【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

 群馬県内では、木材の屋外での利用として転落防止柵をよく見かける。しかし、近年は、木材は数年で腐り、交換する経費が必要なことから木製から鋼製に変更されることが多い。そこで、鋼材と木材を組み合わせることにより、10年以上の利用を想定し改良した転落防止柵を、県の補助事業を活用し安中市の公園に設置した。また、改良した転落防止柵の木材部分の経年劣化を把握するため、今後、林業試験場で調査する予定である。



低炭素社会を実現するための木材利用について
―― 木材の屋外での利用を推進するために ――

群馬県本部/群馬県職員労働組合・木材利用研究会・西部環境森林事務所 小島  正
群馬県林業試験場 町田 初男・伊藤 英敏

1. はじめに

(1) 過去2年間の調査について
① 木材の利用について
  木材や木製品の重さの半分程度が炭素であり、含まれる炭素は燃やされない限り、二酸化炭素が固定される。木材の利用は低炭素社会の実現に向けて必要と思われるが、公共建築、住宅、屋外での利用が進まないのが実態である。そこで、その問題点を把握し、木材利用を推進するための方法等を考察したので報告する。
② 公共建築物で地域材(県産材)を利用するために
  2010年10月に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、可能なものは「木質化、木造化」を進めることが国の基本方針となった。しかし、建築物の床面積のうち木造の割合は、建築物全体では43.1%であるのに対して、公共建築物等における木材の利用は8.3%と低水準(引用文献(3))であった。下仁田町の意向で下仁田小学校の木造校舎が建設(2011年)された。建設に当たって、構造材(大断面集成材や柱等)にJASの品質(乾燥)が求められたことから、地元の製材工場がJAS(木材の乾燥)を取得した。指定された強度については、群馬県林業試験場が全数調査する等、官民の連携が必要であることを報告した。(2011年度 群馬県自治研究報告)
③ 一般住宅で地域材(県産材)を利用するために
  県内の製材工場から出荷される「ぐんま優良木材」は、木材に貼るラベルに含水率や強度の表示がなく、利用者が品質を認識できないので、輸入材に対抗するには品質管理やその表示方法に改善が必要と思われた。また、県内の製材工場は小規模のため、国外や県外の大規模製材工場に比べ製材コストにおいて不利な立場であり、それらと差別化する手法が求められることを報告した。(2012年度 群馬県自治研究報告)

(2) 本年度の調査(木材の屋外での利用)について
 本年度は、木材の屋外での使用状況と課題について考察した。また、安心して10年以上利用できるように、鋼材で強度を担保した構造とし、劣化しやすい笠木部分を人工木材(木粉50%、樹脂50%)に改良した転落防止柵を安中市の公園に設置したので、その概要を報告する。

2. 木材を屋外で利用する上での問題点について

(1) 木材の屋外での利用状況について
 木材は屋外で、転落防止柵(写真-1)、塀(写真-2)、標柱、枕木などに使用される。写真-2は、木材部分に屋根があり保護されており、長期間の使用を想定した構造である。写真-3は駅前に設置された事例であるが、コンクリート等の構造物と比べ圧迫が少なく感じた。写真-4は大きな木製の遊歩道であり、景観と調和していた。写真-5は、アセチル化木材「アコヤ」(オランダ)という製品があり、地上で50年の耐久性があるとHP(http://www.accsysplc.com)に記載されていた。日本では、写真-6に示すように低分子フェノールを木材に注入し、屋外で17年経過した状況がHP(http://www.kyumoku.co.jp)に掲載されていた。スギの辺材を加圧式保存処理することにより10年以上の耐用年数を保持することが日本木材保存協会から報告(引用文献(1))されている。森林総合研究所には、1959年に防腐処理した木材が劣化の少ない状況で、屋外暴露試験を継続している。

   
写真-1 転落防止柵   写真-2 伝統的な塀   写真-3 街での利用事例
(注:写真1~3 筆者撮影)
         
   
写真-4 大型の遊歩道(筆者撮影)   写真-5 アセチル化木材の橋
Two heavy traffic road bridges
(http://www.accsysplc.comから引用)
  写真-6 低分子フェノール注入材
(商品名:エコアコール)
(九州木材工業HPから引用)

