【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

 農業を取り巻く環境も年々大変になり、農業者も高齢化し自力で農地を守る事が困難な状況になってきた。一方、農地を受ける農家や組織も弱体化(高齢化や後継者・オペレーター不足等)しており、10年後の農地が危機的状況に来ている。その解決策を模索するため、農家や集落営農組織・関係機関を巻き込んで、『自分達の農地を自分達で守る』体制を整備するため、「協同農業普及事業」のノウハウを活かした取り組み事例を紹介する。



信頼できる農地の受け皿となる地域営農組合の法人化推進
―― 農家や営農組合・行政・JAを巻き込んだ! 
10年後の農地を守る仕組みづくり ――

佐賀県本部/佐賀県関係職員連合労働組合・三神農業改良普及センター分会 上瀧 孝幸

1. はじめに

 地方自治研究全国集会のレポート・論文の募集? ……何これ?
 この様な活動がなされている事を、私は全く知らなかった。
 知るきっかけは2014年5月14日に開催された、佐賀県中央委員会に参加してからである。こんな活動が半世紀も前から行われていたとは、少しも知らなかった。
 ・こんな「コンセプト」が組合活動に有ったのか?
 ・本当に自治研のコンセプトを職場に 地域に 浸透できれば、地域は動き出すのではないか そう信じて 皆さん勇気ある一歩を そして、勇気ある一言を……。
 誰かがやるだろう? では無く、小さな一歩でも『今』行動する事が、何かを動かす原動力になるはずと思い、提出させて頂いた。

2. 協同農業普及事業について

 「自治研のコンセプト」は、まさしく私が仕事として行っている『協同農業普及事業』そのものであった。その活動とは、
 普及センターの活動は、農村地域や農家の抱えている問題を課題化して、普及活動計画を作成し、農家(個人や部会)や農村地域(集落、営農組合、生産組合)及び関係機関(市町村、JA、NOSAI、試験研究、国等)と一緒になって、課題解決を図る事を仕事としている。
 現在、農村の大きな課題は、農業が生業として継承されない事で、新規就農者がほとんど無く、農家の平均年齢は65歳以上の前期高齢者となり、その結果、農地(特に水田)を耕作する担い手が、どんどん減少してきている。最悪のシナリオは、国民の食の安全・安心の観点からも食糧生産の基盤が無くなる(食糧安全保障上大きな問題である)だけでなく、農業が持つ多面的機能(水源かん養機能や洪水防止機能等)が損なわれることである。また、住居に近い水田や通学路に面した水田が"荒れ田"となれば、安全国家「日本」の治安上も大きな問題となってくる。
 農地の荒廃は、農業だけでなく社会生活上も大きな問題を抱えており、早急に解決しなくてはならない課題であるが、簡単に解決できる課題では無く、一地域の問題でも無く、全国的な問題である。
 そのため、2013年から課題の整理と関係機関との連携を重ねながら、新年度の普及活動計画の新規課題として通常の普及員の個人が設定する重点課題でなく、普及センター全員で対処するプロジェクト課題に位置づけ3ヶ年の長期的な課題として取り組む事とした。
 具体的には、
 2013年度活動として、集落営農組織に対する働きかけを明確にするために、市町村・JAの担当者を集めて知識習得及び情報交換の場となる「集落営農担当者会」を立ち上げ、管内全域の広域的な取り組みをスタートさせた。
 広域で多岐にわたる活動であるため、取り組みが活発な「城田西地区」での取り組みを紹介する。
 城田地区は、佐賀県東部の神埼市千代田町をT字に3分割した上部地域で、1983年以降の圃場整備によって、一区画50アール(長辺100m×短辺50m)前後の水田が、碁盤の目のように整備され、水田と併設して縦横に舗装農道やクリーク(大型用水路)および潅水施設が整備された一面が平野の農業地帯である。1985~87年に、米・麦・大豆の乾燥調整貯蔵施設(カントリーエレベーター、以下CE)が整備され、米・麦・大豆を効率的に生産するインフラが整備された。また、効率的な生産を担うための組織として、集落毎に収穫作業を行う大型のコンバインを共同購入・共同利用する機械利用組合が発足し、耕起を行うトラクターや田植機、病害虫の防除を行う乗用管理機等が随時、導入されてきた。また、2006年からは国の指導に沿って、機械利用組合から集落営農組合へ移行し、少人数のオペレーター(機械操作員)と会社に勤めながら農業を行える兼業農家によって、土地利用型作物である米・麦・大豆を効率的かつ省力的で低コスト生産できる体制が整った。
 しかし、農業に従事する人が父親(経営主)だけで可能になった事で、家族が農作業に参加・協力しなくても農産物を生産できる様になり、家族や若者(息子)の農業に参加する機会だけでなく意識まで遠ざかっていった。その結果、経営主が前期高齢者(65歳~75歳)になった現在、農業生産に携わる30歳代~50歳代の農業を行う後継者が居なくなってきたのである。(図表-1)

