【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

 大分県職員労働組合・林業技術者評議会のこれまでの取り組みを振り返り、各都道府県における林業職場を取り巻く現状調査や職員の意識調査結果から、今後の組織のあり方について考える。



林業組織の将来像を探る


大分県本部/大分県職員連合労働組合

1. はじめに

(1) 取り組む経緯
 林業技術者評議会は1992年に発足し、大分県職員労働組合の1評議会組織として林業職場の改善や職員の身分向上に取り組んできた。組織としては、会長、副会長、事務局長、事務局次長、そして各振興局、県庁二課三室、研究機関等に幹事を配置して職員の意見集約等を行ってきた。
 2005年度から行われた行政改革により、それまで12振興局にあった林業課が廃止され、林業職場部門が振興局では、12局を6局として農山漁村振興部、生産流通部、農林基盤部の3部に分かれ、本庁では林業水産部から農林水産部へ組織が変更され、三課から二課三室へとなった。また、林業改良普及員の体制も整理され、普及員数の大幅減少と普及項目も絞り込まれ、森林・木材担当、椎茸担当の2つにされてしまった。
 こうした中で職員数も減員され、一人ひとりの業務量が増大していくこととなった。
 行革の中で、創意工夫による政策県庁として職員の資質の向上や県民目線からみた仕事の対応、選択と集中などを行うことで業務の効率化を図ることとされたが、時代は多様化路線を突き進み、ますます県民へのサービスは多種多項目にわたり、簡素化とはほど遠く複雑化し、他部局連携しなければ施策や県民要求を満たすことが出来ない状況になっている。こうした状況から、超過勤務の恒常化や年休取得の困難等により、職員が健康を害し(長時間勤務が続くなどして職員がうつ病などにより)長期に休んだり、退職するケースも見受けられることとなり、近年、ベテラン職員を欠く状況にまでなっている。
 特に2012年度は7月に九州北部豪雨災害に見舞われ、その復旧業務に多大の労力と人員を割かれた結果、各職場で欠員等が生じ、仕事のストレスで病んで長期に休む職員や長時間勤務が災害地以外の職場でも発生している状況である。

(2) 森林・林業情勢
 林業は産業と環境としての役割があり、森林の公益的機能、水源のかん養、国土保全、木材等林産物の供給、生活環境の保全、地球温暖化防止、公衆衛生、そして癒しの場としての多面的な機能を有しており、森林に覆われた国、日本としてその恵みを享受しているところである。
 国の施策としては、戦後造成したスギ、ヒノキなどの人工林が収穫期を迎えているため2010年に「森林・林業再生プラン」を掲げ、木材受給率50%をめざした施策を、県ではアクションプラン2005に基づき、2015年度には素材生産量100万m3をめざして、数々の施策を推し進め、林業・木材産業の振興を図っているところである。
 また、森林は県民共通の財産として県民の生活環境に安らぎを与え、森林環境保全に県民総参加の森林づくりを推進するために森林環境税を導入して、環境面からの整備を進めている。これは、県独自の課税制度で、2002年に高知県から始まり、2012年度現在では33県(大分県は2006年度から)が導入しており、他県も導入の兆しがある。
 国もこうした流れから国レベルでの森林環境税の導入も検討している状況である。
 さらに、国土保全や災害防備の観点から、治山事業や災害に強い森林づくりの推進、また、2012年7月の九州北部豪雨災害からの復旧を危急の課題として、治山施設や林地被害に対し、他県職員の応援も得て災害復旧に向けて取り組んでいる。林道施設災害においても、被災市町村への支援を行い早期復旧を図っている。

(3) 林業職場のあり方について考える
 このように林業技術職員は産業振興、生活環境を守るという両側面が存在し、林業技術者の仕事は多方面にわたっている。その職員が働きやすく職場環境も快適で職務に取り組める状況は、現在ほど遠く、仕事による精神的なストレスや長時間勤務による疲労から不健康な職員が潜在的に見受けられ、休職寸前の職員が増えつつある。
 業務は多様化し、「100万m3達成」という大きな目標に向かって一致団結が求められ、振興局と本庁の温度差があるように思えるとの職員の声が聞こえてきている。
 こうした状況を改善するにはどのようなことが考えられるかを探るに当たり、その一つとして林業組織のあり方について検討するために調査を行い、全国の現状や職員の意識はどうなっているかを明らかにする時期に来ている。