 

図-1 丸棒加工製品の生産量(県内9社)
(群馬県林業振興課の業務資料から作成)

(2) 丸棒の利用実態について
 県内9社の丸棒の生産量の推移を図-1に示した。公共事業での用途としては、転落防止柵・法面保護工・階段等で利用されているが、減少傾向にある。
 減少した原因は特定できないが、"木材は腐るからもう使いたくない""すぐにカビなどで黒くなり、美しくなくなる""防腐処理してある木が緑色で、自然になじまない"等の意見を聞くことがある。

 

 

 

(3) 木材の腐朽・劣化について
写真-7 木材(横木)の黒い変色
(支柱は交換して新しい状態)
写真-8 防腐薬剤(黒緑部分)の
注入状況
(右側:防腐薬剤が中央部まで注入
左側:防腐薬剤が周辺部のみである)
 木材は、屋外で使用すると腐朽菌により腐る。スギの辺材で3年、ヒノキの辺材は8年程度(野外杭試験データ)で腐朽(引用文献(1))する。木材は、気乾状態(含水率10~20%)では腐朽することは少なく、雨や湿った土壌から水分が供給され含水率が40%程度から150%の範囲内にある時に腐朽(引用文献(5))する。含水率が150%を超えると酸素不足になり腐朽が停止する。
 転落防止柵に使用される丸棒は、一般的に防腐薬剤処理(薬剤は辺材部分のみに分布)されているが、乾燥により割れることが多く、そこから水が侵入し、含水率が高くなり内部腐朽が進行することが多い。また、木材は屋外では紫外線などで劣化して、カビ類などにより黒色に変色(写真-7)する。木材は多孔質であるため、自動車の排煙などが付着しやすく、いったん付着すると容易に取れないため材色が黒ずんでくる。そのため、屋外で木材を使用する場合は、防腐処理するとともに、木材の表面を塗料等で保護することが、木材を美しい状態で長く使用するうえで、必要である。
 市販されている製品の防腐薬剤の注入状況を把握するため、2社の製品(直径10cm、長さ2m 丸棒)を各3本ずつ購入して、中央部を切断し、防腐薬剤の注入状況(写真-8)を調査した。右側の丸棒は中心部まで薬剤注入されているため、長期間の防腐効果が期待できる。しかし、左側の丸棒の中央部には、薬剤が注入されていないため、腐ることが危惧された。会社により薬剤注入の状況が異なることが示唆された。防腐処理木材を広く普及させるには、薬剤注入する事業者が木材のどの部分まで薬剤が注入されているかを、消費者が納得するような方法で明示することが必要と思われた。
 木材が腐朽し交換する判断基準については、木材表面は乾燥することにより劣化が遅れるため、目視では分かり難い。そのため、打音により木材の劣化を判断し、異常がある場合は、先の細いマイナスドライバー等を木材に突き刺し、木材内部の強度を判断することが必要である。

3. 転落防止柵の改良と設置について

(1) 改良した点について
 群馬県内には多数の転落防止柵があるが、木材の部分が腐朽して鋼製の製品に交換する場合が多い。そこで、長期間、安心して使用できる転落防止柵にするため、次の5点を改良することとした。改良した転落防止策の製造・設置経費については、林業振興課の補助事業(県産材活用推進枠)を活用した。
① 含水率が18%以下の製材品を利用すること
  細胞壁内に閉じこめられた結合水が減少した段階(18%以下)で、防腐薬剤を減圧・加圧し注入しないと、十分に防腐薬剤が含浸しない。また、含水率の低下で木材が収縮し、割れが発生する恐れがあるため、一度、10%以下にすることが好ましい。
② 角材を利用すること
  丸棒には年輪(晩材)部分があり、中心部と周辺部では含水率の低下により収縮率が異なるため割れが発生する。その割れから水が進入し、木材の劣化を早めるため、乾燥後に割れの少ない角材を利用する。間伐材の利用は、林業を支援するうえで重要なことなので、小径木からの製材品を多用すること。
③ 防腐処理したうえで、耐候性の高い塗料を塗布すること
  銅系の防腐処理は耐久性が高いが、青色となり見た目が良くないため着色が必要である。また、塗料により紫外線・水・汚れ等から木材の部分を保護することにより、木材を美しい状態で長期間利用できる。
④ 強度を鉄等で担保すること
  転落防止柵の設置者は、木材が腐り強度が低下して、事故があった時、管理責任を問われることを危惧している。そのため、鉄等の材料で、木材が腐っても強度が低下しないことを示す必要がある。(注:木材断面の8割程度まで防腐薬剤が含浸していれば、10年間以上は使用できる。)
⑤ 笠木部分には劣化の少ない人工木材を使用すること
  笠木部分は、雨滴等により木材の劣化が進行する恐れがあるため、木粉を50%程度使用した人工的な木材を使用し、木材部分を保護すること。

