【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第4分科会 地域から考える再生可能エネルギーによるまちづくり

脱原発の実現に向けた
松江市におけるエネルギー利用について

島根県本部/松江市職員ユニオン・本庁支部 小林 雅和・小室 智志・井上 正樹
ガス支部 伊藤 勝則


1. 電気エネルギーの大切さ

 「電気エネルギー」はより便利なくらしと生活を求める私達の生活には欠かすことが出来ない非常に大切なライフラインとなっています。
 しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、計画停電や節電の取り組みなど「電気エネルギー」のあり方について、注目が集まっています。
 一人ひとりが電気エネルギーの大切さとその有効利用について改めて認識し、自分に出来ることを実践していくことが重要となってきます。

2. 日本人一人あたりの電気エネルギーの消費量

 私たち日本人は、2009年度で1世帯当たり283.6kWh/月の電気エネルギーを消費しており、1970年度の2.38倍になります。これは、一人一日消費電力で世界の6番目の消費量です。
 産業部門を含めた総電力量は2011年度で9,550億kWh/年であり1980年度の1.97倍です。
 このように年々電気消費量は増えており、私たちの生活と日本の産業にも欠かせないものとなっています。
 しかし、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故を原因として、原子力発電所54基中52基が停止している現状(2013年現在)に伴い、電力の供給に不安が生じました。
 これまでは、電気はスイッチを押せば使えることが当たり前という認識でしたが、電力不足による社会的影響が現実になったことで、電力について一人ひとりが考え行動することが大切となっていきます。

家電製品の普及に伴い一世帯あたりの電力消費量は増加傾向にあり、現在では1カ月あたり300kWhに近い電力消費となっています。

一人一日消費電力

3. 電力供給の現状

 2011年度の電力は天然ガス火力発電40%、石炭火力発電25%、石油火力発電14%となっており、火力発電全体で79%です。2010年に比べ火力発電が11%伸びていますが、これは原子力発電の減少によるものです。一方新エネルギーと言われる地熱発電・風力発電・太陽光発電・バイオマス発電・廃棄物発電は全部で1%しかなく、新エネルギーの供給体制が構築されていないのが現状です。

4. 地球温暖化防止と発電

 日本は、2005年に京都議定書目標達成計画を定めましたが、その中では新エネルギーの導入促進、原子力発電の着実な推進、天然ガスの導入等を中心に、地球温暖化防止のために二酸化炭素排出量を削減させていくこととしていました。
 しかし、原子力発電の大幅な停止等により二酸化炭素排出量は2010年に比べ2011年度は4.2%の増となっています。
 このようなことから、火力発電に対する過度の依存は地球温暖化防止の観点からも是正する必要があります。

日本の二酸化炭素排出量の推移

5. 電力のベストミックス

 火力発電は石油火力から、より二酸化炭素の排出の少ない天然ガス火力に転換が進んでいますが、二酸化炭素を排出します。
 地球温暖化防止のためには、火力発電への過度な依存を減らすため、多様な電力の供給方法を構築していく必要があります。
 新エネルギーとしての、風力発電は、広い土地があり一定の風が吹く国がたくさん発電しています。日本では、京都府伊根町の風車の落下、島根県出雲市平田地区の風車の故障などが起こっており、強い風が吹きすぎるため日本には不向きではないかと考えます。
 太陽光発電は、その特性から夜は発電ができないことから太陽光発電だけで夜の電力を確保するためには蓄電池が必要です。
 地熱発電はできる場所が限られ適地は国立公園など開発ができないところも多くあり、用地の確保が問題です。
 廃棄物発電はすでに多くのごみ焼却場で実施済みです。
 バイオマス発電のうち木質バイオマス発電は木材チップを焼却し発電しますがこれにより発生した二酸化炭素はもともと森林が吸収した二酸化炭素のため、二酸化炭素排出量に計算されません。(カーボンニュートラルと言います。)このことから地球温暖化防止の観点からは非常に優れた発電方法で、夜でも発電できるので、基幹電力としても期待ができる発電方法です。
 単純に原子力発電ができないから火力だけに頼るのではなく、地球温暖化防止の観点からも、水力、火力、新エネルギーのバランス良い発電体制を整える必要があります。

