【論文】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

 大分県漁協臼杵支店は地元産魚を直接地元で購入する機会を増やすことを目的として、2012年から「うすき海鮮朝市」を毎週土曜日に開催している。これらの取り組みは、非常に好評であり、地元のみならず、市外からの来客者で賑わいをみせている。本研究では、これら来場者の現状分析や今後の開市に向けた課題を把握することを目的として、現状分析調査を実施するとともに、結果を普及することで、さらなる活性化をめざした。



質問紙調査を用いたうすき海鮮朝市の現状分析


大分県本部/大分県職員連合労働組合・うすき海鮮朝市研究グループ

1. はじめに

図1 大分県臼杵市の位置図
図2 臼杵魚市場のセリの様子
図3 うすき海鮮朝市の様子

 大分県臼杵市は、九州の東岸で大分県の南東部に位置し、豊後水道北部の臼杵湾に面しており、水産業が盛んな地域である(図1)。豊後水道及び臼杵湾は、内海水と黒潮分枝流が混合する生産性の高い好漁場であり、釣り漁業、はえ縄漁業、刺し網漁業、中型まき網漁業、船びき漁業、小型機船底びき網漁業、小型定置網漁業、磯突漁業、海士漁業、たこつぼ漁業などの沿岸漁業だけでなく、リアス式海岸の地形を生かした養殖業も盛んでブリ等の魚類養殖、真珠養殖などが行われている(①より一部引用)。
 その臼杵市にある大分県漁協臼杵支店では地元産魚を直接地元で購入する機会を増やすことを目的として、2012年7月から臼杵魚市場において「うすき海鮮朝市」を毎週土曜日に開催している。朝市は7時半から行われ、競られたばかりの新鮮な魚を仲買人から直接購入することができる。
 この朝市の特色としては購入した鮮魚を無料で三枚おろしなどにさばく、「さばきサービス」を行っており、魚がさばけない消費者などにも広く購入してもらえるよう魚食普及に資する取り組みを実施している。また、2013年3月からは、地元産魚を用いた朝食の提供を開始し、ワンコイン(500円)で気軽に食べることのできる海鮮丼の提供を行っている。2013年8月には食堂と加工施設の機能を兼ね備えた「海鮮食堂うすき」を開設し、より多くのお客様に朝食を提供できる体制づくりをしている。これらの取り組みは、非常に好評であり、毎週50人程度が来市し、賑わいをみせている(図2、3)。
 著者らは県職員として、この朝市に関わる中で、漁協女性グループなどの朝市に関わる多くの方から、朝市の来場者はどこから来ているのか、また、この朝市にどのような意見を持っているのかと聞かれることがあり、実態調査の必要性を感じたことから本研究の着想を得た。加えて、朝市の来場者の意見を把握することは、今後の朝市の発展や地元産魚の消費拡大に繋がると考えた。
 そこで、本研究ではこれら来場者の現状分析や今後の開市に向けた課題を把握することを目的として、現状分析調査を実施した。


図4 質問紙を配布する調査員
表1 有効回答者の属性(N=60)

2. 方 法

 方法は質問紙法を用いた。うすき海鮮朝市についての基本的な情報や意見を把握するために金田湾朝市など5つの朝市の調査を実施した森本ら()の文献を参考に質問紙を作成した。
 質問紙の設問項目は、下記の通りである。
① 朝市の基本情報
  回答者の性別、年代、市町村などの属性、朝市への交通手段、所要時間、来場人数とその来場者との間柄、朝市への滞在時間。
② うすき海鮮朝市について
  うすき海鮮朝市を知ったきっかけや来場回数、その理由、購入したことがある商品、朝市で使う平均金額、朝市への意見(自由記述)。
③ さばきサービスについて
  さばきサービスの利用の有無、利用回数、さばきサービスへの評価とその理由(自由記述)、有料になった場合の利用の有無、さばきサービスへの意見(自由記述)。
④ 朝市の朝食について
  朝食の利用の有無、利用回数、さばきサービスへの評価(美味しさ、値段、量、新鮮さ)とその理由(自由記述)朝食への意見(自由記述)。
 調査は2013年12月に行った。朝市時に返信用封筒を同封した質問紙の配布を行い、郵送により回答を得た(図4)。

