【論文】

第35回佐賀自治研集会
第3分科会 人口減少にともなう自治体・地域のあり方

 全国的な大幅な人口減少時代を迎え、多くの自治体の都市計画マスタープラン(以下、「都市MP」)は「右肩上がり」から「右肩下がり」へ方針転換を余儀なくされている。しかし人口減少下の計画の手法や理論が構築されていない。本稿は、このことについて当市の経験から人口減少下の都市MP策定の手法を考察するものである。



小規模地方都市における計画行政の課題と展望
~宮崎県日南市における急速な人口減少時代への
都市計画からのアプロ-チ~

宮崎県本部/日南市役所職員労働組合・日南市建設課・技師 石那田善久

図1 現況の計画体系モデル図
図2 めざすべき計画体系モデル
   図(日南市型)

1. はじめに

 宮崎県日南市は、2009年3月に(旧)日南市、北郷町、南郷町の1市2町の合併により、新たな日南市として誕生した。新市発足に伴って当市では、総合計画を2010年3月に策定した。都市MPは、総合計画策定に平行して2009年度後期から着手し、2014年3月に完成している。
 さて、地方自治体の計画行政は、図1に示すように、総合計画を最上位計画とし、それに基づいて、都市MPなどのような分野毎の長期計画が策定され、各分野の様々な実施計画は、それら上位計画にリンクする構成になっていることが一般的と推察する。
 ただし、当市のような小規模な自治体では今後、急速に進む人口減少問題や、それに伴う財政規模の縮小から、極めて厳しい予算執行が求められており、コスト削減のためにも事業の体系化(横串化・連係化・集約)が求められている。一方、上述の総合計画や都市MP等では、計画の性質上、行政全体や分野全体を網羅的に取り扱うことが多く事業の体系化や事業選別までを記載することは通常は難しい。
 このことを補うためには、図2のように、まちづくりの基本計画となる「都市(まち)づくり計画」が必要になると考える。ただし、複数の計画の策定については、別途費用や時間が必要になることから、当市では、この都市(まち)づくり計画を都市MPの中に集約することを試みた。
 本稿は、以上のような認識に立ち、当市の都市MP策定の経験から計画策定に伴う小規模自治体の現状や課題を考察したい。


2. 当市の組織体系と事業の効率化

 当市の人口は、合併後5年を経過した2014年4月1日現在、56,829人(住民基本台帳登録人口)である。また、市職員は705人であり、うち一般行政職員は483人である。
 平成の大合併以降、自治体の大きな課題として、時代の変化とニーズに十分な対応をしていない組織構成と過大な職員数の問題がよく指摘されている。当市では、新規職員の採用抑制による人員削減や大課制による組織の統廃合に取り組み、合併当初の4部1局45課5事務局2室6分室1署を28課3事務局2支所2分室1署とし、5年間で約60人の職員を削減し、5年間の総人件費で約10億円を削減したとしている。
 ただし、こうした組織の統廃合は、事業の効率化に貢献しているのであろうか。本来、事業の効率化にあたっては、職場の統廃合による人員削減を行うことや事業規模等で職員数を割り当てることだけでなく、各自治体が抱える課題をもとに各種事業を体系化し、効率的に職員を配置することが優先されるべきであろう。
 効果的・効率的な予算執行や計画策定のために必要なことは、各自治体がおかれている状況を徹底的に分析し、行政の課題を把握することであり、総合計画や都市MPなどの長期計画の策定時は、この分析と行政課題把握の格好の機会である。


3. 当市が置かれた現況の整理

 当市は、宮崎県南東部に位置し、北は宮崎市、南は串間市、西は都城市、三股町に隣接し、面積約536km2の広域な市域を持つ都市である。ただしその多くは、急峻な山岳地で、水稲や柑橘類などの農用地を除くと、都市計画区域は、わずか約50km2程度(市域の約9%)しかない。
 歴史的には、当市の地域は古くから「飫肥」と呼ばれ、平安時代の「倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」に宮崎郡飫肥郷として初出している。中世には、「飫肥」の油津港や外浦港は、南九州を代表する港となり、琉球を通じた東アジア全体との交易で栄えた。また、明治後期から昭和にかけては、造船材として有名な「飫肥杉」の取引、東洋一の水揚げ高を誇るマグロ漁業の繁栄により、当市は南宮崎の商業都市として発展を遂げてきた。
 しかし、昨今の全国的な少子高齢化などによる人口減少問題は、当市も例外ではない。社会保障・人口問題研究所(以下、「社人研」)によると、今後、当市の人口減少は全国平均を大きく上回る速度で進み、平成22年国勢調査の確定人口約5万8千人が、20年後には約4万5千人程度となり、約22%程度の人口が減少すると予測されている。
 この推計結果について、地図情報システム(以下、「GIS」)を活用し、図化したものを図3、4に示す。両図から、平成42年には人口が比較的密集する都市計画区域内でも65歳が過半数を超える地域が発生することがわかる。また、山間部では、集落の消滅が危惧される。