図表-1 基幹的農業従事者の年齢構成

 経営主の親父さん達の口癖は、『農業は儲からない。きつい・汚い・危険の3K職業。よって、自分が農業が出来なくなった時は、辞めるだけ』とよく聞く。
 この論法のベースにあるのは、自分が農業を辞める時は、息子ではない第三者に経営を委ねる。(農地の利用権設定)事が前提である。しかし、現在の農業・農村を取り巻く現状は、地主である経営主(作業や農地を委託したい人)も高齢化し、農作業や農地を受け入れる側の専業農家(受託者)も高齢化し、委託を希望する兼業農家はどんどん増える状況の中、受託する専業農家も農業の継続が困難な状態に陥りつつあり、農業の継続性には黄色信号が点滅? いや赤信号が点滅してきている? 現場では四面楚歌の状況となっている。
 このままでは、5年後の水田農業は危機的状況になる事が高い確率で想定されており、何らかのアクションを起こすことが必要であり、城田西地区では2013年度より行動を開始した。
 最悪のシナリオとして、担い手不足により荒廃田が増加し、連鎖的にCEの利用率が低下し、CE利用率が下がれば、CEの運転資金をまかなうために利用料金や賦課金(参加農家の一戸あたりの負担金)が増額される。その結果、CEの利用者が外に流れていき、利用率が益々低下する。負のサイクルに陥る事が想定される。(絵-1
 土地利用型作物の製品化の中核施設となっている『CE』と農地の受け皿組織である『集落営農組合』は、水田農業を維持する上で最も重要な組織であり、どちらが欠けても両者が共倒れする関係にあり、車の両輪の関係といえる。そこで、城田西地区CEに関連する10集落の営農組合を対象とした広域的な水田の受け皿としての組織の育成について、始動した。
  先ずは、麦刈りや田植え・大豆播種が終わった7月中旬に城田西地区の10集落営農組合の三役を集めて広域での法人化の勉強会を始めた。三役の中には、輪番制によるお飾り役員もあり、三役ですら集落営農の法人化に対する知識が少ないリーダーもおられた。
 また、それぞれの10集落の課題や悩みが、まちまちである事も分かったために、各集落営農組織の三役からの悩みや相談を聞き取るためのヒアリングを8月末から実施した。そのヒアリングの実施についても、上から目線では賛同を得られない事から、
 7月12日(事務局会)、7月17日(事務局会)、7月22日(事務局会)、7月31日(第6回検討会)
 8月8日(事務局会)、8月19日(事務局会)に開き、下記のような内容を、熱心に協議した。
 ・法人化に対する意見の集約をすべき
 ・CEを核とした形にするにしても、現場の声を集約して、その声に応える形をとる!!
 ・集約表がなければ、短時間で意見を聞き取る事は困難であり、事前に普及で準備を
 ・また、集約表についても、サブタイトルとして「今後の城田西地区の水田農業を考えてみよう!!
  ~自分達の組織の課題と問題点~と題して、分かりやすい調査表を作成。
 ・開催時期については、農家の参集が得られる事が大前提であり、市役所の議会の関係やJAの農談会の時期とバッティングしないように調整を図った。
  (「集落営農に係る意見集約表」を添付
 「各集落営農組合ヒアリング」を8月29日と9月3日に午前2組織、午後3組織実施し、各集落営農組合の持ち時間を90分とした。効率よく聴き取りを行うために事前の調査を作成し、事前検討を行ってもらった。(調整が付かなかった1集落は、9月5日に実施した。)
 ・それぞれの課題についての整理票を添付(図表-2
 9月3日(事務局会)、9月24日(事務局会)、10月2日(事務局会)
2013年度の活動を行う中で、今までこのような活動をまとめる組織が不明確で、集落営農役員・CE役員・関係機関での役割分担がなされておらず、全てが普及センターのコーディネートによって行われていた事から、当事者意識を高めてもらい自主性を持って、自分達の課題に取り組んでもらうために、組織化の提案と役割分担及び、計画立案など、推進体制の整備を行う必要があった。そこで、
 ① 組織の名称を「城田西地区法人化等検討委員会」とする。
 ② 委員会は、城田西CE管内の集落営農組織役員と城田西CE役員およびJA・市・普及センター。
 ③ 役員の定数と選任について、10集落営農組合の役員の中から、委員長1人、副委員長3人、書記を2人選出する。(副委員長の1人はCEの役員を当てる。)
 ④ 任期は1年(4/1~3/31)とする。
 ⑤ 事務局として、城田西CE職員および、神埼市役所・JA・普及センター。
 ⑥ 文書の発送は、委員会長名で作成する。
 ⑦ 文書の作成は、JA南部センターで作成する(JA神埼中央支所企画課も参加)。
 ⑧ 文書・資料の印刷および発送は、CE職員で行う。
 ⑨ 全体のプランやプロデュースおよびコーディネートは、普及センターが行う。