3. 結果と考察

 来場者に109部配布した結果、66部(60.6%)を回収した。そのうち、60部を有効回答とした(有効回答率90.9%)。有効回答者の属性について、表1に示す。なお、5)うすき海鮮朝市までの所要時間及び8)朝市のおおよその滞在時間については自由記述回答をアフターコード方式により整理した。
 性別は男性と女性がほぼ同数であったが、年代は60歳代が43.3%と最も多く、50歳代、70歳以上と続いた。
 次に居住している市町村については臼杵市が最も多かったが、大分市の回答者も40%近くみられた。これは2013年7月20日及び同年8月17日に大分県中部振興局が行ったうすき海鮮朝市における来場者調査における結果に類似しており、市外からの来場者が多くみられることが明らかになった。(7月20日は大分市からの来場者が15人(38%)、8月17日は14人(29%))
 朝市までの主な交通手段は車が80%以上と最も多く、ついで自転車が多かった。所要時間では10分から19分とした回答者が最も多かったが、30分以上との回答が45%みられた。前述の来場者調査結果を踏まえると、臼杵市外から車で片道30分以上かけて来場するお客様が多くいらっしゃることが分かった。
 来場者の形態であるが、来場人数は2人が最も多く、主に家族で来場していることが明らかになった。また、朝市の滞在時間は30分から39分が最も多く、30分以上とした回答をまとめると全体の65%となり、比較的長時間滞在していることが分かった。

 

 
図5 朝市の開催を知ったきっかけ
(N=60)
図6 朝市の来場回数(N=60)
width=
図7 うすき海鮮朝市への来市理由
(1人3つまで回答可)
図8 朝市での平均購入金額(N=60)

(1) うすき海鮮朝市について
 うすき海鮮朝市について、朝市を知ったきっかけについて図5に示す。「市報」が18%と多く、次いで「情報誌・本」が15%であり、「チラシ」や「人づて」が続いた。「市報」が最も多かった要因としては、臼杵市役所が市報に朝市の特集記事を組むなど積極的にPRしていることが大きいと考えられる。また、「情報誌・本」については、調査時期に大分県内の情報誌である「月刊セーノ(2013年12月号)」に見開き2ページで大きく取り上げられたことなどが要因であると考えられる。臼杵市役所では臼杵市のホームページや市の担当者がFacebookで周知するなどの取り組みを行っているが、インターネットがきっかけとする回答者は少ない結果となった。
 次に、朝市の来場回数を図6に示す。回答者の78%はリピーターであり、多くの回答者が複数回来場していた。特に10回以上とする回答者が30%いることから、多くの常連客がいることが明らかとなった。
 朝市に来場した理由について図7に示す。「新鮮な食材を求めて」、次いで「おいしい食材を求めて」が多く、朝市に「新鮮さ」や「おいしさ」を求めていることが示唆された。他の朝市においても、「新鮮さ」を求める回答が多く、次いで「おいしさ」を求める傾向が見られており()、うすき海鮮朝市においても同様であった。これらの結果から、うすき海鮮朝市は新鮮でおいしい食材が手に入ると多くの方から認知されていることが分かった。また、本結果から、市外からの来場者については「観光ついでに」という名目ではなく、あくまでも朝市に来ることを目的としていることが分かった。観光と連携させるには朝市の開始時間が7時半であることから、近隣の宿泊施設の宿泊客への広報や臼杵を代表とする観光施設の臼杵石仏が午前6時から参拝できることから、早朝の臼杵石仏参拝と併せた観光ルートの提案などが必要であると考えられる。
 朝市で購入したことがある食材としては「アジ」「イカ」「サバ」「エビ」「タチウオ」と鮮魚が主体であった。また、臼杵名物のきらすまめし(刺身におからを絡めたもの)やすり身などの加工品の回答もみられた。
 また、朝市で毎回使う平均金額について、アフターコード方式により整理した結果、2,000円台と3,000円台のお客様が多いことが分かった(図8)。
 うすき海鮮朝市に対する意見(自由記述)としては、「活気があって楽しかったです。さばきサービスや500円で丼が食べられるのが他にないもので、いいと思います。すぐ食べられることが私には助かります。」、「市場の方が親切で、魚も安く新鮮なので、また行こうと思います。」などの朝市に対して、好意的な意見が多くみられた。一方、ネガティブな意見としては「現状価格よりもう少し値下げして欲しい。」などの朝市で販売する魚の価格をもう少し下げて欲しいという意見も複数みられた。また、朝市に対する要望として、「もっと色々なものを販売してほしい」という意見や、現在、出店数が4店舗であるため、「もう少しお魚が多い方がうれしい。さんかするお店が増えるといい。朝市大すき(原文のまま)」など出店数の増加を望む声もみられた。これらを踏まえた結果、うすき海鮮朝市においては出店数や販売する種類を増やすことが課題として整理された。