図3 H22年度 年齢別(3階層)
   人口分布図人口 約58,000人
図4 H42年度 年齢別(3階層)
   人口分布図人口 約45,000人

凡例(共通)


※ 上記図3、4は、本市の管内図の中に都市計画図(1/2,500)等の図面を重ねているものであり、ここに記載されている建物1件毎に円を囲み、この円に着色しているものである。
  円の大きさ(人口) 平成22年度:一律の半径で記載
            平成42年度:平成22年度の縮減率により半径を縮小
  集計単位(CMS) センサス・マッピング・システム(国勢調査の基本単位区)

 また大幅な人口減少は当然ながら市財政規模の縮小にもつながる。平成42年の推計人口約4万5千人は、合併前(H17)の旧日南市の人口と、ほぼ同等である。財政規模も同等になると仮定すれば、図5のとおり、約272.4億円から約172.2億円程度まで縮小する必要があると想定される。建設費についても、35.6億円から23.5億円まで縮小することが予測される。これは、合併前の1市の予算規模で、旧1市2町のエリアを手当てしなければならないことを意味する。
 補足ながら、高齢化率については、30%から41.5%まで増加することが予測されており、医療費や福祉関係に充てる費用の増加も予測される。したがって今後は、あらゆる分野の事業において事業の選別や縮小を行うことが避けられなくなろう。

図5 財政予測

 ところで、当市の状況としてもう一つ考慮しておくべき事項が高速道路整備である。
 本県の高速ネット網は整備途上であり、当市はその中でも整備が遅れている。現在、清武南IC(宮崎市)~日南IC間については、平成29年度に一部開通の見通しであるが、宮崎市までの全線開通と当市以南の事業化は、整備年次未定のままである。
 高速道路は、地方経済に直接影響を与える都市施設であることに鑑み、九州内での当市の状況を把握するために、九州内の高速道路整備の進捗状況の分析を行った結果を図6、7に示す。両図は、社人研発表の人口推計図を基図として高速道路の整備予測図を作成したものである。なお、整備予定データについては、平成22年度に公表されているものを使用している。

図6 平成22年度現在の進捗状況
図7 平成42年度の進捗状況
   (H22年度に想定)
図面凡例(共通)

※ 図6、7は、国立社会保障・人口問題研究所発表による人口推計を基図に使用している。
  図7の高規格道路等の進捗状況は、平成22年度に収得したデータから想定したものである。

 福岡市などを除く九州内の多くの自治体は人口減少の予測がなされているが、これらの自治体の中でも当市の推計人口減少幅は大きくなっていることがわかる。高速道路等についてみれば、最終的には九州全域、中九州、南九州で、高規格道路のループが形成される予定であるが、当市の場合、市以南の整備計画の見通しがついておらず、整備途中の段階において当市が高規格道路のループの外に置かれる期間が存在する。すなわち段階的には、他の地域に比較して流通網の利便性が相対的に不利になる期間が存在する。
 当市も当然、高速道路の整備による恩恵を受けることは事実であるが、他市は、より早くから高速道路網に組み込まれ、当市との利便性格差は逆に大きくなる可能性がある。
 これは、社人研の推計よりも早く人口減少が進む可能性につながりかねない。もしそのようになった場合には、より一層の予算規模の縮小が見込まれ、前述図5の旧日南市以下の予算で旧1市2町のエリアの手当をすることになる。


4. 当市での都市計画と都市(まち)づくり計画~人口減少社会と計画業務~

 当市で「都市(まち)づくり計画」を念頭においた理由は、総合的まちづくりが必要であるからである。総合的まちづくりの必要性を、公共交通を例にとり説明する。
 当市の基本的な公共交通は、JR、宮崎交通及びコミュニティバスである。当然のことながら、利用者は少なく公共交通は赤字であり、赤字路線への費用補填が必要である。今後一層の人口減少が進行すれば、JRなどの民間事業者はもとより、コミュニティバスすらも成立しない可能性もある。一方で、今後高齢化が進行する中で公共交通の確保は必須である。

