【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第4分科会 地域から考える再生可能エネルギーによるまちづくり

 今日、社会情勢の変化への対応から、様々な社会システム等の見直しが進められています。そこで、本レポートでは、環境モデル都市に選定され、低炭素社会の実現をめざす豊田市の取り組みとその社会の実現に向けた市民等への訴求、行動変革に促進するための取り組みから、今後、行政や社会がめざす仕組み等への波及・展開に向けた手法・視点について提言します。



ミライのフツーをめざして
―― 「無理なく」、「無駄なく」、「快適な」低炭素社会の実現 ――

愛知県本部/豊田市職員労働組合 疋田 一男・岡田 好史

1. はじめに

豊田市の部門別CO排出割合

 豊田市は、愛知県の中央部に位置する人口42万人の中核市であり、面積は愛知県の2割(918km2)を占め、トヨタ自動車株式会社の本社が立地するなど、自動車産業を始めとした産業都市です。
 その一方で、2005年には周辺6町村と合併し、市域の70%を森林が占める、都市と農山村の性格を併せ持つ都市となりました。
 合併を繰り返して市域を拡大してきた分散型の都市構造である豊田市では、経済活動や市民生活の移動手段として自動車を選ぶ人の割合が高く、運輸部門に占める二酸化炭素の排出量が他の自治体と比べて多くなっています。
 また、活発なものづくり産業を背景に、工場など産業部門から排出される二酸化炭素も排出量全体の6割を占めています。
 こうした中、豊田市は「人が輝き 環境にやさしく 躍進するまち・とよた」を将来都市像に掲げる「第7次豊田市総合計画」を背景に、2009年に国から『環境モデル都市』に選定されたことを皮切りに、誰もが「無理なく」、「無駄なく」、「快適に」低炭素な暮らしができ、活発な産業活動が展開される都市をめざし、先進的な取り組みにチャレンジしています。
 一方で、こうした先進的な取り組みを市民が容易に理解することは難しく、市民が日常の生活で実践していくよう行動変革を進めることが課題といえます。
 そこで、本レポートでは、豊田市の先進的な取り組みを整理するとともに、市民等への波及に向けた取り組みを踏まえ、市民生活への訴求に向けた取り組みの視点を提言します。

2. 取り組みの概要

(1) 環境モデル都市
 環境モデル都市に選定された豊田市では、アクションプランを策定し、1990年比でCOの排出目標として中期(2030年)には30%削減、長期(2050年)には50%削減を掲げ、様々な取り組みを展開しています。
 その視点は、豊田市での強みでもある「交通」、「産業」、「森林」の3分野に市民の暮らしにおける取り組みの「民生」、そして重点的にこれらの取り組みを展開する「都心」を加えた5分野で、重点的な取り組みを展開しています。
 各分野の取り組みの概要は、次のとおりです。
① 交 通
  交通分野では、市民の移動手段として自動車が大きな役割を担う中、環境負荷の軽減をめざし、過度に自動車に頼りすぎず、誰もが安全・安心に移動できる公共交通ネットワークの整備や公共交通の「駅」と最終目的地とを超小型電気自動車(EV)で結ぶカーシェアリングサービス『Ha:mo RIDE(ハーモライド)』などのインフラ整備を始め、PHV(プラグインハイブリッド車)やEV(電気自動車)の普及支援を進めています。
② 産 業
  産業分野では、市内事業所への環境経営の推進や省エネ診断による効果の見える化、改善策の実施支援を行い、サスティナブル・プラントへの移行を促進するとともに、環境・エネルギー分野での新たな事業展開をめざす中小企業を支援する『環境ビジネス研究会』を実施するなど、企業の「環境貢献」と「事業発展」の両立をめざした取り組みを支援しています。
  また、再生可能エネルギーの普及促進に向け、創造特区の金融支援(利子補給)等の活用や発電設備への減税などの取り組みを実施しています。
③ 森 林
  豊田市は市域の約70%を森林が占めています。また、その森林の約50%(約30,000ha)がスギやヒノキから成る人工林で、このうちの2/3が過密人工林と推定されています。
  そこで森林分野では、「100年の森づくり構想」を掲げ、森林のCO吸収量の最大化を図り、あわせて森の涵養機能を高め、災害に強く、活発な都市活動を支える資源と捉え、適切な間伐の推進と木材の需要拡大を図っています。
  公共施設における木材利用の推進を始め、森林所有者等で組織する『森づくり会議』による地域一体となった間伐を進めています。
④ 民 生
  民生部門では、都市のインフラとしての再生可能エネルギーの導入促進を図り、地域企業による売電ビジネスの振興を進めるとともに、スマートハウスの普及による家庭・地域レベルでのエネルギー利用の最適化、災害時における市民の安全・安心、環境関連機器関連企業の振興を進めています。
  また、上記の取り組みと連動して、市民のエコ配慮行動に対し、ポイントを発行、貯めたポイントでエコ商品などと交換できる「とよたエコポイント」制度により、市民の環境配慮行動を促進しています。
⑤ 都 心
  都心分野では、『緑化地域』の指定や次世代パーソナルモビリティの運用実証、駅前通り北地区市街地再開発事業など先駆的かつ重点的な取り組みを展開し、未来の暮らしの効果的な展開を図るほか、『低炭素社会モデル地区(とよたエコフルタウン)』の整備など国内外からの来訪者に対し情報発信を進めています。

