【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第6分科会 セーフティネットとしての公共交通

 ユニバーサルデザインの考えを取り入れ、誰もが使いやすい公共施設の整備のため、実際に現地に行ったり、図面上での検討を行っている、障害労働者連絡協議会の取り組み報告。



公共サービスのユニバーサルデザインをめざして


広島県本部/自治労福山市職員労働組合連合会 上嶋 耕三

1. はじめに

 近年、自治体等においては、人に対して「害」と表記することへの抵抗感から「障害」ではなく「障がい」と表記しているところが増えています。
 自治労本部障労連では、障害者がその機能や能力の制限(障害)のために、社会から差別され不利益をもたらされる問題の解消こそが重要であり、「問題(障害)は、社会にある」との考え方から、自らの当事者運動に誇りをもって「障がい」ではなく「障害」と表記し運動を進めています。そして、障害者が社会生活をおくる中で直面する障害や障壁の解消(バリアフリー)に力点を置き取り組みを進めるとしています。
 私たちもこうした考え方のもと、本レポートにおいて「障害」と表記しておりますことについてご了承いただければと思います。

2. 障害労働者連絡会結成の経緯

① 福山市職労連合障害労働者連絡会(以下、「障労連」という)において実施している公共施設のバリアフリーチェックは、単組における障労連設立に至った経過との関連が多いため、まずはこのことについて報告させていただきます。
  障労連を結成するきっかけは、2000年11月に神戸市で開催された「第20回自治労全国障害労働者連絡会総会」に参加したことでした。総会では、自治体に雇用された障害者が定年まで安心して働くことができるように、職場環境の整備や採用条件の緩和などについて、終始熱心な討議が行われていました。
  福山市職労(現、福山市職労連合)から参加した組合員から、「自治労にもこんな素晴らしい組織があるのか」、「福山でもこんな組織を作ってみたい」、「もっと仲間の輪を広げたい」との声があがり、単組内の障害をもつ組合員への呼びかけが始まりました。
② しかし、お互いを知らないために、呼びかけはなかなか進まず、当初は同じメンバーで議論を重ねる日々が続きました。そうした中でも、徐々に職場や日常生活での悩みや自分自身の思いを語ることができるようになったことと併せ、語れるメンバーも少しずつ増えていきました。
  仲間からは「一人で頑張ってきたから」とか「行政組織や人間関係の中で責任や重荷を抱えたくない」、「仕事だけでも大変なのに」という内向的な意見も出されました。長年にわたり、自分たちの思いを語る場や組織の必要性が言われながら、結成できなかった背景には、こうした思いがあったことは否めません。
  一方で、「自分の思いを語りたい」とか「自分をわかって欲しい」、「そのためには障労連の結成が不可欠」という組織強化につながる意見も出され、一歩一歩着実に障労連結成に向けての議論も深まっていきました。
③ そして、「集うこと・語ること」の交流を繰り返したことにより、課題を一つずつ克服し、みんなの気持ちが徐々に一つになり、福山市職労の支えがあってようやく2001年9月7日に、福山の地において障労連を結成することができました。

3. 公共施設のバリアフリー化の取り組み

(1) いつから始まった取り組みなのか
 2001年9月に産声をあげた障労連が、同年12月25日に独自要求として、①障害をもつ組合員が定年まで安心して働き続けられる職場環境の整備、②障害者に配慮した採用試験の実施、③公共施設を新築・増築・改築する際のバリアフリー化などを中心に要求書を提出し、交渉を実施しました。また、2002年2月6日には、社会的にも取り組みが遅れていた、障害者雇用促進の問題や法定雇用率遵守にむけた課題についても交渉を実施しました。
 このような経過の中から,障害をもつ組合員の職場環境整備を進めることと併せ、全ての利用する人にもやさしい公共施設となるよう、新築・増築・改築する施設については、基本設計の段階から労使で意見交換を行い、取り組みを進めていくこととなりました。
 そして、図面上の協議は当然のこととして、障労連として、実際に現地に出向くことにも重点を置いて取り組みました。このことにより、協議を重ねてきた内容を確認すると同時に、全ての利用する人に配慮した施設か否かを自らの体験により実証していきました。

(2) そもそもなぜ取り組んだのか
 公共施設のバリアフリーチェックに取り組むきっかけは、「健常者と同じように仕事がしたい」という仲間からの思いに起因するものでした。
 2001年当時、車いすを利用する仲間から寄せられた意見を例にあげると、
 ・職場の通路が狭く移動できないため、公印を取りに行けない
 ・庁舎前のスロープの勾配が急で歩道から自力で上がれない
 ・庁舎内に設置されたATMが利用しにくい
 ・多目的トイレがない
 ・小便器などの手すりの位置が高すぎて利用しづらい
 ・グレーチングの目が大きく、車いすの前輪が挟まり転倒しそうになる
 などがありました。
 当時は、市役所をはじめとする公共施設においても、バリアフリー化が進んでいない状況がありました。
 こうした障害者の生の意見をもとに,障害をもつ仲間が安心して定年まで働き続けられる環境整備と併せ、「障害者が利用しやすい公共施設であれば市民にもやさしい施設となるはず」との観点で、バリアフリーチェックの取り組みが始まりました。