 この公共交通の問題への対処にはまず、以下の事項を検討し明確化する必要がある。

① 公共交通の維持は可能か否か。
  (いつまで[時]、どこまで[場所])
② 公共交通の維持が不可能な場合、代替手段はあるか否か。
  (いつから[時]、どこで[場所]、だれを[人]、何を[手段])
③ 郊外に住む市民を市街地へ誘導する施策へ発展。
  (いつから[時]、どこへ[場所]、だれを[人])

 上記の①の段階では、通常の公共交通への赤字補填の事業であることから、公共交通に対応する部署のみが対応していることが一般的であろう。
 ②の段階になれば、利用者が高齢者であれば福祉関係の部署が対応し、子どもであれば、学校関係の部署も対応することになり、それぞれ福祉バスやスクールバスが検討されることになる。現行法では、スクールバスにも一般客を乗せることができる「一般混乗バス」の運行が可能となっているものの、コストの削減や利便性の確保のためには、スクールバス以外にも福祉バスの利用もできないかなど、これらの事業を一つの事業として集約できる方法等も検討する必要がある。この場合は、交通、福祉、学校の部署が連携する必要があろう。
 ③については、公共交通へ充てられる予算が縮小し利用者が減少する中では、上記の①②の限界も視野に置く必要がある。すなわち、いずれは市街地外に住む住民に対して、市街地部の質を向上し、住民はライフステージに応じた機会に、市街地部に住居を移すことが選択肢になるようにすることが必要になろう。そしてこの時期と場所を明確にしておく必要がある。当然このことは、都市(まち)づくり全般に係ることであるから、庁内横断的な対応が必要となる。
図8 持続可能な都市像モデル図
 すなわち、人口減少という物理的問題は、時間の進行とともに、市街地部の空洞化や市内全域に薄く広がる住居エリアなどの物理的問題につながる。
 そして、このことは、公共交通の問題をはじめとして、将来的には都市施設の建設や維持のための事業費用や福祉などの直接市民生活に係る事業費用にも影響を及ぼすものである。
 したがってこれらの検討には、時間的スケールと予算スケールを考慮する必要があり、都市計画を踏まえた明確な都市像を持って、上記の①~③を、数値的シミュレーションで検討する必要がある。つまり、人口規模に適正な都市像を定め、人口減少の進捗に合ったその時々での実施可能な事業を、庁内部署毎に予測しておくことが必要である。


5. 当市の都市MP策定における基礎的情報の収集と整理

 冒頭で述べたように、総合計画は、行政の内容を網羅的に取り扱う性質上、抽象的な文書表現に留まるのが一般的である。都市MPについても、都市計画区域内の土地利用方針や都市施設整備方針について言及するものが一般的であり、各分野の各種事業を体系化するための基礎計画書にはなり難いことが多い。
 当市では、合併1年後には総合計画が策定されていたことから、基礎計画書の機能を都市MPに持たせることをめざした。つまり都市(まち)づくり計画を考慮した都市MPの策定を目標とした。
 これを実現するためには、全庁体制で都市MPを策定しなければならず、また、全ての部署がその所掌事務に応じて使用できる都市MPである必要がある。このようなことから、客観的かつ数値的根拠を持たせることが重要になるため、地理情報データベース(GIS)を構築することとした。
 また「まちづくり」としての機能を持たせることから、当然市民意見の反映が重要であるため「市民意見交換会」の手法にも留意した。

・地理情報データベースによる統計データの一元管理について
 数値的根拠などを明確にすることから地図情報システムを利用し、地理情報はもとより、人口、交通、商業、工業、観光など様々な統計情報を、統一した地図の上に被せ、一元管理できるようにした。なお、本稿で使用している図3、46、7についてもこのGISデータで作成したものである。
 統計情報と地理情報を併せてGISとして活用することには、以下の利点がある。

① 様々な事案を視覚的に捉えることができるため、市民などへの説明材料となりやすい。
② 統計などの数字的根拠をもつことにより、データの更新が可能となる。
  このことから、計画の適正な部分改正が可能となる。また、全面改訂の必要性がなくなる。
③ 商業統計などの公開されたデータを使用することにより、庁内の各部署が利用できる。
④ 庁内の各部署が、同一の土俵上で議論をすることが可能となることから、行政としての方向性を統一できる。