(2) 改良した転落防止柵の設置について
 転落防止柵の木材(図-2)の部分には、小径木(45×45mm)及び板材(幅100mm、厚さ30mm)を、防腐処理(図-3)した。その後に、耐候性が高い(図-5)市販の塗料(ガードラックアクア 和信化学工業(株))を塗布した。劣化が予測される笠木の部分には、人工木材(木粉50%、樹脂50% 新潟擬木(株))を使用した。
 転落防止柵の内部の構造は図-4に示すように縦木及び横木の中心に鋼材を使用し、その周りを木材で固定する構造とした。縦木・横木の強度について、林業試験場で強度試験(写真-9)を行った結果、「防護柵の設置基準・同解説(引用文献(4))」基準値を満たしていた。
 改良した転落防止柵を、2013年に安中市の公園に35m設置(写真-10)した。その後で、当該事業に賛同を得ることができ、安中市役所でも同じ構造の転落防止柵を27m設置した。
 また、転落防止柵の経年劣化を把握するため、群馬県林業試験場長と西部環境森林事務所長との間で劣化調査に関して覚書を取り交わし、評価する方向で進んでいる。
 改良した転落防止柵の良さを理解していただくために、解説書を作成し、配布している。

図-2 県産材の証明 図-3 防腐処理証明の一部
図-4 転落防止柵の鋼材部分
 
写真-9 強度試験の状況
    (筆者撮影)
 
図-5 未乾燥材のウェザリング
    時間と色差(色差の小さ
    い方に耐候性がある) 
(林業試験場業務報告(引用文献2)から引用)
 
 
写真-10 改良した転落防止柵(笠木の部分が人工木材) (筆者撮影)

4. まとめ(木材の屋外利用の推進に向けて)

 木材を屋外で利用する必要があるのか? と聞かれれば、どの場所でも木材を使用する必要はないと答えるであろう。しかし、木材の支柱・外壁・柵等は存在感があり、コンクリートや鋼材等の構造物にはない良さがあると思われる。7世紀に建立された法隆寺を構造材として支えているのは木材であり、東京駅の竣工(1914年)以来、地盤の補強に1万本以上のマツ杭が利用され、2012年の改修工事中(2007~2012年)に出てきて話題になった。木材は使用環境とメンテナンスで利用年数に大きな違いが生まれる。
 すべての部分に木材を利用するのではなく、地面と接地して腐りやすい場所には、鋼材等の製品を使用し、木材を屋外でも安心して長期間使用する技術を広く普及することが重要である。
 木材の利用は、地球温暖化対策として重要との意見に賛同する人が多い。しかし、"木材は腐るから屋外では利用しない"と思考停止に陥ることが多いと思われる。木材の利用方法について、その利点・欠点について議論し、判断することが必要と思われた。
 木材の性能については、誇大広告もあることから、国や県の研究機関などで、中立的な立場から正しい情報の発信を期待したい。今回の報告が、木材の屋外での利用に少しでも役立てば幸いである。




引用文献
(1) 加圧式保存処理木材の手引 日本木材防腐工業組合(2013)
(2) 群馬県林業試験場 業務報告 景観に配慮した高性能外構部材の開発 小黒正次・町田初男(2009)
(3) 平成23年度 森林・林業白書(2012年に公表)
(4) 防護柵の設置基準・同解説 社団法人 日本道路協会 59-76(2008)
(5) 木材保存学入門 公益社団法人日本木材保存協会(2012)