図9 さばきサービスの様子
図10 さばきサービスを行う津久見高校
海洋科学校の生徒の様子
図11 さばきサービスの利用の有無
(N=60)

(2) さばきサービスについて
 さばきサービスは、朝市で購入した魚を海鮮食堂うすきのさばき所に持ち込み、漁協女性グループ、または地域の水産高校である津久見高校海洋科学校の生徒に無料でさばいてもらえるサービスである(図9、10)。
 このさばきサービスについて、その利用の有無について図11に、利用回数について図12に示す。回答者の33%が利用したことがあること、2回以上利用しているリピーターが85%以上であることが明らかになった。また、さばきサービスの評価について図13に示す。利用者の90%が「とても良い」、また「やや良い」と評価していることが分かった。
 評価理由(自由記述)として、「とても良い」と評価した回答者からは「こちらの要望通り調理して頂いています。分からないことは教えてもらい感謝しています。」、「サバキが出来ないし。魚をたべれるようになった。」、「魚のサバキ方教えてもらえるし、料理方法をおばちゃんからならえるから、次の世代に教えたいから」などの好意的な記述が多くみられ、これらから漁村女性と消費者の交流の場にもなっていることも記述から示された。「やや良い」とした回答者からは「ていねい、明るい対応(原文のまま)」という好意的な意見もみられたが、「待ち時間が少し長い」という意見もみられた。これはさばきサービスへの意見(自由記述)においても同様であり、さばきサービスのお客様が多いと漁村女性グループやサポートしていただいている津久見高校海洋科学校の生徒が速やかに対応できないことが要因であると考えられるため、要望に沿うようにできるだけスピーディに対応することが今後の課題である。
 また、無料さばきサービスが有料になった場合に利用したいと考えるかとの設問への回答は、「利用したい」が35%、「利用したくない」が35%、「わからない」が30%であった。さばきサービスへの意見(自由記述)においても、有料でも利用したいという意見(「鮮度がいいと私には出来ないのです。有料でも作ってほしいと思っています。」)もみられたが、無料を望む意見がより多く散見されていた(「さばきサービスは無料なので喜ばれているので、有料になると利用しなくなるのでは」、「いつまでもサービス(無料)であってほしいです。」など)。
 他の意見としては「若い主婦はできないので、このサービスは続いてほしいです。」、「大変良いサービスと思います。ずっと続けてもらいたいです。」など好意的な意見が多くみられた。


図12 さばきサービスの利用回数(N=20)   図13 さばきサービスの評価(N=20)

 

図14 地元で漁獲されたアカアシエビの天丼
(2013年12月14日)
図15 朝食サービスの利用の有無(N=60)
図16 朝食サービスの利用回数(N=27)
図17 質問紙調査結果を用いたうすき海鮮朝
   市の改善のための協議の様子。漁協、
   臼杵市役所も同席し意見を交わした。
図18 食堂のメニューを見るお客様
図19 「かぼすブリ」の海鮮丼
図20 食堂に掲示した「かぼすブリ」の
パンフレット
図21 臼杵名物「黄飯」にカマガリ炙り刺し
をのせたカマガリ炙り丼