2. 林業職場組織の現状

(1) 近年の組織状況の変遷
① 職員数
  2001年度(平成13年度)から2013年度(平成25年度)にかけての職員数は表1のとおりとなっており、12年間で38人の職員が減少している。行財政改革の中で団塊の世代を中心とした退職者が多く、採用職員数を絞った為と考えられる。行財政改革後では退職者数に見合った採用数となっているが、予期せぬ退職者も出て、欠員が生じている。2012年度(平成24年度)は191人となっている。
② 組 織
  2002年度と2006年度の組織は以下のとおりである。組織改正で林業水産部から農林水産部となり、12地方振興局が6振興局となった。
  本庁では2002年度は林政課、林業振興課、森林保全課の三課となっていたが、2006年度では林務管理課、森林保全課、林産振興室、森との共生推進室、森林整備室の二課三室となった。ここでの林業技術職員数は、2002年度が227人、2006年度が210人である。
  地方機関では、2002年度までは12地方振興局に林業課、あるいは林業水産課があり、それぞれ課長がおり、係では林務係、森林土木係があり、業務量等に応じて第一班、第二班等に分けられていた。
  2006年度では、6振興局があり、その振興局に農山漁村振興部、生産流通部、農林基盤部と3部構成となり、林業職員はその3部にわたって配置された。農山漁村振興部の森林管理班、林業・木材班、生産流通部の野菜椎茸班、農林基盤部の治山林道班となり、以前の林業課一課からみれば、3分されたことになる。さらに、林業改良普及員では新たに広域普及員(椎茸2人、木材1人)が農業部門と同様に研究機関に配属され、普及員数が以前の半分以下、18人となった。
  その後、組合交渉で2010年度には椎茸普及員が農山漁村振興部配属となり、林業・木材・椎茸班と改称し、現在に至っている。
③ 採 用
  2012年度の採用者数は、8人であるが近年女性職員の採用が増えつつある。

3. 課 題

(1) 林業組織のあり方
  本庁では農林水産部、地方機関では振興局三部体制となって7年が経過したが、課題は林業職員職場が振興局で、現在二部に分かれていること。本庁組織でも鳥獣被害対策や県営林部門等の課題が見えてきた。
  そこで全国、九州での組織の状況を把握して、全国的にどのような林務行政組織となっているのかを探ってみたい。

(2) 林業職員の意識
 また、現在、職員の意識はどのようなものなのかを知り、それに対応できる為には、どのように反映させるのが適切か考えてみたい。
 そして、林業組織がまとまり、進むべき体制を考えてみたい。

4. 調 査

(1) 調査内容
 まず、各都道府県の林業職場がどのような部署に配置されているか。本庁と地方機関、2つについて各都道府県のホームページを検索等を行い、調査してみた。
 九州各県の労働組合にアンケート調査を依頼し、組織の状況を教えてもらうことにした。
 次に、われわれ林業技術職員が林業組織をどのように考えているか。近年の組合交渉では職場改善として、林業職場の統一を振興局内で行うことを進めている観点から、職員の意識をアンケート調査することにした。
  なお、アンケートは、別紙1のとおりの内容で各職場の幹事に協力をお願いした。

5. 調査結果(他都道府県の組織状況)について

 46都道府県の組織をホームページ上で調査した。調査結果は別紙2のとおりである。また、九州各県の状況は別紙3のとおりである。
 まず、全国の状況を以下のように整理した。

(1) 林務行政部局が、農水の1次産業部局で組織が成り立っている
 30道府県あり、農林水産部の名称では、25府県となっている。北海道では、水産林務部として、林務局と森林環境局に分かれている。埼玉県、奈良県、長崎県では、農林部、広島県では農林水産局となっている。こうした府県は一次産業としての位置づけが高いと考えられる。

(2) 林務行政部が単独である
 長野県は林務部、岐阜県が林政部として単独の部として存在する。

(3) 環境関係部局と組織が同一である
 10府県あり、環境森林、あるいは森林環境部という名称で、神奈川県では、環境農政局内に水・緑部として、滋賀県では琵琶湖環境部、大阪府では環境農林水産部、高知県では林業振興・環境部である。九州では、宮崎県、鹿児島県2県が該当する。

(4) 商工労政部局や土木建築等と組織が同一あるいは分かれている
 東京都が産業労働局農林水産部森林課となっており、静岡県では、緑化推進、森づくりなどが「くらし・環境部 環境局 環境ふれあい課」で、林業振興が、産業経済部農林業局林業振興課、森林計画、森林保全、整備が「交通基盤部森林局」となっている。佐賀県では、農林水産商工本部生産振興部に林業課、県土づくり本部に森林整備課がある。

(5) 鳥獣被害対策等に係る部署について
 次に、鳥獣被害対策に当たる鳥獣保護行政について調べて見ると、本庁組織のほとんどが環境部門であることがわかった。
① 環境部及び関連した他の部局
  29都道府県にわたり、そのほとんどが自然保護課、自然環境課と呼ばれる部署であった。特に、高知県では産業振興推進部に鳥獣対策課を設置、鳥獣被害対策を実施している。
② 森林環境部
  5県あり、部内で対応している。
③ 農林水産部内
  13県あり、そのうち、福岡県では畜産課で鳥獣被害対策、熊本県、経営局むらづくり課で鳥獣被害対策、三重県では鳥獣対策課となっている。
  なお、地方機関では、林業部門がほとんど担当しているが、茨城県では県民センター環境・保安課で、栃木県では環境森林事務所の環境部で、埼玉県では環境管理事務所、岐阜県では振興局環境課が鳥獣保護行政を対応している状況がわかった。

