【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第6分科会 セーフティネットとしての公共交通

「上限200円バス」の取り組みと、その手法


京都府本部/自治労京丹後市職員組合 野木 秀康

地域(京丹後市)の概要
・京都府の北部に位置
・面積:501.84km2
・人口:58,755人(H26.7月末時点)

1. 200円バスの主な取り組みについて

① 2004年4月 市制になり地域の公共交通を改めて見つめ直す機会到来。
② 2005年12月 大規模なバス施策に関する市民アンケート調査を実施。
③ 2006年5月 庁舎内のプロジェクトチームを結成(横断的組織で智恵を集めた)。
④ 2006年10月 上限200円バスの運行開始(路線バスの一部路線の運賃を700円から200円に)。
⑤ 2007年10月 市内全てのバス交通を上限200円バスで運行開始(1,150円から200円に)。
⑥ 2008年10月 新たな地域(集落)へのバス運行の乗入開始。
⑦ 2009年10月 さらに、新たな地域(集落)へのバス運行の乗入開始。
⑧ 2010年10月 さらに、新たな地域(集落)へのバス運行の乗入開始(これまでの実証運行から本運行へ移行)。
⑨ 2011年9月 5年連続で輸送人員増加。
⑩ 2012年6月 6年連続で輸送人員増加中(約2.2倍の伸び率)。
⑪ 2013年10月 丹後2市2町の取り組みへ拡大。鉄道も200円レールを実施。
⑫ 2014年4月 消費税8%導入後も200円バス運賃を死守。
⑬ 2014年5月 公共交通を基軸にしたまちづくりが国の地域活性化モデルケース(全国33事例)に選定され、さらなる取り組みに期待が大きく膨らむ。

2. 住民、行政、運行事業者による3者協働を開始

 住民の想いを乗せて運行がスタート

住 民………利用する。大切に愛用する。(例:自発的な高校生の利用運動が起こる)
行 政………便利にするための財政的な支援と人的支援を運行事業者に対し行う。
      採算にとらわれない公共交通体系づくりを行う。全国的に路線バス運行からコミュニティバス運行への移行が進む中、京丹後市は路線バスの再生こそが地域の活性化につながるとした。運行事業者の宣伝力を補うため、市が持つ広報媒体を最大限活用した。
事業者………安全運行管理を徹底し、快適な輸送サービスを利用者に提供する。
      利用者満足度を高めるようブレーキのかけ方一つも心配りを行い、会社一丸となり、従来の輸送サービスの質を向上させた。

   
弥栄病院正面玄関への玄関直接乗入が実現(H18.10.1)   利用者が急増(H18.10.1)   ノンステップバスを積極導入

3. 住民意識の変化と膨らむ期待と要望

 京丹後市は、上限200円バスの取り組みで、住民意識が180度変わり、路線バスは、「高い乗り物」から「安い乗り物」になり、「乗客が乗っていないバス」から「乗客が乗るようになってきたバス」という認識に変わりました。
 しかしながら、未だ200円バスが利用できない集落にお住いの方(取り組み前11,800人→取り組み後5,500人)もたくさんおられ、中山間地域への新たな運行が求められています。

4. 行政改革と予算アセットマネージメント

 京丹後市の路線バスは、従来は空気しか運んでいないバスをよく見かけたものです。そこに多額の税金を突っ込んできたのですが、何のための税金の使途であるのかといったことを改めて考え直してみると、運行事業者の事業運営を継続させるためではなく、利用者に還元される税金の使途でなくてはならないという道筋が見えてきます。
 例え、市の補助金額が1.1倍に増えたとしても、利用者が喜んで乗っていただき1.5倍に増えるだけでも、税金は「さらに活きた」お金の使途になります。
 仮に、上限200円バスを導入していなかった場合と導入した場合の2011年度の試算では、実に3,800万円の抑制効果を確認することができます。

5. 今後の展開

 公共交通を基軸としたまちづくりをテーマに、国の地域活性化モデルケースに応募したところ、その選定(全国33箇所)を2014年5月に受け、さらに首相官邸で6月に関係閣僚と意見交換する機会に恵まれるなど、ますます京丹後市の200円バスの取り組みは注目されています。さらに、日本の過疎地域の公共交通の再生モデルになるよう、今後も真摯に住民視点に立ち、3者協働による取り組みを含め、まちづくりに大きく貢献する公共交通施策を進めてまいります。

京丹後市 地域活性化モデルケースの選定内容