【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

 本市の森林は面積の83%を占め、うちスギ、ヒノキ等の人工林は76%。多くの人工林は、戦後の拡大造林政策により造成され、現在利用の時期を迎えています。
 しかしながら木材価格は、1989年20,000円/m3を超えていたものが、近年は、10,000円/m3程度と低迷し、「山持ち=金持ち」と言われた頃の手法では、林業経営が成り立たない、森林を管理できないといった状況になっています。



もうかる林業へ


大分県本部/日田市職員労働組合 中村健太郎

1. はじめに

 日田林業の歴史は古く、江戸時代には挿し木による植林が本格化し、戦後には、天然林を伐採し、スギ・ヒノキといった人工林の拡大造林、製材工場の増加、原木市場の開設等々により、全国でも有数の林業地「日田」が形成されています。産業としての裾野は広く、森林整備から原木市場、製材業や家具やクラフト、下駄などの木工業等、また近年、木質バイオマス施設も立地し、現在も市民の多くが森林・林業・木材産業に携わっており日田市の基幹産業となっています。

2. 日田林業の現状と課題

(1) 極端に偏った樹種構成と齢級構成
 スギ・ヒノキの人工林率が、76%と極端に高くなっています。(全国平均45%、大分県平均53%)木材搬出の難しい尾根筋や急傾斜地にもスギ・ヒノキが植林されており、高コストで手入れが届きづらくなっています。
 また、人工林の齢級構成に偏りをどう平準化させると良いのかも課題の一つです。下記グラフの林齢45~60年生は、戦後の拡大造林政策によるもので、現在、収穫期を迎えています。また、20年生は、1991年の大型台風被害後の再造林によるものです。この2つの時期に偏った齢級構成により今後、木材需要と供給に不均衡が生じることも危惧されています。

日田市のスギ・ヒノキ齢級別面積(2013.3.31現在)
資料)日田市林業統計

(2) 木材価格の長期低迷
 木材価格は、近年10,000円前後と20年前の約半分まで低下しています。木造住宅の減少や円高等による外国材の輸入量増加による国産材の利用率の低さが要因とされています。

資料)日田市林業統計

(3) 適切に管理されていない人工林の増加
 木材価格の低下や担い手不足、不在村所有者の増加により、管理放棄された人工林が増えています。森林所有者からは、「相続で山を引き受けたが、どこにあるかわからない。」と言った相談もあり、今後、森林の管理のあり方をどのように高めるかが課題となります。

(4) 鳥獣による森林被害の拡大
 近年、イノシシ・シカが里山まで生息域を拡大傾向にあります。イノシシについては農作物の被害、シカについては新植地での食害、立木の皮剥などの被害が深刻な状況となっており、森林所有者の再造林意欲の低下につながっています。

河川に流れ出た立木

(5) 豪雨・台風など多発する自然災害への対応
 森林は、木材産業としての経済的側面と、国土の保全、水源のかん養、地球温暖化防止等公益的機能を有しており、安全で安心できる市民の生活と深く関係しています。記憶に新しい2011年7月の「九州北部豪雨」では、河川沿いの手入れの行き届いていない不健全な人工林が河川へ流出し、橋を崩壊させる等、被害を拡大させた一因とされています。

3. 今後の方向性

 先に述べた課題は、全国の林業地共通の課題とも言えます。国の施策では、2009年12月に林野庁より、「森林・林業再生プラン」が公表され、利用時期を迎えた森林資源を積極的に活用し、現状20%の国産材自給率を10年後には、50%以上とする目標が掲げられました。
 日田市もこのプランに沿って事業展開を行っています。具体的な施策として、森林整備の推進では、造林や間伐等の作業への補助制度。担い手対策として、林業事業体への福利厚生・共済掛金補助制度。鳥獣害対策として、罠の設置、捕獲への補助制度。木材の需要拡大策として、住宅の新築・リフォームに対しての日田材の支給をしています。また「公共建築物等における地域材の利用の促進に関する基本方針」を掲げ公共建築物に地域材を率先して利用するような取り組みを進めています。
 2014年度、新たな取り組みとして、「新しい日田の森林・林業・木材産業振興ビジョン」の策定を進めています。なぜ林業が低迷しているのか。これからどういった振興策が必要か等を森林所有者、林業事業体、製材・木工業・商工観光業といった幅広い分野から議論・検証し、日田林業の未来像を明らかにしていきます。

※ 地域材を利用した公共施設(左)日田市立小鹿田焼陶芸館 (右)日田市立咸宜小学校体育館

4. まとめ

 これまで述べた課題をクリアし、もうかる林業を生み出すことができれば、林業が活性化し、森林を適切に整備する循環が生まれます。また、森林・林業・木材産業の活性化は地域に雇用を生み、山村の活性化にもつながります。
 これからも、先人たちから営々と受け継がれてきた豊かな森林資源を有効に活用し、それが循環していく、さらに、木材の加工技術が集積した、木材供給の拠点都市、世界に誇れる林業地「日田」をめざして取り組んでいきたいと考えています。