【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第4分科会 地域から考える再生可能エネルギーによるまちづくり

 佐賀市では、2010年(平成22年)に行った佐賀市環境都市宣言により、豊かな自然環境を未来の子どもたちに引き継いでいくため、市民や地域、NPOなどの市民団体、事業者、行政などが、互いに連携・協力しながら、自然環境との調和に配慮したまちづくりに取り組んでいます。
 このようなまちづくりを進めるうえで、特にバイオマス資源を活用することにより、環境に配慮したまちづくりに努めており、バイオマス産業都市構想の策定によって、市民、事業者、行政がそれぞれの立場で、省資源、省エネルギーの推進や廃棄物の少ない循環型社会の構築をめざし、「共助」と「協働」をキーワードに行っている取り組みについて報告します。



バイオマス産業都市さがの構築に向けて


佐賀県本部/佐賀市職員労働組合・佐賀市バイオマス産業都市推進課

1. はじめに

 我が国においては、農村部・都市部の各地域において、木質、食品廃棄物、下水汚泥、家畜排せつ物などの豊富なバイオマスを有しており、地域のバイオマスを活用した産業創出と地域循環型の再生可能エネルギーの強化を図り、地域の雇用創出や活性化につなげていくことが重要な課題となっています。
 こうした状況を踏まえ、2012年(平成24年)9月に関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同で取りまとめたバイオマス事業化戦略において、原料生産から収集・運搬、製造・利用までの経済性が確保された一貫システムを構築し、バイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりをめざすバイオマス産業都市の構築を推進することとされたことです。
 このため、2018年(平成30年)までに全国で約100地区のバイオマス産業都市を選定し、地域の特性を活かしたバイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりを連携して支援していくこととされています。
 佐賀市では、2014年度(平成26年度)のバイオマス産業都市選定に向けて取り組みを進めています。

平成25年度には、16地域のバイオマス産業都市を選定されました。

 

2. 佐賀市バイオマス産業都市構想について

(1) 清掃工場二酸化炭素分離回収事業について
 佐賀市清掃工場では、2003年(平成15年)に発電・余熱利用が可能な循環型焼却炉を竣工以降、エネルギーの有効利用に取り組んでいます。
 ごみ焼却熱を利用して、ボイラで蒸気を作り、蒸気タービン発電機で発電を行っています。市内の3か所のごみ処理施設を、今年4月に清掃工場に統合したことにより、年間690万kWh増電となり、全体で年間3,220万kWh発電できるようになりました。これは、約1,800世帯分の年間消費電力量が増加したことになり、約9,000世帯分の年間消費電力量に相当します。その他に、蒸気は隣接する健康運動センターの温水プールに利用しています。
 また、市内の家庭や事業所から排出される使用済みの天ぷら油を回収し、軽油の代替燃料であるバイオディーゼル燃料を精製しています。精製した燃料は、市営バス、ごみ収集車、トラック、重機等の燃料として利用しています。
 さらに、清掃工場から発生するバイオマス資源の利用促進事業として、ごみの焼却により発生する二酸化炭素についても分離回収し利用する計画を進めています。
 清掃工場では、ごみの焼却時に発生する排ガスの一部から二酸化炭素を分離回収する試験装置を2013年(平成25年)10月から稼働させ、分離回収した二酸化炭素の成分分析やコスト評価などを実施しています。この試験装置により得られた知見を活かし、実用規模の二酸化炭素分離回収装置を清掃工場内に設置し、分離回収した二酸化炭素を化粧品などの原料を抽出する微細藻類の培養事業者や、高付加価値な農作物の栽培を行う農業用ハウスなどへ供給する計画です。
 また、将来的には、周辺地域に二酸化炭素を利用する工場などの関連産業を誘致し、分離回収した二酸化炭素を利用した産業の創出をめざしています。

佐賀市清掃工場二酸化炭素分離回収事業イメージ

(2) 下水浄化センターエネルギー創出事業について
 現在、佐賀市下水浄化センターでは、下水汚泥を消化発酵させたときに発生する消化ガスを回収し、消化ガスによる発電に取り組んでいます。また、消化発酵後の残さは脱水し、肥料原料として利用しています。
 2012年度(平成24年度)の実績では、消化ガスによる年間発電量は、約3,417MWhとなっており、下水浄化センター所内動力の約42%を自家発電により供給されています。下水汚泥由来の肥料は約1,427t/年製造されていますが、農業が基幹産業である佐賀市は肥料需要が高い地域であり、下水汚泥由来の肥料は全量を農家などへ販売しています。
 佐賀市では、日本初の電力自給率100%の下水処理システムの実現をめざしています。そのため、下水汚泥に木質バイオマス及び事業系食品残さなどの地域のバイオマスを混合し、消化ガスの発生量及び発生電力量の増加を図る計画です。
 混合する木質バイオマスとして、市内の製材所などから発生し、処理に苦慮しているバーク(樹皮)の利用を検討しています。事業系食品残さについては、既に株式会社味の素九州工場から生じる発酵副生バイオマスの活用について共同研究に着手されているところです。
 バーク(樹皮)及び事業系食品残さを混合することにより、通常C/N比が7~8程度の下水汚泥を、メタン発酵に適した16~18程度に調整することが可能となり、肥料化される脱水汚泥の質も大幅に改善され、良質な肥料の製造が見込まれます。
 一方、地域バイオマスの混合は、下水浄化センターでの水処理の負荷が高まることにもつながりますが、水処理の一部に微細藻類を活用することで水処理の負荷低減を達成することを計画しています。
 また将来的には、農業集落排水汚泥などを下水浄化センターの消化槽で処理し、消化ガスの発生量を増加させることも検討しています。

下水浄化センターエネルギー創出事業イメージ

3. まとめ

 佐賀市がバイオマス産業都市としてめざすべき将来像は、人の暮らしから発生するごみ・排水、産業排水、森林や製材所の未利用木材などから、エネルギーとして豊かさを創造し、自然と共存する「昔に帰る未来型」環境都市です。新たな施設を作るのではなく、既存のごみ処理施設や下水処理施設を活用して経済性が確保されたバイオマス産業都市を構築したいと考えています。
 また、地域からは迷惑施設と思われがちなごみ処理施設や下水処理施設について、地域が誇れるようなエネルギーセンターへと、地域経済にとって必要な拠点施設へと転換を図りたいと考えています。
 そして、その循環の波が国内からアジア、世界へと広がるような「バイオマス産業都市さが」の実現をめざして取り組みを進めていきます。