本大震災を受けて創設された緊急防災・減災事業債を充当している。緊急防災・減災事業債は100%充当、交付税措置率70%(単独)または80%(補助)であり、充当条件に制約があるものの、普通建設事業充当債としては非常に有利なものといえる。

起債事業の比較

事業債名

合併特例債

過疎対策事業債

学校施設
整備事業債

緊急防災・
減災事業債

充当率

95%

100%

75%~90%

100%

交付税措置率

70%

70%

50%・70%

70%(単独)・
80%(補助)

交付税措置率
(実質)

66.5%

70%

30%~60%

70%(単独)・
80%(補助)

充当団体

合併団体

過疎地域のみ

制限なし

制限なし

その他

新市建設計画に計上
合併後10年程度 (5・10年延長)

過疎計画に計上
ソフト事業充当可

適用施設により充当率・ 交付税措置率が異なる

補助は該当補助金が特定される

充当率…起債充当経費のうち、起債を充当できる割合
交付税措置率…地方債償還に係る元利償還金に対する普通交付税(基準財政需要額)への算入率

 

(2) 起債方針
 2市ともに起債充当率や交付税措置率(算入率)が高いものを中心に起債し、臨時財政対策債は発行可能額全額を借入することを基本方針としている。特に、十日町市は、合併特例債や過疎対策事業債を起債充当事業の中心としており、合併特例債の前提となる新市建設計画(10年間)をさらに6年間延長し、16年間の計画とする予定である。

(3) 合併算定替に伴う普通交付税交付額・臨時財政対策債発行可能額
 十日町市は、合併後10年間は合併旧団体ごとの算定の合計額により普通交付税交付額や臨時財政対策債発行可能額が算定される。新団体での算定(一本算定)と比べて普通交付税は約25%(約20~25億円)多く、臨時財政対策債発行可能額は約15%(約2~5億円)多く算定されている。その後の11年目から15年目には16年目からは新団体での算定(一本算定)となる経過措置(激変緩和措置)として合併算定替と一本算定との差額が段階的に縮小するようにして算定される。

(4) 施設の維持管理方針
 小千谷市は、2013年度からの3年間で公共施設の長寿命化、施設維持管理費の削減、施設(保育園)の統廃合により維持管理経費の削減を図る方針である。十日町市は、現段階では具体的な方針は策定していないが、予算編成時に個別判断している。2市とも2014年度から起債可能となった除却のための地方債は充当する予定はない。

4. まとめ

(1) 合併算定替の縮減・終了に伴う一般財源の減
 十日町市の場合、普通交付税交付額及び臨時財政対策債発行可能額の合計額は、合併算定替により一本算定よりも約25億円前後多く算定(=交付)されている。この額が5年間の経過措置を経て、一本算定になった場合、いずれも一般財源であることからそれぞれの減額分だけ一般財源が減少することを意味する。その額は十日町市の歳入一般財源(27,103,238千円/2011年度)の約10%であり、予算規模420億円の十日町市においても決して楽観できる金額ではない。
 また、合併特例債等の元利償還金は合併算定替終了後も継続して一定程度の水準を維持すると思われる。元利償還金自体は70%の交付税措置率であることから、普通交付税の交付額には元利償還金相当分は含まれているが、合併算定替の増加分がなくなることにより、一般財源から支払う元利償還金の比率が高まり、財政的に拘束されることも予測される。
 一般財源の減は、普通建設事業をはじめとする政策的経費の縮減よりも人件費をはじめとした義務的経費の縮減を迫られることが多く、すでに一部の合併団体では合併算定替の終了に伴う一般財源の減少を見据えた人件費の削減を進めている団体もある。
 合併算定替は、合併促進のための「アメ」という側面もあるものの、本来は10年から15年後に訪れる一本算定へ向けた「ソフトランディング」策と考えるべきではないだろうか。