(2) 豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト
 2010年からは、「交通」と「民生」分野の取り組みを加速するため、トヨタ自動車株式会社を始めとする地域の企業・団体とともに、『次世代エネルギー・社会システム実証』を展開し、スマートコミュニティの構築をめざした取り組みを開始しています。
 本取り組みでは、生活者の一日の行動に沿って、暮らしの核となる「家庭内」から「移動」、「移動先」さらにはそれらを統合した「生活圏全体」を捉えて、社会全体でのエネルギー利用の最適化をめざしています。
 現在までに、「東山・高橋地区」において、実際の住宅地での実証実験を行い、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)やEDMS(エネルギーデータマネジメントシステム)等によるエネルギー利用の見える化、エコ行動への喚起、各環境機器によるCO排出量効果等を実施するなど、次世代の暮らしを実現し、かつ国内外で普及するシステム構築に向けた取り組みを進めています。(「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト イメージ図」参照)


3. 市民生活への波及に向けた取り組み

(1) 市民生活への波及に向けた取り組み
 豊田市では、前述のインフラ、システム構築に関する取り組みを市民に訴求し、更なる取り組みの波及をめざし、環境学習の充実や市民活動との連携も図っています。
 環境学習の分野では、市民の生活に関する学習施設『豊田市環境学習施設eco-T(エコット)』、自然に関する学習施設『豊田市自然観察の森』、次世代の低炭素な社会を体験できる『低炭素社会モデル地区(とよたエコフルタウン)』などを活用し、環境学習を積極的に推進しています。
 また、エコフロー事業モデル校に採択(全国20校のうちの1つ)された土橋小学校において、学校のエコ改修と環境学習がうまく連動した「環境学習型エコスクール」をめざし、独自の環境プログラムにより保護者、地域に公開授業を通し情報発信を行うほか、エコ改修した交流館における地域参画の環境講座の実施、『とよた森林学校』での森林・林業に関する講座の実施など、子どもから大人まで環境意識の向上と環境行動への誘導を促進しています。
 このほかにも、NPO団体や市民活動との連携、低炭素社会推進基金の創設・活用など、多方面、他分野からの複合的な取り組みを進めています。

(2) 低炭素社会モデル地区(とよたエコフルタウン)
 ここからは、2に記載した取り組みを一元的に取りまとめ、豊田市の市民生活の波及に向けた特徴ある取り組みで、高い効果を得ている『低炭素社会モデル地区(とよたエコフルタウン)』について、取り上げます。
 当施設は、豊田市の次世代の低炭素な暮らしに向けた取り組みを一体的に取りまとめ、体感、体験を通じ、効果的な訴求・波及を図る施設であり、「都市部」、「中山間地」、「山間地」と豊田市が有する地域性をコンパクトに再現、各地域における次世代コミュニティを提案しています。
 また、整備に当たっては、フィールドを豊田市が、技術を産・学がそれぞれ提供することにより産官連携による取り組みが展開される施設です。
 2012年5月の第1期区域(0.7ha)をオープン、この2014年4月には、全面(1.55ha)リニューアルオープンを迎え、施設全体でスマートハウス5棟、水素ステーション、カーシェアリングサービス『Ha:mo RIDE(ハーモライド)』のステーション(『スマートモビリティパーク』内)を誘致、実際に利用等できるほか、ITS(高度道路交通システム)を活用した次世代交通、ウィングレットなどの次世代モビリティ、地域木材・地域農産物を活用するレストラン『地産地消ハウス』など、市民及び国内外からの来訪者が、次世代の暮らしを実際に体感することができる多数の施設・技術が集積しています。
 そして、当施設には、その拠点としてパビリオンを配置。ここでは、施設を案内する専門のスタッフが常駐し、来訪者ニーズに沿った円滑かつ効果的な施設運営を図るほか、映像や展示を通して豊田市の取り組み、めざす将来像を発信、昆虫など自然の仕組みとそれを生かした製品展示を通して、モノづくり喚起を行うなど、老若男女問わず、幅広く市民を受け入れることができるようになっています。
 このほか、ソフト面では、当施設に出展する民間事業者やこれら企業と市が連携するイベント、市民活動が展開され、まさに民産学官連携による多岐にわたる取り組みが、当施設で一元的に推進されています。
 その結果、当施設は、2014年3月時点で、世界約70ケ国、約80,000人の来訪と、当初の計画以上の効果を得ており、リニューアルオープン後の更なる来場、情報発信、低炭素社会の実現に向けた取り組みの訴求効果が期待されています。

とよたエコフルタウン
(豊田市元城町3丁目11番地)

【施設概要】
全体面積 1.55ha
立地施設:
パビリオン、水素ステーション、スマートモビリティパーク、地産地消ハウス、スマートハウス(5棟)、植物工場ほか
参画企業:
トヨタ自動車を始め出展企業18社のほか技術協力企業多数

 

スマートハウス 地産地消ハウス 水素ステーション

4. まとめ

 豊田市では、環境モデル都市等の取り組みを始めとした、「インフラ整備、仕組み・枠組みの整備」と学校や各環境施設を拠点とした「人づくり」が実践されています。
 そして、「人づくり」には、豊田市のみではなく、市民や産業界との共働が図られ、より様々な視点からの行動変革に向けた取り組みが展開されているとともに、実際の技術などを一体的に取りまとめ、体験・体感を通した訴求が進められています。
 そして、結果として、この取り組みは市民のみならず、国内外から注目を得ることができています。
 低炭素社会の実現を始めとして、新たな取り組みや仕組み等を構築し、実現するに当たっては、市民自らの行動が不可欠です。
 このことから、これらの取り組みを推進するためには、官民共働に加え、市民がいかに容易に、楽しく、その仕組み等を学び、関心を高め、行動に結び付けられるように取り組んでいくことが重要であると考えます。