(3) 朝食サービスについて
 朝食サービスは、市場に揚がったばかりの新鮮な魚介類を海鮮丼として、500円で提供するサービスであり、毎週およそ20食程度提供されている(図14)。
 この朝食サービスについて、その利用の有無について図15、利用回数について図16に示す。回答者の45%が利用したことがあること、利用者の67%が2回以上利用しているリピーターであることが明らかになった。
 また、朝食で提供される海鮮丼について、「美味しさ」「値段」「量」「新鮮さ」について評価を調査したが、特に「新鮮さ」において「とても新鮮である」との回答が25人(93%)から寄せられるなど、特に新鮮さの評価が高い結果となった。評価理由(自由記述)からは「漁協のお母さんたちのがんばりに感謝します。」という好意的な意見がみられたが、「臼杵魚市場の料理というものを提供してほしいです。もう少し高くてもよいので、トッピングを増やしたらどうでしょうか。」、「おおむねGood! さかなの種類を解説して! 赤足は旨い たれを置いたのはよい」など、臼杵魚市場らしい海鮮丼の提供の要望や海鮮丼で提供する魚の説明を要望する意見もみられた。
 次に、意見(自由記述)としては評価理由と同様に「食堂の方もとても親切でよいと思います。」や「皆さんがとても親切で居心地がとても良い」という好意的な意見がみられたが、「メニュー表示を入り口前に貼った方がよいと思う。外から見て、何を食べられるのか解らない。」、「食卓に『ふきん』を用意してほしい。自分でふくので」などの意見がみられた。

(4) 調査結果の普及と改善
 これらの調査結果などについてとりまとめ、さばきサービス・朝食サービスを実際に行っている漁協女性グループに紹介を行い、今後の改善点について協議を行った(図17)。協議で挙げられた改善点は下記の通りである。
① さばきサービスについて
  できるだけスピーディな対応を心がけること。
② 朝食サービス
  食堂の入り口へのメニューの掲示、臼杵魚市場らしい海鮮丼の提供、海鮮丼で提供する魚の説明を行うこと、ふきんの用意などお客様を意識した食堂づくり。
  これらの改善点を受け、次の朝市から様々な改善を行っており、調査結果を即時に現場に活かす取り組みを行った。
  さばきサービスについては、本調査結果を基に漁協女性グループがお客様を待たせている自覚を持ってもらうことで、できるだけスピーディな対応を行うよう意識付けを行った。現在では待つ順番を記載した整理券の配布を徹底するなど、努力を重ねている。
  朝食サービスについては、協議後の朝市において、食堂の入り口にメニューを掲示した(図18)。この日の営業では初めて海鮮丼を食べるお客様も多かったとのことで、初めての方がより入りやすい環境整備を行うことが出来た。
  また、その際に提供されたメニューは大分県のブランド魚「かぼすブリ」の海鮮丼(図19)であったので、かぼすブリの説明のパンフレットを食堂に掲示し、漁協女性の説明とともにお客様が魚のことをより知って頂けるような工夫を行った(図20)。
 最後に臼杵魚市場らしい海鮮丼の提供については、漁協女性グループと協議を重ね、臼杵名物である「黄飯」を海鮮丼のご飯とすることとなり、2014年4月より提供を開始することが出来た(図21)。現在では、カマガリ(標準和名クログチ)やレースケ(標準和名クロアナゴ)などの臼杵の特産魚や漁協女性グループが自信を持って薦める獲れたての新鮮な臼杵の魚と併せることで、臼杵らしく、臼杵でしか食べることのできない海鮮丼を提供している。
 まとめであるが、本研究は質問紙調査の結果から、うすき海鮮朝市の現状把握を行い、今後さらなる発展のために調査結果の普及、それに基づいた改善を行った。これらの改善を行うにあたり、質問紙調査の結果を根拠とするのは、関係者の皆が受け入れやすく、皆で結果に対して考えていくことで、この朝市をより良くしていこうという連帯感が生まれた。
 今後さらに、うすき海鮮朝市を活性化させ、地域の水産業の発展、ひいては地域活性化に繋げていきたいと考えている。

4. 謝 辞

 質問紙調査に回答いただいた回答者の皆様、配布にご協力いただいた津久見高校海洋科学校の皆様、大分県漁業協同組合臼杵支店の皆様、臼杵市役所産業観光課の皆様に深くお礼申し上げます。

5. 参考文献

① 田中克哲:JF最前線 われら元気組! -朝市で漁村活性化-、漁協、No.26(2)、pp22-25、2009
② 森本剣太郎・鈴木武:朝市の現状基礎分析―沿岸域の地域活性化に向けて―、国土技術政策総合研究所資料、No.559、pp1-48、2010