・市民意見交換会の手法について
図9 地区割図
 都市(まち)づくり計画には、まちづくりの観点から市民ニ-ズや市民意見を反映することが重要である。さらに、市民に、自治体の置かれている現状を正確に伝えることも非常に大切である。
 都市MP策定のプロセスにおいては、意見交換会を市内9つの地区ごとに実施した。この9つの地区は現在の中学校区であるが、これは平成・昭和の合併以前の行政区域(旧町村)に対応するものである。

 意見交換会の進め方については、様々な分野に渡る要望の場に終始することがなく、より積極的かつ提案的な意見を収集するために、討議内容を予め設定し、さらに住民が数班の班に分かれるグループワーキング形式で実施した。
 意見交換会は各地区で3回ずつ実施した。その内容は、

1回目:① 統計などから推測する20年後の当市の状況についての説明
    ② 現在、将来について不安に思うことについてグループで討議
2回目:前回の不安を取り除く方法についてグループで討議
3回目:事務局からの提案を説明

である。各地区3回、計27回で延べ505人の意見交換会を得ることができた。
 最終的には、各地区100~150程度の意見があり、総計で1,200程度の意見を集約することができた。参考までに、地区割図(図9)とこれらの意見を分野毎に分類し地区毎に集計したグラフ(図10)に示す。改めてグラフ(図10)をみると、意見交換会で収集した意見は都市計画だけでは対応できないものが多いことが見て取れることからも、一般的な都市MPではなく、「都市(まち)づくり計画」の必要性が再認識できる。

図10 地区毎の集計結果

6. 当市の都市MPの概要

 これらの作業を経て策定された当市の都市MPについて説明したい。
 上述のとおり、今後予測される厳しい状況を市民へ説明し、その後の市民意見交換会で導き出された結果は、下記の点であった。

① ある一定の範囲にみんなで集まって生活をするしかない。【拠点】
② しかし極力自分たちが生まれ育った所に長く住みたい。【分散】
③ 財政的に余裕がないことから新たな施設整備は不可能であり、居住地から一定の拠点・施設に移動して所用を達成する。【ネットワーク】

 人が一定の範囲に集まって生活圏を構成することは「コンパクトシティ」の考え方に近い。市街地密集度の高い比較的大きな地方都市や行政面積の小さな自治体では、1箇所に集まるコンパクトシティが構築できることも考え得る。
 しかし当市の場合、広域な行政面積を持ち市街地密集度が低く、かつその市街地が数箇所に分散していることから1箇所に集まるコンパクトシティの構築は困難である。すなわち、複数拠点が必要である。この点に関し、市民の意見は、予算の縮小が見込まれる中で同種類の施設を各拠点に設けることは不可能であることから、全拠点に一様に施設整備を行うのではなく、拠点の特徴分けをするとともに、自分たちの居住地から各拠点への公共交通が重要というものであった。
 このようなことから、「拠点分散ネットワーク型」という日南型のコンパクトシティを、市民意見の支持を得たものとして目標に掲げたものである。
 都市MPでは最終的に、地域生活拠点(7箇所)と集落生活拠点(6箇所)2種類を設定した。また、地域生活拠点の内、2拠点を合わせて1つのコアゾーンとして設定した。
 ここで生活拠点とは、現況においてJRの駅がありかつ宮崎交通やコミュニティバスが連結しており、公共交通が確保されているエリアである。またこれらのエリアは、平成、昭和時代の合併以前の町村の中心となっている所であることから、他の地域と比較すれば公共施設や社会基盤施設及び店舗などの民間施設などが充実しているため、通常の日常生活を行うには十分なエリアである。
 次に集落生活拠点とは、地域生活拠点と比較すれば社会基盤施設など整備はされていない、また店舗などの民間施設も不十分であるが、一定規模の集落を形成しコミュニティバスなどの公共交通を確保しているエリアである。
 コアゾーンは市役所や県立病院などの公共施設や店舗、銀行などの民間施設を含め全ての都市機能が揃ったところであり、将来的にも市民生活を完結するためには、民間施設の撤退も無いように、都市(まち)全体の人口減少が進む中でも一定の人口密度を確保する必要があるエリアである。
 以上のように、コンパクトシティである拠点についてはコアゾーン、地域生活拠点、集落生活拠点の3階層を設定している。つまり都市構造としては、既存の市街地部や集落部をそのまま活用することを念頭においている。このことは、既存の市街地部などをそのまま拠点として活用することにより社会基盤施設などに対する投資を最小限に抑えることができる。
 ただし、これらの拠点については、現況において一様な整備状況下にないため住民は生活目的に応じて拠点への移動が必要となり、このため公共交通でネットワークを構築する必要がある。すなわち複数拠点を一様に整備するのではなく公共交通を確保することで、トータルコストを抑えるものである。ここでは都市構造と公共交通の関係を紹介したが、このように、都市構造を踏まえて様々な分野の事業を体系化することを都市(まち)づくり計画の柱とするものである。
 なお、当市の都市MPの策定に当たっては庁内横断的に策定を進めたことから、市民意見交換会で収集した意見の中で都市MPに取り上げることが出来なかったものについてもまちづくりとして重要な意見については、関係する部署で一つの回答を作成し市民へ周知を行った。
 今後は、今回策定した都市MPを都市(まち)づくりの基本計画とし、1章の図2のピラミッド3段目の部署毎の実施計画がリンクされることになる。
 参考として、上記の公共交通の事例について当市の都市MPでは、市民ニーズに対応したダイヤや路線などについては社会実験を踏まえて検討する必要があることを都市(まち)づくり基本計画として謳っている。したがってこれ以降は、公共交通を担当する部署がこの計画の方針に基づき、社会実験や実施計画策定などを実施することになる。
 このようなことから、都市づくりの基本計画を都市MPの中へ集約することができたといえる。


