【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第3分科会 人口減少にともなう自治体・地域のあり方

知夫村の施策と課題


島根県本部/知夫村職員組合 崎  慎吾

1. 知夫村の概要と現状

 知夫村(島名:知夫里島)は、島根県隠岐諸島最南端に位置し、松江市美保関町の七類港から約44kmと本土に最も近いある一島一村の村で、面積は13.69㎡、人口は596人(2013年7月1日現在)の小さな島である。近年の市町村合併によって、知夫村は合併することなく単独を選び、町村制が施行されて以来、一度も合併していない。また、本土や島後の町村は吸収や新設によって合併され、本村は県内で唯一の村となり、人口も面積も県内最小の自治体となった。
 主な産業は、漁業や畜産業といった第1次産業が大半を占めているが、少子高齢化に伴い、後継者が不足している現状で、この5年間で人口が77人減、高齢化率が4.29%増となった(下図参照)。

<知夫村の過去5年間の人口と高齢化率の推移>
  2009 2010 2011 2012 2013
人口 663人 640人 632人 602人 586人
高齢化率 44.34% 45.15% 44.94% 46.01% 48.63%
※ 人口、高齢化率は各年4月1日現在。

2. 新村長の就任

 2012年11月に前村長の任期満了に伴い、新しい村長が就任した。前村長は民間企業の出身で、行政の仕事にはわからないところがあったため、副村長を置かない条例を廃止して、当時の総務課長が副村長に就任した。新村長は、元役場職員で行政のことは精通しており、この現状を把握して就任した。ただ、福祉や保健衛生のことについては、わからないところがあるため、新副村長に当時の村民福祉課長が就任した。
 就任のあいさつで「知夫村を健康で和やかな島、そして活力ある島にするために①知夫の高齢者が最後まで知夫に過ごせる環境づくり、②村民が健康で長生きするよう、手軽に運動や話し合いが出来る環境づくり、③道路や港湾、漁港設備など村民の生活環境の整備、④稚貝・稚魚の成育環境の整備等による水産振興施策、⑤放牧環境整備等による畜産振興施策、⑥定住施策推進、観光交流人口拡大を行うので職員が一丸となって、これらの施策に取り組んでいけるよう協力をお願いする。」と方針を語った。

3. 新村長の施策と問題点

 新村長としてまず始めに取り組んだことは、結婚相談所の開設である。年々少子高齢化が進んでおり、65歳以上の高齢化率はあと数年で50%になる見込みである。それを食い止めるために、未婚の男女、離婚経験ありや子持ちなどの男女に見合いや合コンなどを職員や村民有志が世話焼きをして、幸せなカップルが誕生するよう出会いの場を提供するものである。
 たしかに行政が結婚相談所に取り組むのは珍しいことであり、結婚された方には結婚祝い金100万円が支給されることで、一人でも多くの方の縁結びに全力で尽力するという取り組みである。2年前に村民が主体となって「知夫里島活性化協議会」が設立され、この中に「島の青年層の交流の場をつくり、婚活サポーターを育成する。」と村の施策に似たような事業があり、ここでは、街コンや結婚式場主催のコンパなどに参加すると協議会から旅費と参加費を助成する内容で、昨年度は13人が参加した。また、今年度はセミナーを開催して、初対面の方との接し方や第一印象をよくするためのポイントを学ぶなど、積極的にいろんなイベントを協議会は計画している。ただ主催がほとんど活性化協議会で、いかにも行政から活性化協議会へ丸投げをしており、行政主催のイベントも必要ではないかと思える。
 次の施策として生きがいづくりである。少子高齢化が加速して進む村にとって、人口減少に歯止めをかけるべきことは、各種定住施策を積極的に仕掛けていくことである。さきほど記した結婚相談所もその一つだが、しかし、その前にまず、今住んでいる村民が健康で明るい生活を送っていかなければ、村外から人を呼んできても定着することは到底望めない。そこで、今年度から各地区の集会所で婦人の方を中心としたボランティア協力のもと、特に手足や腰が痛い等で普段あまり出かけない方々に声をかけて、軽い運動やストレッチ、簡単なゲームにお茶会などを楽しみながら健康づくりと情報交換の場をつくるというもので、村内に7つある地区にそれぞれ年15万円を助成した。ある地区は、その地区に住む人たちの交流を深めようということで村で一番高い赤ハゲ山に遠足(バス移動)を行い、弁当代やお茶代などをこの経費に充てるなどを行っている。ただこれにも問題点があり、これがいつまで続くのか、助成金が年々減少するのではないかなど多くの不安もある。
 最後に、一般職員との意見交換である。以前から毎月各課の課長会を実施して、各課の施策や要望を共有しているが、新村長から、毎月課長以外の一般職員との意見交換を実施している。これを実施することで、各課の施策や要望を共有し職員との距離を縮めることができる。その一つが、職員の身だしなみであった。服装がバラバラで名札を付けておらず、村民や外部からは、あの人は公務員なのかといわれたこともあり、服装の統一、名札を付けることで、身だしなみを良くした。しかし、この意見交換をすることでたしかに仕事や生活環境が変わっていくが、ただ職員組合としてはあまりうれしいことではない。職員が困っていることを当局に協議することで仕事や生活環境を良くすることを目的としている職員組合をつぶそうとしているのでないか。職員から直接意見を聞いているので村長はそれを狙っているのではないかと思われる。また、意見交換の場が午後からであり、全員がその会議に出席すると仕事に支障が出るので、できれば夕方に実施してもらいたいと思う。
 村長の主な施策としてはこの3点であるが、まだまだ一部分であり、これとは別に様々な施策をする予定である。

4. 最後に

 村長に就任してまだ8か月しか経っていない。就任前からいろんな施策を練ってきたかのように思えるが、それらが長続きできるよう、また次期村長にも引き継げるような施策を展開してもらいたい。過去の村長をみていると1期(4年)でしか就任していない。誰が就任しても1期では施策の基礎部分しかできないと思うので、1期での土台から2期以降のいわゆる本工事に取りかかり、一軒の家を作るかのように知夫村の進むべき施策をしていただきたいと望む。しかし、周りに迷惑をかけないような施策(例えば、財政面や人材面など)を作っていただきたい。