【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第4分科会 地域から考える再生可能エネルギーによるまちづくり

 別府市における地熱バイナリー発電や温泉熱発電をはじめとする新エネルギー導入促進に関する考察。



別府市での新エネルギーの導入促進について


大分県本部/別府市職員労働組合 津川 文隆

1. 別府市での新エネルギー導入の動き

① 民間事業者を中心に温泉熱発電設備を設置または計画
  ・瀬戸内自然エナジーや西日本地熱発電によるバイナリー発電所の設置
  ・温泉法の普通地域にあたる小倉地区での500kW~2,000kWの計画
  ・湯けむり発電はいよいよ実証段階
② 一気に出てきたメガソーラー設置の動き
  ・東山地区や内成地区を中心に民間事業者のメガソーラー設置の動き

2. 行政としての動き

3. 昨年度実施の別府市地域新エネルギーフィージビリティ調査

(1) 別府市の新エネルギー賦存量・利用可能量

エネルギー種 賦存量 利用可能量
熱量換算(GJ/年) 熱量換算(GJ/年)
地熱バイナリー発電 1,027,632 631,307
温泉熱発電 860,775 66,257
温度差熱利用 温泉熱利用 2,581,281 922,861
地中熱利用ヒートポンプ 15,121,450 1,529,164
太陽光発電 12,982,914 447,683
太陽熱利用 2,265,722 488,011
風力発電 9,240,048 304,641
中小水力発電(河川) 1,554,211
バイオマス 発電 273,973 21,640
熱利用 (76,727)

(2) 新エネルギーの総合評価

総合評価
("地域特有性・利用可能量"、"導入効果"、
"環境への影響"を踏まえた相対評価)
新エネルギー
温泉熱利用
地熱バイナリー発電、温泉熱発電、
地中熱利用ヒートポンプ
太陽光発電、太陽熱利用、風力発電
× バイオマス発電・熱利用、中小水力発電

4. ここまでで掴んだ新エネルギー発電の現実

(1) 温泉水を使う発電は必要量が多すぎて無理? → 噴気・沸騰泉からの蒸気が必要

発電出力毎の泉温と湧出量の関係図

① 動力泉は流量制限があって無理。
② 自然湧出の温泉は口径等の問題で必要量まで確保できない。
③ 温泉水使用の適正発電量は20kW。

(2) 別府市内の雨水と温泉水の水収支は16%で、箱根などの2倍で限界に近い

① 現在の温泉の湧出量より多く湧出させようとすることは資源の枯渇につながる。
② 地下水や蒸気の採取も温泉水の元や熱の伝導体であることを考えると資源の枯渇につながる。


(3) 普通地域だからと言って影響がないわけではない

① 別府市には断層沿いに鉄輪・亀川方面と堀田・観海寺方面の熱水の流れが存在する。
② 小倉地区はこの2つの流れの間だが熱水の流れに大きく関係している。
③ より上部で大きな温泉水の搾取が行われれば、海岸部は壊滅的な影響を受ける。

(4) バイナリー発電は温泉水も多大に必要だが、冷却水も多大に必要
 温泉水75t/時が必要なときに、冷却水は120t/時必要。
 地下水を冷却水に使うと雨水からの水収支に大きな影響を及ぼす。

(5) 発電業者は規制緩和で規制がないと思っている
 要綱策定のため、各種規制を調査すると100個以上の規制や手続きが存在している。
 しかし、業者のほとんどは規制の存在さえ知らない。都市計画法や景観法、農地法などの基本的な規制さえ知らない業者が多い。
 また、地元説明会をして導入をした事業者は未だにない。


5. 行政として危惧するところ

① 民間事業者が、温泉法や景観法、都市計画法、農地法など各種法令の事項に関する手続きをきちんと行った上で事業着工や計画策定を進めることができるか。
② 民間事業者が近隣住民への理解を得た上で、地域と協調して取り組んでいくことができるか。
③ バイナリー発電を行う事業者が従前の温泉の湧出量を大きく超え、本市の自然環境や生活環境に対して大きく影響を与えるようなことはないか。
④ 掘削に制限のない温泉法の普通地域となっている小倉地区で大きな発電量の計画が出されているが影響はないのか。新しい保護地域、特別保護地域が必要ではないか。
⑤ バイナリー発電を行うためには多大な冷却水が必要となるが、地下水等の搾取による本市の自然環境に影響を及ぼさないか。

6. 今後の方向性

(1) 基本方針
 新エネルギービジョンを基本に、産業や自然環境などの地域特性を活かすよう導入を進めていく。そのため、市民理解を得るためにも前述の危惧は課題として解決に向けて取り組んでいく。

(2) 具体的な方向性
① 今年度策定する予定の新エネルギービジョンの中では導入促進の方針とともに環境保全の観点も盛り込んでいく。
② 特に、本市の基幹的な地域資源である温泉については地下水や蒸気も含めて、多大な影響を及ぼさないような利活用を検討していく。また、必要に応じて、県と協力しながら温泉法の保護地域、特別保護地域の新設などに取り組んでいく。
③ 法令順守や住民説明の促進、モニタリングの実施等について、一定の制限が付けられるような要綱等を策定していく。