6. 新エネルギーの活用

 近年様々な新エネルギー実用に向け研究が進められていますが、新エネルギーとは一体どんなものがあるのでしょうか。現在では『新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネルギー法)』により以下のとおりとされています
・太陽光発電  ・風力発電  ・太陽熱利用  ・雪氷熱利用
・温度差熱利用  ・バイオマス発電  ・バイオマス熱利用  
・バイオマス燃料製造  ・中小規模水力発電(1000kW以下)  
・地熱発電(バイナリー方式)

新エネルギーの種類
引用「経済産業省 資源エネルギー庁 なっとく 再生可能エネルギー」

(1) 太陽光発電エネルギー

 現在最も普及している新エネルギーであり、松江市内においても補助金を利用し太陽光発電用パネルを設置中の家庭や事業所は数多くあります。
〈発電システム〉
 太陽光発電は、シリコンなどでできた半導体に太陽光を当て、半導体が「+」と「−」に分かれる性質を利用し、「P型半導体」に「+」を「N型半導体」に「−」を集めることにより分かれた「+」と「−」の電子間に電圧が発生し発電するものです。
写真:松江市内建設中の太陽光発電施設
@ メリット
 ・二酸化炭素などの温室効果ガスの発生がない。
 ・設置する地点の制約が少なく、どこにでも設置可能。小規模のものであれば建物の外壁、屋根、屋上などの様々な場所に設置可能。
 ・太陽をエネルギー源とするため無くなることがない。
 ・太陽が出ている間は発電し続けることができる。
A デメリット
 ・太陽光を利用するため天候に大きく左右され、曇り雨天時や夜間はあまり発電しない。
 ・以前より太陽光パネル自体の値段が下がったとはいえ設置のための初期費用が高い。
 ・発電した電気を貯めておけない。
 ・大規模な太陽光発電設備(メガソーラー)を作ろうとすれば太陽光パネルを設置する為の広大な土地を用意しなくてはならない。
B 松江市として
  現在の政策である「住宅用太陽光発電導入促進事業」や「事業所用太陽光発電導入促進事業」における補助金制度は、市民の皆様や各企業での太陽光発電の利用促進にかなりの効果を生んでおり、引き続き取り組んでいくべきだと思います。
  松江市としても率先して自然エネルギー利用に取り組むべきだと思います。本庁舎の屋上や屋根、外壁、駐車場などに太陽光パネルを設置し、庁舎内で発電する設備を作り利用することで昼間に使う庁舎内電力や電気自動車用急速充電器で使用する電力を賄うことができ、災害時などの際に使用する非常用電源の補助的電力を確保することができます。各公民館や公共施設に太陽光発電設備を設置することで同様の効果が得られると思います。
  企業が太陽光発電設備を作る際には、松江市の補助金制度を活用してもらうことはもちろんですが、松江市が所有する土地を優先的に斡旋し、所有地を貸し出すなどして誘致すれば遊休地の有効活用にもつながりますし、太陽光発電の利用促進にも役立つのではないでしょうか。