7. 都市MP策定の展望

 これまで述べてきたように当市では大幅な人口減少を受け入れた都市MP、つまり都市(まち)づくり計画を策定した。今後、多くの自治体が人口減少下の都市MPに対応する時が来るが一方でこの人口減少下の都市MP策定の手法と理論は構築されていない。このことを踏まえ、ここでは当市の都市MP策定の経験の基に考察したい。
 これまでの都市MPの策定手法については、人口増加や個人所得増加などの右肩上がりの状況下であることから、多くの自治体は「これ位の人口規模の都市になりたい」や「これ位の企業等を誘致したい」などの希望的観測のもとに策定されていることが多いと推察する。つまり都市規模拡大前提の計画である。
 しかし現実的な人口減少下では予算規模の縮小が避けられないことから、コスト削減の観点からも数値的根拠をもって適正規模を考慮した都市MPが必要となる。このことから様々な統計データや地図情報などを一元管理したGISデータを活用する必要がある。
 またこの人口減少下で10年、20年といった長期を見据えることは、実は極めて困難なことである。したがって計画策定後も社会情勢を監視する必要があり、予測される事態から大幅な相違が発生する場合は、計画の見なおしも必要となる。このようなことからも更新される統計データを利用する必要があり、GISデータを活用することが有益である。
 次に都市MPは市民生活に直接影響を及ぼすことから市民のニーズや意見を反映することが重要である。また策定に当たっては、自治体の状況を正確に包み隠さず市民に伝える必要がある。これらのことからグループワーキング形式などの市民参加型の意見交換会を企画する必要もある。
 都市構造については、都市拡大を前提としてつくられた都市施設などは、近い将来に適正規模から判断すると不要になる可能性が高い。したがって人口減少下の様々な計画は「拡大と成長」を前提としたものから「成熟と持続性」を重視したものへ転換することが必要である。この結果、都市構造としては既存の市街地部の社会基盤施設などを利用することを念頭に置き、いわゆるコンパクトシティを構築する必要がある。結果としてコスト削減に繋がり、持続可能な都市を形成することができよう。
 以上に加え、都市MP策定にあたって最も重要なことは都市(まち)づくり計画という概念を持つことである。つまり、自治体の各部署が同一のベクトルに向かうことのできる計画策定を行う必要が有り、庁内横断的に対応することである。


8. 終わりに

 これからの人口減少時代を迎えた小規模な自治体は、建設費をはじめとしてあらゆる分野の予算縮小がさけられないことから、様々な分野毎の事業を集約する必要があることは、各方面で指摘されている。このためには、行政は俗に言われる「縦割り行政の弊害」を極力減少させることが必要であり、一つのベクトルに向かった計画行政が機能することが大切である。
 例えれば、人の体では心臓が鼓動しなければ血液を循環させることはできない。計画行政は自治体の最も重要な心臓部であり、計画は血液である。つまり計画行政が機能しなければ良好な計画が策定されず、効率的な予算執行につながらないといえる。