 法人化を推進する資料として『なぜ、今 集落営農の法人化が必要なのか』を作成するに当たり、8月末から実施した「各集落営農組合ヒアリング」時に出された意見を集約して、どの様な切り口で、高齢の農業者に理解して頂く資料を作るかをテーマとして、原案を練りながら絵カットを入れるなどの工夫を凝らして素案を普及センターが作成し、関係機関の意見を聞きながら修正を行った。
 推進体制を整える一方、「城田西地区集落営農法人化研修会」の開催計画と「城田西地区法人化等検討委員会」の立ち上げに向けた話し合いを同時並行的に行った。
 10月10日の「城田西集落営農検討会」の開催時に
 ① 集落営農組合ヒアリング結果の報告(普及)
 ② 法人化推進のPPT『なぜ、今 集落営農の法人課が必要なのか』のプレゼン(JA)
 ③ 「城田西地区法人化等検討委員会」立ち上げの提案(委員長)
 ④ 「城田西地区法人化等検討委員会設置要綱(案)」の説明(市役所)
 それぞれ、関係機関が役割分担して、代表者への説明を行った。設置要綱(案)や推進資料などについて若干の意見や提案があったものの、『みんなで進める集落営農の法人化』を出席者の賛同を得てスタートさせる事が出来た。
 10月31日(事務局会)、11月13日(事務局会)、11月27日(事務局会での役員選出)、12月9日(役員会)
 12月10日(第1回城田西地区法人化等検討委員会)で以下の項目について、検討がなされた。
 ① 修正された「城田西地区法人化等検討委員会設置要綱(案)」の説明(市役所)
 ② 検討委員会の役員紹介 委員長のあいさつ(委員会)
 ③ 県内第一号の農事組合法人「(農)小鹿ファーム」の法人登記までの足跡(普及センター)
 ④ 構成員全戸への『法人化に関するアンケート』について(普及センター)
 ⑤ 農業機械の利用料金調査について
 ⑥ 3月中旬頃に行う視察研修について→青色申告(3/17)以降に
 ⑦ 三神地域集落営農組織の法人化研修会の参加要請について
 12月25日(役員会)、1月14日(役員会)
 ◎構成員全戸への『法人化に関するアンケート』について、アンケート用紙素案の提示と内容の検討。
  アンケート調査の配布日を1月14日(火)とし、
  アンケート調査の回収日を1月21日(火)。コピーをJAに提出する。(原本は農家代表者で保管)
  各集落毎にアンケート調査を取り纏めて1月31日(金)までにJAに提出する。
 ◎また、役員会並びに事務局会の連絡体制のルールづくり→誰がどこに連絡するのか?
  書記の2人が、JA南部センターに連絡を取り、JAから市役所と普及センターに連絡する。
  農家代表者については、CE職員が文書発送・配達する。
 1月28日「三神地域集落営農組織の法人化研修会」への参加……(千代田町民文化会館)
      講師:(農)よりもの郷 理事 仲 延旨 氏 ~検証、法人化して良かったのか?~
      〃 :(農)清流の里古川 理事 田中 和幸 氏 ~小学校区を単位とした広域法人の取組~
      参加人数:450人
 2月25日(第2回 城田西地区法人化等検討委員会)
 ① アンケート調査結果の報告
 ② 各集落営農組合の農業機械装備状況調査並びに、利用料金調査の報告
 ③ 視察研修について(3月20日:筑後市「農事組合法人 百世」)
 ④ 次期検討会委員の選定の時期(視察後に協議する)
 ⑤ 法人化等「地区別勉強会」について(4月21日~25日の19:30~21:00で2班体制で説明に廻る)
 ⑥ 委員会への質問や意見については、3月20日までに事務局で整理して、ペーパーで回答する
 ⑤法人化等「地区別勉強会」については、委員会等での集落代表者の法人化知識は充分に得られたが、各農業者へ説明出来るレベルではない事と質問に対しての適切な答弁が出来ない事などから、10集落全てを対象として関係機関(市・JA・普及)による集落説明会の開催要望の声が強く、説明会の出席率を高めるために開催時期について、それぞれの機関から予定を聴き取った。
 ◎普及センターは、3月に農業申告があり、視察研修を組むため4月以降の開催をお願いした。
 ◎市役所は、4月14日~18日に会計検査の受検。4月20日に神埼市長・市議会議員選挙(公示からの選挙期間4月10日~19日)。
 ◎農協は、5月7日~16日はJA農談会。
 ◎農家からは、麦の防除が4月中旬~4月下旬に行われる。5月になれば農作業が忙しくなる。
 これらの意見を踏まえて、集落営農組合の構成員である全農家が参加出来るように夜の開催とし、期日は、4月21日(月)~25日(金)となった。しかし、この時期は、麦の赤カビ病防除と重なるため「開会時間を19:00でなく19:30からの要望」が上がったため、19:30~21:00に各地区公民館で2班体制で説明に廻る事で決定した。また、「法人化説明会」や「法人化研修会」と言う名称を使うと農家があまりにも身構える恐れがあるので、ソフトなイメージになるように城田西地区法人化等「地区別勉強会」とした。

