【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

 本町の漁業については、近年、回遊魚の資源減少により沿岸漁業経営は厳しい状況にあり、また、漁業後継者不足も顕著で、漁業集落の存続が危ぶまれている実態にある。
 これに対し、漁業所得の向上を推進するために、2013年度から実施した全道でも例を見ない補助制度に注目し、提言します。



漁業への取り組みについて


北海道本部/上ノ国町役場職員組合

1. 上ノ国町の漁業について

 本町の漁業は、イカ、マス、スケトウダラ等の回遊魚を中心とした漁家経営をつづけてきましたが、200海里の設定や資源の減少により漁獲量、漁獲高とも減少し非常に厳しい経営がつづいています。このため、水産資源回復にむけた磯焼けの解消や藻場の再生、漁場の環境保全を目的とした排水処理施設の整備や集落環境の整備も併せて行い漁港、漁場の一体整備を進めてきております。
 また、国内外の漁業を取り巻く環境は一段と厳しさを増し、食の安全、安心に関する国民的な要請の高まりへの適切な対応が求められ、さらには輸入水産物の増大と国内水産物との競合や産地価格の低迷は、生産現場に対して大きな影響力を及ぼしており、漁業者の減少と高齢化による漁業経営基盤の脆弱化と相まって地域活力が低下しています。
 このような厳しい情勢下において、天然資源の枯渇が心配される漁業振興にとって、つくり育てる漁業の推進は生産の中核である漁船漁業を補完する重要な役割を担うことが望まれます。
 本町の栽培漁業の推進については「とる漁業から育てる漁業」への転換を掲げ、アワビ、コンブ、ヒラメ、サクラマスの増養殖に取り組んではきているものの、日本海の厳しい自然条件や栽培技術の確立が出来ず、安定した生産に結びつくことはかないませんでしたが、1999年原歌地先に完成した海洋牧場では、港内の静穏域においてアワビを中心とした魚介類の養殖が存分に行える環境が整ったことから、アワビの種苗生産を目的とした栽培漁業センターを整備し、種苗の安定的な供給体制が整ってきておりました。
 しかし、近年の海外産アワビの流入などの要因により価格低落、生産下落傾向が続き、経営が厳しいものへと変化してきております。
 近年では、前浜で漁獲されたニシンの成魚の卵を栽培漁業センターでふ化させ、約3cmまで育てられた稚魚約3万尾を、地元の漁業者などが放流しました。
 放流が行われた上ノ国漁港付近は、かつてニシン漁で賑わいを見せた場所でもあり、長らく途絶えていたニシンが少しずつ戻ってきていることから、関係者はこれからの復活に向けて大きな期待を寄せています。

(ニシン稚魚放流式)

(ひやま漁業協同組合上ノ国支所の漁獲量及び漁獲金額)
区  分 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
漁獲量 1,612t 1,846t 1,212t 1,098t 783t
漁獲金額 44,268万円 51,894万円 45,409万円 40,162万円 36,159万円

2. 全道でも例を見ない補助制度

 ここ数年、本町の漁獲金額が減少傾向にあることから、漁業者などの要望や意見を十分に聞き、効果的な支援方法を模索したなかで、2013年4月から全道でも例を見ない補助制度を実施しているところです。
 その内容は、2013年度から3年間、漁業活動に必要となる漁網や漁船・各種機器の整備を行う経費に対して、「1/2以内・150万円を上限額」とするものです。
 この補助制度は、近年の漁船漁業の低迷や後継者不足などによって疲弊した漁業経営を活性化させることで、漁業収入の向上が図られ、浜に活気を取り戻すことを目的としています。
 この補助制度による効果として、老朽化した底建て網や船外機、高性能な魚群探知機などの買い替えが行われ、漁業活動の効率化が図られたことで、漁業への意欲が増したという声もありました。
 また、補助制度のさらなる拡充要望もされていることや、補助金交付額も当初予算の3千万円では足りず、1千万円の増額補正で対応していることから、今後の漁業収入の向上が期待されるところです。
 本町では、ウニやアワビ、ナマコなどの浅海漁業を含めた「育てる漁業」の推進はもちろんですが、主力である漁船漁業による漁獲量の増大が求められていますので、今回の補助制度を十分に活用し、漁業収入の向上が図られるよう今後も支援を進めます。

(補助事業により購入した船外機)

3. まとめ

 回遊魚の資源減少により、今後についても先行き不透明な状況が続くものと予想されます。
 これらの対策として、沿岸漁業を補完するため、ホッケ養殖事業や根付け資源の放流事業のほか、漁業後継者による養殖事業など育てる漁業を強力に推進し、また、広域で進めている回遊魚の種苗放流などに積極的に参画し、資源の確保に努めることが重要です。さらには、藻場や漁場の充実と形成を図るべく関係機関と連携を図ることが必要だと考えられますが、一方では各種の手篤い補助事業は、自立しない行政まかせの体質を生むことにつながる可能性も懸念されています。