(3) バリアフリーチェック等を実施した具体的事例(施設)について
2004年
 ・うつみ市民交流センター(新築)
 ・内浦公民館(改築)
 ・南公民館(改築)
2005年
 ・沼隈支所(改築)
 ・本庁舎1階多目的トイレの案内表示板現地調査
 ・しんいち市民交流センター(改築)
 ・金江公民館(改築)
 ・西部市民センター(新築)  ※2005~2007
 ・福山市民病院バリアフリーチェック(既設) (別紙:報告機関紙参照
 ・バリアフリーチェック体験「ふれあいバスツアー」
  (※福山市から世羅町にかけての公共施設バリアフリーチェック)
2006年
 ・山南公民館(新築)
 ・中央図書館および中央公園の点字誘導ブロックの整備(既設)
 ・西部市民センター(新築)  ※2005~2007
2007年
 ・西部市民センター(新築)  ※2005~2007
 ・福山市グランド・ゴルフ場(新設)
2008年
 ・坪生公民館(新築)
 ・本庁舎4階から12階にかけての多目的トイレ整備(既設)
 ・神辺支所トイレ(改修)
2009年
 ・福山市立大学(新築) ※2009~2010
2010年
 ・福山市立大学(新築) ※2009~2010
 ・福山市民病院西館(増築) ※2010~2013
2011年
 ・水辺公園(既設)※2011~2012
 ・福山市民病院西館(増築) ※2010~2013
 ・本庁舎自動販売機点検
2012年
 ・水辺公園(既設) 
 ・福山市民病院西館(増築) ※2010~2013
2013年
 ・福山市民病院西館(増築) ※2010~2013
 ・駅家公園(既設)
 ・神辺地域交流センター(新設) ※2013~2014
2014年
 ・神辺地域交流センター(新設) ※2013~2014

(4) バリアフリーチェックにおける注意事項として
【チェックする主な項目】
① 思いやり駐車場の有無および大きさ 
② 駐車場から施設へのアプローチ(スロープの有無や傾斜、屋根の有無)
③ 施設への誘導(点字ブロックや玄関インターホンの有無)
④ 施設内の誘導(点字ブロックの有無、形状、材質)
⑤ 施設内導線の状況および広さ
⑥ 緊急避難時の導線
⑦ 施設内のカウンター(机等)の形状および高さ
⑧ 階段の幅・高さ
⑨ 階段手すりの高さ・形状
⑩ エレベーターの広さおよび操作ボタンの位置・形状
⑪ 多目的トイレの有無および機能
⑫ 便器・手洗いの形状・高さ
⑬ トイレのスイッチ類関係(緊急呼び出しボタン等の有無および設置箇所)
⑭ 扉の状況(ドアのタイプ(幅など)、開ける際の力加減)
⑮ 施設内の自販機のタイプ(障害者に配慮した機種か)など
※ 施設等の状況により、チェックする項目は異なります。
【チェックする際の構えとして】
 ・できる限り早い段階から、意見交換の場を設けること
 ・障害の部位による違いを共有すること
  ※ 例えば、視覚障害者にとって必要な点字ブロックは、車いす利用者にとっては障壁になる場合もあり、納得できる方途を模索
 ・限られた予算や面積があるということを念頭に置き議論する

4. 終わりに

① 2016年4月より施行される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下、「障害者差別解消法」という。)では、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的事項、自治体や民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置などが定められています。(別紙、内閣府資料参照
  この法律は、すべての国民が相互の人格と個性を尊重し合いながら共生することを目的としています。そして、自治体には「合理的配慮」(例えば、車いす利用者が社会生活を送るうえでの障壁《進行の妨げとなる段差など》の排除)が義務付けられ、民間事業者にも努力義務が課せられています。
  このように障害者を巡る法整備が進むに付け、私たち障労連がこれまで取り組んできたバリアフリーチェックは、まさに障害者差別解消法に規定するところの『社会的障壁の排除』であったと思います。そして、自身の雇用や仲間の労働条件を整備する事が目的ではじまったこの取り組みは、「合理的配慮」の先進的な取り組みであったと言っても過言ではありません。
② こうした取り組みを全国に広げていくためには、自治労の各単組に障害労働者が集う場を設け、そこでの意見を集約し、基本組織と一体となって「誰もが利用しやすい公共施設」づくりに向け、第一歩を踏み出さなければなりません。
  福山市職労連合に障労連の旗を立て13年が経過していますが、同様の組織は中国地連においても、広島県本部内の3単組にしか結成されていません。まずは、県本部内の各単組が障労連を結成し、県内全ての自治体が障害者差別解消法を遵守する自治体づくりに向け、全国的なうねりとしなければなりません。
③ 私たちの周りでは「バリアフリー」および「ユニバーサルデザイン」という、似て異なる2種類の言葉が使われています。
  バリアフリーとは、障害者や高齢者等の社会的弱者が生活する中で、支障となる物理的な障害や精神的な障壁を取り除くための施策等をさします。一方、ユニバーサルデザインとは、老若男女の差異、障害・能力の如何を問わず利用できる施設等をさします。つまり、後者は、開発・設計段階から全ての障害・障壁が取り除かれた状況・状態なのです。
  そうであれば、私たちがめざすべき方向は、全ての公共施設がユニバーサルデザインであることだと考えます。
  福山市職労連合障労連も、これまでの取り組みを若い世代に継承し、さらに発展させるために、引き続き公共施設のバリアフリーチェックの精度を高めると同時に、公共施設新設等の際には、できる限り早い段階での労使の意見交換の場を設定しながら「誰もが利用しやすいユニバーサルデザインの公共施設」づくりの一翼を担っていきたいと思います。

あるがまま(2005年8月30日 No.10)
障害者差別解消法(リーフレット)