(6) 地方機関での林務及び森林土木部門部署について
 ほとんどの都道府県が農林水産部署に森林・林業振興部門としてあり、林務担当、森林土木担当となっているが、福岡県、長崎県、熊本県、宮崎県では林務関係課、森林土木関係課二課が地方振興局等に配置されている。

6. 調査結果(職員の意識調査)について

 アンケート調査結果は別紙4のとおりである。
 176人の林業技術職員にアンケート実施したところ110人から回答があり、回答率は62.5%であった。

(1) 振興局組織について
 集計表を見ると林業組織を1つにすることが望ましいが97件、88.2%の職員が回答した。全職員からすれば、55%、半数以上となる。
 その理由としては、効率化、一本化することのメリットが大きいことがあげられる。特に、アクションプラン2005の達成や国策の森林林業再生プランに基づく林業振興に向けた取り組みを進める組織としては、一本化が必要であるとの認識を持つ職員が多い。
 また、人材育成、次代を担う若手職員の育成にも有益で、林業技術職員という採用資格からすれば林務、森林土木、そして普及指導に専門的な知識、技術を備え、フル活用するためには当然である。
 また、2006年度から振興局が3部制になり7年が経過したが、農林基盤部で農業土木と森林土木が一緒になったことが、果たして効率的に地域振興に繋がったのか疑問の声が上がっている。メリットよりも林業振興に関してはデメリットであると考える森林土木担当職員の意見が多い。こうした組織についても行財政改革の成果として検証する必要があるのではないか。検証し、県民目線に立った組織づくりをもう一度原点に立ち返り見直す時期に来ていると感じている職員がいることは事実だ。
 林業組織を一つにすることに対しては、さまざまな意見がある。振興局組織は農業との関係が強いので果たして林業だけの考えで良いのかということや、統一することで職員数を減員する恐れがあるのではないかという声もある。中には、組織はそのままで連携できるように執務室を隣同士にするという意見もある。

(2) 本庁組織について
 本庁組織については、林業普及担当職員を研究普及課から林務管理課あるいは生産原課への配置換えを望む意見がある。2014年度からフォレスター制度が始まるのだが、それに伴い行政サイドと密接に連動することが普及職員に求められることからの要望である。
 次に、鳥獣被害対策は農業被害が多いことから農業分野に振興局も含めて移管した方が良いのではないかという意見が多く寄せられた。林業専門職が現場で不足しているため、減員となっている職場があることからこうした部署への配置を優先すると同時に林業職員以外が担当できる、あるいは担当すべき業務は事務職や農業職で行えないかという意見もある。
 また、振興局と同じように効率化を図るための組織を再編する意見もあった。収穫期を迎えた県営林を担当する班についても同様な意見もあった。

7. 考 察

(1) 調査結果から
① 全国の組織について
  ホームページ上の調査で各自治体がどのような組織となっているかを調査した。また、九州各県には自治労県職員組合を通じて依頼し、回答を得た。いずれにしても、林業組織は第1次産業としての側面と環境保全としての側面があることから大きく2つに分けられた配置となっていたが、産業としての側面を採用する自治体が多かった。
  鳥獣保護行政については、46都道府県のうち29の自治体が環境の部署であり、環境森林部局の5県と合わせると34になり、大半が環境関連の部署である。残りの13部署では、農林水産部内ではあるが独立した課や室で対策をしている県もあることが分かった。
  地方組織については、林務、森林土木が同一の部署にほとんどおかれていることもはっきりした。この結果を踏まえて、本県の林業組織のあり方を検討する必要があると考える。
 しかし、鳥獣被害を環境部局あるいは農政部局に移すと仮定した場合、他県でも出先の林業部門が担っているように、県庁だけ他部局で出先は林業ということになり、そうした部署への林業職員配置が考えられる。むしろ県庁も出先も鳥獣被害対策は林業でやるという現行体制を維持し、行政需要が拡大していることからその組織拡充をめざす方向も考慮すべきと考える。
② 職員の意識について
  林業技術職員すべての方から意見をいただくことはできなかったが、6割以上の方から貴重な意見をいただくことができた。林業振興の目標達成に向けて、林業再生に向けた意見を持つ職員が圧倒的に多いことが分かった。また、2006年度以降の組織に対して問題意識を抱いている職員が多いことが、現在進めている振興局での組織統一への意見として反映されていることが分かった。
  こうしたことから、林業組織を一つにする方向で取り組みをさらに進めていく必要があると考える。

(2) これからの活動方針
  林業組織は県庁組織の一部である。農林水産部、総務部にある組織の中でほとんどの林業技術職員は働いている。林業組織を少しでも職員の要望と県民のニーズにあった形にするためには他の職場との調整や管理職の方々との理解を求める活動を進めて行かなければならない。今、大分県林業技術職員が一致団結する時期に来ている。その重要性を鑑み、林業技術職員評議会は前進しなければならない。

表1 林業職員組織状況
別紙1 林業組織体制に関するアンケート
別紙2 都道府県林務関係部署配置比較表
別紙3 九州各県組織一覧
別紙4 林業職場のあり方について アンケート集計結果