 

21日(月)

22日(火)

23日(水)

24日(木)

25日(金)

1班

上直鳥

下黒井

乙南里

丙太田

普及センター

上瀧

上瀧・中山

上瀧

上瀧

上瀧・吉田

市役所

田中

JA城田支所
JA中央会

 

真島
杉原

真島
杉原

真島
杉原

真島

委員会役員

古賀

本村(副)

樋口(委員長)

福井(副)

樋口(委員長)

CE役員

 

 

江頭(組合長)

 

江頭(組合長)

CE職員

 

森山

森山

森山

船津

出席率

延期

87%

50%

94%

100%

2班

十  條

上黒井

大  石

嘉  納

丁太田

普及センター

上瀧・小柳

小柳・吉田

小柳・宮原

小柳・堤

小柳

市役所

小柳

小柳

小柳

小柳

小柳

JA城田支所
JA中央会

福田・真島・
杉原・濱野

福田
濱野

 -
濱野


濱野

福田

委員会役員

本村・古賀

福井・黒田

黒田

樋口(委員長)

古賀(副)

CE役員

 

 

 

江頭(組合長)

 

CE職員

 

船津

船津

船津

森山

出席率

87%

57%

61%

100%

46%

 このように、一つの行事を決めるにしても、その内容と開催の時期・時間帯等について、ターゲット(農業者)の意向を十分に反映出来るような仕組みを作り上げて行った。
 また、10集落の日程は、検討会委員およびCE役員にお願いし、調整してもらった。3月20日の視察研修終了後に委員長から説明してもらい、その後、CE職員が開催文書を作成・印刷し、各集落営農組合長に必要部数を手渡し、それぞれ農家に配布してもらうと共に、多くの参加農家を得るために、日頃の農家との接点の中で参加を促す働きかけを強く要請した。
 その結果、出席者率は、46%~100%で、平均で72%と高い農家の参加を得た。(通常5割)
 (出席率が低い集落は、苺栽培農家が多く出荷のための製品作り(パック詰め)を夜間行うため忙しかった模様。通常のJA農談会への農家出席率は、5割前後である。)
 このように、将来的に農地の受け皿となる組織を育成するためには、関係機関と農家が一体となり、長期的に働きかけを行い、継続的な係わり方を濃密的に行う事が必要である。
 今回の報告事例は2013年度に実施した事前の地固めとして行った活動であり、その後、平成26年度普及指導年度計画書に、集落営農法人化プロジェクトチームとして2014年度から3ヶ年間のプロジェクト課題『信頼できる農地の受け皿となる地域営農組合の法人化の推進』として活動を行う事になった。
 このように「集落営農組織の法人化」を、円滑で確実に、そして長期的に3年間行う(異動に伴う担当者の交代やトップの交代により活動が低迷する事が良く有る中で)ための根回しとして、2013年度の4-4半期に、関係機関(市町・JA・NOSAI)の部・課長からなる組織(農業改良委員会幹事会や農政部会)に、考え方を説明すると共に、実働部隊である副課長や係長からなる集落営農担当者会で、これまでの活動経過と次年度の主たる集落営農担当者会の活動計画および、2014年度からスタートする普及指導年度計画書のプロジェクト課題として、市町毎のモデル集落・組織の選定等について詳しく説明を行い、モデル候補(案)を事前に上げてもらうなど、年度始めの人事異動で担当者が代わっても、関係機関がスムーズに普及センターや集落営農組合・農家と途切れること(空白の時間が発生しないように)なく機能できるように(ロケットスタート出来るように)配慮しながら、現在進行形で活動を行っている。
 まずは、2013年度の代表的な活動を報告させて頂いた。