(2) 合併特例債発行可能期間経過後の起債充当
 「合併後の市町村の一体性の速やかな確立」や「合併後の市町村の均衡ある発展に資するため」等、合併特例債の趣旨等は当然のことながらあるものの、合併団体の財政運営の現場においては、充当率が高く、交付税措置率が高いことから、「使い勝手のいい起債」という認識のほうがむしろ強いのが実態である。もちろん、県の起債ヒアリングでは、新市建設計画に基づいて合併特例債を充当するための「適債性」を満たした起債計画が提出されるわけではあるが、その後の財政運営や施設の維持管理経費等に問題が生じる事例も少なからず生じている。
 合併特例債発行可能期間(10年間~最長20年間)経過後は、合併特例債のように非常に有利な起債メニューを利用できなくなることから、通常の起債充当となる。合併特例債の発行が多額になったことによる地方債償還金額の増大等により、後年度の財政運営に支障が生じないようにすべきである。

(3) 既存施設の維持管理
 施設の建設には国県補助金、起債、基金繰入、一般財源により財源充当されることが一般的であるが、維持管理となると基金繰入や一般財源に限られる。施設の経年劣化に伴う大規模改修や維持管理費にも一般財源が充当されるが、合併算定替終了により一般財源が減少していく中で、旧団体が整備した施設や合併特例債等を充当して整備した施設の維持管理費も重い負担となり、財政的な柔軟性が失われる恐れが懸念される。
 また、合併算定替の終了による一般財源の減少のほかに、人口減少に伴う税収減等も問題が生じることが見込まれていることから、施設の維持管理については、早急に方針を策定し、一般財源の有効な充当に努めるようにすべきではないだろうか。

(4) 「一般財源」が減少する「現実」に対してすべきこと
 合併旧団体数が多く、その合併旧団体の多くが過疎地域の場合、合併算定替に伴う普通交付税交付額の嵩上げ率が高く、一本算定となった場合の影響(=一般財源の減少)が多大である。この「一般財源の減少」に対する『特効薬』はないものの、既存施設の廃止を含めた集約による維持管理経費の節約や国の特財事業の活用により、一般財源を有効活用できるようにすべきである。旧団体時代からの事業を精査し、「やめる決断」も必要である。つまり、「行政のプロ」として効果的な予算執行を考えていく必要がある。
 人件費は基本的に「一般財源」が充当されているため、臨時削減による人件費削減は市民受けすることから、経緯に関わらず議会も反対しないことが多く、各単組が日頃から「削減させない取り組み」が継続することが大切といえる。


5. 決算データ

十日町市

歳入
(千円)

歳出
(千円)

普通交付税
(千円)

臨時財政対策債
(千円)

財政調整基金
(千円)

実質公債費
比率(%)

財政力
指数

2005年度

44,015,301

42,145,656

11,166,703

1,056,065

582,790

21.7

0.36

2006年度

37,030,004

35,050,452

10,627,483

925,117

  787,203

19.6

0.39

2007年度

34,325,691

33,193,090

10,127,518

839,341

889,668

19.1

0.42

2008年度

33,022,933

31,269,295

10,740,468

786,172

892,251

16.4

0.43

2009年度

40,658,379

38,795,547

11,097,800

1,220,169

1,043,294

16.5

0.42

2010年度

39,304,729

37,479,132

11,805,672

1,783,906

1,559,419

16.4

0.40

2011年度

41,974,741

39,244,177

11,891,146

1,315,567

1,084,110

15.5

0.39

小千谷市

歳入
(千円)

歳出
(千円)

普通交付税
(千円)

臨時財政対策債
(千円)

財政調整基金
(千円)

実質公債費
比率(%)

財政力
指数

2005年度

26,539,214

24,327,069

3,608,177

469,100

3,067,224

16.4

0.55

2006年度

26,958,134

25,629,072

3,418,015

403,700

3,599,803

16.5

0.56

2007年度

17,384,579

16,785,142

3,003,995

366,300

3,886,113

15.0

0.58

2008年度

17,691,610

17,133,782

3,191,411

343,100

3,678,499

15.7

0.60

2009年度

22,353,886

21,824,838

3,619,790

532,500

3,858,902

15.8

0.59

2010年度

19,269,057

18,662,053

3,863,252

891,000

4,046,602

14.3

0.56

2011年度

18,677,170

18,131,959

3,867,645

742,300

4,290,957

13.0

0.54