(2) 風力発電エネルギー

写真:出雲市多伎町風力発電設備

 風力発電は、風エネルギーの約40パーセントを電気に変換できる効率のよい発電方法です。
〈発電システム〉
 風力発電は、回転翼の羽根が風を受けることで回転軸が回転し、増速機でその回転数を上げ、発電機に風力を伝え発電します。また回転翼を常に風上に向くように変えることで最適な発電効率を保つことができます。
@ メリット
 ・二酸化炭素などの温室効果ガスの発生がない。
 ・風力があれば夜間でも発電が可能。
 ・自然エネルギーを利用するので尽きることがない。
A デメリット
 ・風力を使用するため無風状態や風力が弱いと発電しない。
 ・風況の良い場所に設置しなくてはならず、設置場所が限られる。
 ・落雷や台風などの自然災害に対して弱く、設備が破損した場合周囲に大きな被害をもたらす。
 ・大型の風力発電機は回転翼が回る時の騒音や低周波が発生し、人体や自然界に影響を及ぼす可能性がある。
B 松江市として
  松江市に大型の風力発電設備を設置しようと考えた場合、条件などから日本海に近い山の上に設置するのが望ましいと思いますが、設置場所や風況条件、初期投資費用など考えると様々な課題があり、すぐに大型の風力発電設備を設置することは困難だと思います。
  一方で家庭用や事業所用の小型の風力発電設備は比較的に設置しやすいことから、松江市として利用促進を図るべきではないでしょうか。小型風力発電の利用促進にもやはり費用面の補助が必要です。現在松江市では家庭用・事業所用共に太陽光発電設備設置の為の補助金制度はありますが、風力発電設備設置のための補助金制度はありません。補助金制度を整備し、太陽光発電と風力発電の設備を両方設置される家庭や事業所には、ダブル発電補助金として、通常よりも割増した補助金制度があればさらに普及拡大につながると思います。

(3) 木質バイオマス発電エネルギー

 現在注目を集めている発電方法の一つで、全国で100カ所ほどの施設が稼働中です。
〈発電システム〉
 木質バイオマス発電は、木材を細かく砕いてチップにしたものを燃やし、発生した熱で蒸気を作りその蒸気でタービンを回し発電するものです。
@ メリット
 ・木材が成長する際に二酸化炭素を吸収するので、燃やして出る二酸化炭素と差し引き、大気中の二酸化炭素を増やさないとされている(カーボンニュートラル)。
 ・山林に残る「間伐材」「林地残材」「根まがり材」等の山林未利用材を利用するため木材の有効活用になる。
A デメリット
 ・未利用材の収集・輸送コストが高い。
B 松江市として
  島根県は林業が盛んで、県の面積のうち78パーセントを森林が占めています。林業で使われない「間伐材」「林地残材」「根まがり材」等を松江市が買い取り、木質バイオマス発電の原料として利用することで、林業で使われない木材の回収にもつながり、山林の環境保全に役立ちます。しかし松江市では木質バイオマス発電用の施設がありません。そこで「エコクリーン松江」での廃棄物発電を利用し、山林未利用材と廃棄物を混合で燃やすことでより高い発電効率を生み出し、新エネルギーの利用促進につながると思います。

引用Sony Japan|ソニーの「ECO」

7. まとめ

 原発に頼らない社会を作るためには新エネルギーの利用は不可欠です。これまで紹介してきた3つの新エネルギーはどれも環境性に優れた地球にやさしいエネルギーでした。その反面、コスト面やエネルギー生産能力にはまだ課題があるのも事実です。
 そこで新エネルギーのみに頼るのではなく、新エネルギーに足りない部分を他のエネルギーと組み合わせ、それぞれの長所を活かし全体としてベストなエネルギーシステムを作る事が必要です。
 松江市が設置する公営のガス事業として供給している天然ガスは化石燃料の中で最も二酸化炭素の排出量が少なく環境負荷に優しいエネルギーです。また、天然ガスを利用した燃料電池などの環境性に優れた利用技術がすでに確立されており、新エネルギーと併せて使うことにより、分散型エネルギー社会を作ることができます。
 我々松江市は原発立地の地方自治体として松江市に暮らす市民の「安全」と「安心」を確立できる将来的なビジョンを見据え、積極的かつ大胆に新エネルギーと天然ガスを利用促進する為の政策を市民や事業所に提案し、自らが手本となるべく利用促進することにより原発に頼らない環境に優しい街作りをめざします。